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  • 発表日:2006/03/07
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NVIDIA,nForce 500シリーズの詳細を発表 ゲームプレイ時におけるPingの値を下げる「FirstPacket」など機能満載
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印刷2006/05/23 13:01

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NVIDIA,nForce 500シリーズの詳細を発表 ゲームプレイ時におけるPingの値を下げる「FirstPacket」など機能満載

nForce 590 SLI搭載マザーボードを持つ,NVIDIAのチップセットビジネス担当ゼネラルマネージャー,Drew Henry(ドゥルー・ヘンリー)氏
 別記事でお伝えしているように,AMDはSocket AM2版のAthlon 64 FX/Athlon 64 X2/Sempronをリリースした。そして,これに合わせる格好で,NVIDIAは先に名称を発表していた「nForce 500」シリーズについて詳細を発表。ゲーマー向けといえる機能満載の新チップセットについて,今回は報道関係者向けに行われた事前発表会の内容を中心に説明していきたいと思う。

Socket AM2対応nForce 500シリーズのラインナップと位置づけ。「Enthusiast」「Performance」「Mainstream」はそれぞれ「ハイエンド」「ミドルレンジ」「ローエンド」と読み替えると理解しやすい
 今回,詳細が明らかになったのは,nForce 500のラインナップとなるnForce 590 SLI,nForce 570 SLI,nForce 570 Ultra,nForce 550の4モデルだ。最も分かりやすい違いとなるPCI Expressのレーン数と,NVIDIA SLIのサポート具合は,以下のとおりとなる。

  • nForce 590 SLI:ノースブリッジ(SPP)とサウスブリッジ(MCP)の2チップ構成を採用し,それぞれが16レーンのPCI Expressをサポート。nForce4 SLI X16の後継的な位置づけとされ,フルスペックのNVIDIA SLI(以下SLI)動作を行える。
  • nForce 570 SLI:nForcr4 SLIの後継で,MCPの1チップ構成ながら,16レーンのPCI Expressを「8レーンのPCI Express x16スロット×2」に切り替えられるようになっており,これによってSLI動作を可能にする。
  • nForce 570 Ultra:nForce4 Ultraの後継。PCI Express x16のレーン数分割をサポートせず,SLIの利用は不可。
  • nForce 550:nForce4の後継で,ローエンド向け。当然のことながらSLIは利用できない。

nForce 500シリーズ上位3モデルの主なスペック

nForce 500 Intel Editionのラインナップ。ローエンド向けのnForce 550は用意されない
 なお,NVIDIAはIntelプラットフォーム向けの「Intel Edition」も準備しており,これについては2006年6月のCOMPUTEX TAIPEI 2006で報道関係者向けのプレビューが予定されている。詳細はここで明らかになるはずだ。もっとも,ラインナップはnForce 550が用意されない以外,AMDプラットフォーム向けと同じ。対応CPUには開発コードネーム「Conroe」(コンロー)ことCore 2 Duoが含まれるようだ。

■「DualNet with Teaming」「FirstPacket」など
■オンラインゲームがより快適になる新機能が追加に


nForce 500マザーボードの例。このように,1000BASE-T LANコントローラの物理層を2個搭載して,デュアル1000BASE-Tを提供するのが,nForce 590/570シリーズでは定番となりそうである
 ここまでだと,nForce4をSocket AM2用CPU(あるいはCore 2 Duo)に対応させただけのような印象を持つかもしれないが,nForce 500シリーズを特徴づけているのは,SLIのサポートだけではない。
 では何かというと,非常に豊富な機能群である。とくにユニークなのは,ネットワーク周りを中心とした,いわゆるサウスブリッジの機能だ。

 NVIDIAは,nForce4で1000BASE-T LANコントローラの論理層(MAC)の内蔵を果たしていたが,今回nForce 500では論理層を2個内蔵し,これを「DualNet」と呼んでいる。DualNetによって,マザーボードメーカーは物理層(PHY)を2個用意するだけで,安価にデュアル1000BASE-T LAN対応マザーボードを作れるようになった。

 「二つの1000BASE-Tなんて,使い道あるの?」という疑問は当然生じ得ると思われるが,NVIDIAはこれに対する回答を二つ用意している。一つは,NVIDIAが「Teaming」と呼ぶ使い方。これは,二つの1000BASE-Tを束ねて,2Gbpsのポートとして使うというものだ。
 束ねるといっても,現実にはそれぞれ独立しているから,どちらかというと負荷分散的な使い方になる。例えばLANパーティなどで,ゲームサーバーがDualNetを利用すれば,多くのゲームクライアントと安定した高速な通信を行えるようになるとのこと。複数のクライアントを抱えるという意味では,ファイルサーバー用途でもメリットはありそうだ。
 もう一つは,いわゆるフェイルセーフ(Fail Safe)で,「どちらか片方のポートが使えなくなったとき,自動的にもう一方へ切り替える」といった形でも利用できる。

 さらに,ネットワーク周りについてゲーマーとして注目しておきたいのは「FirstPacket」と呼ばれる機能である。例えば「背後でゲームのデモ版などをダウンロードしつつ,オンラインゲームをプレイする」などという局面はあり得ると思うが,このように,ゲーム中にゲーム以外のパケットが流れると,ゲームのパケットがそれらに“埋もれて”しまい,結果としてゲームの応答速度が低下し,Pingの値が上がってしまうすることがある。こうしたことが起こらないよう,ゲームなどのアプリケーションから発生するパケットを優先的に処理するのがFirstPacketだ。これにより,最大50%もPingの値を低くできるという。海外サーバーに接続してゲームをプレイすることが多い人には,ひょっとすると福音になるかもしれない。

左:DualNet with Teamingの概念図。LANパーティやファイルの共有に最適という
右:こちらはFirstPacketの概念図。「FirstPacket Prioritizer」が,パケットの優先順位を切り替えてゲームのパケットを優先して送信する。それを「King of Ping」と言ってしまうあたり,さすがはマーケティングのうまいNVIDIAといったところか


 このほか目立ったところでは,Serial ATAのポート数が従来の4から6に増え,6台のHDDを利用したRAID 5環境を構築できるようになったり,High Definition Audioコーデックに対応したりといったアップデートも見られる。

■ハイエンドシステムのパフォーマンスを引き上げる
■NVIDIAの保証付きクロックアップ機能「LinkBoost」


 nForceシリーズは,伝統的に動作クロックを引き上げてシステム性能を引き出す方向の機能が充実しているが,それを一歩進めた形で用意されたものがある。それが,nForce 590 SLIのみで用意される「LinkBoost」だ。LinkBoostは,以下の条件が満たされている場合にのみ有効となる。

  1. nForce 590 SLIを搭載し,NVIDIAのリファレンス設計に従って製造されているマザーボードと,LinkBoost対応BIOS
  2. 2本のPCI Express x16スロットにGeForce 7900 GTXが差さって,SLI動作が可能な状態になっている

LinkBoostの概要を示すスライド。オーバークロックのためのヘッドルームを上昇させるというメリットもあるという
 要するに,NVIDIAの想定する最高の環境を満たす必要があるわけだが,このときGeForce 7900 GTXを接続する二つのバス,PCI Express x16とHyperTransportの動作クロックがそれぞれ25%引き上げられる。PCI Express x16バスのベースクロックは標準の100MHzから125MHzへ。HyperTransportも同じく標準の200MHzから250MHzになるのだ。結果として,PCI Express x16&HyperTransportのバス帯域幅はいずれも標準の8GB/sから10GB/sへと向上することになる。

 NVIDIAのテクニカルマーケティング担当であるTom Petersen(トム・ピーターソン)氏は,LinkBoostが,ハードウェアの規定以上のクロックで動作させる「オーバークロック」ではないと指摘する。「あくまでチップが規定するクロックの範囲内で行う。なぜなら,GeForce 7900 GTXとnForce 590 SLIのチップは,いずれもこのクロックで動作するように設計されているからだ。動作はもちろん保証される」(同氏)。GeForce 7900 GTXとnForce 590 SLIは,すべての個体が上で述べたクロックで動作することを前提に設計され,選別が行われているとのこと。マザーボードのリファレンス設計は6層基板が採用されており,信号線にはマージンのある設計がなされているという。

 実際,説明会ではHon Hai Precision IndustryのFoxconnブランド製マザーボードを利用したデモが行われ,nForce 590 SLIとGeForce 7900 GTXのSLI環境で,クロックが上昇する模様などが公開された。なお,動作クロックは手動で設定可能となり,(これはオーバークロックになるので動作保証外になるが)例えばHyperTransportバスは,最高500MHzまで設定値を引き上げることも可能だそうだ。

左:LinkBoostで動作している時のBIOS画面。その旨が表示され動作クロック25%増しになっているのが分かる
右:nForce 590 SLIのリファレンスデザインは6層基板の採用が前提となっている


■独自のメモリ規格「EPP」で
■比較的安全なメモリのクロックアップが可能に


EPPの概要。EPPは,SPDの上位互換的な扱いだ。このため,EPPに対応していないマザーボードでは単なるSPDとしてのみ動作する
 システム速度を引き上げる試みは,「EPP」(Enhanced Performance Profile)として,メインメモリ周りでも行われている。

 EPPについて説明する前に,「SPD」(Serial Presence Detect)という存在について説明したい。コンピュータ業界には,メモリの標準化を行っているJEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)という団体があるのだが,このJEDECの標準仕様「JEDEC Standard)に従っているメモリモジュールには,CASレイテンシなど,メモリの動作パターンが書き込まれたROMが搭載されている。このROMがSPDで,マザーボードのBIOSは,起動時にSPDからメモリのスペックや設定を読み出し,メモリアクセス時に利用することで安定した動作を図るのである。

デモでは,BIOSからSLI-Ready Memoryと認識され,有効化することで,自動(Auto)設定を行ったり,比較的大ざっぱな手動設定を行ったりできることが紹介された
 以上を踏まえて話を元に戻すと,NVIDIAは,メモリモジュールメーカーのCorsair Memoryと協力して,SPDをベースに,独自拡張を加えたEPPを策定した。EPPでは,従来のSPD情報とは別に,より高いパフォーマンスを得るために適した設定が書き込まれている。そして,EPP対応BIOSを搭載したマザーボード――現時点ではnForce 500シリーズ搭載マザーボードだけだ――を利用した場合に限り,この拡張設定が利用できるようになっている。

 従来,メモリモジュールのオーバークロック,あるいはローレイテンシ設定というものは,細かいパラメータをユーザー側で設定する必要があった。これに対し,EPP対応メモリモジュールとnForce 500シリーズ搭載の対応マザーボードを利用すれば,“あらかじめメーカーが用意してくれたオーバークロック設定”を,手軽に試せるようになる。メモリというハードウェアの細かいことは勉強したくないけれども,オーバークロックにはチャレンジしてみたいという人にとっては,興味深い機能といえるだろう。

TWIN2X2048-8500C5の概要
 ちなみにNVIDIAとCorsair Memoryは,このEPP対応モジュールを「SLI-Ready Memory」として訴求していく予定。すでにCorsair Memoryは“PC2-8500”相当(1066MHz動作)に対応した「TWIN2X2048-8500C5」というSLI-Ready Memoryを用意しており,これをnForce 500シリーズ搭載マザーボードと組み合わせれば,EPPを利用できるようになる。
 もっとも,Athlon 64側に1066MHz動作のメモリ設定はないので,TWIN2X2048-8500C5を1066MHzで動作させるには,CPUクロックとメモリクロックが同期していることを利用して,CPU側をオーバークロック動作させる必要はあるわけだが。

■nTune 5.0でオーバークロックはより簡単に

スライドで示されたnTune 5.0のUI。これは「Adjust Motherboard Settings」のものだが,かなり細かい部分まで設定可能なようだ
 nForceチップセットを利用した,メーカー保証外のオーバークロック機能としては,Windows上で利用できる「nTune」が知られている。NVIDIAが提供する“公式”オーバークロックツールも,nForce 500シリーズに合わせてバージョンが大きく上がり,「nTune 5.0」となった。

 従来バージョンが2.05.15.08だから,軽く二足飛び以上の進化ということになったnTune 5.0では,新しいユーザーインタフェース(以下UI)「NVIDIA Control Panel」が採用されている。これは,リーク版のForceWareでいくつか見られたのと同じ,Windows XPのコントロールパネルに似たUI。NVIDIAの次世代ForceWare「Release 90」で採用される予定のグラフィックスチップ用設定UIと,デザインが共通化されているという。

 さて,nTune 5.0を利用すると,HyperTransportバスやPCI Expressバスのベースクロック,CPUの動作クロックや倍率,メモリの動作クロックやレイテンシなどをWindows上から変更可能になる。ここまでは従来バージョンとそれほど変わらないが,nTune 5.0ではアプリケーションごとに設定をプロファイルとして保存し,切り替えて利用するという使い方ができるようになった。要するに,一般的なWindowsアプリケーション利用時は標準設定のまま,特定の3Dゲームをプレイするときだけ,“オーバークロック用プロファイル”を用いる,といったことが可能になっているのだ。

左:ややボケていて申し訳ないが,これは「Adjust Custom Rules」。アプリケーションごとにプロファイルを切り替えられるようになっている
右:これはnTune 5.0に付属するシステムモニターを半透明にして,アプリケーションに重ねて表示しているデモ


■スペックはかなり魅力的
■安定度次第ではゲーマーの有力な選択肢に


 まとめよう。LinkBoostはnForce 590 SLIのみ,それ以外の機能はnForce 570 Ultra以上で利用できる。ローエンド向けのnForce 550では,1000BASE-T LAN MACが1,Serial ATAポート数も4に制限されるなど,機能面でかなりの省略があり,ゲーマーとしては無視していいと思われる。

 搭載マザーボードの出荷はSocket AM2対応CPUと同時になる予定とされており,早ければ本日,遅くとも今週中には,PCパーツショップの店頭にマザーボードが並んだり,PCショップで搭載PCの販売が始まったりするのではなかろうか。Socket AM2版Athlon 64シリーズのパフォーマンスは別記事を参照してもらうとして,チップセット側の機能面,とくにネットワーク周りはゲーマーにとってかなり魅力的。nForce4で課題とされていた安定度がnForce 500シリーズで解決の方向へ向かえば,マニアやハイエンド自作ユーザー向けというポジションから脱し,ハイエンドからミドルレンジ,さらには初心者まで,多くのゲーマーへ勧められるチップセットになりそうな気配だ。(笠原一輝)

  • 関連タイトル:

    nForce 500

  • 関連タイトル:

    Athlon 64

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