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【島国大和】「ゲームをするのが面倒くさい」について考えてみる
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印刷2012/09/26 00:00

連載

【島国大和】「ゲームをするのが面倒くさい」について考えてみる

島国大和 / 不景気の波にもがく,正体はそっとしておいて欲しいゲーム開発者

画像集#002のサムネイル/【島国大和】「ゲームをするのが面倒くさい」について考えてみる

島国大和のド畜生 出張所

ブログ:http://dochikushow.blog3.fc2.com/


 お久しぶりの島国大和です。

 最近,買ったゲームを積むようになりました。パッケージを開けなかったり,ダウンロードしても解凍しなくなりました。インストールしてません。人間,歳をとると何かと忙しくって,ゲームに時間をかけてられないんですよ。それでもやりたいから買っちゃう。でもやれない。

 そんなおっさんの話はさておき,今回は「ゲームをするのが面倒くさい」ことに焦点を当てた話をしてみたいと思います。


「ゲームをするのが面倒くさい」


 そもそもゲームとは「暇つぶし」なので。人間,暇つぶしすら面倒くさくなったら,もう何もできないというか,じゃあもうずっと暇さえあれば寝てたらいいんじゃないかとか思いますが。でも実際,面倒くさいですね。困ったものです。

 しかし,なかには面倒くさいと感じないゲームもある。この差はなんでしょう。


「面倒くさい」とはなんだ


・拘束時間が長い
・やる事が多い,ゴールが遠い
・創意工夫の余地がなく,やる事が決まりきっている


 この辺りがゲームにおける「面倒くさい」の三巨頭です。

・待ち時間が長い

 を加えて四天王にしてもいいかと思ったんですが,これは「拘束時間が長い」に含めておきましょう。

 それぞれの面倒くさい要因を回避すれば,面倒くさくないゲームになるはずですが,なぜか回避しきれません。だってしょうがないじゃない,事情があるんだもの。では,各要因の詳細と事情を見ていきましょう。


「拘束時間が長い」


 ぶっちゃけゲーム機を起動するのにかかる時間が長いだけで,ゲームを遊ぶ気持ちが萎えます。ボタンを押してから反応が返ってくるのが遅いだけでウンザリです。
 携帯ソーシャルゲームでも“5”キーをポチクリ,画面タップしたあとHTML読みに行って1秒とか,結構耐えるのが辛いですね。自分はあの間を耐えることができません。面白いゲームだと言われているものでも,「かったるい」が先に立ってしまいます。最近のゲームはすげぇ頑張って,この「かったるい」を誤魔化そうとしているので,あと一息だと思いますが。

 なぜ拘束時間や待ち時間が長くなるかといえば,それは主に「ハードウェアの制約」と「ビジネスモデルの制約」が理由です。

 まず「ハードウェアの制約」
 起動が遅い,読み込みが遅い,反応が遅い,通信が遅い,こういうものはもう対処法がなくて,誰がどんなに苦労しても一定以上は解消できません。それを職人芸でいろいろ誤魔化していくわけです。例えば仕様の根幹から,反応が遅くてもいいようにしておくとか。
 でも限界がある。物理的に電波が運べるデータ量には限界がありますし,メモリへのアクセス速度だってすぐに頭打ちです。

 次に「ビジネスモデルの制約」
 ゲームはボリュームがないと商売にならないんですよ。かつての家庭用ゲームはアーケードの100円よりもオトクであるべく,長時間遊べることがセールスポイントでした。そして中古にすぐ売られないようにと,ボリュームはどんどん増していきました。重厚長大ゲーが増えたのは,その流れです。

 まして今のネットゲームや携帯ソーシャルゲームは,少しでも長く遊んでもらってこその利益モデルなので,短いゲームとかあり得ません。ネトゲやソシャゲは賑わってナンボですから,プレイヤーがそこに滞留しないといけません。コンシューマのRPGは30時間前後,多くても100時間ぐらいが目安でしたが,30時間でネトゲやソシャゲがクリアされたら3日目からは閑古鳥が鳴きます。対戦相手がいません。それじゃビジネスとして成立しません。

 そんな事情から,拘束時間が長いゲームばかりになってしまいます。

 ついでにいうと,拘束時間が短いゲームはすでに無料ゲーが大量に出回ってるので,そこで商売するのは大変です。世の中の才能はお金のあるところに集まるので,儲かるところからしか凄いものって出てきにくいのですよ。


「やる事が多い,ゴールが遠い」


 ネトゲを初めてプレイしたとき,そのゴールの遠さには辟易しました。
 倒したいボスに勝てる強さを獲得するために,何十時間もかかりそうな距離感。もちろんそのボスが最後ではない。
 「何千匹も敵を倒して経験値を稼ぎ,ドロップアイテムを集め,稀に出るレアアイテムを鍛えて,装備を合成強化して,やっとボスが倒せますが,このボスがレアドロップするアイテムがないと先々苦労しますよ」。やだー。そんな根性ないッス。

 そんなわけで「やる事が多い,ゴールが遠い」は「面倒くさい」に直結します。

 先に「拘束時間が長い」に触れましたが,「やる事が多い,ゴールが遠い」は「拘束時間が長いことをなんとか誤魔化す」ために入っている場合がほとんどです。ネットゲーム/ソーシャルゲームはテーマパークみたいなもので,「その場の維持」に価値があり,面白さや楽しさは「場にいること,場で他のプレイヤーと関わること」で担保され,実際のゲームパートは「プレイヤー同士の交流のための話題の提供」だからです。

 ただ「30時間でクリアできるゲームを,経験値を100倍渋くして3000時間遊べるようにしました」ってゲームは遊びたくないですね。そこで,時間に見合ったボリュームやゲーム的なあれこれを突っ込むわけです。これはもう血も滲むような努力です。物量を用意するのがどれほど大変か。

 でもそんな努力の結晶も,プレイヤーからすれば「かったりー」の一言だったりします。


「創意工夫の効果が出ない,やる事が決まりきっている」


 ここ重要です。いままでの「拘束時間が長い」「面倒くさい,ゴールが遠い」を一気に吹っ飛ばす答えが隠れています。

 この「創意工夫の効果が出ない,やる事が決まりきっている」が,なぜ面倒くさいか。一言で言えば「誰がやっても結果が一緒の作業をわざわざ俺にやらせんな」ですね。プレイヤーの思考としては,とても正しいと思います。

 ゲームというのは「ランダムが過ぎれば博打」「計算ずくが過ぎれば作業」に傾きます。乱数や隠されたパラメータをまるで含まないゲームは「与えられた情報」から「選ぶべき選択肢」が確定してしまい,わざわざ人間がやる意味を見いだせなくなります。敵が地上なら波動拳,飛んできたら昇龍拳,ほかのことはできない。ってゲームは,もう作業ですよね。

「ストリートファイターIV」
(c)CAPCOM U.S.A., Inc. ALL RIGHTS RESERVED.
画像集#005のサムネイル/【島国大和】「ゲームをするのが面倒くさい」について考えてみる
 小技で牽制してから大技とか,波動拳の振りして違う技とか,いろいろな要素を絡めることで,格闘ゲームって作業ではなくゲームとして深くなっていきます。
 対人戦が楽しいのは「人間の思考は,CPUの吐き出す乱数や隠しパラメータよりも対処のしがいがあるから」です。


 逆にいえば「考察もカンも先読みも不要」な操作は「作業」に感じられる。だから面倒くさい。「この判断は俺にしかできない! むひー!」こう思わせれば,作業ゲーも楽しくなるわけです。

 テトリスなんか,アレ何が楽しいのか分析してみると面白いですよ。
 やってることは「図形の照合と設置」なんですが,「これまでの状況」と「この先の予想」が必要で,「どんなブロックが来ても対処できるように地形を保つ」といった中長期的な視野と,短期的なブロック回転テクニックといった,細かい判断の塊ですから。
 そのうえで,積み上がったブロックが消えると,それまで受けていたストレスから解放(ブロックを消すとブロックが回しやすくなる)されるなど,非常にうまくゲームの出題と解答,褒賞,ストレスと解放が盛り込まれているわけですね。

「俺の代わりに誰かテトリスやっといてくれよ」

 とは,ならないわけです。「ぷよぷよ」の連鎖だって「勝手に組んでくれよ,かったりー」とは思われない。プレイヤーに工夫の余地があり,それに対する褒賞,リスクとリターンのバランスが良いからです。

 これが,RPGの経験値稼ぎやソシャゲの育成になると,「もう勝手にやってくれよ」となる。創意工夫の余地がないからです。10連ガチャで勝手に10回くじ引いてくれたほうが楽です。

 ちなみに経験値稼ぎがただの苦痛な作業になり下がったのは最近の話で,昔は「コンピュータゲーム自体が珍しかったので,作業だって楽しかった」「経験値稼ぎにも効率重視を考えると工夫の余地があった」など,いろいろ抜け道がありました。

 最近のゲームシーンでは,ネトゲじゃメタルスライム的な高効率モンスターを出すと廃プレイヤーに独占されちゃうし,バランス壊しかねない。ソシャゲも工夫の余地を増やすと,ヌルいプレイヤーがついてこられない。こりゃ大変です。
 「創意工夫の効果が出ない,やる事が決まりきっている」。これをどう回避するかが腕の見せどころですね。

 ちなみに,ゲーム性をガッチリ作り込むストロングスタイルの作品だと,お客さんもストロングスタイルの人しか楽しめないんですよ。今の世の中,ゲームより楽しいことはたくさんあります。ストロングスタイルに付き合ってくれる人ばかりではありません。

 昔のゲームでカッタルイのが少ないのは,単純に当時はメモリが高価だったためゲームのボリュームが少なくカッタルイにも限界があった,というのがとても大きいです。それにぶっちゃけると,今かつてのゲームを遊んでも,全然面白くないことが少なくないわけで。ある意味,贅沢な悩みを持てるようになったものです。


さーて,残された回避策は?


 以上,「面倒くさい」の三巨頭を掘り下げてみました。さぁ皆さん,いい回避策は見つかりましたでしょうか。

画像集#001のサムネイル/【島国大和】「ゲームをするのが面倒くさい」について考えてみる
 最近「うまいな」と思ったのは,「パズル&ドラゴンズ」や「ケリ姫クエスト」あたりです。実は作業ゲーなんですが,細かい工夫でうまくそのあたりをボカしています。
 例えば,1回のコマンド入力が「パズル」であったり「狙い撃ち」だったりすることで,「選択のゲーム化」を成し遂げていて,ただの作業をゲームっぽい手触りまで昇華しています。サーバ接続との頻度も極端に少ないので,クリックの度にかったるい思いをすることもあまりありません。さすがに手慣れていますね。プロフェッショナル。

 これは単純作業の中の「最小ループをゲーム化」することで,「作業感を低減」させた例です。中長期的なゲームループをゲーム化すると,今の人はそれすら面倒くさく感じちゃうんですね。
 20ターン先のことを考えて兵士訓練度を上げておかねばならないってゲームは,ソーシャルだと面倒くさがられる。中長期的なことは考えたくないし,もともと短時間に断片的に遊ぶのがメジャーなスタイルですので,中長期的な要素なんかマイナスです。

 クリックゲーじゃつまんない。でもあまり高度な入力や戦略を要求すると,息抜きのゲームとしてはやり過ぎだ。「パズル&ドラゴンズ」や「ケリ姫クエスト」は,いいところに着地したうまいプロジェクトだと思います。

 MMOでレアドロップ集めが許されるのは,プレイヤーがそれを受け入れてくれるプレイヤーだったからですが,今後はどんどん,その辺も変わってくるでしょう。世の中不景気で,かつてゲームをプレイしていた層も仕事や日々の生活に明け暮れて可処分時間が激減しているなか,「面倒くさい」はゲームを“遊ばなくなる”重大なファクターだと思います。

 ゲームに首まで浸かっていた筆者みたいなのですら,遊べないんですから。

 いやもう正直,本当に「遊ばなくていいゲームがほしい」というニーズに対して,どういう回答を見つけるのかは,ゲーム業界にとっては急務です。正しくは「プレイヤーがやりたいことだけ短時間やれば長期的に遊べる面白いゲーム」なんですけどね。

 この答えを見つけたら,ちょっとのあいだ食えると思います。実際,ブラウザゲームなんかはそういう方向感なんだけど,いろいろ足りないものも多いですからね。

 それでは今回のところはこの辺でー。

■■島国大和■■
有名ゲーム系Blog「島国大和のド畜生」の管理人で,不景気の波にもがく,正体はそっとしておいてほしいゲーム開発者。最近,勉強がてらUnityを使って趣味でゲームを作っているという島国氏。「子供の妨害もあり,時間の確保が難しくほんと全然進まない」と嘆く一方,「期待値ばかりが上がってしまって,そろそろ公開しないと恥ずかしい感じ」になっているという。……確かに,島国氏がどんなゲームを作るのかはとても気になるところ。とりあえず,「バーンでドギャーンな内容でゲーマーが満足できて,かつ誰でも遊べるライト志向なゲーム」を是非よろしくお願いします。
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