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ゲーム世界を自由に撮影できる機能「Ansel」がついに離陸。対応タイトル「Mirror\'s Edge Catalyst」でぐりぐりとカメラを動かしてみた
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印刷2016/07/14 22:00

テストレポート

ゲーム世界を自由に撮影できる機能「Ansel」がついに離陸。対応タイトル「Mirror's Edge Catalyst」でぐりぐりとカメラを動かしてみた

 2016年7月14日22:00,NVIDIAは,「GeForce GTX 1080」のリリース時に実装予告していた新機能「Ansel」(アンセル)を,ついに立ち上げた。第1弾のサポートタイトルはPC版「Mirror's Edge Catalyst」(邦題 ミラーズエッジ カタリスト)で,リリースに前後して配信となる予定の公式パッチと,対応のGeForce Driverを導入すると,Kepler世代以降のGeForce GTXを搭載したデスクトップPCもしくはノートPCから利用できるようになる。


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Anselはゲームとドライバの間に挟まって機能するイメージ。NVIDIAは,「多くの場合,ゲームへの実装は1日もかからない」と,ゲームデベロッパは簡単にAnsel対応化を図れるとアピールしている
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Anselでできること
 そもそもAnselとは何かだが,NVIDIAは「ポスターやボックスアートとして示される印象的なスクリーンショットを見て,ゲーマーはそのゲームを買うかどうか決めてきたが,その『印象的なスクリーンショット』を作れるようにするための技術」と位置づけている。

 Anselでユーザーはゲームを止めたうえで,ゲーム内で規定される一人称や三人称という固定された視点から離れ,カメラを(ゲーム側が許可する範囲において)自由に動かし,さらにエフェクトを適用できる。そしてそれらを,そのまま書き出すだけでなく,ゲームで表示させている以上の解像度で出力したり,あるいはVR(Virtual Reality,仮想現実)ヘッドマウントディスプレイ用のビューワ形式で保存したりすることもできるのだ。

Anselの機能ブロック。対応タイトルで全部使えるわけではなく,ゲームによっては特定の機能が利用不可になることもある
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Anselの使い方


 対応ゲームタイトルにおけるAnselの起動はいたって簡単だ。プレイ中に[Alt]+[F2]キーを押すと,ゲームが一時停止して,画面左端にAnselのユーザーインタフェース(以下,UI)がオーバーレイ表示される。ゲーム中のデモシーンやオプション画面では[Alt]+[F2]キーを押してもUIは出てこないので,「UIが出てくるかどうか」で,当該シーンがAnsel対応かどうかを判断できる仕様だ。

Mirror's Edge Catalystのゲーム中に[Alt]+[F2]キーを押したところ。こんな感じでUIがオーバーレイ表示される
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 UIが表示された時点で,Anselはすでに「Free Camera」(フリーカメラ)モードになっているため,[W/A/S/D]キーで前後左右,[U/J]キーで上下にカメラを動かせる。また,マウスを使えば視点切り替えが可能で,もっと言えば,カメラと視点移動の両方はゲームパッドからも行える。


 操作感はFPSやTPSのイメージそのままなので,迷うことはないだろう。ゲーム中における特定のシーンを,簡単な操作で,普段なら絶対に見られない別の角度や距離から眺められるわけである。

同じシーンを様々なカメラアングルで眺めてみた。左上がゲームプレイ中で,残る8枚はプレイ中では見ることのできない角度から見たものだ。角度などによってはインゲームエフェクトの見栄えがおかしくなったりもすることもあるが,それをカメラワークでうまく回避したりするのも楽しみということなのだろう
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 気に入ったアングルがあれば,UIの下のほうにある緑色の[Snap]ボタンをクリックすると,Windows標準の「ピクチャー」フォルダにbmp形式で保存できる。もちろん,“吐き出される”スクリーンショットにUIは写り込んでいないので安心してほしい。

実際に書き出したスクリーンショットに,AnselのUIは入り込まない。なお,ここまでのスクリーンショットがウインドウモードだったのに気付いた人もいると思うが,理由はAnselのUI込みで画面キャプチャを行っているためだ。本稿ではこれ以降も,AnselのUI入り画面はウインドウモードのものになるので,その点はここでお断りしておきたい
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Anselでできること


 前段で紹介したAnselの諸機能は,いずれもこのUIから利用できる。大枠では「Filter」(フィルター)と「Field of View」(画角)「Roll」(回転)「Capture type」(キャプチャ方法)の4つだが,ここからは,実際にその効果を確認しながら順に見ていこう。


■Filter

 Filterでは,画面にポストエフェクトによる効果を付与できる。選択肢は以下のとおりだ。

  • None:なし
  • Custom:カスタム設定
  • Black&White:白黒
  • Halftone:ハーフトーン(ドット表現)
  • Retro:レトロ調
  • Sepia:セピア調
  • Sketch:スケッチ調
  • Warm:高い色温度

None(左)。これが標準だ。Customを選ぶと,Anselメニュー側の選択肢は増えるが,選んだだけでは,見た目はNone選択時と変わらない……と書くつもりだったのだが,見比べてみると,Customのデフォルト設定はNoneより若干コントラスト比が高かった(右)
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Black&White選択時
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Halftone選択時
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Retro選択時
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Sepia選択時
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Sketch選択時
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Warm選択時

 Customだけは,選択すると,その下のサブ項目である以下の項目を利用可能だ。こちらではスライダーで適用度を微調整できるので,より細かな設定を行えるようになるわけである。

  • Brightness:輝度
  • Contrast:コントラスト(明暗の対比)
  • Vignette:ヴィネット(周辺減光)
  • Sketch:スケッチ調度合い
  • Color enhancer:彩度強調

Brightnessは,スライダーを左端に寄せると真っ黒,右端に寄せると真っ白になるので,中央を基準に調整することとなるだろう
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Contrastスライダーは,中央を基準にして左に寄せると灰色寄りになり,右に寄せると白いものはより白く,黒いものはより黒くなっていく
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Vignetteのスライダーを右に寄せれば寄せるほど,画面の四隅が暗くなっていく。一眼カメラ用交換レンズの周辺減光を模したエフェクトだ
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Sketchは,FilterのところにあるSketchの効果を変更するためのスライダーという理解でいい
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Color enhancerは,スライダーを右に寄せていくと,全体的に彩度が上がっていく。特定の色だけ彩度を上げるといったことは行えない
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 試してみた感じだと,ボケ(bokeh)およびブラー(blur)フィルタがないのは画竜点睛を欠く気がしたのだが,ひょっとすると今後のアップデートで追加する予定なのかもしれない。ただいずれにせよ,Custom設定では設定内容にもう一声欲しいところだということは書いておきたい。


■Field of View

 Field of Viewは,特定の場所に置いたカメラから,ズームレンズを回したときのように,画角を変更できる機能となる。カメラ自体を動かしてしまえばほぼ同じ効果を得られるため,あまり使わない人も多いだろうが,先にカメラの位置を固定してから画角を変更できるので,ズームレンズの利用に慣れた人だと便利かもしれない。


Field of Viewの設定は40〜140度を1度刻み。カメラ自体は固定なので,自由にカメラを動かしたときのように,目いっぱい寄ったりはできないが,その分,破綻のない絵にはしやすいので,使い方次第では便利だと思う
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■Roll

 Rollは,特定の位置から,カメラを左右に傾ける機能だ。Mirror's Edge Catalystの場合は,ロープアクションや戦闘アクション時に意識して使うと,格好いい画面を作りやすくなるだろう。


ロープアクションでは,ちょっとRollの設定を弄るだけで,ぐっと迫力が増したりする
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■Capture Type

 Capture typeは簡単に言うと「どうキャプチャを撮るか」を設定する項目だ。選択肢は以下のとおり。

  • Screenshot:Anselで効果を適用した画面そのものをキャプチャするモード
  • 360:カメラを中心とした360度のゲーム世界をキャプチャするモード。全天球画像を取得するモードと言い換えてもいいだろう
  • Stereo:いわゆる3D立体視用のキャプチャを行うモード。3D Vision用という理解でいい
  • 360 Stereo:VR対応ヘッドマウントディスプレイ用に,カメラを中心とした360度のゲーム世界をキャプチャするモード

360でキャプチャした全天球画像(※拡大画像の解像度は5460×2730ドットで,ファイルサイズは1.9MBとなります。開くときは注意してください)
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NVIDIA VR Viewer側の注意書き。360 Stereoでキャプチャするときの解像度は4096×4096ドットにせよとある。これ以外の解像度でキャプチャしたイメージを開こうとするとエラーになった
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実際に4096×4096ドット設定で取得した,360 Stereoのスクリーンショット(※拡大画像の解像度は4096×4096ドットで,ファイルサイズは2.34MBとなります。開くときは注意してください)
 なお,Mirror's Edge Catalystの場合は,Anselの発表時に機能の1つとして紹介された,見ている画面に対して最大32倍という圧倒的に高精細なスクリーンショットを書き出せる「Super Resolution」に対応していない。そのため,ScreenshotとStereoでは解像度を選択できなかった。
 また,NVIDIAにバグレポートは行ったので,いずれ修正されると思うが,テストに用いたAnselでは,Windowsのユーザー名などに日本語(というか2バイト文字)が入っていると,立体視やVR用のファイルを書き出せないという問題があった。Anselのリリース後,すぐに試す場合は気を付けてもらえればと思う。

 一方,Mirror's Edge Catalystだと,360では4095×2047〜8191×4095ドット解像度,360 Stereoでは4095×4095〜8191×8191ドット解像度を,筆者の環境では選択できた。
 ただし,360 Stereoの場合,PC用のVR対応ヘッドマウントディスプレイ向けに出力するときの制約はないものの,Android端末とGoogle Cardboardを組み合わせて使う場合は,Android用の専用ビューワ「NVIDIA VR Viewer」が4096×4096ドットしかサポートしないという事情のため,同解像度に設定のうえ出力する必要があるので,この点は注意してほしい。

 なお,NVIDIA VR Viewerの実行には,Android 5.0(Lollipop)以降を搭載し,メインメモリ2GBを備える端末が必要だ。

実際に,360 Stereoで書き出したスクリーンショットをAndroidスマートフォン「Nexus 6P」上のNVIDIA VR Viewerから表示させたところ。当たり前だが,Google Cardboard的なデバイスを使うとVR表示できる。まだβ版のNVIDIA VR Viewerがけっこう不安定で,使っているとAndroidシステムごと落ちたりしたが,本文で指摘した2バイト文字問題と同じく,これも時間が解決してくれるだろう
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対応タイトルさえ増えれば第2のShadowPlayに? ShadowPlayの「あの機能」も欲しい


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 以上,AnselとMirror's Edge Catalystで使ってみたが,リリース時点における完成度はかなり高いと言っていいように思う。NVIDIAの喧伝していた内容は,少なくともMirror's Edge Catalystについて述べる限り,超高解像度での画面出力機能を除いて,問題なく使えた。
 また,アップロードしたムービーでも感じてもらえると思うが,[Alt]+[F2]キーでシームレスにゲームとAnselを切り換えられるのは,単純に新鮮で,筆者は意味もなく何度もモード切り替えで遊んでしまったほどだ。

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 また,そもそもの話として,「格好いいスクリーンショット」を,自分の気が済むまで試行錯誤しながら作り込んでいけるのは,面白いだけでなく,使いでもある。自分のために壁紙を作るのにもいいだろうし,SNSで披露するのにもいいだろう。とくにMirror's Edge Catalystだと本来,ゲーム中のほとんどで主人公のフェイスは手と足しか見えない。なので,彼女の顔や身体をフレームに入れたスクリーンショットを作れるというのは,それだけで見栄えがずいぶん違う印象がある。
 筆者は職業柄,ゲームレビュー1本で5000〜7000枚程度のスクリーンショットを撮り,そこから掲載用に20〜30枚をピックアップするという作業を15年くらい続けているわけだが,Anselが一般的になれば,数で勝負する時代が終わるのではないかという,淡い期待も持っていたりする。

 PCゲーマーの間で瞬く間にShadowPlay(そしてその発展版としてのShare機能)が普及したように,Anselも,対応タイトルが増えてくれば,GeForceプラットフォームの定番機能となるのではなかろうか。それだけのポテンシャルはあると思う。

「フェイスが柵を乗り越える瞬間」を撮ろうと思ったが,一瞬遅れてしまった例。「ShadowPlayのように巻き戻せたらなあ……」というケースは本当によく起こる
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 ただ,それほどまでよくできたAnselだけに,惜しい部分もある。当初の対応タイトルがMirror's Edge Catalystと,7月中にサポートが始まると予告済みの「The Witcher 3: Wild Hunt」のみというのはともかくとしても,「あ,いますごくいい感じだった!」と思ったとき,ShadowPlayのように「少し巻き戻して,そこからカメラを動かす」というわけにいかないというのは,やはりもどかしい。
 「ゲームを一時停止する」というAnselの仕様上,どうしようもないのは分かっているが,ここはちょっといらいらさせられた。

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 また,これはMirror's Edge Catalystだけという可能性もあるものの,ゲームとはまったく異なるカメラ(=視点)操作を行うため,3D酔いしやすいという問題も感じている。
 筆者は普段,めったに3D酔いしないタイプなのだが,フレームや画角をああだこうだと試行錯誤していると,胃のあたりがむかむかしてくる。体調の問題かと,その日はそこまでにして,次の日あらためて取り組んでもやっぱりダメだったので,「ゲームプレイでは起こり得ないカメラ操作」が,人によっては3D酔いを引き起こす恐れはあると書いておきたい。

GeForce GTX 1080の発表時にNVIDIAは「Tom Clancy's The Division」と「The Witness」「LawBreakers」「The Witcher 3: Wild Hunt」「Paragon」「No Man’s Sky」および新版「Unreal Tournament」でAnselをサポートするとしていた
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 いずれにせよ,PC版Mirror's Edge Catalystを持っているなら,今すぐ試すだけの価値はある。The Witcher 3: Wild Huntのプレイヤーにも,サポートが始まり次第,試してみることを勧めたい。

 あとは,とにかく対応タイトルが増えることだ。現在のところ,対応が予告されているのは数タイトルだが,Ansel一般化のためには,最低でもこの10倍は必要だろう。Anselが第2のShadowPlay&Shareになれるかは,NVIDIAの頑張り次第である。

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GeForce.comのAnsel公式ページ(英語)

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