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印刷2016/12/28 12:00

インタビュー

「マブラヴ」原作者の吉宗鋼紀×マフィア梶田×BRZRK対談――大ボリュームのインタビューから吉宗氏の人物象を掘り下げた前編をお届けしよう

「マブラヴ」ワールドを続けるための次の一手


マフィア梶田:
 なるほど。それにしても,ようやくその「マブラヴ」について話ができそうですが,ここまででお腹いっぱいというか,もうインタビュー1本分くらいの内容になってますね……。

画像集 No.017のサムネイル画像 / 「マブラヴ」原作者の吉宗鋼紀×マフィア梶田×BRZRK対談――大ボリュームのインタビューから吉宗氏の人物象を掘り下げた前編をお届けしよう
吉宗氏:
 あと8時間くらい話せますよ(笑)。

マフィア梶田:
 マジっすか……そうだ,「マブラヴ」と言えば,現在DMM GAMESさんで「マブラヴ オルタネイティヴ ストライク・フロンティア」(以下,ストライク・フロンティア)がサービスインしているじゃないですか。ここまで聞いた吉宗さんの仕掛けから考えると,これにも何か,ソーシャルゲームである存在意義というか……仕掛けがあるのかなと感じるのですが。旧来のファンが結構プレイされているんですよね?

吉宗氏:
 おかげさまで事前登録が34万人だそうで,えらく緊張しました。仕掛けというか意義的なもので言うと……そうですね,アージュが次の勝負をするためのステップであり,そのノウハウのリサーチという感じですかね。

BRZRK:
 となると,ソーシャルの次を見据えていると?

吉宗氏:
 順番に説明すると,以前「マブラヴ オルタネイティヴ ネクストアンサー」というガラケー向けのサービスをやっていただきました。それを側で見ながら,モバイル向けの作り方,運営などを学ばせていただきました。
 あのゲームを最後まで支えてくれてたプレイヤーさんが何にコミットしていただいていたかというと,キャラとのコミュニケーションパートだったんです。やはりキャラクターとその関係性,コミュニケーションは強いんだなと実感しました。

マフィア梶田:
 ふむふむ。

吉宗氏:
 次に「ストライク・フロンティア」ですが,こちらはゲーム性をフィーチャーした仕様でやっていただいています。それを近くで見せていただくことで,ブラウザゲームの傾向と運営ノウハウを勉強させていただいています。これまでアージュはネットメインのコンテンツ展開をやってきていませんでした。今はもう基本プレイ無料から課金体制,窓口があってと,総合的なシステムの運用を学ばなければならないと考えています。

BRZRK:
 意外ですけど,そう言えばウェブではやってないですよね。

吉宗氏:
 今後の新作などでアージュがガッツリと制作に関わろうとするなら,ネット環境のスタンダードを習得することは必須です。もちろん,いま得ているノウハウをそのまま使えるとは思っていませんが。

マフィア梶田:
 ノウハウの吸収は大事ですね。

吉宗氏:
 僕はソーシャルゲームを「ゲーム」ではなく「コミュニケーションツール」なのだと理解しています。ですから,新作としてのソーシャルゲームが稼働していることの意味は,「進撃の巨人」(※作者がマブラヴの影響を受けていると明言)や「マブラヴVR」,テレビアニメ「シュヴァルツェスマーケン」などで「マブラヴ」を知ってくださった方々の受け皿として機能してほしいというものなんです。もっと言えば,「マブラヴ」ワールドの入口のひとつですと。
 ですから,間口を最大限広く取るために「『マブラヴ』本編ではできないことを絶対に入れる」という大方針があるんです。だからこそ,僕がそこに深く関わってはいけないと考えています。

マフィア梶田:
 やろうというものがあるのに,関わってはいけない,ですか。

吉宗氏:
 「マブラヴ」は簡単に言うと,クトゥルフ神話のように,シェアードワールドの元ネタを目指したというか,いろいろな作家にあの世界観で遊んでもらい,自分の作品を作るステージになってもらいたいと考えてきました。だからこそ並行世界の設定が練り込まれています。
 ところが,ありがたいことに「マブラヴ」「マブラヴ オルタネイティヴ」を愛するが故に,原作との整合性こそ最重要という熱狂的なファンの方々が存在し,彼らが我々を支えているという現実があります。コアユーザーも新規ユーザーも大切です。だからこそ,「仕様上の制限で原作準拠できなくて当然」という共通認識があるソシャゲー環境は,ある意味願ったり叶ったりなんです。「アージュマニアックス」のように,いろいろと試すことが許されますから。

BRZRK:
 あー,なんか納得です。そういう立ち位置のゲームなんですね。「オルタ世界」に2016年のガジェットを持ち込んだら……というシェアードワールドだと考えればいいのか。

「マブラヴ オルタネイティヴ ストライク・フロンティア」
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主人公たちがBETA世界に持ち込んだスマートフォン。それを解析した夕呼先生がゲームを制作し,主人公達にひたすら遊ばせるという状況に。その目的とは……?
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マフィア梶田:
 だから吉宗さんが,そのワールドの構築には関わらなかったと。

吉宗氏:
 そうです。そんな「ストライク・フロンティア」の今年から来年の展開なんですが……,これ言っていいのかな? 

マフィア梶田:
 お? なんでしょう。

吉宗氏:
 えっと,年内は覚醒/OS換装といったキャンペーンが始まっていて,衛士と戦術機の能力がすごく向上します。すでに持っているカードにもアップデート後に順次反映されます。それに加え,本来ならサービスインの時に実装する予定だった仕様,マルチプレイがいよいよ実装されます。

BRZRK:
 おっと,マルチプレイですか?

吉宗氏:
 ええ,ほかのプレイヤーと小隊を組んで敵と戦うという感じですね。あと,来年早々には「シュヴァルツェスマーケン」のキャラクターの実装が計画されています。

BRZRK:
 シュヴァケン来ますか!

吉宗氏:
 先ほどもいいましたが「ストライク・フロンティア」はある意味受け皿ですので,ソシャゲ新規向けには「ストライク・フロンティア」専用の新ヒロインを,テレビアニメ新規向けに「シュヴァルツェスマーケン」のキャラを準備するんです。まあ遅すぎるぐらいですが(笑)。ゲームの後編(シュヴァルツェスマーケン 殉教者たち)もありましたので,このタイミングになりました。

BRZRK:
 既存のファンに関してはいかがですか?

吉宗氏:
 ぶっちゃけて言えば,旧来のファンがソシャゲで満足するとは思っていません。二次創作的に楽しんでいただくと同時に,「新規ユーザー獲得のためにご協力をおねがいします」と生放送などでお願いしてるぐらいです(笑)。「マブラヴ」既存ファンが何を求めているか。それはずばり「オルタ2」か「マブラヴ」本編のアニメ化でしょうね。

マフィア梶田:
 おお!

BRZRK:
 いや,まったくそのとおりですっ!

吉宗氏:
 ただ,それはどちらも滅茶苦茶カロリーがかかりますよね。ここで言うカロリーってのは,諭吉なわけですけども(笑)。

マフィア梶田:
 まあ,かかりますね。カロリーは。

吉宗氏:
 その資金を自前で稼がない限り,ユーザーが求めている「マブラヴ」は,アニメにせよ,ゲームにせよ2度と作れません。これまでにもお話ししたとおり,他所様のお金で作る限りは,他所様の利益を優先し,言うことを聞く責務が伴います。
 「マブラヴ」や「マブラヴ オルタネイティヴ」は6億以上のお金を自前で準備したからこそやれた,採算度外視のタイトルで,経営的には誰もやらない最低の愚策です。その純粋性を再現するためにも,今の時期はソーシャルゲームを主軸に据える必要もあると考えています。

BRZRK:
 スポンサーの言に左右されないために,アージュがお金を出して作る純粋な「マブラヴ」作品ってことですね……。

吉宗氏:
 現状「マブラヴ」はアージュで一番名の通ったコンテンツですが,「ストライク・フロンティア」の初期登録が34万人。明らかに既存ユーザー数を超えています。

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マフィア梶田:
 それだけいるわけですから,そこのニーズも外せない。彼らの要望に応えながら「マブラヴ」を続けていかなければならない,と。

吉宗氏:
 そうです。だからこそ既存ファンの皆さんには,「オルタ2」やアニメ化を後押しする意味で,「ストライク・フロンティア」などの展開を応援してほしいと思っています。そのためにはゲーム自体をもっと面白くしていく必要がありますが,内容や設定の違いなどをむしろ楽しんでいただければ嬉しいですね。

マフィア梶田:
 そこは,これまでの説明で納得してもらえるんじゃないでしょうか。

吉宗氏:
 アニメだの「マブラヴ2」だのの話は,“やるやる詐欺”だと思う方も多いと思います。それを信じてもらうには難があるのも重々自覚しています。ですが、次の手は実際に動き始めていますので,これを正式発表できるように着地させるのが今のミッションですね。

BRZRK:
 おっと,それは……どの“次”なのかが気になりますね。

マフィア梶田:
 どれが,というのはまだ言えないですよね?

BRZRK:
 フィンランド人ハーフの僕としては,ロヴァニエミハイヴでフィンランドが崩壊していくのを見てみたいですが!

吉宗氏:
 イルマ・テスレフ推しですね(笑)。とにかく,まだ詳しく言えませんが,そこには「ストライク・フロンティア」で得たものも流れていますので(笑)。

マフィア梶田:
 じゃあ,アニメや「オルタ2」のために「ストライク・フロンティア」をぜひといった感じですか?

吉宗氏:
 なんというか、「スターウォーズEp7」を見ても,コンテンツは続けていくことが最強であり,守りながら変化していくことが重要だと思います。古参ファンを切り捨てることなく,新しいファンを獲得していかなければコンテンツとして終わってしまいますから。なので,これからの「マブラヴ」は,ファンの皆さんも一緒になってコンテンツの未来を作っていってほしいと思います。

BRZRK:
 「ストライク・フロンティア」がその一助になるかもしれないと。

吉宗氏:
 課金式のソシャゲやクラウドファンディングがある時代になった今だからこそ,こういうことは話しやすくなったと思うんです。ユーザー不在で準備されたものを受け取ってどうこう言う時代はとっくに終わりました。これからは,この段階でこうやって作っていくというプロトタイピングを公開しながら,コンテンツへの資金投資のやり方も,直接間接問わず,作り手とお客さんが一緒に考えて作る時代になったんだと思います。

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BRZRK:
 確かに,一昔前だったら下世話な話をするなと言われましたけど,クラウドファンディングのおかげで,開発・制作資金といった部分については話しやすくなった感じがありますね。

吉宗氏:
 いまは,欲しいものをオーダーメイドで作れてしまう時代ですからね。「ストライク・フロンティア」の来年の話ついでに,4月か5月くらいになるかな……?

BRZRK:
 何でしょう?

吉宗氏:
 オリジナルの新キャラクター追加が計画されています。

BRZRK:
 オリジナルとなると,アニメとか「オルタ2」と関わるキャラクターとかだったりします?

吉宗氏:
 んー! それは,どうでしょうね!(笑)

マフィア梶田:
 さすがにまだ言えないですか(笑)。

4Gamer:
 ちなみに,次の大きな動きについて正式に発表されるのは,いつ頃の話になるのでしょうか?

吉宗氏:
 来年の4月以降とかですかね?

BRZRK:
 えっ,このインタビュー,年内とかに掲載されると思うんですけど大丈夫なんですか?

吉宗氏:
 「マブラヴ」の対談なんて,4Gamerさんに直近のメリットないことをやってくれてるんですから,こちらとしてはそれなり手土産を用意しないと筋が通らないじゃないですか(笑)。普通に考えても,ネットのゲームメディアとして大きな4Gamerさんにいい情報を出すのは広報的に当然ですし(笑)。

4Gamer:
 そう言っていただけるとありがたいです。

BRZRK:
 いやぁ,4Gamerで「マブラヴ」頑張りますか。

マフィア梶田:
 これからの展開を追うというのも需要ありそうですし!

吉宗氏:
 あ〜,うちのコンテンツ。そんな,ちょくちょく展開しないので……人生相談のコーナーを連載とかでもいいすか?(笑)

BRZRK:
 それ絶対面白そうですね。

4Gamer:
 マジかー……持ち帰って検討します。

一同:(笑)

吉宗氏:
 ちょっと脱線してしまいましたけど,「ストライク・フロンティア」はようやく当初考えていた仕様が揃い始めるので,やっと梶田さんにも遊んでもらってツイートもしてもらえるかな,と(笑)。

マフィア梶田:
 そこからが本番ということでいいんでしょうか?

吉宗氏:
 でしょうか?(同席していた担当者を見ながら)

担当者:
 はい,皆様により楽しんでいただける物にパワーアップしてまいります!

吉宗氏:
 先の話と矛盾するように聞こえますが,僕も新キャラの設計など,部分的にガッツリ協力させていただくことになっています。冬コミのアージュ企業ブースで販売する「マブラヴ オルタネイティヴ ルナティック・ドーン」(※)のTSFII(Tactical Surface Fighters in Illustration。「マブラヴ」サイドストーリーのひとつ)では,オルタ後の硫黄島を舞台に,米国海兵隊と日本帝国海兵隊の共同演習エピソードが描かれています。そこで登場する帝国海軍仕様のF-35に搭乗する新キャラなども,その関連ですのでぜひチェックしてみてください。

※「マブラヴ」シリーズの世界設定公式副読本

マフィア梶田:
 ほお。期待値が高まるのでプレイするしかないですね。

BRZRK:
 そういえば,「ストライク・フロンティア」の面白い要素としてCP(コマンドポスト)専用キャラクターを編成に組み込めますよね。あれって風呂敷を広げると,本来CPではないキャラクターもあの位置に立たせることができると思うんですよ。

吉宗氏:
 お,鋭い(笑)。

BRZRK:
 それだけでなく,「マブラヴ」の本編で出てくるけどチョイ役みたいな人もいるじゃないですか。そういったキャラクターを実際に使ってみたら有能じゃん! ってのがあったら嬉しいかな,なんて。例えばXP(食堂)の京塚曹長なんて飯をさばく能力が高いので,人もうまく扱うんじゃ? なんて妄想したりしてるんですよ。

吉宗氏:
 確かに段取りとかもうまそうですよね。まさにトヨタ流の改善。それ,やりましょう(笑)。

マフィア梶田:
 カオスですけど面白そうですね(笑)。

吉宗氏:
 そこまで作り込めば……きっと梶田さんがプレイしてツイートしてくれるはず!

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マフィア梶田:
 いや,単純にプレイする時間が取れなくて触れてないだけで,他意はないですよ? いや,本当にないですからね?

一同:(笑)

吉宗氏:
 とにかく,蒔島梓先生による電撃大王最長連載記録にして現状最新の「マブラヴ」が電撃大王で掲載中ですが,もう,あ号標的との戦いを描いていて,もうすぐ完結なんですよ。そうなると,そこで一区切り感が出ちゃうじゃないですか。そのためにも,「ストライク・フロンティア」で分厚くやることで終わってない感を出しつつ,次の大きな展開発表してうまくつなげたいんですよね。

BRZRK:
 でも,いろいろと仕込みが大変そうですね。

吉宗氏:
 そうなんですよ。だから早い段階で“吉宗鋼紀の新作”が「マブラヴ」とは異なるラインで,ソーシャルに向けて2,3本仕込まれているって発表したいんです。

マフィア梶田:
 えっ!? それは吉宗鋼紀コンテンツのソーシャルゲームですか?

BRZRK:
 ていうか,いま話しちゃってますけど,いいんですか……?(笑)

吉宗氏:
 まあ,具体的には何も言ってませんから。

マフィア梶田:
 そちらはどういった感じの作品に?

吉宗氏:
 さすがに今そこまで話したらヤバイですよ。消されます(笑)。

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BRZRK:
 時期がきたら……こっそりでも良いので教えてくださいね!

4Gamer:
 そろそろ2時間近くになるので,ここでちょっとひと息入れましょうか。

BRZRK:
 これ前半なんですか。楽しいけどまとめるのが怖い……。まあ,ともかく後半ではいよいよ「マブラヴ」そのものについて,いろいろ聞いちゃいましょう。

マフィア梶田:
 なんだか話の腰を折っちゃってみたいで。

吉宗氏:
 いえいえ,「ストライク・フロンティア」のことは年内に話したかったので良かったです!


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