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SCEグループ代表取締役社長兼グループCEO 平井一夫氏 |
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2005年のE3で上映したイメージ映像 |
本日(2011年1月27日),ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下,SCE)は,
「PlayStation Meeting 2011」を東京都内で開催した。2005年以来,実に6年ぶりに開催された本イベントでは,SCEグループ代表取締役社長兼グループCEOの平井一夫氏らによって,今後のPlayStationビジネスの方針や展開についての説明がなされた。
最初に登壇した平井氏は,「こうした場でPlayStationビジネスについて話すのはワクワクする」と述べ,2005年のE3で流したという映像を上映。続けて「現実はデータ化される」「現実とデータが結びつけば,新しい現実が生まれ,それを自分自身で動かすことができる」と,多くのゲーム機がリビングに置かれたり,あるいは外出先でも楽しめたりと,当時のSCEが描いていた未来を振り返った。
平井氏は,SCEはそうしたPlayStationシリーズの未来像を実現してきたと述べ,このイベントにて,さらなる“新しい世界”を提案すると続けた。
平井氏は“Home”というテーマを提示し,PlayStation 3はハードとソフトの組み合わせにネットワークを加えることで,家族や友人だけでなく,ネットの先にいる,まだ会ったことのない人と楽しめるという広がりを持たせることができたと述べる。平井氏はPlayStation Networkの接続率は80%以上,登録アカウント数6900万以上,ダウンロードされたコンテンツ数14億以上といった数字を披露し,「私達の目指してきた方向が正しいということの裏打ちではないか」と述べた。
さらに平井氏は“Cross Platform”をテーマに,携帯ゲーム機がもたらした変化に触れ,「現実の生活の中で,これまで以上にゲームが近くにある。いつでも,どこでもゲームがあるという日常が当たり前になった」と話し,そうした魅力を進化させることで,より広がるエンターテインメントの可能性を模索したいと述べる。
平井氏は,携帯ゲーム機を取り巻く環境がPSP発売当時から大きく様変わりしていることを挙げ,今では携帯電話やスマートフォン,タブレットPCといった多機能なポータブルデバイスでゲームを楽しめるようになっており,ゲームユーザーも急増していると指摘。プラットフォームホルダーの義務として,こうした拡大する市場からのリクエストは無視できないと述べ,その回答の一つとしてPSクオリティのゲームをPlayStation以外のプラットフォームで楽しめる「Playstation Suite」を紹介した。
PlayStation Suiteは,スマートフォンやタブレットPCなどのAndroid端末に,PlayStationシリーズ用ゲームを提供しようという試みだ。平井氏は,「私達にとって初めてのクロスプラットフォームへの取り組み」と説明し,デベロッパには「PlayStation Certified」と呼ばれるレギュレーションを提供することを明らかにした。平井氏によれば,まずは初代PSタイトルのアーカイブを充実させていくとのこと。
さらに平井氏は,“Hardware-neutral Game Framework”を掲げ,ハードウェアに依存せず,比較的簡単にゲームの開発ができる環境を構築していくことをアピール。またユーザーに対しては,「安全な環境,かつ使いやすく買いやすい場でコンテンツを提供していく」と述べ,Android端末用タイトルもPlayStation Storeにて一元提供していくことを明らかにした。
平井氏は,PlayStation Suiteを「私たちが望むエンターテイメントに必要な仕組み」と表現し,「世界中の数えきれないAndroid端末が,PlayStationファミリーに加わったらどうなるか。PS3もPSPもPS Networkを通じて,いつでもデータにアクセスできる未来が待ち受けている。そこにAndroid端末が加わることで,新しいコンピュータエンターテイメントの可能性が,文字通り“無限大”になるのではないか」と述べる。なお,PlayStation Suiteのタイトル提供は,2011年内開始予定となっている。
5つのポイントに基づく「NGP」の特徴が実機デモにて次々に紹介された
PS Suiteに続いて平井氏が
次世代PSPとして紹介したのは,コードネーム
「Next Generation Portable」(以下,NGP)。平井氏は,後述する5つのポイントを挙げるとともに,NGPでは「日常をすべて遊びに変えること」を目指していると説明。続けて,動画とともに5インチの有機ELディスプレイやフロント/リアのタッチパッドとカメラ,二つのアナログスティックを搭載していることなど,NGPの基本仕様を公開した。
また,ゲーム供給メディアとして,新たにフラッシュメモリベースのNGP専用カードを用意,通信機能としては,従来のWi-Fiに加えて,3Gネットワークに対応するすることなどを明らかにした。なお,NGPもまた,2011年末から順次発売される予定である。
SCE World Wide Stuido 吉田修平氏
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ここでSCE World Wide Stuidoの吉田修平氏が登壇。吉田氏は,NGPを“究極のポータブルエンターテインメント体験を提供するデバイス”と述べ,タッチパネルによる直感的な操作だけでなく,“直接触れる”イメージと説明。続けて,開発中タイトルの実機でもプレイを披露した。
NGP専用のシリーズ最新作として開発されている「アンチャーテッド」のデモでは,5インチの有機ELスクリーンが,一般的なスマートフォンに使われるものの約2倍の面積であることや,視野角がきわめて広いことが披露された。
また吉田氏は,これまでのPSPには,右側にもアナログスティックを付けてほしいという要望が多かったことに言及。今回,長年の開発期間を経て,アナログパッドではなく,マイクロアナログスティックという形で実現できたと述べた。これにより,PS3同様に左スティックで移動,右スティックで視点変更といったプレイが可能となるわけだ。
ジャンプや攻撃などの操作は基本的にボタンで行うが,タッチパネルでプレイヤーキャラの背中を直接タッチして障害物を乗り越えたり,あるいは敵を崖から突き落としたりする様子も披露された。また吉田氏は,ロープを使って向こう岸に飛び移る際に,ジャイロセンサーを駆使して勢いをつけたり,バックタッチパネルを両手の指で交互にスライドして壁登りをしたりといったNGPの新機能を使った操作を披露し,「まるでキャラクターとシンクロするような操作感」「据置機でも体験できない新しいアンチャーテッド」と表現。今後,世界中のゲームクリエイターによって提供されるであろう新たなゲーム群に期待を寄せた。
続いて,平井氏と吉田氏に,SCEの島田氏が加わり,NGPの5つのポイントを実機デモを交えて披露した。
“Revolutional User Interface”の項目では,NGPのSuper Ovalデザインが長時間快適にプレイするための仕様であることを紹介。続けて開発中のタイトル「Little Deviants」のデモプレイを通じて,フロントとバックのタッチパネルが大きな特徴となることを説明した。バックタッチパッドは,フロントの有機ELスクリーンと同じ幅になっている。
このタイトルでは,バックパネルをタッチして地面を盛り上げて,キャラクターを転がしていくのだが,左右両手の指を使うことでより大きな山を作れたり,フロントのタッチと併用して指2本で表と裏から挟み込むことで,キャラクターをパチンコのように弾くことができたりすることが実演された。吉田氏は「思いのままにキャラクターと戯れることができる,これまでにない新しいゲーム感覚」と表現する。
"Deep Entertainment Experience"の項目では,NGPの新たな画面インタフェースとなる「LiveArea」が紹介された。これは島田氏曰く“ゲームへの扉”で,単にプレイを開始できるだけでなく,PS Storeにアクセスして有料コンテンツを購入したり,同じタイトルをプレイしているプレイヤーの情報が「イベント」として順次表示されていったりといった,コミュニティスペースとなっている。また,そうしたイベントにコメントを付けることも可能となっており,島田氏と平井氏は,こうした機能を実現するために3Gネットワークを導入したと説明。ゲーム機ならではの機能で,常にオンラインで新情報が入ってくることにより,さまざまな可能性が広がるのではないかと展望を述べた。
“Location-based Entertainment”の項目では,
「Near」が紹介された。これはNGPの位置情報記録機能を使ったサービスで,持ち歩くだけで近隣のNGPユーザーがどんなゲームを遊んでいるか分かるという機能だ。データはサーバーに蓄積されているので,夜,帰宅してからその日1日の移動範囲の傾向や,一人一人のゲーム遍歴を確認することもできる。さらに地域ごとの人気タイトルランキングなどの,さまざまなデータを得られるとのこと。また,人気のゲームをその場でPS Storeから購入することも可能になるという。
“Converging Real and Virtual”の項目では,「
みんなのGOLF NEXT(仮)」のデモプレイを通じて,画面解像度の高さや,風で草がなびいたり,葉が揺れたりする様子や,タッチパネルを使ってキャラクターに話しかけたりするという,まさに現実とゲームの世界を行ったり来たりできることが紹介された。さらに吉田氏はジャイロセンサーを使って視点を移動する様子を披露し,6軸のジャイロセンサーと加速度センサーにより,プレイヤーが実際にゴルフコースに立っているような感覚を実現したと説明する。
最後に
“PlayStation Suite Compatible”の項目では,平井氏が,PS Suiteによってさまざまなデバイスがクロスオーバーしていくことにあらためて言及。さらにこれまでPSシリーズに接点のなかったクリエイターにもアピールできると展望を述べ,広い意味でPlayStationのエンターテインメントの拡大に繋がると続ける。
平井氏は,PS Suiteによって新たにPSタイトルを楽しめるようになるAndroid端末,そしてNGPの登場が,クリエイターとユーザー双方にとって大きな可能性になっていくのではないかと締めくくった。