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印刷2018/04/28 12:00

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【PR】「PCでもPS4でもバーチャルサラウンドサウンド」を実現するSteelSeries「Arctis Pro+GameDAC」。その性能も圧倒的な唯一無二の製品だ

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 SteelSeries製ゲーマー向けヘッドセット「Arctis Pro」は,最大40kHz出力に対応した,いわゆるハイレゾ対応のスピーカードライバーを搭載する点と,USBおよびアナログ接続に対応して,PCとのUSB接続時には「DTS Headphone:X 2.0」ベースのバーチャルサラウンドサウンド出力を利用できる製品だ。
 従来製品「Arctis」の上位モデルとして,スペックが向上しただけでなく,そのヘッドフォン出力品質も向上していることはすでにお伝えしているとおりである。

 ただ,3月13日掲載の記事にもあるとおり,Arctis Proには単体版のほか,ワイヤレス接続対応の「Arctis Pro Wireless」と,外付けサウンドデバイス「GameDAC」の付属する「Arctis Pro+GameDAC」という,2つの選択肢がある。そして試してみたところ,Arctis Pro+GameDACはPCだけでなくPlayStation 4環境でもDTS Headphone:X 2.0ベースのバーチャルサラウンドサウンド出力を利用可能という,とても面白い製品に仕上がっていたのだ。本稿ではArctis Pro+GameDACに絞って,その性能を明らかにしてみたいと思う。

Arctis Pro+GameDAC
問い合わせ先::ゲート(販売代理店) 03-5280-5285
実勢価格:3万2100〜3万5700円程度(※2018年4月28日現在,5月10日発売予定)
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ほぼすべての設定の手元のGameDACで変更可能


 その製品名から想像できるとおり,Arctis Pro+GameDACは,単体版Arctis ProにGameDACが付属する製品である。

製品ボックスを開けたところ(左)と内容物一覧(右)。Arctis Pro本体とGameDACをつなぐ専用ケーブルは全長実測約1.5m,Arctis Proをアナログ接続するための変換アダプターケーブルが同55mmとなる。USBケーブルは全長約1.5mあった
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 なので,Arctis Pro本体側の仕様は先にお伝えした内容と変わらない。Arctisシリーズを彷彿とさせつつも,ガンメタル加工済みの「lightweight steel」(軽量鋼)とアルミ合金により高級感を増した全体的なシルエットや,非常に柔らかな高反発マットレス素材「エアウィーヴ」を用いたイヤーパッド部のクッションやスキーのゴーグルと同じ素材を用いているというヘッドバンドを採用したヘッドセット自体の基本仕様は,“無印”Arctis Proと変わらない。
 違いは,付属物としてマイク用ウィンドスクリーンが付属している点,そしてArctis Pro単体をPCと接続するための「ChatMix Dial」が付属しない点くらいではなかろうか。

Arctis Pro+GameDACにはマイク用ウィンドスクリーンが付属。ウィンドスクリーンを使うと,吐いた息がマイクに当たって生じる「ボッ」というノイズが出にくくなるが,取り付けるとマイクブームをエンクロージャ部に収納できなくなるので,利用するか否かは選択が必要になる
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 単体版Arctis Proがどんな製品なのかは3月に掲載したテストレポートにおいて細かくお伝えしているので,気になる人はぜひそちらもチェックしてもらえればと思う。

PS4のサウンド出力は光角形デジタルサウンドケーブルで受ける仕様だ。ケーブルは標準で1本,長さ実測約1.8mのものが付属している
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 というわけでGameDACだが,GameDACで注目すべきは光角形のデジタルサウンド入力端子を搭載しており,PlayStation 4(以下,PS4)とはこちらを利用して接続する仕様になっている点だ。PS4の光デジタルサウンド出力を利用してサラウンドサウンド信号を入力すると,GameDAC側でデコード――正確にはマルチチャネル信号のデコードとヘッドフォン向けダウンミックス――を行って,DTS Headphone:X 2.0ベースのバーチャルサラウンド出力を可能にするのである。
 接続イメージは以下のとおりで,基本的には「PS4のサウンド出力を光デジタルサウンドケーブルに切り換える」だけだ。非常にシンプルだと言っていいだろう。

PS4でArctis Pro+GameDACを利用するイメージ。既存の環境に,デジタルサウンド信号を送るための光デジタルケーブルと,給電およびマイク入力信号の伝送に利用するUSBケーブルを接続するだけと言える
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 俗に“PS4 mini”と呼ばれるCUH-2x00シリーズだと本体に光角形デジタル出力端子がないじゃないかと思うかもしれないが,諦めるのはまだ早い。最近のテレビ製品だと,背面側のインタフェース部に光デジタル出力端子を持つものが少なくないからだ。
 そういう仕様のテレビが手元にあるなら,これまでどおりPS4とテレビをHDMIで接続しつつ,テレビとGameDAC間を光デジタルサウンドケーブルでつなげば,やはりGameDACを使ったDTS Headphone:X 2.0ベースのバーチャルサラウンド出力が可能になる。

CUH-2x00シリーズでGameDACを活用するイメージ。ビデオ信号とサウンド信号の両方をいったんHDMIケーブル経由でテレビへ入力し,テレビ側の光角形デジタルサウンド出力端子をGameDACとつなげばいい
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DTS Headphone:X 2.0は利用できなくなるが,GameDACをPS4とUSB接続すれば2chステレオ対応のUSBサウンドデバイスとして利用可能。あるいはArctis Pro本体をDUALSHOCK 4とアナログ接続しても2chステレオ出力対応のワイヤードヘッドセットとして利用できる。これらは「最後の手段」といったところか
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 GameDAC自体の実測サイズは125(W)×55(D)×43(H)mm,実測重量は約113gと,ゲーム用テレビの近くに置いておくのには困らないサイズだ。PCで使うならキーボードの近くに置いておいても邪魔にならないだろう。

本体正面向かって背面側に光角形デジタルサウンド入力とUSB Micro-B,3.5mmミニピン×2(ライン出力(LINE OUT),ライン入力(MOBILE)各1)が並ぶ。ライン出力は外部スピーカー出力用で,ライン入力は普通のアナログ入力である。MOBILEと名前が付いているので,SteelSeriesとしては3.5mmアナログミニピン出力端子を持つモバイルデバイスとの接続を想定しているのだろう
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本体正面向かって左側にArctis Pro専用端子がある。付属ケーブルの先端には端子の上下を間違えることなくGameDACへ差せるようにと注意書きシールが貼ってあった
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 上面にはモノクロ有機ELパネルと大きなダイヤル「Control Wheel」(コントロールホイール),追加ボタンを備えている。SteelSeriesの長いユーザーであればあるほど,細かな設定はPC用の統合ソフトウェア「SteelSeries Engine 3」(以下,Engine 3)で行うものだと思うかもしれないが,PS4ではもちろんEngine 3を利用できないことから,

  • 動作モードの切り換え
    選択肢は「PC」「HI-RES」「PS4」の3つ。PCとPS4だと最大16bit 48kHz,HI-RESだと最大24bit 96kHzとなる。HI-RESは文字どおりハイレゾ音源をステレオで聞くためのモードなので,DTS Headphone:X 2.0は利用できない
  • ChatMix調整
    ヘッドフォン部で聞くゲームサウンドとチャット相手の声との間で音量バランス調整を行うための簡易ミキサー機能
  • DTS Headphone:X 2.0の有効/無効切り替え(DTS HEADPHONE:X)
  • イコライザ調整(EQUALIZER)
    選択肢は「FLAT」「BASS BOOST」「REFERENCE」「SMILEY」「CUSTOM」の5つで,標準はFLAT。CUSTOM選択時は10バンドを自由に調整できる
  • ゲイン調整(GAIN)
    選択肢は「LOW」「HIGH」の2つで,標準はLOW。ゲームなどの主力音量が小さいときに有効にすると,音量が全体的に大きくできる
  • サイドトーン調整(SIDETONE)
    Arctis Proのマイクで集音した音をリアルタイムかつ遅延なしで聴ける機能の音量調整で。選択肢は「LOW」「MED」「HIGH」「OFF」で,標準はLOWとなる
  • マイク入力ボリューム調整(MIC)
    選択肢は1〜10の10段階で,標準は8
  • ライン出力設定(LINE OUT MODE)
    選択肢は「SPEAKERS」「STREAMING」の2つ。SPEAKERSを選択したときは入力した音をそのままライン出力するが,STREAMING選択時は追加メニューの「STREAM MIX」から「GAME」「CHAT」「AUX」「MIC」のバランスを変更できる。CHATはボイスチャット相手の声,AUXはライン入力したサウンドだ
  • 有機EL輝度設定(BRIGHTNESS)
    選択肢は1〜10の10段階で,標準は8
  • 無操作時に画面表示を無効化するまでの時間設定(IDLE TIMEOUT)
    選択肢は「1MIN」「5MIN」「10MIN」「15MIN」「30MIN」「60MIN」「NEVER」で,標準は10MIN
  • エンクロージャ部およびマイクミュートインジケータ用LED色設定(ILLUMINATION)
    エンクロージャ部(EARCUPS)とマイクミュートインジケータ(MIC(MUTE))のそれぞれで設定可能。選択肢は「RAINBOW」「HEAT ORANGE」「FROST BLUE」「ORANGE」「RED」「YELLOW」「BLUE」「GREEN」「PURPLE」「OFF」で,標準はRAINBOW
  • ファームウェアバージョン確認(FW VERSION)
  • 工場出荷状態へのリセット(FACTORY RESET)


と,およそ設定可能な項目はほぼすべて,GameDAC上のControl Wheelとそのプッシュボタン,その脇にあるキャンセル用ボタンで操作できる。有機ELパネル上の各種表示を見ると,どういう設定になっているか分かる仕様だ。

GameDACのメインメニュー。上段は左から動作モードとビット解像度,DTS Headphone:X 2.0の有効/無効状態を示す。その下にあるインジケータは左がヘッドフォン出力音量,右がChatMixのバランスを示すものだ
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 有機ELパネル部の表示は英語のみだが,初回起動時には軽い語り口で18ページもの簡易マニュアルも表示してくれるため,使い方に戸惑うこともまずないだろう。

やたらと軽い語り口で使い方を教えてくれるGameDAC。「決定はダイヤルボタン,キャンセルはその脇にあるボタンを使う」「メニューにはダイヤル部のボタンを2秒長押しで入れる」など,重要な情報があるので,ちゃんと読むようにしたい
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簡易マニュアルを読み進めていくと,最後に「GameDACを何と接続するか」の三択が出る。選んだ後でもメニューから再度変更できるので,あまり深く考えなくていい
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最新版Engine 3をインストールしたPCにGameDACを接続すると,初回はファームウェアのアップデートが必要になる。時間はかかるが,作業自体は画面の指示に従うだけ
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 Engine 3を使わないと設定できない項目は,ファームウェアのアップデートと,プリセットにない色で本体のLEDを光らせるとか,それくらいだ。

 ただ,Engine 3には「日本語化済み」というメリットもあるので,PCでの利用がメインであれば,いままでどおり,こちらを積極的に使うのもアリだろう。Engine 3とGameDAC側で共通の設定内容は同期しているため,その点は心配いらない。

Engine 3側のArctis Pro+GameDAC設定。おおむね,GameDAC側で設定できる内容と同じだ。違うのはイルミネーション設定の細かさと,表示が日本語になっていることくらいである
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思った以上の重低域と,耳に痛くない,抜けのよい高域が印象的なヘッドフォン出力


 製品概要を押さえたところで,テストに入っていこう。
 2018年4月現在,4Gamerのヘッドセットレビューでは,

  • ヘッドフォン出力テスト:ダミーヘッドによる測定と試聴
  • マイク入力テスト:測定と入力データの試聴

を行うようになっている。ヘッドフォン出力時の測定対象は周波数特性と位相特性,そして出力遅延だ。具体的なテスト方法は別途「4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるヘッドフォン出力テスト方法」にまとめてある。また,マイク入力の測定対象は周波数特性と位相特性で,こちらも具体的なテスト方法は「4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるマイクテスト方法」にまとめておいたので,興味のある人はそれぞれ参考にしてもらえればと思う。

HI-RESモードだと解像度はステレオ24bit 96kHzまでの対応だが,ただGameDAC側でHI-RESモードに変更しただけだと実際のPC側のビット解像度は変わらない。サウンドのコントロールパネルから指定する必要がある
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 まずは音質評価から行っていこうと思うが,最初にお断りしておくと,筆者は今日(こんにち)の“ハイレゾヘッドフォン”にあまりよい印象を抱いていない。ハイレゾ対応を謳う製品のほとんどは,超高域ではなく,それより低い,人間が音色の変化を感じやすいプレゼンス帯域(※)から6kHzくらいまでで音の輪郭を強調し,「ハイレゾでございます」とやっているだけだからだ。また,高域が出ていると思わせるために低域を抑え気味にして,結果,極端な低弱高強になってバランスを崩している製品もかなりある。
 そんな状況にあってArctis Proはどうかというのが,まずはチェック項目ということになるわけだ。PCとUSB接続して音楽再生が可能なのはPCモードとHI-RESモードなので,この2モードを利用する。PCモードは16bit 48kHz,HI-RESモードは24bit 96kHz設定を用い,一方でPS4モードでの音楽試聴はその特殊性を鑑みて行わない。

※ 2kHz〜4kHz付近の周波数帯域。プレゼンス(Presence)という言葉のとおり,音の存在感を左右する帯域であり,ここの強さが適切だと,ぱりっとした,心地よい音に聞こえる。逆に強すぎたり弱すぎたりすると,とたんに不快になるので,この部分の調整はメーカーの腕の見せどころとなる。

テストに用いたリファレンス波形
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 なお,以下本稿で示すテスト結果において,波形スクリーンショットの右に示した画像は,それぞれ「得られた周波数特性の波形がリファレンスとどれくらい異なるか」を見たものになる。
 これは,Waves製アナライザ「PAZ Analyzer」で計測したグラフを基に,4Gamer独自ツールを使ってリファレンスと測定結果の差分を取った結果だ。リファレンスに近ければ近いほど黄緑になり,グラフ縦軸上側へブレる場合は程度の少ない順に黄,橙,赤,下側へブレる場合は同様に水,青,紺と色分けするようにしてある。

 差分画像の最上段にある色分けは左から順に重低域(60Hz未満,紺),低域(60〜150Hzあたり,青),中低域(150〜700Hzあたり,水),中域(700Hz〜1.4kHzあたり,緑)中高域(1.4〜4kHzあたり,黄),高域(4〜8kHzあたり,橙),超高域(8kHzより上,赤)を示す。

■PCモード

ぱっと見は低弱高強のドンシャリ型。7kHz付近が一番強いが,山はそれほど大きくなく,リファレンスより約10dB上がっている程度だ。16kHzより上の帯域は相応に落ち込んでいるものの,存在はしている。低域は125Hzくらいが相対的には一番大きいが,むしろそれ以下の周波数帯域がほとんど落ちていない点に注目してほしい。こんな超重低域が落ち込まない結果はめったにない
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■HI-RESモード

正直,PCモードとの間に違いはほとんど出ていない。30Hz以上はほぼ同じ。30Hzより低い帯域でこちらのほうが若干小さいという程度の違いだ
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 ステレオ音楽を用いた試聴結果だが,まずPCモードは周波数バランスがよい。超重低域が多めで低域の山が大きくなく,その分すっきりしている。一方の高域は最近のゲーマー向けヘッドセットの一部に見られるように相応に強め,といった具合で,このあたりは計測結果どおりだ。

 だが前述したような“自称ハイレゾヘッドフォン”にありがちな「やり過ぎ」はない。それでいてハイレゾ対応らしい輪郭のカリっとした,音抜けのよい音質傾向に感じられる。おそらく,重低域までしっかり再生できることが,プレゼンスの山との間でよい周波数バランスを生んでいるためだろう。
 高域成分が結構しっかり存在するため,左右の音源移動が分かりやすく,ステレオ感も強い印象だ。

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 筆者は前述の理由でハイレゾの音源を持っていないため,44.1kHzでの試聴になるが,HI-RESモードでもPCモードと大きな違いは感じない。
 バスドラムやベースに超重低域を含む音源だと,PCモードと比べて重低域がやや落ちている周波数特性が影響し,低音が若干タイトに聞こえる。また,グラフでは変わらない高域はよりスムーズになった印象だが,これは,PC側のサンプリングレートが高解像度になり,内部処理を倍精度で行っている影響ではないかと考えている。

 PCモードにおけるDTS Headphone:X 2.0の併用はどうだろう? 初代DTS Headphone:Xの場合,ステレオ再生時は「使わないほうがまし」だったが,今世代はステレオ再生時に有効化してもそれほど違和感はない。低域を中心にプレゼンスくらいまでの帯域が強くなり,一方で高域はわずかに抑えられ,音が中央に集まって全体的にパワフルになる印象だ。
 もちろん音源によっては若干きつすぎるように聞こえる可能性はあるが,EDMなどダンス系の音楽が好きなら試してみる価値はある,くらいにまでは実用的になった。一度は試してみるといい。

 続いてゲームのテストだが,今回は筆者のレビューでお馴染み,PC版「Fallout 4」と「Project CARS」のほかに,大型のモンスターと相対するタイプの某三人称アクションゲームも試すことにした。
 まずはFallout 4だが,DTS Headphone:X 2.0では無駄な残響(=マルチチャネルリバーブ)の少ない,ドライなサラウンドサウンドを確認できる。残響が増えると音は豪華になる一方,FPSやTPSでは,敵や標的がどこにいるかといった正確な位置情報を把握する妨げとなるので,最小限の残響に留めているこの設定はゲーム用途として完全に正しく,また好感が持てる。

GameDAC上でもEngine 3上でも,DTS Headphone:X 2.0の設定は有効/無効切り替えだけだ。Arctisシリーズの採用する「DTS Headphone:X」ではいくつかプリセットが用意されているので,ここは第2世代でシンプルになった
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 ただ,DTS Headphone:X 2.0でとくに素晴らしいのは,DTS Headphone:Xでむしろ課題だった前方定位が大きく改善している点だ。これはArctisに限らない話だが,DTS Headphone:Xに対応するゲーマー向けヘッドセットは,側方から後方の定位こそ非常に正確ながらも,センターを含む前方はそれほどでもなかった。それに対してDTS Headphone:X 2.0は,たとえばヘリコプターを右前方30度のところに置くと,ローター音はきっちり右前方30度から聞こえてくれるのだ。
 これはもちろんDTS Headphone:X 2.0だけではなくArctis Proが持つ音響品質完成度との合わせ技なのだろうが,いずれにせよ,Arctis Pro+GameDACは製品全体として前方定位の品質が向上していると断言してしまって構わない。

 Project CARSでも基本的な印象は変わらない。自車の変速時や自車が縁石に乗り上げたときはLFEチャネル(=サブウーファでのみ再生させる音として別途用意される重低域信号)が入るので,筆者はいつもここでLFEチャネルとSUBチャネル(=サテライトスピーカーで再生される音の低域部分を取り出したもの)の挙動をチェックするのだが,SUBの重低域に対するLFE信号の加わり方がとても自然で,第1世代のDTS Headphone:Xのギミック的な低音とは異なる印象がある。
 ただこれは,DTS Headphone:X 2.0の効果というより,そもそもArctis Pro本体の重低域再生能力が波形で示したとおり高いことのほうが理由としてはより強いのではないかという気もしている。

GameDACをPS4で使うときは,PS4側の「音声フォーマット(優先)」を「Linear PCM」にしておくのをお勧めする
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 次にGameDACをPS4モードに切り換えてのテストだが,PS4側でどう設定するかもここで述べておきたい。
 PS4の「設定」以下,「音声出力設定」−「音声フォーマット(優先)」は,ゲーム側で「Dolby Digital 5.1」や「DTS 5.1」をサポートしていたとしても,非圧縮の「Linear PCM」(による5.1ch出力)を選んでおくのが正解だ。理由は2つあり,1つは,たとえば製品ボックスに「Dolby Audio」のロゴだけがあり,DTSのロゴはないタイトル――今回テストに採用している某アクションゲームがまさにそれだ――の場合,「ビットストリーム(DTS)」を選んでしまうと,GameDACから音が出力されなくなることである。

 もう1つは,ビットストリーム処理だと圧縮処理が入るため,高域が落ちて定位感が下がったり,音が濁ったりする恐れがあることだ。
 今回試した某アクションゲームの場合,「ビットストリーム(Dolby)」を選ぶと前者だとLFEチャネルやSUBチャネルに送られる低音が少し上の帯域に被って,濁った感じに聞こえた。これはDolby Digital 5.1ch特有の「高域を削るフィルタ」が原因だと思われるが,そういう問題を避けるためにも,GameDACと接続する前にはPS4側の設定が「Linear PCM」になっていることを確認しておきたい。

 さて,テストに用いたタイトルはTPSスタイルなので,プレイヤーキャラクターはプレイヤーの前に立っているわけだが,DTS Headphone:X 2.0の無効/有効を繰り返しながらゲームの音を聞いてみると,無効時はプレイヤーキャラクターの足音が脳のど真ん中から聞こえ,前方の音は真横から聞こえるのに対し,有効化するとプレイヤーキャラクターの足音は見事にほんの少し前から,前方の音はさらにその奥から聞こえるようになる。つまり,PCモードで感じられた前方定位の優秀性は,PS4モードでも変わらないということだ。
 ちなみに音質傾向もPCモードと同じで,「重低域がしっかり存在する一方で音抜けはよい」という,カラっとしたバーチャルサラウンドサウンドである。

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 今回テストに用いたタイトルでは大型のモンスターがプレイヤーキャラクターの周りをぐるぐる回ったり高速で駆け抜けたりすることが多いため,サラウンド感は確認しやすいのだが,目を閉じていても,モンスターがどう動いているのかは容易に追えるほど。敵キャラなどの音源がプレイヤーの前にいるのか後ろにいるのかがとても分かりやすいと感じた。
 真後ろには音量的なデッドポイントがあったが,これは「人間の耳の構造上,真後ろの音は籠もって聞こえる」特性をシミュレートした,意図的なものだと思われる。

 本タイトルできちんとしたバーチャルサラウンドサウンド体験を味わえているプレイヤーはあまりいないのではないかと思うが,Arctis Pro+GameDACを用いたサラウンド体験は文句なしに素晴らしい。一度聴いたらもうステレオには戻れないくらいのインパクトがあるので,ぜひ試してみてほしいと思う。

 なお,CUH-2x00用となる「テレビ側の光角形端子を使ってGameDACへ光デジタル入力する接続方法」だが,音質傾向はPS4とGameDACを直接接続する状態と何も変わらなかった。


従来モデルの弱点を克服し,不満のない低遅延動作を実現


 続いては,USB接続型ヘッドセットということで気になる出力遅延だが,それに先だってお伝えしておくと,PCモードでのWASAPI接続では波形編集ソフト「Audacity」を用いた録音開始時にエラーが出て録音できなかったため,今回は割愛している。
 HI-RESモードだとWASAPIで問題なかったのだが,これは「PCモードだと,『GameDAC Game』『GameDAC Chat』という2デバイスとしてPCから認識される」というGameDACの仕様が原因ではないかと思う。ちなみにPCモードでもDirectSoundでは問題なしだった。

PCモードだと,GameDACはGameDAC GameおよびGameDAC Chatの2デバイスとしてWindowsから認識された(左)。さらにChatMixも有効になる以上,テストがうまく動作しなくてもやむを得ないかな,といったところだ。HI-RESモードだと「GameDAC Hi-Res」1製品として機能するため(右),こちらだと問題ないというのも頷ける
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 というわけで今回は,Creaive Technology製サウンドカードとArctis Proをアナログ接続した状態をリファレンスとして,それに対してArctis Pro+GameDACのPCモードのDirectSound接続とHI-RESモードのDirectSoundおよびWASAPI接続がどれだけ遅れるかを見ることになった。その結果がだ。

 見て分かるように,PCモードのDirectSound接続という,最もゲーム用途に近い設定でも平均では4ms弱の遅延で済む。HI-RESモードならPCI Express x1接続型カード以上に高速という結果なので,いずれにせよ十分に実用的だと断言してしまっていいだろう。
 Arctisシリーズの「Arctis 5」をテストしたとき,唯一と言っていい泣きどころが出力遅延の大きさだったので,Arctis Pro+GameDACがその問題をきっちり改善できている点は評価に値する。

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 なお,HI-RESモードのほうがPCモードより遅延面で有利な理由は推測の域を出ないが,前述した「Windowsからの認識のされ方」が一因ではないかと考えている。要は,シンプルなHI-RESモードのほうが速いということである。


USB接続なのに高域が落ち込まない低弱高強の入力特性


 Windowsのサウンドコントロールパネル上で確認した限り,Arctis Pro+GameDACのマイク入力はPCモードで16bit 48kHzモノラル,HI-RESモードだと最大16bit 96kHzモノラルに対応する。おそらくPS4モードはPCモードと共通だと思われるが,実際の周波数特性はどうなっているのか。さっそく波形を見ていきたい。

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HI-RESモードだとマイク入力は16bit 96kHzモノラルになる。PCモードでは16bit 48kHzモノラルだ
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マイク入力のリファレンス波形。上段が周波数特性,下段が位相特性である

■Arctis Pro+GameDAC,PCモード

USB接続のヘッドセットだと往々にして高域がばっさりカットされる。それこそArctis 5などもその傾向を示すのだが,そうなっていない。アナログマイク入力と変わらないフルレンジだ。波形は,60Hzから1kHzくらいまでが500Hz付近を谷とする小さなドンシャリ傾向を示し,1kHzから2kHzにかけて強くなって,20kHz付近までフラットに近い形状という,いわゆる「低弱高強」型。何をしゃべっているのか分かりやすくする形状である。位相は完璧
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■Arctis Pro+Sound Blaster ZxR(アナログ接続)

Arctis Pro+GameDACのPCモードと似た傾向だ。ただ,2kHzより上はフラットになっておらず,3kHz〜6kHz付近を頂点とする山になっていたり,12kHz以上で一段落ちていたりする点が異なる
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 GameDAC利用時とアナログ接続時とで波形が若干異なることから,GameDACは入力後に若干の音響補正処理を行っている可能性を推測できるが,それを裏付けるのが下に示した2枚のスクリーンショットだ。

 これらは,筆者が同じ台詞を音量を変えてしゃべった録音ファイルを,Steinberg製の音声編集&マスタリングソフト「WaveLab Elements 9.5」で開いたもの。時間軸の流れに沿った音量変化を把握しやすい,俗に言う「オーディオ波形」グラフとなる。
 波形は左から右へ時間が流れており,縦軸は音の振幅幅(≒音量)を示す。いずれにおいても最初は小声,次に普通の声,最後に大声でしゃべっているのだが,GameDACの結果を示す上のスクリーンショットでは,大声を入力したときに上下の振幅がカットされて水平になっているのが分かるだろう。音量が一定レベルを超えないように制御する,いわゆる「リミッター」と呼ばれる音響プロセッサを使っているがゆえに,GameDAC利用時の波形はアナログ入力時と異なったと断言してしまっていい。

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GameDAC利用時に小声,普通の声,大声を入力した結果
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Arctis Pro本体をSound Blaster ZxRにアナログ接続して同じテストを行った結果。大声でも波形の上下は切れておらず,自然だ。本来の周波特性はこちらなのだろう

 実際に声を入力してみると,プレゼンス帯域がしっかりしているため,とてもクリアで聞き取りやすい。高い周波数まで入力できるので,鼻づまりっぽい声になることはなく,しかもGameDAC利用時はリミッターが入っているので,大きめの声を入れても声が割れたりする心配もほとんど無用である。
 双方向指向性のマイクを採用しているため,ノイズも比較的少なめ。重低域の「ブーン」といったハムノイズを拾うことはあるが,音量的には小さいので気にならないだろう。また,高域をこれだけ拾うにもかかわらず,「サー」といったヒスノイズはまったく気にならないことから,マイク周りが相当にきちんと設計されていることが分かる。


「PS4で簡単にバーチャルサラウンドサウンドを利用できる」に留まらない,非常に完成度の高い逸品


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 5月10日の発売に向けて受注が始まっているArctis Pro+GameDACの実勢価格は3万2100〜3万5700円程度(※2018年4月28日現在)。PS4対応ヘッドセットと限定せずとも相当に高価だが,「PCとPS4のどちらでもDTS Headphone:X 2.0ベースの優れたバーチャルサラウンドサウンドを利用できるヘッドセット」と簡単に紹介するのが惜しいほど,総合的な完成度は恐ろしく高い。
 光デジタル入力でPS4のサウンド信号を受けるという仕様上,マルチチャネル出力に対応したPS4用ゲームタイトルであれば「相性問題によるバーチャルサラウンドサウンドを味わえない」ということは原理的にあり得ず,そして接続周りは極めてシンプル。操作も簡単だ。
 さらにヘッドセット本体側は,デザインも装着性も,ヘッドフォン出力品質も遅延特性もマイク入力品質も優れている。穴らしい穴がない。

 CUH-2x00シリーズのユーザーだけは「PS4と組み合わせているテレビに光角形デジタルサウンド出力端子があるか否か」のチェックが必要だが,いずれにせよ,PCとPS4の両輪で3Dゲームを積極的にプレイする人にとって,Arctis Pro+GameDACは現状,間違いなく最良の選択肢だ。機会があればぜひ試してみてほしい。

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SteelSeriesのArctis Pro+GameDAC製品情報ページ


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