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[TGS 2006#36]次世代オンラインゲームの収益構造はどうなる?
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印刷2006/09/24 02:51

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[TGS 2006#36]次世代オンラインゲームの収益構造はどうなる?

 TGS Forum 2006で開催されたオンラインゲームセッションでは,日本の代表的なオンラインゲーム企業3社が参加して「ビジネスモデルの多様化が進むオンライン市場 − 次世代の主流となる収益構造を探る −」と題した講演とパネルディスカッションが行われた。NHN Japan,コーエー,そしてガンホー・オンライン・エンターテイメントといった錚々たるメンバーが語る,現状の収益構造および今後の収益構造の展望を見ていこう。



 まず,国内最大のゲームポータル「ハンゲーム」を擁する,NHN Japan代表取締役社長千良鉉氏から,同社の取り組みについての講演があった。
 NHN Japanの最大の特徴は,なんといっても,会員の母集団が1800万人と非常に多いことに尽きる。累計会員数だけではビジネスの指標になりにくいが,ほかの数字にしても,同時接続数で12万5000人,1日あたりのユニークIPで65万と非常に多く,広く知られたゲームポータルであることが分かる。
 講演では,ナローバンド時代に創業した苦労話や,ユーザーのニーズに合わせるには,どのような付加価値をつけていくかといった方針について語られた。



 ハンゲームの基本サービスはあくまで無料で,付加価値部分を有料にするという部分有料化というアプローチをとっている。ゲームだけでなく,アバター,コミュニティといったサービスを同時に展開しており,それぞれについて有料アイテムや有料アバター,有料コミュニティアイテムを取り扱っている。そして地味な部分だが,ユーザーが本当に求めているものを的確に察知してサービスに反映させていくことを第一としているようだ。
 ハンゲームは,日本,韓国,中国,アメリカでサービスを展開しており,毎日合計100万人がアクセスしているという。サービスタイトルのほとんどは,日本で開発したものだが,海外サイトでのノウハウは共有されて運営改善に使われているそうである。
 いち早くポータルでトップに立ったNHN Japanは,どこよりも有利な位置をキープしている。後述のコーエーは「GAME CITY」,ガンホーは「ガンホーゲームズ」といったポータルを展開しているが,認知度や集客力ではまだまだハンゲームが飛び抜けており,現在の顧客の満足度を上げていくことが,全体的な競争力を保つことにつながっているようだ。



■老舗コーエーの見るオンラインゲームの課題

 続いて,コーエー執行役員 ソフトウェア事業部 ソフトウェア4部長 松原健二氏の講演が行われた。コーエーは「信長の野望 Online」以来,MMORPGを独自に展開しているが,同氏の話は,業界全体でオンラインゲームが非常に高い伸びを示していることなど,現在の市場動向分析から始まった。

 2005年度はアイテム課金が飛躍的に伸びた年となっているが,定額課金タイトル数も大きな伸びを示しており,アイテム課金へ一気に移行しているわけでもない。また,オンラインゲームフォーラムの調査を見る限り,アイテム課金を行っている人は定額課金の人の3倍もの支出を行っていることにはなっているが,松原氏は定額制からアイテム課金に移行しても,一気に3倍になるようなものではないと分析している。松原氏は,定額課金からアイテム課金に移行することで課金ユーザーが減っていくと予測しているようだが,具体的な状況を示す資料がないため詳細は不明だ。
 ちなみに,オンラインゲームフォーラムの資料から算出すると,2005年の定額課金売り上げとアイテム課金売り上げの比率は6:4であり,アイテム課金ユーザーは定額課金ユーザーの3倍の支出を行うということなので,アイテム課金ユーザー数は定額課金ユーザー数に対して18%くらいの人数ということになる。アイテム課金に移行するとプレイヤーが5分の1に減るわけもないので,課金をまったく行わないユーザー数の姿がある程度うかがえる数字となっている。

 さて,松原氏は,クライアント無料/アイテム課金のゲームは,オンラインゲーム初心者の参入障壁を下げたという意味で大きく評価しているものの,無料化やアイテム課金への流れが絶対的なものだとは思っていないようだ。逆に,定額課金プレイヤーに手厚いサービスを行うプレミアサービスのようなものも今後出てくるのではないかと予測している。
 コーエーのオンラインゲームの方針を示すものとして,現在のサービスタイトルや今後の予定なども紹介された。すでに何年も続いているタイトルでは,アップデートなどでも既存プレイヤーを対象に遊ぶ余地を増やすことを中心とし,そのうえで新規プレイヤーが安心してプレイできるように「新参者」対策を講じているという。

 新しくサービスを開始する「真・三國無双BB」では,これまでのMMORPGとは違ったリアルタイム性の高いコンテンツを提供していく。同作は,月額の基本料と1プレイごとの「戦闘参加費」が設定されているという,ユニークな課金方式となっているが,これはできるだけ多くの人が参加しやすいように,定額部分を低めに設定しつつ,ゲームセンターなどのように1プレイごとの課金を行うようにしたものとのこと。ハードルを低くするとはいいつつ,基本無料化ないし完全従量制にしないのも一つのポリシーであろう。

 今後のオンラインゲームの課題としては,回線問題や不正対策などを挙げていた。現在は,100Mbpsの回線でも,Maxでそれくらいの速度が出る可能性があるというだけで,最低限の速度保証などは一切なされていない。また,アクションゲームで重要となるレイテンシも保証されていない。真・三國無双BBでは,Yahoo! BBの回線を前提とすることでレイテンシなどの問題をクリアしているのだが,どのプロバイダに対しても同じことを要求することはできないのが現実である。業界全体として,通信のサービスレベルの規格化が必要であると訴えた。



 また松原氏は,昨今問題となっているゲームの不正対策についても,各社それぞれで対応しているだけではなく,業界全体でガイドラインが必要だと話していた。不正行為を事前に防ぐことが難しい,すぐに見つける方法がない,発見した致命的な不具合をすぐに修正することが難しい。業界全体でこういった問題に取り組む必要があると考えているようだ。
 さて,お次はRMTだ。コーエーは,RMTについては絶対禁止の姿勢を示している。信長の野望 Onlineや大航海時代 OnlineはRMTを前提として設計されていないので,規約で禁止しているからというだけでなく,ゲーム内の経済が破壊されることも問題視しているようだ。一般のプレイヤーが楽しく遊べなくなることから,今後も一切認める考えはないことを強調していた。監視コストなどは決して小さくないとのことだが,RMT対策は必要なサービスの一環として捉えているようだった。CESAでもRMT問題にどう対処するかなどの話し合いが始まりつつあるという。
 また,ネットワークの匿名性に一定の制限を設け,プレイヤー同士では匿名であっても,運営サイドでプレイヤーを把握しておくことで,ある程度荒し行為を未然に防ぐことができるなど,オンラインゲームをめぐる課題点やオンラインゲーム業界へのキャリアパスなどの課題を挙げていた。



■ガンホーが狙う次世代オンラインエンターテイメント

 ガンホー・オンライン・エンターテイメント代表取締役社長 森下一喜氏が,次世代に向けたオンラインエンターテイメントサービスについて,同社の取り組みを語った。
 同社は現在,オンラインゲームで56億円の売り上げを達成している。ガンホーは,定額課金とアイテム課金それぞれのタイトルを抱えているうえ,定額+アイテム課金のような複合型や,ゲーム以外での収入,ロイヤリティなど多彩な収益構造を持っている。とくに国産MMORPGタイトルである「エミル・クロニクル・オンライン」(以下ECO)では,アイテムとリンクしたプレイチケットなど意欲的な商品を次々と投入しており,実験的な試みも行われている。講演ではエヴァンゲリオンとのコラボパッケージなど,ユニークな展開が紹介された。

 ガンホーが重視するのは,「1ソースマルチユース」だ。ゲームの1タイトルを持っていたら,それを携帯コンテンツに展開していくなど,1タイトルで複数の収益構造を構築していく。また,キャラクタービジネスを行ったり,メディアミックス展開をしていったりということにも積極的である。ラグナロクオンラインというキラーコンテンツを持っているわけだから,こういった展開を志向するのも当然である。




 また,米国を中心としたオンラインゲーム内広告の動向にも敏感で,すでにECOでは,(広告とは限らないが)エイベックスと協力して,ゲーム内でPV映像を流すような試みも行われている。こういった広告は,ゲームの世界観を破壊する可能性があるので導入には注意が必要としつつも,今後,オンラインゲーム業界の収益構造として非常に有望であることなどから,検討を行っているという。
 今後さまざまな収益構造の多様化を行うと,当然ながら多量の少額課金が発生してくる。そこで定額課金やアイテム課金にも使用される「決済のインフラ」を充実させ,決済ビジネスを進めることも重要になってくる。
 さらにコンシューマゲーム機が本格的にオンラインゲームに進出してくるようになると,ポータルサービスであるガンホーゲームズなどが重要になってくると見ているようだ。サービスやコンテンツの充実を行い,ポータルとしての地位の確立を目指していくとのことだった。
 次世代のビジネスモデルとしては,「Second Life」のようにゲーム内でプレイヤー同士がC2Cのビジネスを行うようなことも視野に入れているようだ。ユーザー参加ということについて,かなり検討を進めているようで,開発ツールやミドルウェアをオープン化していくといったことも視野に入れているという。

 最後に,今後展開されるタイトルとして,「北斗の拳 Online」「グランディアオンライン」が紹介された。ちなみにこのとき,なにげに本邦初公開となる北斗の拳 Onlineの画面が公開されていた。北斗の拳 Onlineは,2006年内のサービス開始予定だという。「ラオウやケンシロウにはなれません」とのことだが,似たようなものにはなれるので,独特な世界観を楽しめるものになりそうだ。ファンタジーと違って魔法のない世界観なので,それに変わる新機軸が盛り込まれているという。
 グランディアオンラインについては,まだ正式なビジュアルが完成していないとのことだった。豊富な開発経験を持つゲームアーツが制作している同作では,不正対策などさまざまな試みが行われているとのことだ。



■不正アクセス事件とRMTについて

 なお,パネルディスカッションの部で,ガンホーで発生したGMの不正アクセス事件やRMTについての話題も出てきたので紹介しておこう。
 森下氏は,非常に残念な事件だったと前置きしたうえで,現在社内で進められている対策について解説した。社内環境の改善から始まり,机の配置換えで「不正を起こそうと思えなくする」環境にするなどといったところまで対策を進めているという。単に社内で対策を決めるだけでなく,外部に諮問委員会を作り,その対策を評価してもらうなど,できるだけ漏れのない対策を実施しようとしているようだ。
 ただ,無闇にアクセス権などの制限が加わると,全体の利便性が下がったり,サービスレベルが低下することにもなりかねないので,トータルでのバランスを取りつつ調整を行っているという。

 RMT自体について森下氏は,RMTとはゲームだけの問題ではなく,デジタルコンテンツ全体の問題であるという認識のようだ。ゲーム業界のみならず,広くガイドラインを議論する必要があると話していた。また,先ほど紹介したコーエー松原氏はRMTを完全否定という立場で話をされていたのだが,それは文中にもあるように,RMTを想定していないゲームでは,RMTによって大きな問題が発生するからである。RMTを前提として設計したゲームでは事情は異なってくるだろう。
 そういったこともあり,森下氏の場合は,現状の「RMTを想定していないゲーム」では対策を取りつつも,将来的には,ことによってはRMTをゲームに取り込むことも想定しているかのような話も匂わせていた。「RMT」という言葉が無闇に悪者にされている状況を危惧し,場合によっては,よい形で取り込んでいくことも考えているようである。
 RMTは,ユーザー感情も含め,慎重に議論する必要のある問題だろう。先般の事件により,業界内での意識も高まっており,これを契機として活発な議論がなされることを願いたい。(aueki)

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