連載
極私的コンシューマゲームセレクション:第8回「Power Smash 3」
» 毎月“4”の付く日(4/14/24日)更新の本連載では,4Gamerの編集部員が,コンシューマゲーム機のタイトルを思い思いに紹介する。14日が土曜日だったので本日掲載となった第8回は,海外派遣回数は編集部で1,2を争う,英語堪能なnoguchiが,PlayStation 3の「Power Smash 3」を紹介する。
■第一印象をいい意味で裏切ったパワスマ3
実は筆者,パワスマシリーズの熱心なファンというわけではなく,「グラフィックスが綺麗なテニスゲームでしょ」ぐらいの印象しか持っていなかった。だが2006年8月,ドイツのライプチヒで開催された「Games Convention 2006」でVirtua Tennis 3をプレイしたとき,その印象は一変した。遊び始めこそぎこちなかったものの,ものの数分でそれなりに戦えるようになり,なにかが上達するという快感を久しぶりに味わえたのだ。プレイしたのはXbox 360版だったが,担当者の話によるとヨーロッパと北米ではPC版が発売されるということだったので,PC版が日本でも発売されるといいなと思いながら帰国。いつのまにやら時は流れ,気がつくと店頭にパワスマ3が並ぶようになっていた。海外でPC版が販売されているということをすっかり忘れ(編注:PCゲームサイトの編集者としてそれはどうかと思うが),取材時の楽しかったことだけを思い出し購入した。
■まっすぐ素直に進化したテニスゲーム(だと思う)
用意されているモードは,オリジナル選手を作って,世界中を転戦しながらランキング1位を目指す「ワールドツアー」,いわゆる4大大会での優勝を目指してコンピュータと戦う「トーナメント」,対戦相手やコートなどを選んで戦う「エキシビション」,2人〜4人で7種類のミニゲームで遊ぶ「パーティゲーム」の4種類だ。
ワールドツアーモードでは,男女を問わず外見やフォーム,利き腕などを選んで,選手を作れる。このキャラクターを成長させていき,ランキング1位を目指す(スタート時は300位)。
作ったばかりのキャラクターは能力が低く,足は遅い,サーブはヘロヘロ,ボレーもヘナチョコと,お世辞にも三拍子揃った選手とはいえず,どちらかというと,間抜けな雰囲気が漂う三三七拍子系。ミニゲームによるトレーニング,テニスアカデミーでの実践的なトレーニングと練習試合の三つでキャラクターを成長させていくことになる。
ミニゲームは,サーブで巨大なボウリングのピンを倒す“PIN CRUSHER”,転がり落ちてくるボールを避けながらフルーツをキャッチする“ROCK FALL”など,微妙にテニスとは離れた内容のものが全部で12種類ある。知らず知らずのうちに試合で必要になる基本動作が身に付くのは,映画「ベストキッド」のペンキ塗り的なものを連想させる。
ミニゲームによってアップできる能力が異なるので,自分の理想とする選手像を頭に描きつつ選択していくことになる。また,各ミニゲームには1〜6のレベルがあり,レベルが高ければ高いほどクリア条件が厳しくなるが,その分クリア時の能力上昇が大きい。ちなみに,このミニゲームで対戦できるパーティゲームモードも存在する。
テニスアカデミーでは,実践形式の課題が与えられクリアすることで,さらに難度の高い課題に挑戦できる。課題を達成すれば,その内容にそった能力がアップするが,どちらかというと,キャラクターの能力アップが目的ではなく,プレイヤーの腕を鍛える/確かめるような場所だろう。
練習試合は,ほかの選手から申し込まれるもので,2セット先取制で行い,すべての能力が微妙に上がる(勝ったほうが伸び幅がデカイ)。プレイヤーは,これらを適時選びながらこなしていき,キャラクターの能力をアップさせつつ,自分の腕を磨いていく。
肝心のランキングは,大会に参加して勝つことで上がるようになっている。シングルス,ダブルス,ミックスドダブルスの3種類があり,大会ごとに参加できるランキングが設定されている。当然ながら参加資格が厳しくなるにしたがってCPUが強くなっていく。
対戦相手はパワスマ3に登録されている20名の選手の誰かになるのだが,同じ選手が相手でも,大会のレベルによって別人のような動きをしてくる。そしてランキングが16位以内になると,「The King of Players」に参加できる。これは大西洋の真ん中を航海している豪華客船内にある特設コートで試合をするという,セレブな感じのシチュエーションで行われ,ここで勝つとランキング1位になれるのだ。
このモードでは,20年以内にランキング1位にならないと,強制的に引退となってしまう。とはいえ,たとえランキングが1位になっていなくても,その選手をほかのモードで使えるので,無理に1位にならなくても構わないだろう。伸ばしたい能力を鍛え,自分の好きな選手に似せてもよし,戦いやすい選手を作り上げてもよし。また,大会で優勝したり,特定条件を達成したりするとウェアやラケット,シューズといった“ギア”をもらえることがある。中でもラケットは,見た目が変わるだけでなく選手の能力にも影響するという代物だ。
これらのギアには,チアガール風のウェアやギター型のラケットなど,変わり種もある。例えば,ミニゲーム「PIN CRUSHER」のレベル4以上で,ターキーを出すとフライパン型ラケットが,パーフェクトを達成するとペロペロキャンディーをもらえる。ほかにもいろいろあるので,把握している分を文末に記載しておく。まだ手に入れていない人は,参考にしてもらいたい。
ワールドツアーモードのいいところは,選手の能力アップとともに,プレイヤー自身の腕を磨けるところだろう。開始直後,自分のキャラクターの能力は低いが,対戦するコンピュータのレベルも決して高いとはいえない。あまり厳しい攻めをしてこないので,操作感を掴みながらプレイしていきゲームに慣れていけるのだ。
ゲームの進行に合わせてキャラクターの能力が上がっていき,速く走れるようになり,サーブやボレーの威力が増していくことで,徐々に試合全体のテンポが速くなっていく。ランキングがある程度上がり,参加条件が厳しい大会に出場すると,一生勝てないのではないかと思えるほど,手も足もでないまま敗戦してしまうこともある。
だが,ミニゲームなどをこなして能力の底上げをすると,なぜ負けたのかが分からないほどあっさりと勝てるようになったりする。ときどきレベルの低い大会に出場して,「オレ(とそのキャラ)って,強くなったな〜」と優越感に浸るのもありだろう。
トーナメントモードは,ワールドツアーで作り上げたキャラクターか,初めから用意されている選手を使い,4大大会制覇を目指す。とはいっても,トーナメントを1回戦から戦っていくわけではない。各大会の決勝戦のみを戦っていき,相手を倒すのにかかった時間が短かったり,サービスエースを多く決めたりすると高評価を得られるという仕組みで,いかに高得点でクリアできるのかを競うモードだ。
ノーコンティニューでここまでたどり着くと,鬼のように強い特別な対戦相手が待っている。いや,鬼がテニスをプレイするのかどうかは知らないが。ワールドツアーモードで手塩にかけて育てたキャラクターでクリアできれば,育てたかいもあるというものだ。
■リアルとゲームの絶妙なバランス
ゲームの表面的な機能やシステムに驚くようなものはないのだが,細かな部分まで描き込まれたキャラクター達が,走り,踏み込み,ラケットを振る。その一連の動作が,現実に極めて近い印象を受ける。しかもそれが,“簡単”にできるというのが,パワスマ3の特徴でありウリだろう。選手の移動はアナログスティック,打つ球種はトップスピン/スライス/ロブ用のボタンが三つという,簡単な操作方法はもちろんだが,パワスマ3では,めったなことでは打ち返したボールがアウトにならないところもポイントが高い。初心者同士が対戦したとしても,ラリーが続き“テニス”っぽくなるのである。
ラケットを振り始めた選手の位置とボールの距離が離れているような無茶な体勢では,打ち返したボールにそれなりの勢いしかなく,しっかりと踏み込んだ場合は,体重がのった勢いのあるボールが相手のコートへ飛んでいく。綺麗なグラフィックスと相まって,よりリアリティが増すのだ。
と,ここまでを読むと,簡単すぎて上達の余地がなく,すぐに飽きるのではないかと思う人もいるだろうが,全力で否定したい。慣れてくれば,相手がボールを打ち返した瞬間に落下点を予測,いい体勢で打てる位置へ移動し,相手のいない方向へ強いボールを打ち返すことなどが可能になる。
また,ワイド方向にきた強烈なサーブをうまくストレートに返せれば,リターンエースを取りやすかったり,クロスに返ってきたボールは角度がついているので,打ち返すときの体勢がくずれやすかったりと,動きも含めてリアルなだけに,試合の展開方法も実際のテニスに近いものがある。筆者は大学の授業と遊びぐらいしかテニス経験がないので微妙だが,テニスをしっかりとやっていた人は,その攻め方などをパワスマ3で生かせる部分もあるだろう。
テニスは,コートのサーフェースが勝敗の重要な鍵を握っている。球足が速くあまり弾まないグラス(芝)コートでは,パワーのある選手が有利で,球足が遅くよく弾むクレイコートは足の速い選手に向いており,ハードはその中間だ。トッププロレベルの試合になると,すべてのサーフェースに対応するというのは難しく,テニス史上屈指のオールラウンドプレイヤーといわれ,ウィンブルドン4連覇,全米3連覇,そして全豪で3回優勝した経験のあるロジャー・フェデラーでさえ,クレイコートで行われる全仏を制した経験はない。パワスマ3は,そのあたりの再現性も高く,長所とサーフェースが合っていない相手との試合は戦いやすいし,合っている場合は苦戦することが多い。ワールドツアーモードの大会でも,サーフェースが合っていない選手が勝ち上がってくることは少ない(気がする)。
と,さんざんリアルさを長所として挙げてきたが,リアルじゃない部分だってある。例えば,どれだけラリーを続けたからといってキャラクターが疲れるわけでもなく(やっているプレイヤーは疲れるが),前述したとおり,返球のほとんどはアウトにならない。また,ボールも残像がわざと描かれており,スピード感の割に打ちやすくなっている。だが,これらは決して短所ではなく,むしろ長所とえいるだろう。グラフィックスやモーションでリアルさを追求しつつ,きちんとゲームとして成立させ,楽しめるようにバランスが取られているのだ。このバランスが絶妙で,初めのハードルは低いが,その頂きはとんでもなく高く,練習すればするほど,自分がうまくなるのが実感できるだろう(もちろんどこかで限界はくるだろうが)。なにかが上達する快感を忘れかけている人はぜひ。また,テニス経験はあるが,テニスゲームは遊ばないという人も,一度試してもらいたい。その経験を生かしつつ,楽しく遊べるだろう。
■おまけ:レアラケットリスト
フライパン
ピンクラッシャーLv4〜6でターキーを出す
ペロペロキャンディー
ピンクラッシャーLv4〜6でパーフェクトを出す
タンバリン
大会でのロブによる得点回数が100回に到達する
スポンジハンド
大会でのMAXサーブ回数が1000回に到達する
サボテン
大会でのドロップショットによる得点回数が100回に到達する
ギター
SPT Final(ダブルス)でゴールドトロフィーを獲得する
KING&DUKEの木製ラケット
The King of Playersでゴールドトロフィーを獲得する
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Power Smash 3
対応機種:プレイステーション 3
メーカー:セガ
発売日:2007年3月8日
価格:7329円(税込)
CEROレーティング:A(全年齢対象)
公式サイト:http://powersmash3.sega.jp/
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