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印刷2006/04/13 23:57

レビュー

「ファーレンハイト日本語版」のミニレビューを掲載

■「ファーレンハイト(Fahrenheit)」がついに日本語化

 4月14日にメディアカイトから発売された「ファーレンハイト 日本語版」は,フランスのQuantic Dreamが制作したアクションアドベンチャーゲームで,ヨーロッパでは「Fahrenheit」,アメリカでは「Indigo Prophecy」のタイトルで2005年秋に発売されている。また,プレイステーション 2,Xboxなどマルチプラットフォームで展開しており,各種ゲームサイトやメディアの評判も上々だ。
 というわけで,おそらくちょっとばかり気になっていた人も多いであろうこの「ファーレンハイト 日本語版」のインプレッションを少々。もっとも,今回の日本語版は,メニューや字幕,表示される文字などがすべて日本語化されてはいるが,当然ながら,ストーリーやゲームシステムは英語版のまま。したがって,以前「こちら」で書いた記事といささか重複してしまうのはご容赦願いたい。

 さて,いきなり主人公が行きずりの他人を刺殺する,というショッキングなオープニングが話題になった本作は,問題解決にパズルではなく“アクション”を使うユニークなシステムを採用している。具体的には,画面に出てくる二つのサークルの指示に従って,すばやくキーを押し(あるいはスティックを倒し)たり,画面上のバーが一杯になるまで,キーを連打するのだ。これは,必ずしも戦闘や逃走などの“切羽詰まった”場面ばかりでなく,ギターを弾いたり尋問したりといった普通のシーンにも頻繁に登場する。アクションがうまくいけば,有益な情報を得たり,相手が感動したりするわけだ。
 それ以外にも,事件に巻き込まれた主人公,彼を追う女性捜査官,彼女の相棒など,操作するキャラクターを必要に応じて切り替えたり,取った行動とその結果によって“感情”が変化したりと,さまざまな新しい試みに挑戦している。
 このあたり,必ずしも意図どおりに上手く行っているとは言い切れない部分もあるのだが,「アドベンチャーは好きなのだが,パズルはちょっと……」と感じている人に強くアピールするのではないだろうか。近頃,Dream Catcherをはじめ,いわゆる“ピュアなアドベンチャー”を作っているメーカーの多くがパズルの難度を競っているようなところがあるため,なおさらその感が強い。



■説得力のあるキャラクターと,面白いストーリー展開

 とはいえ,アドベンチャーゲームの命はストーリーとキャラクターだ。本作は,序盤,サイコスリラーのような展開を見せるが,次第にホラームードが強くなり,やがてSFに転じていく。ラスト4章ぐらいの動きでストーリーが変化するマルチエンディングだが,前半の展開はなかなかいい。時間をかけて主人公らのバックグラウンドを丹念に追いかけており,現代の都会人の孤独をよく描いている。ただし,ストーリーの動きが少なく,ややもたつき気味なのは否めないだろう。
 一転して,後半は急展開が続く。南アメリカの古代文明や,アメリカ軍の発掘した正体不明の石,さらには謎の少女などが次々に登場して,ついには人類の未来をかけたデカい話になっていくのだ。このあたり,乗れるか乗れないかはプレイヤー次第だろうが,個人的には,もう少しこじんまりした話でも良かったのではないか,という気はする。
 とはいえ,主人公ルーカスや,彼を追う刑事カーラなどの人物造形がなかなか見事で,ややもすれば荒唐無稽に流れがちな話を説得力のあるものにしている。とくに,エネルギッシュな女性刑事カーラが,寒く荒涼とした雰囲気のゲームに明るさを添えて魅力的だ。

 グラフィックスは特筆するほどのレベルではないが,ムードが良く,問題にはならない。ムービーシーンでは全体にザラついた感じになりサスペンスを盛り上げてくれる。アクションを主体にしているだけあってキャラクターの動きも良くレスポンスも快調だ。降り止まない雪と,哀調を帯びたサウンドもルーカスの孤独を際立たせる。プレイヤーは,彼を待ち受ける運命を知りたくてたまらなくなり,ゲームを止められなくなるはずだ。

 興味はあったものの,英語なので手を出せなかった,という人もいるだろう。日本語版のおかげでストーリーを理解するのに何の不自由もなくなった。かくいう筆者も,実は,「あ,そういうことだったのか」という部分があってちょっと照れくさい。やはり日本語はいいですね。そんなわけで,サスペンス映画の好きな人や,ちょっと感触の変わったゲームを楽しみたいという人にはオススメだろう。(松本隆一)

  • 関連タイトル:

    ファーレンハイト 日本語版

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