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「ゲームマーケット2012大阪」が開催。当初の不安を覆し,アナログゲームの盛り上がりが強く感じられるイベントに
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印刷2012/03/15 12:00

イベント

「ゲームマーケット2012大阪」が開催。当初の不安を覆し,アナログゲームの盛り上がりが強く感じられるイベントに

 2012年3月4日,ボードゲームの即売会イベント「ゲームマーケット2012大阪」が大阪マーチャンダイズ・マートで開催された。これは,東京で開催されているゲームマーケット(関連記事)の大阪版だ。初の関西開催となったゲームマーケットの模様を,簡単にレポートしたい。


大盛況だったゲームマーケット大阪


画像集#001のサムネイル/「ゲームマーケット2012大阪」が開催。当初の不安を覆し,アナログゲームの盛り上がりが強く感じられるイベントに
 結論から先に言ってしまうと,ゲームマーケット2012大阪(以下ゲームマーケット大阪)は非常に盛況だった。近年いい感じで普及しつつあるとはいえ,ボードゲームはコンシューマゲームなどに比べればまだ少数派。関東地方一都六県の人口は約4千万人だが,これに比べて,関西地方の人口はその半分ほどであり,必然的にイベント参加者数も大幅減少するのではないか――場合によっては閑散としたイベントになってしまうのではないか――という危惧も持たれていたものの,それを払拭するかのように,開会時間の前から参加者が列をなすイベントになった。考えてみれば関西は,日本にテーブルトークRPGを根づかせたグループSNEのお膝元であり,アナログゲーム熱はもともと高い土地だった。

 会場では新作発表や試遊,先行発売のほか,ゲームサークルによる同人ゲーム直販などが行われていた。また「なかなか実際に遊ぶ機会がない」という悩みに応えるように,ゲームサークルのメンバー募集も目立った。メジャーなボードゲームはPCやスマートフォンなどに移植されているので,オンラインでは遊んだという人が増えているとはいえ,精緻に作られた駒や,大掛かりなギミックを用いたゲームはやはり実際に遊んでこそ,その魅力が分かるもの。

画像集#003のサムネイル/「ゲームマーケット2012大阪」が開催。当初の不安を覆し,アナログゲームの盛り上がりが強く感じられるイベントに
グループSNEの安田 均氏。会の盛況ぶりに,始終忙しそうだった
画像集#004のサムネイル/「ゲームマーケット2012大阪」が開催。当初の不安を覆し,アナログゲームの盛り上がりが強く感じられるイベントに
開場前の「こどもゲームコーナー」。開場後はあっというまに満員に

 また,女性参加者が多かったのも印象的だった。デジタル,アナログを問わず,ゲームのイベントはどうしても男性主体になりがちだが,ボードゲームには女性プレイヤーが多いということを,今さらながら実感させられた。
 同様に,年少者の参加も多かったと思う。小さな子供と一緒に参加している親御さんの姿も見られたし,会場に比較的簡単にプレイできるボードゲーム(およびインストラクター)が多数置かれた,「こどもゲームコーナー」が設置されていたのも重要なポイントだ。
 少子化によるゲーム市場の縮小はデジタルゲームの業界でも懸念され始めているが,前提として「子供が大きくなるまでゲームは遊べない」ことが当然になっている。それに対する,一つのアプローチといえそうだ。

NINJAの文字が光るゲーム。海外での忍者人気は実に安定している
画像集#009のサムネイル/「ゲームマーケット2012大阪」が開催。当初の不安を覆し,アナログゲームの盛り上がりが強く感じられるイベントに


見ているだけでも楽しそう


 ボードゲームの魅力はさまざまだが,「見ているだけでも楽しそう」というのは非常に大きな強みのように思える。
 ゲームはしばしば「遊べば楽しさが分かる」と言われるが,パッと見て面白そうに見えない,何をやっているのか分からない,試しに話を聞いてもよく分からない(よく分からないどころか,何やら難しいことを熱弁された)といった条件が揃ってしまうと,「遊べば」の条件部分が満たされにくくなる。
 これはPCゲームにもいえることであり,例えば筆者はParadox Interactiveの「ハーツ・オブ・アイアン」シリーズなどを非常に好むが,あのゲーム画面を見て「面白そうだ。やってみたい」と思う人は少数ではないだろうか。

どう見ても飛行機系のゲーム。駒のアピールが強い
画像集#002のサムネイル/「ゲームマーケット2012大阪」が開催。当初の不安を覆し,アナログゲームの盛り上がりが強く感じられるイベントに

グループSNEの新作体験会も行われた
画像集#006のサムネイル/「ゲームマーケット2012大阪」が開催。当初の不安を覆し,アナログゲームの盛り上がりが強く感じられるイベントに
 それに対していくつかのボードゲームは,とりあえず見ているだけでも楽しいという特徴を持っている。例えば道具立ての大きなバランスゲーム(一般的なゲームで言えば「ジェンガ」のようなもの)は,とりあえず見ていて緊張感があって楽しいし,ハラハラしながらその様子を見ていれば,ルールも自然に理解できる。
 バランスゲーム以外にも,ボードゲームの世界には「指定された形を粘土で作ってみる」「絵を描く」「歌ってみる」といった作品がいくつもあり,これらは何をするゲームで,どのように楽しいのかが一目瞭然だ(したがって,説明するほうも説明しやすい)。

 実のところ,「遊んでみれば面白さが分かる」という考え方は,市場を縮小させる方向性ではないかと個人的に思っている。必要なのは,遊んだことのない人に興味を持たせるパイプと,そうやって興味を持った人に「そのゲームはいったい何が楽しく,何をするものなのか」を平易な言葉で説明できることだ。
 まず遊んでみよう! 面白いから! と無理やり引き込まれた挙句,いま一つ意味不明な時間を過ごした人は,高確率で二度とそのゲームをプレイしない。それどころか,この情報発信型社会では簡単にアンチにも転じる可能性もある。今の日本は手軽かつ確実に楽しめる娯楽に,こと欠いていないのだ。

画像集#007のサムネイル/「ゲームマーケット2012大阪」が開催。当初の不安を覆し,アナログゲームの盛り上がりが強く感じられるイベントに
見るからに棒を引きぬいて行きそうなゲーム
画像集#008のサムネイル/「ゲームマーケット2012大阪」が開催。当初の不安を覆し,アナログゲームの盛り上がりが強く感じられるイベントに
タブレットをゲームの補助として使ったり,PRに使ったりするケースも多かった

 この点ボードゲームは,上記のように,楽しく観戦しているだけでルールが理解でき,すぐにその世界に飛び込める作品から,世界大会が開催される高度な遊び込みが可能な作品まで,多種多様に世界が広がっている。これからも「何が楽しくて,何をするのか簡潔明瞭なゲーム」を軽んじることなく,作品世界が広がっていくことを祈りたい。


広がるボードゲームの世界


2009年2月10日の記事で紹介した池田康隆氏が,ゲームを説明
画像集#005のサムネイル/「ゲームマーケット2012大阪」が開催。当初の不安を覆し,アナログゲームの盛り上がりが強く感じられるイベントに
 ゲームマーケット大阪の総参加者数は1500人以上で,次回はさらに拡大して開催されることが決定された。同人ゲームサークルによるオリジナルゲームの発表/即売が盛況なのも,非常に好ましい状況だったといえるだろう。アナログゲームは「作って楽しむ」ことへのハードルも比較的低いのだ。

 ここ数年,日本でもデジタルゲームの開発者がボードゲームに注目しており,定期的に業界を横断するようなボードゲーム大会が開催されるようになっている。また人気の高いモバイル向けのソーシャルゲームの作品を見ると,アナログゲームをよく研究していると思わせられることも少なくない。

 一方,実際に顔を突き合わせて楽しむゲームであるだけに,場所や時間といった制約も小さくない。大都市圏ではオープンなボードゲーム会が開かれているが,いきなりそういう催しに行くことに尻込みする向きもいるだろう。
 それでもボードゲームに触れてみたいという人は,まずは顔見知りを巻き込んでみよう。「モンスターハンター」シリーズで,友人と遊んだときが一番楽しかったという経験をした人は少なくないはずだ。
 またこれと同じ理屈で,SNSなどである程度気心が知れた相手を誘うなり,オンラインでプレイできる環境を探して,フレンドとゲームを遊んでみるのも良い選択だ。その際には,業界で高評価を集めているゲームもいいが,そのゲームの紹介文を読んで「何を・どう遊び・どのように楽しくて・どれくらい時間がかかるのか」がスッキリ理解できるものをお勧めしたい。そのほうが,誘われるほうも判断しやすいからだ。
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