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[CEDEC 2011]プラットフォームによってバグも違う。ポールトゥウィンとバンダイナムコゲームスが語る「データを活用して生産性を上げる試み」
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印刷2011/09/12 00:00

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[CEDEC 2011]プラットフォームによってバグも違う。ポールトゥウィンとバンダイナムコゲームスが語る「データを活用して生産性を上げる試み」

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 日本最大のゲーム開発者イベント「CEDEC 2011」で,「データを活用して生産性を上げる試み」と題されたショートセッションが行われた。最初にポールトゥウィンの木本 旬氏が「プロファイリング手法によるバグデータベースの活用とチェック作業の効率化への取り組みについて」というテーマで語り,続いてバンダイナムコゲームスの竹村伸太郎氏が「データ活用で生産性UP! 統計分析を伴うツール開発の舞台裏」という講演を行った。


ハードによるバグの傾向とは


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ポールトゥウィン 木本 旬氏
 ポールトゥウィンは,ゲームデバッグにおいて日本最王手であり,木本氏は,ゲームの一般的なバグの傾向として,以下の4点を挙げた。

・ゲーム機ごとに陥りやすいバグの傾向がある
・ゲームジャンルとしてある程度の傾向がある
・制作チームのレベルによって傾向がみられる
・とくに新規ハードのリリース時に顕著な傾向がみられる


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 続いて,現行ハードのバグを集計し,分析したデータをグラフで示した。それによると一番多いバグは全体の21%を占める「テキスト」だ。誤字脱字などがないかをチェックするのに,膨大な時間を要してしまうらしい。そこで木本氏は「最初の企画の段階で,テキストを効率良くゲームに取り込むことを考えると,作業効率はとても良くなります」と述べていた。
 各メーカーもオリジナルのツールを開発するなどして対応策は用意しているものの,それでもテキストミスは多いという。

 続いてプラットフォーム別に分析されたバグの傾向が発表された。最初に紹介されたニンテンドーDSは「仕様確認」「動作異常」という2点にバグの報告割合が多くなっているようだ。これはタッチペンとボタンという2つの操作があるために,動作異常に分類されるバグが多く見つかるという。また,カメラなどニンテンドーDS本体が最初から持つ機能と連動させるときも,動作異常に分類されるバグが発生する確率が上がる。

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 WiiもニンテンドーDSと同じように,「仕様確認」に関するバグが多い。Wiiは「Wiiリモコン」を使った,いわゆる「体感ゲーム」が多く,プログラムミスなのか,自分の操作がおかしいのかが,仕様書を見ても分かりにくいのだという。結局判断がつかないこともあり,その場合は曖昧な形で制作者に報告することになってしまう。

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 PSPは,システム周りのバグが圧倒的に多い。とくに,どのタイミングでもスリープ/復帰をできるようにゲームを設計しなければならないのだが,それが機能しないということが多発するそうだ。ほかには,ゲーム中にUMDを抜いたときにハングアップする症状が多くみられるという。

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 PlayStation 3は「PSボタン」に関連したバグが多い。。ニンテンドーDSやPSPのスリープ機能と同じように,PS3はPSボタンが押されるとゲームが中断され,ホーム画面に戻れる仕様になっている。ゲームを作るときは,ここを意識して気を付けてほしいと木本氏は語っていた。また,マルチプラットホームで展開したタイトルは,PSPやXbox 360と共通するバグもみられるという

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 最後はXbox 360だ。こちらは「提出基準」という項目が高くなっている。これはプラットフォームホルダーへのマスターROM提出回数に応じてペナルティが課されるためが。また,Xbox Liveに関連したバグが多くみられ,とくにサインイン/アウトにまつわるものが多い傾向がある。

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 続いて,マスター提出のための重点チェック項目という話がなされた。ソニー・コンピュータエンタテインメントはTRC,日本マイクロソフトはTCRと呼ばれる決まりがある。これらはプラットフォームホルダーによるガイドラインであり,いわゆる不具合がなくても,TRC/TCRにそっていないとゲームとして発売できないわけだ。

 完成に近づいたゲームに対する作業分布についてもグラフが示され,マスターROMを提出するためにどういう作業をするのかが紹介された。ここで注意してほしいのは「作業管理業務」だ。これは今まで見つかったバグが本当に直っているのかを確認するためのもので,当たり前だがバグが少なければデバッグのスケジュールを短くでき,全体の開発コストを下げられる。

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 なお,ポールトゥウィンでは,TRC,TCRに関する項目をマトリックス化してチェックリストを作成し,木本氏は「自社でやられる場合も,こういったものを用意するといいでしょう」とアドバイスしていた。

 木本氏によると,最初にゲームのバランス調整を行い,続いてシナリオ分岐,難度調整をチェックするといいそうだが,このように想定通りに進むことはあまりないという。

 最後に木本氏は,「チューニングデバッグという考えを持って,どうすれば制作者の皆さんと一緒に良いゲームが作れるかを考えております」と挨拶し,講演を終えた。

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蓄積していくデータを活用するために,バンダイナムコゲームスが行った施策


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 「データが増えていくほど,探しにくく,集計しにくくなる」というのは,ゲーム開発に携わっていなくても,多くの人が実感していることだろう。バンダイナムコゲームスの竹村氏は,機械に人の経験や知識を学習させてデータとして溜め,仕事が楽になるような仕組みを作ることを考えたという。

 具体的になにをしたのかというと,オープンソースと無償の言語資源(辞書)を組み合わせたツールを完成させたのだ。もちろんツールを作ったからといってもすべてが解決するわけもなく,今度はデータの入力作業が発生する。しかしプロジェクトごとにデータの仕様が異なったり,ドキュメントが抜けているといったことは珍しくない。そういったものを共有化するには「部署の枠を超えた取り組みが必要」と竹村氏は話す。

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バンダイナムコゲームス竹村伸太郎氏
 続いて「コンテンツの制作支援」について説明された。例えば「錆びた銅のテクスチャ」を検索したい場合,人間ならファイル名を見て判断ができるが,コンピュータで文字列検索を行うと,ファイルが引っかからないことが多い。この検索を賢くし,人間らしくすることで,社員の負担を減らすことができるそうだ。

 かつてのバンダイナムコゲームスでは,社内で制作した開発ツールやMAYAのスクリプトなどを「サイボウズ デヂエ」で一括管理していたそうだが,ちょっとしたニュアンスの違いで,ほしいものがすぐに見つからないという問題に直面したのだという。これによりツールの稼働率も落ちていたそうで,それを打開するために,「ToolDB」という新サービスを開発することにしたのだという。

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 ToolDBは「検索性能の強化」「推薦機能の搭載」という2つの訴求点がある。そしてとくに検索性能を上げるために「言語横断検索システム」という,ユーザーが言語を意識することなく検索できるシステムが搭載された。これを実現するには辞書が必要で,「Princeton WordNet」という英英辞書と,NICT(情報通信研究機構)が開発した「日本語 WordNet」(日英/英日/英英/国語辞書)を導入したという。

 とはいえ,ツールを作っただけでは機能しない。いかにデータ共有のメリットをスタッフ達に訴えるかが重要になる。そのため,「共有しましょうというだけでは誰もついてこない。場を作ってスタッフ同士がコミュニケーションを取れるような場を提供することが望ましいです」と竹村氏は語る。

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 続いては「品質保証」について。ここではインゲームテキストをサンプルとして紹介された。これらを機械で修正することにより,将来起こりうるリスクを抑えられるという。

 バンダイナムコゲームスではインゲームテキストはExcelで管理・校正を行っているそうだが,人の手でやるとどうしても間違いが出てしまう。これを機械的にやるためのツールはプロジェクト独自で作っていたそうだが,効率が悪く汎用的で使いやすいツールを作ることにしたそうだ。
 それが「TextChecker」で,これはExcelファイルをツールに放り込むだけでチェック結果が分かるというもの。さらにExcelファイルの中身を編集することも可能だという。
 「ツールを使うことで一定の品質を保てると訴えることができるのは強力なメソッドです」と竹村氏は述べる。さらにTextCheckerは,蓄積したインゲームテキストを学習させて翻訳に使ったり,Twitter上から特定の情報を集めたりと,さまざまなことに利用できるという。

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 3つ目は「マーケティング」について。今回は「顧客の声を分析できる」ということが例として示された。
 竹村氏によると,海外のレビューで得られる情報は重要で,そういったものを集めたいときに機械翻訳や文章分類といった機能が役立つという。とくに海外レビューの中から,バグであったり,ゲームがクラッシュするといった不具合の情報を早期に発見し,開発者に知らせるシステムは社内でうけがいいそうだ。

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 機械翻訳については,Microsoftが開発した「Bing Translation APIs」を使用しているほか,「Moses/GIZA++」というツールキットでも検証を進めているという。
 文章分類が一番厄介だそうで,特定のキーワードで抽出してひっかかったものを調べたら,それは誤分類だったこともあるという。精度を上げるための対策として,竹村氏はGoogleのスパム分類を挙げ,ユーザーの報告から機械が学習し,使えば使うほど賢くなるシステムを導入したのだという。

 竹村氏は「データ共有のためには社内認知が必要」「データ共通化のためにはリスク回避というメソッドが有効」「顧客の声にもニーズがある」と3点を挙げ,聴講者に繰り返し訴えた。

 技術面では,「完璧なものを求めるのは難しいが,ある程度の精度なら既存のライブラリで行える」と語る。そして最後に「機械と人間が共に成長できるような仕組みを作ることで,持続的な生産性向上に繋げましょう」と語り,講演を終えた。

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