レビュー
年末年始に懐が温かいあなたへ捧げる,4万円以下のGPU購入ガイド
GeForce 8800
GeForce 8600
ATI Radeon HD 3800
ATI Radeon HD 2600
» 2007年に登場したGPU新製品を振り返りつつ,2007年12月末版のグラフィックスカード購入ガイドをお届けしたい。ターゲットは,1万5000〜4万円程度,つまりエントリーミドルレンジ〜エントリーハイエンド,ざっくりとミドルレンジ全般。何かと入り用な年末年始だが,懐具合に余裕のある人,最近プレイしたゲームでPCのパフォーマンス不足を痛感した人は,ぜひチェックを。
NVIDIAからは「GeForce 8800 GT」,そしてAMDからは「ATI Radeon HD 3870」と「ATI Radeon HD 3850」。コストパフォーマンスを追求したミドルクラスGPUが立て続けに登場したことで,この冬,1万5000円〜4万円という(広義の)ミドルレンジ価格帯におけるグラフィックスカードは,かなり賑やかな様相を呈している。
では果たして,ゲームパフォーマンスを重視したとき,どのGPUが2007年末〜2008年初頭における最適な選択肢となるのか,テストによりその指標を示したいと思う。
テスト対象のグラフィックスカードは11枚
主価格帯が1万5000〜4万円内でチョイス
というわけで,今回取り上げたGPUのリファレンス仕様を表1,2のとおり,ざっとまとめてみた。「実勢価格」とあるのは,2007年12月28日時点における,搭載カード市場売価の目安なので,おおよその参考にしてほしい。
そのほかテスト環境は表3のとおり。グラフィックスドライバには「ForceWare 169.21」と「ATI Catalyst 7.12」,NVIDIAとAMD両社の公式最新ドライバを利用している。
以下,とくに断りのない限り,グラフィックスカードの製品名ではなく,GPU名で表記し,グラフ中は「GeForce」「ATI Radeon」の表記も省略。テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション5.1準拠だが,GeForce 8800 GTとグラフィックスメモリ320MB版GeForce 8800 GTS(以下,GeForce 8800 GTS 320),ATI Radeon HD 3870/3850の4製品以外では「高負荷設定」のテストを行わないことも,(理由は後述するが)併せてあらかじめお断りしておきたい。
EAH2600XT D4/HTDI/256M GDDR4搭載版2600XT,リファレンス仕様 メーカー:ASUSTeK Computer 問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) [email protected] |
上位4モデルと下位7モデルで
パフォーマンスには明確な違いが
さっそくテスト結果の検証に入ろう。グラフ1,2は「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06)の結果だが,一目瞭然。ATI Radeon HD 3850以上の4製品と,それ以外の7製品で,スコアが大きく異なる。先ほど,この4製品でしか高負荷設定のテストは行わないと述べたが,その理由は,下位7製品で高負荷設定を行うと,ゲームにならないフレームレートしか出ない可能性が高いからだ。
ひとまずここでは,「GeForce 7900 GSやATI Radeon X1950 Proのユーザーが買い換えるなら,上位4製品しかない」こと,「GeForce 7900 GSやATI Radeon X1950 Proレベルを狙おうとしていたのであれば,GeForce 8800 GTSやGDDR4メモリ搭載版ATI Radeon HD 2600 XT(以下,ATI Radeon HD 2600 XT D4)あたりでも大差はなさそう」なことが窺える。
続いてグラフ3,4はFPS,「Crysis」の平均フレームレートをまとめたものだ。3DMark06と同様にパフォーマンスが2局化している点に注目したいが,Crysisに関しては,とくにGeForce 8800 GTのパフォーマンスが頭一つ抜きん出ている。
なお,高負荷設定時には,1280×1024ドットでGeForce 8800 GTS 320のスコアが大きく落ち込み,さらに1600×1200ドット以上でPCが強制終了する問題が発生した。用意した別の個体に変えても症状は変わらなかったので,ドライバかゲーム側の問題と思われる。最新ゲームタイトルらしい問題で,(2007年中に出る出るといわれながら,結局2008年にズレ込んでしまった)パッチのリリースに期待したいところだ。
なお,下位7製品にはスコアに相応のバラツキが出ているが,標準設定の1024×768ドットでも最高で19.7fps。FPSをプレイするには足りない印象だ。
ゲーム側にアンチエイリアシング設定がなく,標準設定のスコアだけとなるが,FPS「Unreal Tournament 3」(以下UT3)の結果を見てみよう(グラフ5)。
Core 2 Duo E6850/3GHzを用いた今回のテスト環境では,120fps前後が飽和点になるようで,1024×768ドットだとGeForce 8800 GTとGeForce 8800 GTS 320の間にスコアの差がほとんどない。GeForce 8800 GTは1600×1200ドット以上でスコアが大きく落ちるのに対して,ATI Radeon HD 3870/3850はそうでもない点も,なかなか興味深い。
下位の7枚に目を向けると,レギュレーション5.1で規定されている“合格点”60fpsをクリアしてきているのは,1024×768ドット時のGeForce 8600 GTSとATI Radeon HD 2600 XT D4,ATI Radeon X1950 Proのわずか3枚。UT3では,ゲーム側のグラフィックスオプションを落としてでもフレームレートを確保すべきなので,実際のゲームプレイでは同条件で50fps台のGPUでも問題ないはずだが,最高のグラフィックス設定を行いたい場合は,このスコアを憶えておくべきだろう。
もう一つFPSから,グラフ6,7は「Half-Life 2: Episode Two」(以下HL2 EP2)の結果である。ここでも,145fps前後でUT3と同様の頭打ちが見られる。そのため,1280×1024ドット以下の解像度だと,上位4モデルの間で大きな差は表われていない。また,Half-Life 2シリーズは,ATI Radeonへの最適化が行われていることで有名だが,とくにATI Radeon X1950 Proのスコアが良好であること,ATI Radeon HD 2600 XTがGeForce 8600 GTSを上回っていることなどは,再確認しておいたほうがよさそうだ。
TPS「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」から,よりゲームプレイ時における実際のフレームレートに近いスコアを取得できる「Snow」のスコアをまとめたのがグラフ8,9だ。やはり上位4モデルがほかに大差を付けているが,低解像度(=低描画負荷時)では上位4製品の差も大きい。
下位7製品では,GeForce 8600 GTSとATI Radeon X1950 Proが,1024×768ドット時になんとかゲームになりそうなスコアを出している。
RTS「Company of Heroes」の結果がグラフ10,11となる。傾向そのものはCrysisとよく似ているが,最新世代のFPSやTPSほどには“重くない”Company of Heroesだけに,1024×768ドット設定時には,多くのGPUが合格ラインの60fpsをクリアしている。
なお,高負荷設定時にATI Radeon HD 3870のスコアが極端に低く,ATI Radeon HD 3850を下回っているが,別の個体を用意しても,過去のドライバを用意しても問題は発生したので,これはゲーム側の不具合だろう。
パフォーマンス検証の最後は,「RACE 07: Official WTCC Game」(以下RACE 07)の結果だが,ここで目に付くのが,スコアを取得できなかったことを示すN/Aの多さである(グラフ12,13)。デベロッパのSimBin Developmentも認めているのだが,最近のATI Catalystでは画面表示がおかしくなってしまい,マトモなスコアを取得できない(※念のため断っておくと,レギュレーション5.0採用時点で試したATI Radeonとドライバでは,問題なく動作していた)。最新ゲームタイトルだけにやむを得ないが,RACE 07の公式フォーラムでは「パッチで修正する」と宣言されているので,近々解決するはずである。なお,GeForce 8800 GTS 320のトラブルは,Crysisと同じような感じだ。
というわけで,現時点では微妙なグラフとなったが,GeForceファミリーではGeForce 8800 GTのスコアがやはり突出。GeForce 8600 GTSと同7900 GSの違いはあまりなく,ほかのタイトルとおおむね似た傾向を示している。
アイドル時におけるPowerPlayは大きなメリット
上位陣には高負荷時の温度対策が必須か?
4Gamerのハードウェアレビュー恒例,ワットチェッカーによるシステム全体の消費電力検証に入ろう。OSの起動後,30分間放置した直後を「アイドル時」,3DMark06を30分間リピート実行し消費電力が最も高かった時点を「高負荷時」として,各時点の消費電力をまとめたのがグラフ14だ。
まず注目したいのはアイドル時の消費電力である。上位4モデル中,ATI Radeon HD 3870/3850が非常に低い。GeForce 8800 GTを大きく下回るだけでなく,GeForce 7900 GSやATI Radeon X1950 Proすらしのいでいるが,これは「ATI PowerPlay」という省電力機能の効果で,高く評価できるポイントといえる。ATI PowerPlayの詳細は2007年11月15日の記事を参照してほしい。
高負荷時にはさすがに消費電力が増していくが,それでもATI Radeon HD 3850はATI Radeon X1950 Proを下回っている点は特筆できよう。なお,下位モデルは見事に「ドングリの背比べ」だ。
グラフ14時点におけるGPU温度を,モニタリングツールである「ATITool 0.27β3」で測定した結果がグラフ15である。テスト環境は室温20℃で,ケースに組み込まないバラックの状態で計測したものだが,今回テストに用いたGeForce 8800 GTとATI Radeon X1950 Pro(=EN8800GT/G/HTDP/512M/R2とRX1950PRO-E256HW)は,温度センサーを搭載しておらず測定できなかった。そこで,同じ環境条件でテストした「GeForce 8800 GTS 512」のレビュー記事から,リファレンスデザイン版GeForce 8800 GTカードのスコアを流用した。
さて,スコアを見てみると,ATI Radeon HD 2600 XT D4が若干高めであるほかは,アイドル時にそう大きな問題はない。しかし高負荷時になると,参考値のGeForce 8800 GTも含め,上位モデルの温度は高めになっていく。GeForce 8800 GTはリファレンスクーラーの性能不足,ATI Radeon HD 3870/3850はファン回転数が自動的に低く抑えられていることに起因する。
旧ミドルレンジ製品は今や微妙
価格重視でHD 3850,性能重視で8800 GTがオススメ
以上の結果からまずいえることは,ことゲームパフォーマンスに関して述べるなら,GeForce 8600シリーズやATI Radeon HD 2600シリーズ,そして“2006年のアッパーミドルクラス2製品”を選択する意味はほとんどないということだ。上位と下位の圧倒的なパフォーマンス差を鑑みるに,1万円台の予算しかないという人にお勧めできる製品は,残念ながらない。ぜひ頑張って,安価なものなら2万円台前半から購入できるATI Radeon HD 3850搭載カードを入手してほしい。それほど消費電力が高くないため電源ユニットをあまり選ばず,(タワー型PCなら)カードの差し替えだけで動作する可能性が高い点も,“コスト重視のアップグレード”という観点から歓迎できる。
そして,4万円以内でより高いパフォーマンスを求めるというのであれば,もうこれはGeForce 8800 GTしかない。リファレンスクーラーでは高負荷時にGPU温度が高くなってしまうが,この問題に対処した,より冷却能力の高いクーラーを搭載する製品がカードベンダー各社から登場しており,導入のハードルはかなり低くなった。人気の高さから各社が参入したことで,店頭売価もかなり下がってきているという追い風もある。
もっとはっきり述べると,3万5000円程度の費用を出せるのであればGeForce 8800 GT,出せないならATI Radeon HD 3850。これが今,オススメのGPUだ。年末年始にPCのアップグレードを考えているのであれば,この2製品を軸に考えるのを勧めたい。
- 関連タイトル:
GeForce 8800
- 関連タイトル:
GeForce 8600
- 関連タイトル:
ATI Radeon HD 3800
- 関連タイトル:
ATI Radeon HD 2600
- この記事のURL:
キーワード
Copyright(C)2006 NVIDIA Corporation
Copyright(C)2007 NVIDIA Corporation
(C)2007 Advanced Micro Devices, Inc.