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「Virtual World Summit 2007」開催,Second LifeとポストSecond Lifeの開く世界は?
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印刷2007/10/17 23:00

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「Virtual World Summit 2007」開催,Second LifeとポストSecond Lifeの開く世界は?

Million of Us CEO ルーベン・スタイガー氏
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 本日(10月17日)より2日間,東京両国KFCホールで「Virtual World Summit 2007」が開催されている。この催しは,「Second Life」に代表されるようなネットワーク上の仮想空間サービス全般に関係した企業のトップやクリエイターが集合して,Virtual Worldの今後について語り合うといった内容のもの。Virtual World業界を代表する面々が世界中から集まり,かなり特殊な分野にも関わらず会場は多くの来場者で賑わった。
 キーノートスピーチでは,Million of Us CEOのルーベン・スタイガー氏(元Linden LabのビジネスプロデューサでSecond Lifeを成功させた立役者の一人)は,「アバター世代〜バーチャルワールドが今の文化に与える影響とビジネスチャンス」と題した講演を行った。

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 スタイガー氏が最初に示したのは,キャンプファイヤーの写真だった。人々が集まって語り合う形の最も原始的なものだという。こういったコミュニティの形成をスタイガー氏は重視しているようだ。もう1点,氏が重視していたのは,テクノロジーの進化である。1985年に発表されたHabitatの画面と2005年に登場したSecond Lifeを挙げ,20年の進化を示すとともに,ムーアの法則や自動車の進化などを挙げて,数年先,10年先には映画の中に足を踏み入れたような世界が実現するだろうと語った。
 また,テレビの発明者フィロ・T・ファンズワースが電子式テレビの実験に成功したのが1927年。近代メディアは,ここから始まっており,その80年後,ファンズワースがテレビを発明した場所にはLinden Labの本社があるという。Linden Labの玄関の写真が示されたが,そのドアに映っている建物がまさにファンズワースの記念館なのだそうだ。

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 またスタイガー氏は,インターネットの31%はソーシャルネットワークなどのコミュニティで使用されているというデータや「広告に書かれていることを信用する人は4人に1人だが,知人からの情報は3人に2人が信用する」といった言葉を挙げ,コミュニティの重要性を改めて強調した。
 インターネットでコミュニティが求められている理由を,氏は次のように分析している。メディアの進化により,世界中の情報がどこにいても瞬時に手に入るようになったものの,その一方で,人と人の距離は広がっていく傾向にある。その過程でなにか大切なものをなくしている。そして,Virtal Worldは,このように失われつつあるコミュニティを再構築していくものとして期待されているわけだ。
 スタイガー氏は,数多くの企業ブランドをSecond Life内で宣伝することに成功している。その基本的な方法は,コミュニティを作ることのようだ。いくつもか例を紹介しよう。その企業が扱っているのはお酒であった。仮想世界ではあまり意味のないものである。スタイガー氏は,Second Life内にバーを作り,そこで酒場の雰囲気で酒を勧めたり,乾杯したりといったソーシャルインタラクションができる場を設けたのだそうだ。それが,それまでお酒を扱う習慣のなかったSecond Lifeで広まり,大きな効果を挙げたという。マイクロソフトのVisualStudioを扱ったときは(開発ツールなので,製品自体に面白い要素はない),ゲーム仕立てとし,宝物を見つけた人だけが入れる飛行船を飛ばして,これも大きな話題となったようだ。答えを見つけるまで,平均24時間,飛行船内での滞在時間は72時間という非常に長い時間にわたってユーザーを引きつけることに成功したという。
 Virtual Worldは,今後も大きな成長が予想されているものの,日本国内では,プロモーションツールとしては空振りが続いている。こうして見ると,成功したマーケティング手法との違いは明らかであるように思われる。

Linden Lab副社長兼海外&総合顧問のジンス・ユン氏
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 続いて,Linden Lab副社長兼海外&総合顧問のジンス・ユン氏による「セカンドライフ・グリッドによるグローバルプラットフォーム構想」と題した講演が行われた。講演内容の多くは,先日発表されたばかりのSecond Life Gridというプラットフォームに関するもので,主に企業や教育者などに向けたシステムとなる。
 Second Lifeでは,多くの人はなにもコンテンツを作らないそうだ(過去に,ユーザーの66%はなにか作ったことがあるという統計もあったが)。そういう人がなにを求めているかというと,それはコミュニティであるという。Second Lifeは,インターネットでのコミュニケーション手段のほぼすべてをサポートしており,氏はそれを非常に重要視しているようだ。

 日本での展開についても言及された。実際のところ,Linden Labでは日本のユーザーのことは分からないという。日本ローカルなプロバイダを使うほうがよいだろうという話なのだが,それをサポートするためにフレキシブルなツールを提供していくことが必要であり,それがSecond Life Gridということになるらしい。Second Lifeは,「なんであんなに使いにくいんだ」といわれることも多いようで,Linden Labでも改善プロジェクトは動いているというが,オープンな仕様にして,それぞれで使いやすいものを作ってもらうのがベストであると考えているようだ。
これがHype Cycleのカーブ
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 また,Hype Cycleと呼ばれる図を示し,製品などの評判の推移を示した。これはガートナーグループが使っているもので,簡単にいえば,最初はバブリーに期待され,期待が頂点に達したところで失望に変わり,それが一段落するとようやく安定した成長が始まるといった感じのものである。Second Life自体は,現在のところ上り調子だが,やがて多くの脱落者を出すであろうことは,Linden Labでは織り込み済みということであろう。そうして,バブルが弾けたあとに,本当にやりたい人だけが残る。ユン氏は,その先を見据えているようである。

デジタルハリウッド大学院メディアサイエンス研究所セカンドライフ研究室長三淵啓自氏(右)とアスキー取締役の福岡俊弘氏(左)
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 デジタルハリウッド大学院メディアサイエンス研究所セカンドライフ研究室長三淵啓自氏とアスキー取締役の福岡俊弘氏による「ユーザーから見たセカンドライフの未来」と題した対談では,ユーザーの視点ということで非常に突っ込んだ話が展開された。
 まず,企業SIMはつまらないけど,なぜか? という問題では,端的にいえば「人がいないから」という感じだ。遊園地に一人で行ってもあまり楽しくない。みんなで行けば,くだらないことでも楽しめるといったことを挙げ,一人で入るのがそもそも間違いであるという論を展開していた。Second Lifeで成功している事例では,夜中まで社員がつきっきりだったりするそうだが,会社でSecond Lifeだけやっているわけにもいかないだろうというのももっともな話である。まずはコミュニティ形成からというのが重要なのであろう。
 Second Lifeのメディアとしての特徴については,同期型と非同期型の側面を持っており,それを連携させることが必要だという。また,メディア側の一方的な配信やメディアとユーザーのフィードバックを核とするWeb2.0とも違い,メディア自体の部分にユーザーが関与してくることで非常に特殊な状態を構成している。既存のメディアと同じではないということをしっかり認識しておく必要がある。コンテンツの中にアバター(ユーザー)がいて,はじめて完成するものなので,最初から完璧な世界を作って提供するようなやり方ではなく,ある程度ゆるく作って,ユーザーを加えて完成させるのがコツでもあるようだ。その際には,企業対ユーザーではなく,アバター対アバターの視点が重要になってくるという。
 現在のSecond Lifeに足りないものはなにかという話では,Second Lifeの内部自体は分かりやすいのだがとしたうえで,ユーザーが自ら行動しないとなにも起きない世界なので,導入が難しい点を挙げていた。その突破口として,さまざまな既存コンテンツを核としたコミュニティ作りが有効ではないかとまとめていた。ゲームやマンガ,アニメなど,日本には優秀なコンテンツが数多くある。それをVirtual Worldに展開していくことで,導入を簡単にできると見ているようだ。

テクニカルジャーナリスト トライゼット西川善司氏
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 トライゼットの西川善司氏の講演は,Virtual Worldとは少し離れているのだが,PLAYSTATION 3のHome構想と,最近の3Dグラフィックス動向,そしてバーチャルリアリティ関連の先端技術などが紹介された。グラフィックス技術については,PC業界の動向と同じなので割愛するが,バーチャルリアリティ関連では,食べたものの食感を再現する研究や,メガネをかけると目の前にいる緑色の人形がキャラクターに見えるという「触れるキャラクター」の開発など興味深いものが多かった。やがては,こういったものもVirtual Worldに取り入れられる日がくるのかもしれない。

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 そのほか,日本製Virtual Worldの「Meet Me」の紹介や,タレントの時東ぁみさんと近畿日本ツーリストによるSecond Life内のバーチャルツアーの実演なども行われていた。こういった催しで,実際のSecond Lifeと連動したイベントが行われるのは初めてとのこと。なぜほかでやらないかというと,いろいろトラブルが起こるからだと笑い話にしていたが,実演中も人が多いためか,いろいろトラブルが発生していた。とはいえ,画面を見れば分かるように,ものすごく多くの人が詰めかけたというわけでもない(平日の昼間だし)。自由度が極めて高いということは,データ量が多くなることも意味している。100人のアバターがまったく違うポリゴンデータで,まったく違う動きをした場合でも,その場の100台の端末に正確に再現するようにデータを送るというのは,MMORPGなどの過密状態よりも高い負荷になることが予想される。サーバーが遠いという点を除いても,そのあたりの脆弱さが出てしまったようだ。

実在の街のマップをもとにしたVirtual World Meet Me
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 イベント全体として見ると,口を揃えたように「Second Lifeはコミュニティ」であるという見解が並んでいる。それをバーチャルリアリティと捉えた人は失敗し,コミュニティと捉える人が人が成功するかのようで,なかなか面白い状況である。
 ユーザークリエイトコンテンツの導入など,新たな道を模索している現在のMMORPG業界にとっても,こういった傾向は他人事ではないだろう。ゲームの場合を一律に比べることはできないのだが,製品やサービスを一方的にユーザーに配信していくという形態は,コミュニティモデルの登場で一掃されていくのだろうか? ゲーム業界にとっても,なかなか示唆的なテーマを含んだイベントといえるだろう。
  • 関連タイトル:

    Second Life

  • 関連タイトル:

    Second Life(Macintosh)

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