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新章発表! ちょっと無茶してでも面白いものを。開発移管でさらなる“攻め”の姿勢を見せる「コンチェルトゲート フォルテ」インタビュー
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印刷2010/05/31 00:00

インタビュー

新章発表! ちょっと無茶してでも面白いものを。開発移管でさらなる“攻め”の姿勢を見せる「コンチェルトゲート フォルテ」インタビュー

 2009年4月に運営元をゲームポットへと移したMMORPG「コンチェルトゲート フォルテ」(以下,コンチェルトゲート)だが,今度は開発元を変更する(関連記事)。コンチェルトゲートの開発は長らくポンスビックが手がけてきたが,今後はコンシューマ/アーケードゲームのデベロッパとして活動してきたリズが引き継ぐという。そこで今回4Gamerでは,コンチェルトゲートにおける運営/開発に関する考え方や,ここ1年の運営状況,これからの開発方針や具体的な予定などを,関係各社の担当者に直接聞いてみた。お答えいただいたのは,以下の4人だ。

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ゲームポット コンチェルトゲート フォルテ 運営責任者 春田康一氏
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スクウェア・エニックス プロデューサー統括部 プロデューサー 渡辺範明氏
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リズ 代表取締役 磯野貴志氏
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リズ 企画セクション プランナー 藤原 達氏


運営移管から1年,ゲーム内の環境やプレイヤーの動向はどうなったのか


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。早いもので,コンチェルトゲートの運営移管から1年以上経ちましたね。

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GMイベントの様子
春田康一氏(以下,春田氏):
 約1年の間に,大型アップデートを5回行ってきました。運営移管から前半はコンテンツのボリュームを増やし,後半は,追加/変更したコンテンツに合わせてバランス調整を施したんです。その中で最も反響が大きかったのは,9月に行ったレベルキャップの開放と職業バランスの調整でしたね。とくに職業バランスについては,それまであったものをひっくり返すくらい大胆にメスを入れました。個人的には慌ただしい1年だったと感じています。

4Gamer:
 プレイヤーの反応や,実際に運営した手応えはどうでしょう?

春田氏:
 プレイヤーさんは着実に根づいているといえます。コンテンツのボリューム増加と相まって,非常にいい感触を得ています。

渡辺範明氏(以下,渡辺氏):
 我々からすると,この1年でオンラインゲームの運営には各社それぞれにスタイルがあるんだなということを実感しましたね。

4Gamer:
 と,いいますと?

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渡辺氏:
 ゲームポットさんの運営スタイルは,プレイヤーさんに対して,よりフランクとでもいいますか。
 コンチェルトゲートは最新タイトルではないですし,スペック的な意味で「これは凄い!」というタイプのゲームでもありません。そういうタイトルをプレイヤーさんがあえて選んでくださるのは,どこかしら気に入っていらっしゃるポイントがあるからです。ゲームポットさんは,そうした意見を積極的に汲み上げていると思います。
 また,当たり前の話ですが,オンラインゲームの内容は開発者だけが決めるわけではありません。運営の意見や,ひいてはプレイヤーさんの反応を見ながら開発を進めていくのですが,理屈で分かっていても,実際にはなかなか難しいのが実情です。
 そういう意味で,ゲームポットさんの運営スタイルによって“開発の目指す部分”と“プレイヤーの求める部分”の一体感がより増した,と考えています。

4Gamer:
 なるほど。しかし,先ほど職業バランスに大胆にメスを入れたという話もありました。これは,プレイヤーからの反発も大きかったのではないかと思うのですが。

春田氏:
 ええ。プレイヤーさんからの意見は賛否両論あった……正直にいってしまえば,当初は反対意見の方が多い状況でした。
 そんな中,なぜ実施を決定したのかというと,これまであった固定概念を崩したかったということがあります。崩したうえでプレイヤーさんの意見をうかがって,よくしていこうと。できるだけ早く実行したかったので2009年9月というタイミングを選んだのです。
 しかし,これでは失敗で終わってしまいますから,以降のアップデートからプレイヤーさんの意見をきちんと踏まえたバランス調整を加えています。おかげさまで2010年4月の大型アップデートでは,9月以前よりもバランスがよくなったという意見が増えました。

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GMイベントでの集合写真

4Gamer:
 結果的には,いい形になったわけですね。

春田氏:
 はい。5回の大型アップデートのほかにも,基本的に毎週何かしらやっていたので,1年間は非常に短く感じました。例えば公式サイトでも,ゲームと連動する「マスター・オブ・マスター」や「勇者の道」といったコンテンツを展開しています。

渡辺氏:
 GMイベントも多いですよね。

春田氏:
 そうですね。月に1〜2回は開催していて,その中でも露店をメインとした「ファンブルグフェスタ」は,プレイヤーさんの反響も非常に高いイベントでした。全般に,運営としてもワクワクしながら楽しめました。

4Gamer:
 そういった取り組みによって,プレイヤーの定着を図ってきた,と。

春田氏:
 はい。またプレイヤー定着の一環として,課金構造の見直しや最適化にも取り組んでいます。
 よく渡辺さんと話しているのですが,僕達はコンチェルトゲートをオンラインゲームとしてだけでなく,“PCで気軽に遊べるゲーム”として提供したいと考えているんです。オンラインゲームといってしまうと,「コミュニケーションを取らなければいけないんじゃないか」といった意識的なハードルが生まれてしまいますからね。

4Gamer:
 オンラインゲームを知らない人が,「何か面倒だな」と思う傾向はあるかもしれませんね。

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春田氏:
 そこで“気軽に遊べるゲーム”にする施策の一つとして,プレイヤーさんの意見を踏まえた課金構造の見直しなどを図っているんです。具体的には課金アイテムの仕様改善や価格の見直し,要望の多かったアイテムの実装ですね。また,デザインコンテストを12月に実施したところ大変好評でしたので,今後も引き続きプレイヤーさんのアイデアを取り入れていく予定です。

渡辺氏:
 オンラインゲームの課金構造の見直しというと,大きく二つの方法が考えられます。一つはプレイヤー一人当たりの単価を増やす方法,もう一つはプレイヤーの数を増やす方法です。そしてサービス開始からしばらく経ったコンチェルトゲートのようなタイトルは,プレイヤーさんがベテラン化していきますから,普通なら単価を上げる方法を取ります。
 しかしスクウェア・エニックスとしては,プレイヤー数を増やしたいと考えており,それをゲームポットさんにも理解してもらいました。

4Gamer:
 なるほど。

渡辺氏:
 そうはいっても,単価を上げたくなるときがあります。しかし,それではゲームを遊ぶハードルが上がってしまいますから,グッとこらえて遊びやすくするよう心がけています。
 例えば,以前は一定期間いくらで販売していたアイテムも,一度購入してもらえばずっと使えるようにしました。この1年は,そうやって最初に決めたポリシーを守って来れたという実感があります。

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GM主催による座談会の様子

4Gamer:
 初心者プレイヤーへの配慮や,離脱への施策はどうでしょう?

春田氏:
 初心者の離脱を抑えるための対策は,2009年の9月,11月と段階的に実施しました。一番印象に残っているのは,11月に実装した"歩くだけで経験値がもらえる"システムですね。これは渡辺さんのアイデアを採用したものなんです。
 MMORPGなどオンラインゲームは,最初にログインしたとき,マップを確認するためにいろいろ歩きまわりますよね。ところが,歩きまわっただけでやる事が見つけられず止めてしまう人も多いんです。そこで歩いたぶん経験値がもらえれば,レベルも上がるし,マップも把握できて,どこにでも自由に進めます。これによって実際に初心者の離脱率が下がったというデータも出ています。

渡辺氏:
 課金構造の話もそうなんですが,"どうすればプレイヤーさんにとって一番嬉しいか"ってことなんですよね。企画案は,ゲームデザインなどから考えると無茶なこと,普通はやらないことも含めてネタを出していきましょう,と。
 あと面白いところでは,新規にプレイし始めた人が,ゲームのどこでつまづくか,どこで止めてしまうかという行動のリサーチも行いました。

4Gamer:
 それは,例えばデータベースに蓄積されたデータを解析したり,グラフ化したりといったことですか?

渡辺氏:
 詳細は伏せておきますが(笑)もっと地道な方法です。手間のかかるやり方ではあったのですが,初心者に分かりにくい部分,止めてしまいやすい部分を運営スタッフ全員であらためて認識することができました。


新たな開発のキーワードは“破壊と再生”。多少理屈が通らなくとも面白いゲームを目指す


4Gamer:
 さて運営移管後も好調とのことですが,今度は開発を移管するんですよね?

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株式会社リズ
http://www.riz.co.jp/
渡辺氏:
 コンチェルトゲートは,もう運営4年目に入ろうとする,かなり歴史の長いゲームです。前身である「クロスゲート」から数えると8年にもなります。その中で意識してきたのは,"ある一つの状態に留まらない"ということでした。それは,常に新しいプレイヤーさんが入ってくださるということもありますし,作っている側としても風通しのいい状態を保っておきたいからでもあります。実際,クロスゲート時代にも,ドワンゴさんからポンスビックさんに開発を移管しています。

4Gamer:
 その当時,何か問題は発生しましたか?

渡辺氏:
 他社が作ったゲームを引き継いて開発するわけですから,当然,技術的なハードルは高いです。またゲームデザインに一貫性がなくなる可能性があります。例えば,一つ一つのパラメータがどのような意図で設定されていたのか,そのすべてを説明し,確実に伝えるのは現実的ではありません。したがって,ある程度は引き継ぐ側が察する必要があるんですね。しかし,そこでトラブルが発生することもあります。

4Gamer:
 相当リスクが高いですよね。

渡辺氏:
 それでも開発を移管するのは,そうしなければならないと考えているからです。一時的にトラブルが増えたり,多少ドタバタしてしまったりしたとしても,長い目で見た場合,“空気”を入れ替えないとゲームが行き詰まってしまうんですよ。
 実際,プレイヤーさんから「前の方がよかった」という意見をいただくこともあるのですが,それも一時的な場合が多いです。やっぱりエンターテイメントなんで,“安定しているけれども,つまらない”より,“バタついても面白い”を取ろうというのが,前提としてあります。もちろん“トラブルがなくて面白い”に越したことはないですから,そうできるように頑張っていますが。

4Gamer:
 ということは,今回の開発移管もかなり前から予定していたものなんでしょうか?

渡辺氏:
 ええ。もちろん突然決めたわけではなく,何年かサービスを続けるごとに変えないといけないと考えており,今回,開発をお願いするリズさんとは,かなり前から話を進めてきました。
 逆にいうと,ポンスビックさんにも“いずれ誰かに引き継ぐ”というイメージで開発を進めてもらっていたんです。そうすることで,「今のうちにやれること,やりたいことを全部やっておこう」というモチベーションを保ってもらっていたんですね。先ほど話した2009年の大胆な改革も,その結果の一つです。非常にエキサイティングな内容になったんじゃないでしょうか。

磯野貴志氏(以下,磯野氏):
 コンチェルトゲートの凄いところは,これだけ長く続いていることですよね。それは,変わっているからこそだからだと捉えています。

4Gamer:
 なるほど。それでは,読者やプレイヤーのために,リズがどんな開発会社なのか説明してください。

画像集#012のサムネイル/新章発表! ちょっと無茶してでも面白いものを。開発移管でさらなる“攻め”の姿勢を見せる「コンチェルトゲート フォルテ」インタビュー
磯野氏:
 設立は12年ほど前になります。私を含め,かつてセガのAM2研にいた6名を中心に設立して,デベロッパとして主にPlayStation 2のゲームを多数開発してきました。そして,途中からアーケードゲームにも携わるようになりました。
 その中で,2007年にスクウェア・エニックスさん/タイトーさんのアーケード用オンライン対戦型カードゲーム「悠久の車輪」を開発したんです。そこで初めて,オンラインゲームの運営にも関わりました。

4Gamer:
 オンラインゲームの開発は,コンチェルトゲートが初めてというわけではなく,しかも運営の経験まであるわけですか。

磯野氏:
 ええ。MMORPGだと会社としては初めてになりますが,内部には開発・運営を経験したスタッフがいますよ。

4Gamer:
 リズが考えるオンラインゲームとは,どんなものでしょう?

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藤原 達氏(以下,藤原氏):
 私は,それまでコンシューマゲームの開発をしていて,悠久の車輪で初めてオンラインゲームの運営と開発に携わったんです。そのときは“プレイヤーさんと一緒に作っていく感覚”“一緒に成長していく感覚”によって,非常に高いモチベーションを保つことができました。個人的には楽しい経験でしたね。

4Gamer:
 大変なことも多かったんじゃないかと思うのですが。

藤原氏:
 それはもちろんそうですが,モチベーションが維持できたので気になりませんでした。批判であれ,賞賛であれ,反応がダイレクトに返ってくるのが楽しかったんです。なので,弊社がこの仕事を受けると決まったときは,本当に嬉しかったですね。

磯野氏:
 プレイヤーさんの顔が見えて,声が直接伝わってきますよね。調整一つとっても,どこまでなら受け入れてもらえて,どこまでだとやり過ぎになるのかといったものを,動向を見ながら変えていけます。
 そういった形で,オンラインゲームは“挑戦する”ことができます。誤解を恐れずにいうなら“失敗ができる”とでもいいますか。私も20年近くゲーム開発に携わっていますが,失敗を恐れて挑戦しないでいると,どんどんゲームがこじんまりとしていってしまうんですよね。

画像集#015のサムネイル/新章発表! ちょっと無茶してでも面白いものを。開発移管でさらなる“攻め”の姿勢を見せる「コンチェルトゲート フォルテ」インタビュー

4Gamer:
 なるほど。オンラインゲームなら失敗しても取り戻せるという意味ではないわけですね。
 それでは,コンチェルトゲートではどういった方針で開発を進めていくのでしょう?

藤原氏:
 僕自身のオンラインゲームに対する考え方の一つに,“遊び方を縛らない”というものがあります。自由で居心地のいい空間を作りたいんですよ。10人集まったら,10の遊び方を発見できたり,あるいは作り出せたりするような要素を,例え小さなものであっても入れていきたいと考えています。
 個人的には,リスクマネージメントなどを度外視した,オンラインゲーム業界初の企画も提案してみたいですね。ゲームポットさんやスクウェア・エニックスさんにドン引きされてしまうかもしれませんけれども(笑)。

磯野氏:
 リズがコンチェルトゲートに携わるにあたってのキーワードの一つとして,“破壊と再生”を掲げています。システム,世界観,シナリオのテーマ……どれがどう破壊され再生されるのかは,ここでは敢えていいませんが,そのキーワードが見え隠れするようなゲームにしていこうと考えています。

4Gamer:
 それでは,ゲームポットさんとスクウェア・エニックスさんが,リズさんに期待することとは何でしょう?

春田氏:
 磯野さんも藤原さんもおっしゃってますが,やはり“チャレンジ”ですね。そして“諦めないこと”です。新しい何かを作ろうとすると,いくつもの困難に直面します。しかし諦めずに,常にチャレンジし続けてほしいと思っています。

渡辺氏:
 “無茶してほしい”ですね。MMORPGの運営/開発には,“理屈で考えて,こうあるべき”というロジカルなやり方があります。それは通貨の流通や都市設計,あるいはレベルデザインなどに適用できる,いわば経済学的な側面からのアプローチです。つまり“このシステムを入れると,こういった効果が期待できる”といった感じのものですね。
 しかし,開発を移管してすぐにそれをやってしまっては,あまり意味がありません。ゲームなんだから,多少理屈が通らなくとも,面白ければそれでいいという側面があっていいと思うんです。長く運営/開発していくうちに,よくも悪くもロジカルなやり方に収束していきますから,最初は“分かっていないがゆえの無茶”に期待しています。そして,そういうことをやった方がゲームとして面白くなるんです。もちろん,実際に遊んでくれるプレイヤーさんありきではありますが,“正しいことより,面白いこと”を優先してほしいですね。

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2009年6月に実装された町「シルト」の特設サイト
 
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