2020年8月18日に,シリーズ最新作となる「
Microsoft Flight Simulator」(
PC /
Xbox One,以下 MSFS)のPC版が発売となる。14年ぶりのMSFS最新作とあって,フライトシミュレータファンならずとも,試してみたいと思う人は少なくないのではなかろうか。筆者も熱心なファンというわけではないものの,自分が訪問したことのある街や空港を飛んでみたいなと楽しみにしている。
MSFSの登場を受けて,同作での使用を意識したフライトシミュレータ向けジョイスティック(以下,フライトスティック)が早速登場してきた。それが,Guillemot(ギルモ)のゲーマー向け周辺機器ブランドであるThrustmasterから登場した「
TCA Sidestick Airbus Edition」(
関連記事,以下 TCA Sidestick)である。
国内販売が始まったばかりのTCA Sidestickを早速購入してきたので,写真を中心に紹介したい。
A320のサイドスティックをモデルにした外観
TCA Sidestickは,製品名に「Airbus Edition」とあるように,欧州最大の航空機メーカーであるAirbusの公式ライセンスを取得しているのがポイントだ。具体的には,Airbusの中型旅客機である「A320」シリーズのコクピットにあるサイドスティックをモチーフとしているそうで,スティックの形状やボタンの色,形などにそれが表われているようだ。
Airbusの公式WebサイトにあるA320の360度コクピットビューで,機長席側のサイドスティックを見たところ。まったく同じ形状ではないが,雰囲気は似ている
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TCA Sidestickの製品ボックス。側面にはA320のコクピットを写した写真が掲載されている
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TCA Sidestickは,左右対称形状のフライトスティックで,右手と左手のどちらでも扱やすいデザインとなっている。中央には黒い色のジョイスティックがあり,スティック頂部の中央に8方向入力が可能なハットスイッチが,その左側に黒いサイドボタンが,右側には赤いサイドボタンがある。
TCA Sidestickの全景。左右対称形状の台座から,スティックが伸びている
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TCA Sidestickの頂部。中央にハットスイッチがあり,左に黒,右には赤いボタンがある
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スティックの背面側にあるトリガー。その上にもボタンが1つある
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スティックの背面側には大きなトリガーボタン(※デジタル入力)があり,その上側にもボタンがある。「旅客機のサイドスティックにトリガーがあるのか?」と思う人がいるかもしれないが,A320のサイドスティックにはトリガーがあるのだ。
海外メーカー製フライトスティックの中には,手の大きい人を基準に設計しているため,握った状態では手の側面が宙に浮いてしまい,ゲームをプレイしていると疲れてくることがある。その点,TCA Sidestickは,スティックの頂部から握った状態で手の側面を支える「ハンドレスト」部分までの長さが大きすぎることがない。成人男性としては手が小さい筆者でも,ハンドレストに手を載せた状態で,問題なく頂部のハットスイッチやボタンを操作できた。
グリップを握り,各ボタンに指をかけた状態。手が小さい筆者でも,指をかけたままハンドレストに手の側面を置けている
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左右のサイドボタンに親指を置いてみた。黒いボタンは半球型なので,指をどう載せても押しやすいが,赤いボタンは円柱型なので,頂部に指を載せないと少し押しにくく感じる
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トリガー(左)とその上にあるボタン(右)に指を当てた状態
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スティックは前後左右に倒れるだけでなく,左右にひねることも可能だ。一般的なフライトシミュレータでは,ひねりの操作に方向舵や地上滑走時のステアリング操作を割り当てている。
ちょっと面白いのは,このひねり操作を必要としないゲームでTCA Sidestickを使う場合に,ひねりの動きをロックする機構を備えていることだ。ハンドレスト部分の奥側にある四角い「ロックボタン」を押し込むと,ロックがかかってひねりの動きをしなくなる。
ハンドレストの奥側にあるロックボタン。左はロックを解除した状態で,右はロックした状態だ
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台座部分の手前中央には前後に動くスロットルがあり,台座の左右にはそれぞれ6個ずつ,計12個の「アクションボタン」が並んでいる。基本的には,シンプルな片手用フライトスティックといったところか。
台座の手前にあるスロットル。左は一番上まで上げた状態,右は一番下まで下げた状態だ。一番下まで下げると,ゲームによっては逆噴射(スラストリバーサー)がかかる
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台座の左右には,6個ずつ,計12個のボタンがある
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底面にある切換スイッチで,左手用と右手用の動作モードを切り替えられる
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なお,Airbus製旅客機における機長席のサイドスティックは,左手で操作するものなので,TCA Sidestickの初期状態も左手で操作するようになっている。しかし,底面にある「セレクタスイッチ」を切り替えることで,左手用から右手用に切り替えることが可能だ。
先述したようにTCA Sidestickはスティックも台座も左右対称形状なので,ユーザーにとって使いやすい手で握って使えるようになっている。それに加えて,頂部左右にあるサイドボタンは,着脱可能なモジュールとなっており,付属の交換用のモジュールと付け替えることで,押しやすいボタン配置に変えることが可能だ。
交換用モジュールは,赤いボタンと黒いボタンのそれぞれに左と右が用意されているので,両側に同じ色のボタンを取り付けることもできる。たとえば筆者の場合,赤いボタンよりも黒いボタンのほうが押しやすいと感じたので,左右両方を黒いボタンモジュールに交換した。
ボタンモジュールを取り外した状態(左)。左側面から長いネジで左右のモジュールをまとめてスティックに固定している。ボタンモジュールは,赤と黒それぞれに左右がある(右)
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両側に赤いボタンモジュールを付けた状態(左)と,黒いボタンモジュールを付けた状態(右)。筆者は左右とも黒いボタンが使いやすかった
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X-Plane 11でTCA Sidestickを使ってみた
サポートWebページで「TCA Sidestick」を検索すると,ドライバソフトやマニュアル,関連ソフトを入手できる
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TCA Sidestickは,基本的にPCと接続すれば自動でドライバソフトがインストールされることになっている。ただ,筆者はドライバソフトを自分でダウンロードする癖が付いていたため,今回もThrustmasterの
サポートWebページから,あらかじめドライバソフトや関連ソフトをダウンロードし,インストールしてからTCA SidestickをPCに導入した。
ちなみに,サポートWebページからは,TCA Sidestickの各ボタンに任意のキー入力やマウス操作,マクロコマンドを割り当てるツール「T.A.R.
G.E.T
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Script
Editor
Basics」を入手できる。ただ,このツールはかなり設定が難解で,そのうえ日本語版もなく,おまけに設定を反映させるところでエラーが出てしまって,今のところうまく使えていない。
単純にボタンやスティックに任意のキー操作を割り当てるだけなら,PCゲーマーにはお馴染みのゲームパッドカスタマイズツール「
JoyToKey」でも可能だった。
X-Plane 11
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本来なら,MSFSでテストプレイをしたいところだが,筆者は同作のβテスターではないので,発売日まではプレイできない。そこで民間機を飛ばせるフライトシミュレータである「
X-Plane 11」をTCA Sidestickでプレイしてみた。
本稿執筆時点において,X-Plane 11自体はTCA Sidestickに正式対応していなかったが,スティックやスロットルの操作は問題なく,各ボタンへのキー操作割り当ても可能だった。実のところ,あまりに問題なく動作したので,特筆すべきところはない。
フライトスティックでフライトシミュレータをプレイするのは久しぶりだったので,着陸にずいぶん苦戦したが,やはりキーボードとマウスでプレイするのとは違って,飛行機を飛ばしているという感覚が楽しめた。
国内市場では非常にマイナーな周辺機器ということもあり,フライトスティックは高価な製品が多い。その点,TCA Sidestickは,実勢価格で1万円未満という比較的安価な製品なので,「久しぶりにフライトシミュレータを楽しんでみたいが,高価な製品を買うのはためらわれる」という人でも,手が届きやすいという点も評価できる。
MSFSで久しぶりにフライトシミュレータをプレイしてみようと考えているなら,TCA Sidestickを合わせて用意すると,さらにゲームを楽しめるのではないだろうか。
関連記事
2020年7月14日,Thrustmasterは,フライトシム用ジョイスティック「TCA Sidestick Airbus Edition」とスロットル「TCA Quadrant Airbus Edition」を国内発売すると発表した。いずれもAirbusの旅客機「A320」シリーズが搭載するサイドスティックやスロットルを模したデザインを採用したのが特徴だ。
[2020/07/14 13:47]