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印刷2009/04/02 18:30

ムービー

新たなPhysX対応タイトル&DirectX Compute Shaderのムービーを一挙に公開

 別途お伝えしている新型GPU「GeForce GTX 275」の発表に合わせる形で,NVIDIAは,新型GPU「GeForce GTX 275」の発表に合わせる形で,これから登場する「NVIDIA PhysX」(以下,PhysX)対応タイトルや,「DirectX Compute Shader」のデモなど,いくつか目新しいムービーを公開した。
 今回は,アジア太平洋地域の報道関係者を対象としたGeForce GTX 275の事前電話説明会において,同社のJason Paul氏が語った内容を軸に,ムービーやスクリーンショットをチェックしてみることにしよう。

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PhysX対応の新しいタイトルを一挙公開


■Sacred 2: Fallen Angel

 パッチでPhysXに対応するとアナウンスされていた「Sacred 2: Fallen Angel」。デモムービーはいくつか公開されたのだが,そのなかから,PhysXの有効/無効時を横に並べた次のムービーを見てほしい。


 一目で分かると思うが,画面右側がPhysXを有効にしたプレイ画面である。Paul氏によると,呪文関係のエフェクトや,土や石の破片,木の葉の動きにPhysXが使用されているという。
 あくまで見た目が派手になるだけで,ゲーム性に影響を与えるわけではないが,舞台となる世界がより本物らしくなって没入感が高まるという点では意味があるだろう。

■流体シミュレーションを用いた砂埃(乱流)

 続くムービーは,4月中の一般公開が予定されている次期「Power Pack」に収録されるという,新しいPhysXデモだ。


 このムービーでは,タイヤから上がる砂埃の様子が流体シミュレーションを用いて表現されている。本物の砂に比べてパーティクルの数が少ないことのほか,実際の砂埃では粒子の大きさにバラツキがあり,空気中を舞っている時間が粒子の重さや大きさによって異なるのだが,シミュレーションはそれらが考慮されていないことから,砂埃と書くと違和感を覚える読者も多いはず。これは,車の動きによって後方に発生する乱流を表現しているとしたほうが正確だろう。
 ただ,かなりの計算量を伴うことは確実なので,GPUを使った“力ワザ”であることは間違いない。
 なお,PhysX Power Packには,この新しいデモに加えてスクリーンセーバーやプレイ可能なゲームも収録される。GeForceユーザーは楽しみにしていよう。

PhysX Power Packには,新しいデモに加えてプレイ可能なゲームタイトルも収録される予定だ
画像集#003のサムネイル/新たなPhysX対応タイトル&DirectX Compute Shaderのムービーを一挙に公開

■Star Tales


 「Star Tales」は「アジア地域向けのソーシャルネットワークサービス」(Paul氏)だそうだ。


 ご覧のように,2008年に公開された「Nurien」とほとんど同じパターン。開発元も同じようなので,中国風のNurienといったところだろうか。コスチュームのひらひらした動きがPhysXを用いて表現されている。

■Unreal Engine 3を用いたAPEX Destruction

 アーティストがゲームをデザインする段階からPhysXが使えるようにし,さらにクロスプラットフォームでのPhysX利用を可能にする「APEX」。これについては,3月26日の記事で概要をお伝えしているが,下に示したのは,APEXによるDestruction(破壊)のデモムービーである。


 このムービーは先の記事でも紹介しており既出なのだが,その高解像度版と考えていい。「Unreal Tournament 3」風の画面を生成しているのはもちろん「Unreal Engine 3.0」だが,その上で壁が砕けたり,破片がリアルに飛び散ったりしている様子が確認できる。

■U-Wars

 2009年第4四半期のリリースが予定されているPhysX対応の新タイトル,「U-Wars」のスクリーンショットが公開された。ただ,残念ながらプレイ動画はないようだ。

画像集#006のサムネイル/新たなPhysX対応タイトル&DirectX Compute Shaderのムービーを一挙に公開
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 電話説明会で,ゲーム内容に踏み込んだ説明はなかったが,Biart Studioが開発を手がける「地上と水中を舞台にした三人称視点のアクションゲーム」であるとのこと。
 スクリーンショットからは,地上のシーンだけでなく,水中アクションにもPhysXが使われていることを窺えるようになっており,ことによると,従来のタイトル以上にPhysXを使い込んだタイトルになるかもしれない。対応機種としてはPCのほかPLAYSTATION 3,Xbox 360が予定されている。

■Metro 2033 - The Last Refuge

 2年ほど前に開発がアナウンスされたロシア製のゲーム,「Metro 2033 - The Last Refuge」が,PhysXに対応したという。リリース予定は2009年第4四半期だ。
 このタイトルのスクリーンショットやムービーなどの素材は提供されていないので,電話会議で使用されたスライドを掲載しておこう。

PhysXに対応する予定のロシア製のゲーム,「Metro 2033 - The Last Refuge」。どのあたりにPhysXが使用されるかは現時点では明らかにされていない
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■Shattered Horizon

 3DMarkシリーズでおなじみのFuturemarkが開発中とアナウンスした新作FPS,「Shattered Horizon」もPhysXに対応するという。残念ながら,これもゲームの詳細やリリース時期は明らかにされなかった。

Futuremakが開発するPhysX対応タイトル,Shatterd Horizon。リリース時期は明らかにされていない
画像集#016のサムネイル/新たなPhysX対応タイトル&DirectX Compute Shaderのムービーを一挙に公開

 以上,新たなPhysX対応タイトルのデモ動画やスクリーンショットを紹介したが,NVIDIAのPower Packはともかくとして,新たなタイトルが追加されている点はPCゲーマーとして注目すべきだろう。
 中でもU-Warsは,PhysXをフィーチャーしたタイトルのマルチプラットフォーム展開として初のケースになる可能性があり,PC以外でのPhysXの成功の鍵を握るかもしれない。


DirectX Compute Shaderのデモ映像


 ところでNVIDIAは別途,DirectX Compute Shaderのデモムービーも,PhysXがらみのムービーやスクリーンショットとセットで報道関係者に公開している。電話説明会でこれといった説明がなく,詳細が分からないものも含まれているため,今回は筆者の推測を含めて紹介していこう。

■DirectX Compute Shaderを用いた破壊ムービー

 APEX DestructionのデモをDirectX Compute Shaderで行ってみた,というムービーである。


 内容はほぼAPEX Destructionのデモムービーと同じだが,フレームレートがやや低そうなのが気になるところか。PhysXのほうが,この種の処理の効率が高いことも十分にあり得るので,それがフレームレートに影響している可能性もある。もっとも,DirectX Compute Shaderに対応するドライバもまだ十分に最適化されていないだろうから,現時点で優劣を判断するのは早計かもしれない。

■リアルな海面の波の様子

 続いては,DirectX Compute Shaderを用いて海面の様子をシミュレートしたムービー。


 ご覧のように,素晴らしくリアルだ。説明によれば,波の生成の計算に高速フーリエ変換を用い,またパーリンノイズ(時間や空間的にランダムなテクスチャを作成する方法のこと)を使って不自然さ(カクカクした感じ)を軽減しているという。それにしても,このリアルさには驚かされる。

■多体問題のシミュレーション

 星雲の中に散らばる星々のように,重力で互いに引き合う多数の物体の運動を解く問題を多体問題というが,現在でも近似的にしか解けない(というより,特殊なケースを除くと,物体数が三つ以上になると近似解しか得られない)。天文学や分子化学の分野では,スーパーコンピュータを用いたシミュレーションが盛んだが,粒子の数が増えるにつれて計算量が途方もなく跳ね上がることも知られている。そんな多体問題をやってみたというムービーである。


 説明によると,シミュレーションで何度も繰り返す必要がある“指数部の比較”を力ずくで行っているらしいが,どのような計算手法が使われているのかは不明。ただ,これほどの粒子数の多体シミュレーションはスーパーコンピュータ並みの処理能力が必要なので,なにかしら簡便なテクニックが使われているのだろうと思う。見た目にはたいしたことないようだが,やっていることはかなりすごい。

■パーティクルを用いた流体風シミュレーション

 パーティクルを使った流体風のデモはPhysXでおなじみだが,そのDirectX Compute Shaderバージョンである。

 このムービーで興味深いのは,解像度,粒子数,フレームレートなどの値がしっかり見えている点だ。「GeForce GTX 260」を用い,65536のパーティクル数で50fps前後をコンスタントにキープしている様子が分かる。



 以上,DirectX Compute Shaderのデモムービーを紹介したが,こうした映像がゲームに応用されるのにはそれなりの時間がかかるだろう。
 デモでは必要な処理に全力を投入できるが,実際のゲームではほかにやることも多く,ムービーのようにはいかない。GPUの性能がさらに上がるか,または簡略化された形で応用する必要があるのだ。とはいえ,いずれもGPUの高い計算能力を見せつけてくれ,数万円程度で購入できるGPUが,実は途方もない能力を持っていることを改めて実感させてくれる。
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