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「パンヤ」「トリックスター」の生みの親,Ntreev Soft社長のJun Young Kim氏インタビュー。パブリッシャとなるNtreev
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印刷2006/12/11 17:07

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「パンヤ」「トリックスター」の生みの親,Ntreev Soft社長のJun Young Kim氏インタビュー。パブリッシャとなるNtreev

 Ntreev Softという社名だけではピンと来ない人でも,「スカッとゴルフ パンヤ」および「トリックスター+」の開発元と聞けば,急に親近感が湧いてくるかもしれない。日本でも多くのファンを持つこれら作品を世に送り出したNtreev Softの,CEO/President Jun Young Kim氏にインタビューする機会を得た。
 Ntreev Softは近々に,開発専業から脱し,他社の作品をも運営するパブリッシャを兼ねる予定で,そこでは従来とだいぶ毛色の違う作品を提供するのだという。早速,Jun Young Kim氏から聞けた話をお届けしよう。



■開発専業からパブリッシング事業へ進出

4Gamer:
 本日はお忙しいところお時間をいただき,ありがとうございます。まずはNtreev Softという会社について教えてください。どういった経緯で設立され,どんな雰囲気の会社なのか。後者についてはご自身として思うところが中心になるかと思いますが。

Jun Young Kim氏:
 そもそもNtreev Softという会社は,Sonnoriの一部門としてパッケージゲームを開発していたのですが,「パンヤ」と「トリックスター」の成功を機会として,オンラインゲームにシフトしました。その後CJ Internetの下に移り,2003年12月にNtreev Softという会社を設立しました。

4Gamer:
 オンラインゲーム開発に先立つ前史があるのですね。

Jun Young Kim氏:
 そうです。そして会社の雰囲気についてですが,職員は総勢184人,そのなかで私が最年長ですから,とにかく若い会社です。会社の精神といえば,「オープンマインド」とでも表現すべきでしょうか。
 そうした我が社として近々に考えているのは,まず,個々のゲームタイトルの開発と運営に留まらない,新しい事業計画です。そして社員の連帯感とやる気を引き出すための福利厚生についても,新しい手法を試みています。後者についてはどちらかというと,個人の創意を生かすことで会社が新たな力を得る,Win-Winのための手法と言ったほうが近いと思います。

4Gamer:
 ではそのオープンマインドなNtreev Softという会社が,作品を作るうえで大切にしている考え方を教えてください。

Jun Young Kim氏:
 一言で表すならば「面白さ」ですね。いまこの時期にあって一番面白いことは何なのか。当社としてはそれを絶えず考え続けています。とはいえ,最も新しい発想が常に面白いとは限りません。以前にあったアイデアでも,それを現在の技術でリファインすれば,それも新しい面白さになります。ファッション業界のみならず,例えばゲーム業界でも流行の循環はあり得ると考えています。

4Gamer:
 なるほど,過去に存在したプレイフィールを,リファインして送り出すことも手というわけですか……。ところで,ご自身はゲームをよくプレイしますか?

Jun Young Kim氏:
 なかなか時間が取れないのが悩みですが,幅広い層に評価されているゲームの,人気の秘密を理解するためにプレイしたりは,よくします。また,私には8歳になる子がいて,最近ニンテンドーDSを買い与えたところ,なかなかゲームがうまくクリアできない。その手助けに乗り出してみたのですが,私は私でクリアできず,子供が寝たあとに5時間もがんばってみたりしたこともありますよ(笑)。
 そんなわけで,以前あったゲームを,ニンテンドーDSであらためてプレイしてみたときの印象なんかも,先ほどの意見には入っているわけです。オンラインゲームは,開発開始から正式サービスまで,おおよそ2年かかります。サービス時点で何がウケるのか,それを睨んでいかなければならないですから。

4Gamer:
 では,そんな業界動向を見つつ,Ntreev Softが考えている新しい事業計画とはなんでしょうか。

Jun Young Kim氏:
 Ntreev Softはご存じのようにゲームデベロッパですが,経営的視点で捉えたとき,デベロッパ専業というのは思ったより難しい業種です。そこで,開発だけでなくサービスおよびマーケティングを含め,ゲーム会社として幅広く考えなければならないことがあります。いままでは開発という枠組みで考えてきましたが,今後はそれ以外も視野に入れつつ,会社を運営しようと考えています。

4Gamer:
 いまのお話でたいへん気になる言葉があります。それは「サービスおよびマーケティング」です。これは今後Ntreev Soft自身が,ゲームの運営やマーケティングを手がけていくと考えてよいのでしょうか?

Jun Young Kim氏:
 そうです。従来はデベロッパに留まっていたわけですが,今後はサービスおよびマーケティングまでを行える会社にします。もう少し詳しく言いますと,Ntreev Softが開発した2作品以外に,パブリッシング予定のタイトルが二つほどありまして,早ければ来年(2007年)中盤くらいにサービスを開始します。

4Gamer:
 現行の開発作品である「スカッとゴルフ パンヤ」と「トリックスター+」については,別のパブリッシャさんが運営しているわけですが,今後サービスおよびマーケティングの対象としていくのは,これらより後のタイトルないし,他社が開発したパブリッシングタイトルと考えてよいわけですね?

Jun Young Kim氏:
 そのとおりです。既存のタイトルに関しては,既存のパブリッシャさんが今後もサービスを提供し,Ntreev Softは新しい作品の開発,サービスとマーケティングができるよう,体制を整えていきます。

4Gamer:
 では,Ntreev Softがサービスを提供する作品は,さし当たり先述のパブリッシングタイトル2本ということですね?

Jun Young Kim氏:
 そうです。



■パブリッシング事業の皮切りは恋愛シムとレースゲーム

4Gamer:
 なるほど……。ええと,お聞きしたいことが一気に増えましたが順番に(笑)。パブリッシングタイトル2本も,Ntreev Soft作品のカラーに合わせたものになるのでしょうか? 端的に言ってどんなゲームなのかをお聞きしたいわけですが。

Jun Young Kim氏:
 逆にお聞きしたいのですが,Ntreev Soft作品のイメージというと,どんな感じを思い浮かべていますか?

4Gamer:
 そうですね……年齢/性別を比較的問わず,ゲーム初心者にも入りやすい作品ということでしょうか。それと,特筆すべきはキャラクター性だと思っています。

「トリックスター+」に出てくる二次職キャラクターのイメージイラスト(上段)と,「スカッとゴルフ パンヤ」における,キャラの造型が分かる画面(下段)


Jun Young Kim氏:
 ふむふむ,なるほど。それらのイメージを受けてというよりも,どちらかというと守備範囲を広げる方向と考えていただいたほうがよいかもしれません。パブリッシング予定の作品の1本めは恋愛シミュレーション,2本めはレーシングゲームです。

4Gamer:
 おお。ちょっと意外なラインナップですね。レーシングゲームのほうにも,可愛らしいキャラクターが出てくる感じでしょうか?

Jun Young Kim氏:
 いえいえ。「パンヤ」や「トリックスター」に出てくるような可愛いキャラクターではなく,スタイリッシュな新しいキャラクターが登場する予定です。開発段階の問題もありまして,これ以上詳しいお話は難しいのですけれども。

4Gamer:
 うむむむ。では,恋愛シミュレーションについてはいかがでしょうか? 

Jun Young Kim氏:
 韓国国内では2007年2月にクローズドβテストを実施することを目指して,現状動いています。ターゲットプレイヤーは10代の女性です。

4Gamer:
 10代の女の子をターゲットとした,オンライン提供の恋愛シミュレーションですか……。なかなか想像が難しいのですが,ゲーム全体の雰囲気について,もう少し詳しく教えていただけますか?

Jun Young Kim氏:
 短く分かれたストーリーを次々にクリアしていく感じです。

4Gamer:
 主人公となるキャラクターは,男女両方いるのでしょうか? それとも女性のみでしょうか。

Jun Young Kim氏:
 女性のみです。ストーリーとしては女性のみなんですが,ゲーム以外にコミュニティ要素が想定されていまして,そこには男女両方が参加できます。

4Gamer:
 基本的かつおおざっぱな質問で恐縮なのですが,韓国におけるゲームプレイヤーの男女比は,どんな感じなのでしょうか? 日本では,女性の割合がすごく低いものですから,女性向けゲームと言われても,成り立つ条件がすごく限定されていると考えられていますし,それは新たな市場を開拓する覚悟で臨む必要のあるビジネスです。そのあたり,韓国では違うのでしょうか。

Jun Young Kim氏:
 韓国も日本と同じく,かつては女性ゲーマーの割合が低かったのですが,カジュアルゲームがきっかけになって増えています。ある統計では,韓国における女性ゲーマーの割合は20〜25%とされています。

4Gamer:
 それはきっと,日本における割合の数倍になりますよ。だとすれば,女性向けゲームが出てきても悪くないタイミングなのかもしれませんね。

Jun Young Kim氏:
 とはいえNtreev Softとしても,女性向けゲームは新しい挑戦であると捉えています。女性を惹きつけるゲームを開発することで,男性もついてくるんじゃないかと考えているんですがね(笑)。



■日本支社設立の可能性も

4Gamer:
 マーケティングの常道というわけですね(笑)。いろいろ突っ込んでお聞きしたいことがあるのですが,それは作品のイメージ素材がある程度拝見できるようになってからのほうがよさそうな気がします。
 ところで先ほど,社内制度でも面白い取り組みをしているというお話がありました。今度はそれについて教えてください。

Jun Young Kim氏:
 ゲーム開発者を募集したり,その陣容を維持したりするには,会社の環境作りが重要だと考えています。Ntreev Softは残念なことに,NCsoftやNexonのようにお金がたくさんある会社ではないので(笑),会社の実情に合わせた福利厚生を考えてきました。
 例を挙げるなら,「Ntreevポイント」がそうです。これは,ゲーム開発をサポートしたり,何らかの貢献をした人に会社からポイントが与えられ,そのポイントは“自分への投資”として自由に使えるというものです。自分が遊びたいゲームパッケージを買ったり,読みたい本を買ったり。その領収書を会社に提出すれば,自分のNtreevポイントを使う形で,会社がお金を出してくれるわけです。
 社員にとってどういう形が望ましいのか,常に制度の改良を続けていますし,実は日本のゲーム会社からも感心されたことがあります。

4Gamer:
 まるでゲームのように運用されるゲーム会社というわけですね。社内仮想通貨とでも言うべきか。

Jun Young Kim氏:
 ほかの会社で実施している制度についても,いろいろ勉強したのですが,なんだかんだで非常に手間がかかるのです。そこで,Ntreev Softならではの形を考えてみました。

4Gamer:
 4Gamerを運営するAetasの社長にも言ってみるべきですかね? 記事でなく僕らのために(笑)。

Jun Young Kim氏:
 お望みなら,資料を提供しますよ(笑)。

4Gamer:
 「日本のゲーム会社」というところで気になったのですが,今後Ntreev Softは開発タイトルを自らサービスしていくわけですよね。そこで,開発タイトルが海外に出て行く場合,どんな形になるのでしょうか? 現地パブリッシャと組む感じなのか,それとも海外ブランチ(支社)を積極的に展開していくのか……。Wii版「パンヤ」は前者の例ということになると思いますが。

Jun Young Kim氏:
 そうですね,Ntreev Soft開発作品の海外展開について,北米と日本以外では,現状の仕組み(注:現地パブリッシャとの契約/作品提供)そのままで行きます。
 北米と日本については,いままでの仕組みよりももっと積極的な体制で行きたいと考えています。例えばJV(ジョイントベンチャー)といった手段も含めて,いろいろ考えていますね。Ntreev Japanといった支社を作ることも,アイデアのうちにはあります。

4Gamer:
 おお。日本支社ができる可能性もあるわけですか。

Jun Young Kim氏:
 ええ,可能性はあります。

4Gamer:
 仮に日本支社が立ち上がるとして,そのタイミングはやはり,Ntreev Softの新しい開発タイトルが日本に来るとき,ということになりますか? それとも,現行のビジネスのうえでも,大きなメリットが見込めるものでしょうか?

Jun Young Kim氏:
 そうですね……日本支社の形に関しては,まだ決まっておりませんし,タイミングについてもいま考えているところです。ただ,一つ言えるのは,段階的に進もうと思っていることです。長期的には日本支社に開発スタジオを置いて,ゲーム開発自体を活性化することも考えられるのですが,いきなりそれを狙っているわけではありません。判断はケース・バイ・ケースでもありますしね。
 ちなみにNtreev USAは,すでに設立を終えています。新たな気持ちで出発したいという考えもありまして,まだプレス向けに公式な発表はしていないのですが。
 Ntreev USAの手によって,11月12日から米国市場で「トリックスター+」のオープンβテストが開始されています。

4Gamer:
 そのお話を考え合わせると,日本市場へのブランチ展開の可能性も,かなり現実味を帯びたものに聞こえてきますね。トリックスターは台湾や中国(中華人民共和国)でもサービスされていますが,これらは現地パブリッシャが提供しているはずですよね。それと比べたとき,北米および日本市場は別のものという認識なのでしょうか。あるいは,ほかのアジア諸国にも近くブランチ展開を考えているのでしょうか。

Jun Young Kim氏:
 当面北米と日本について考えていることには,二つほど理由があります。一つめは,Ntreev Softがゲームを作り,さらにパブリッシングまでを行うとき,一番自信を持てる国/地域が北米と日本だと考えているからです。
 そして二つめの理由は,その国のゲーム市場がこれから発展していく可能性が高い,つまりポテンシャルのある地域だと判断していることですね。そうした地域では,より積極的に行くべきだということです。



■韓国/中国と,北米/日本/タイは性格の異なる市場

4Gamer:
 日本については,現時点での成果はともかく,オンラインゲームの潜在的市場として大きいと,ここ数年言われ続けています。北米については現在いかがでしょうか。このタイミングで進出するメーカーさんも多いように聞いてはいますが。

Jun Young Kim氏:
 ええ,有望だと捉えています。オンラインゲーム市場が成長していますし,魅力的ですね。ゲームの開発とサービスに当たって,Ntreev Softでは各国におけるプレイヤーを分析し,パターンを見出しています。それによると,中国および東南アジア(タイを除く)が第1グループ,日本,北米,タイが第2グループとなるのです。
 Ntreev Softがゲームを企画するとき,第2グループの好みに合う形になることが多いのです。今後はそれを明確に意識して,開発していこうと考えています。

4Gamer:
 なるほど,そこまで明確なものですか。

Jun Young Kim氏:
 例えばタイでは,パンヤが今年5月にスタートして非常に人気のあるタイトルとなっています。来年初頭にはトリックスターのサービスも予定していますが,これが予想どおり好評をもって迎えられれば,先ほどの第2グループとしての分類の妥当性が,さらにはっきりすると思います。

4Gamer:
 トリックスターについては,イメージイラストやゲーム内容が,日本と台湾で共通しており,韓国版とは違うといったことが広く知られています。先ほどの第1グループ,第2グループでは,そうした味付けの部分も変えていこうとお考えですか?

Jun Young Kim氏:
 そうですね。トリックスターのサービスに関して,とくに日本では可愛いらしいコスチュームやキャラクターが追加されており,それは現地パブリッシャの要請に基づいたものです。
 それで,先ほど例に挙げた韓国・中国・東南アジアを中心にした第1のグループ,北米・日本・タイの第2グループというのは,もう少し大きな単位で考えたときの話で,ローカライズは個々の国ごとのパブリッシャの声に従って管理しています。

4Gamer:
 では,先ほどの分類で同じグループに入っている韓国と中国でも,ローカライズサービスの内容は大きく異なる場合があり得るわけですね。そして,先ほどの分類はむしろ,どのタイトルが当たるかという違いというわけですか。

Jun Young Kim氏:
 そうです。そしてタイトルの性格と関連づけて考えるならば,注目すべきはパンヤとトリックスターが,競争に重点を置いたタイトルでない点でしょう。なるべく競争を避け,プレイヤー間の関係やコミュニケーションを重視したゲームなのです。

4Gamer:
 確かにそれはすごく説得力のある違いですね。

Jun Young Kim氏:
 そして経験に基づいて言えば,韓国,中国,台湾という三つの国/地域では,競争要素が好まれるのです。MMORPGをプレイしても,アイテムを獲得したり,キャラクターの能力値をアップさせたりといった部分が求められるのですが,日本,北米,タイでは,競争よりもコミュニケーション要素がうまく出来ているゲームが,高く評価される傾向があると思います。

4Gamer:
 なるほど,競争 vs. コミュニケーションという構図が,Ntreev Softが北米や日本を重視する根本的な理由というわけですね。

Jun Young Kim氏:
 ええ,そのとおりです。

4Gamer:
 パンヤも形としては対戦になっていますが,確かに競争にプレイの力点があるわけではありません。とすると,例えば今後パブリッシングを予定しているレースゲームも,パンヤと似たテイストなのでしょうか?

Jun Young Kim氏:
 Ntreev Softがこれからパブリッシングするゲームに関しては,社内でもいろいろ話し合ったのですが,Ntreev Softの従来のカラーを維持するよりは,より広く面白さを追求しようということになりました。面白さと完成度をより高めつつ,幅広いジャンルでサービスをしていこうと考えています。

4Gamer:
 なるほど,では逆にそのお考えは,今後のNtreev Soft開発作品にも適用されるのでしょうか? つまりは,自社開発作品の個性をどう捉えるかという話になるのですが。

Jun Young Kim氏:
 いいえ。例えば2年後くらいを見据えてNtreev Softが開発する作品は,パンヤやトリックスターと似たテイストのものとなるでしょう。自社開発作品について言えば,初心者にも親しみやすい,明るいといった特徴を保っていくつもりです。

4Gamer:
 だとすれば,自社開発タイトルのテイストやターゲットはそのままに,外部開発タイトルを中心として幅を広げていく,それによって,競争要素などの需要にも応えていこうというお考えなわけですね。

Jun Young Kim氏:
 そうです。これからサービスする作品については,競争やPvPの要素も追加した形を考えています。

4Gamer:
 Ntreev Softが2年後を見据えて開発しているタイトルは,きっと何本もあるのだと推測しているのですが,ゲームジャンルとしてどのあたりを狙っていくか,ちょっとだけ教えていただけないでしょうか?

Jun Young Kim氏:
 ううーん(笑)。そうですね,来年(2007年)の夏以降には,一つないし二つの新規タイトルが発表されて,サービスが行えるのではないかと,目途をつけています。ただ,さすがにジャンルについては,まだ社内でも秘密ですので,申し訳ありませんが言えません。

4Gamer:
 それはたいへん残念です。お聞きできる時期になりましたら,ぜひとも真っ先に教えてください。ところで,今年のG★ではFPSないし三人称視点の3Dシューティングの出展が,急に増えた印象があります。韓国オンラインゲーム界がMMORPG以外の鉱脈を探し当てようと試行錯誤しているように映ったのですが,こうした状況に対して,Ntreev Softとして思うところを聞かせてください。

Jun Young Kim氏:
 MMORPG,FPS。その次のトレンドは何かということを,考えねばならないですね。韓国におけるFPSは「CounterStrike」から始まって,Netmarbleの「Karma Online」,Neowizの「Special Force」,またNetmarbleの「Sudden Attack Online」と進んできていますが,そもそも韓国でもFPSが,オンラインゲーマーの嗜好に合うかどうか,最初は疑問があったのです。

4Gamer:
 FPSでもですか。

Jun Young Kim氏:
 ところが実際にサービスしてみると,事前の予測よりずっと多くのプレイヤーが集まりました。最初のほうで話題にしたように,現在はゲームに新しい面白さを求める人が多いですから,それにうまく合致したことで,移行プレイヤーを獲得できたのだと思います。
 ではその後に何がはやるか。明確なゲームジャンルとして考えているわけではないのですが,個人的には三つほど可能性を想定しています。そのうちの一つめは,独特の題材のゲームです。二つめに考えられるのは,かつて存在したゲームコンセプトのリファイン版で,三つめの可能性は,ここまでに出てきたゲームのよいところを集めたフュージョン作品ではなかろうかと。

4Gamer:
 最初のほうのお話に出てきた,循環というキーワードと呼応した考え方ですね。そのお考えと,Ntreev Softの実際の開発作品がどう関わってくるか,いろいろ想像してしまいます。では最後に,今後もっともっと身近な関係になるかもしれない日本のゲーマーに,ぜひメッセージをお願いします。

Jun Young Kim氏:
 まず,パンヤとトリックスターのご愛顧に,感謝の言葉を申し上げます。デベロッパとして,本当に嬉しく思っています。日本のプレイヤーさんの期待を裏切らないように,Ntreev Softはこれからもがんばっていきます。これから出てくる新しい作品についても,日本のプレイヤーさん達の傾向をよく研究して,開発とサービスを進めていきたいと思いますので,これからもぜひよろしくお願いします。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。


日韓における,「トリックスター」のイメージイラストの違い。左が韓国のもので,キャラクターは水彩画的に描かれており,彫りの深い感じだ。それに対して,ジークレストが日本市場向けに用意したのは,よりアニメ的表現の進んだ絵となっている


 「パンヤ」および「トリックスター」と,開発作品がどちらも日本で好評を博すNtreev Soft。そうした,自分達の強みを十分に理解したうえで,彼らは他社開発作品のパブリッシングに乗り出し,それを通じて必ずしも既存のイメージにとらわれないビジネスを志向するのだという。
 当面のパブリッシング予定タイトルが,女性向け恋愛シミュレーションとクールなイメージのレースゲームというのも,なかなかに興味深い取り合わせだ。もちろん,韓国オンラインゲーム市場における女性のプレゼンスなどといった部分は,それだけでも十分に興味深いのだが,ここではむしろ,自社開発タイトルと他社開発のパブリッシングタイトルに,まったく反対の役割を与えている点に注目したい。
 自社の強みをそのまま生かし,ビジネスのコアとなる部分をがっちり押さえたまま,周辺部に向けて手を広げていく堅実な方法論が,そこからは読み取れる。そして,周辺部で「当たり」を抽くための方法だからこそ,かたや恋愛シム,かたやレースゲームという形で,バラエティを持たせた展開になるわけだ。
 北米市場においても,カジュアル寄りのRPGは意外に集客力があると聞く。Jun Young Kim氏の分析でも,北米と似た傾向を示すという日本市場に,Ntreev Softはより積極的なコミットを考えているのだろうか? 開発タイトルだけでなく,パブリッシング事業の面からも,Ntreev Softからはしばらく目が離せそうにない。(Guevarista)

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