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男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第283回「自分ならではの角度」
まあ,あるでしょうね。若いうちはそうでないと。かく言う私がそう思ってたからね。何なら,今も思ってる。ただね,モノを作るに当たって,私,気付いたことがあるのよ。今回はそのことについて語っていこうかな,と。
まず,今回紹介するゲイムは「inFAMOUS Second Son」。ケツ論から言ってしまえば……面白いです。非常にスッキリとプレイできる。簡単に説明すると,超能力を駆使して先に進んでいくアクションゲイム。いかにも洋ゲイっぽい雰囲気を持った洋ゲイでもあるわ。
最も目立つポイントは,PlayStation 4の性能を活かした綺麗なグラフィックスで,アクションをばっちり楽しめるってところじゃないかしら。ちなみに私,このシリーズは初体験だったのね。今までを知らないから比較はできないんだけど,そんな私がプレイしても「これ凄いんじゃないか?」って思える程度に綺麗。
そして何が凄いって,そんなグラフィックス環境で,アクションがやたらスムーズ。要は,普通にCG映画なんかをコントローラで動かしているような感じ。
……分かる。分かるよ。グラフィックスを褒めたところで,もはや選ぶ立場の人の興味はそそり立たないってことぐらい,理解しているつもり。みんな,気付きつつあるのよね。ゲイムにおけるグラフィックスの綺麗さは,購入動機になりづらいってことに。
恐ろしいものでね,慣れるんですよ受け取る側ってのは。グラフィックスが凄いはずなのに,そして作り手はめちゃくちゃ苦心しているはずなのに,プレイヤーはそれを当たり前としてとらえちゃうの。これは,グラフィックスの向上がゲイムにおける進化において,一番分かりやすいがゆえに起こった悲劇だと私は思ってる。要は,“凄く綺麗”ってことに,慣れちゃったのよね。
初代PlayStationが発売された頃なんかだと,「スゲー! これが噂のバーチャルリアリティか!」って素直に驚いて,3Dのキャラクターが動かせる新鮮さと勢いでゲイム機本体を買っちゃってたけど,新機種が出るたびにグラフィックスが綺麗になっていって,今では「うわ! やっぱ新しいゲイムは綺麗! ……で?」と思ってしまう。
結局これって,“ゲイムにおける新しさ=綺麗なグラフィックス”という図式に慣れちゃったからだと思うの。普段,ゲイムをプレイしていない層も,そこそこゲイムをプレイする層も,綺麗なゲイムがいっぱいあることを知ってはいるわけ。だから,綺麗なだけではそのゲイムを選びづらい。
ところで! 冒頭で書いた「モノを作りたい,クリエイティブな仕事をしたい」という願望って,ある程度エンターテイメントが好きな人だったら,誰もが一度は思うことよね。そんな中で,現実に潰されずに実際にクリエイティブな仕事ができる人ってどういう人なのかしら。私個人としては,物事を見るときに“自分なりのフィルター”を持っている人なのかなって思うの。
よく言うじゃない。「ゲイムばっかりプレイしている人よりも,ゲイム以外にもいろんな趣味を持っている人のほうが,ゲイム作りには向いている」って。これってゲイムだけじゃなくて,ほかのエンターテイメントにも当てはまると思うの。
例えば私の場合,ほかのエンターテイメントを見るとき,お客さんはどこを面白いと思って反応するのかを気にしちゃうわけ。サーカスだったらどういう動きで沸いたのか,映画だったらどういうシーンで泣いたり笑ったりするのか,お笑いだったらどういう振りでお客さんを集中させてどこで落とすのか。それを考えながら見ているの。
なぜなら,私が職業としているプロレスは,お客さんの反応を引き出す競技だから。相手を倒すことが目的であれ,見世物である以上はお客さんが喜ぶ倒し方をしなければならない。もちろん,お客さんには分からない倒し方もあるわよ? でも,人間の心理としては,分からなくて楽しめないものにお金は払えないじゃない。そういうこと。
ほかのプロ格闘技と違うところは,ここじゃないかしらね。相手を倒せばお金がもらえるのがほかの格闘技,見てる側が喜ぶ倒し方をしなければお金にならないのがプロレス。どちらが優れているという話ではないわよ。突きつめるポイントが違うってだけの話。だから,プロレスがショーだと言われるのは当然のことだと思う。
で,まあ,私はそういうフィルターを通して物事を見ているってことが言いたいの。ひょっとしたら,これは私のコンプレックスがそうさせるのかもしれないわ。私,プロレスラーとしてはやっぱりイロモノだから,プロレスそのものだけでは勝負できないのね。だから,プロレス特有の“お客さんを喜ばせる方法で倒す”という幅の広さを利用すべく,ほかのエンターテイメントから面白いところを吸収しようとして,そういう目で見ている部分がある。
逆に,昨今のアイドルも,プロレス的要素を取り入れてショーアップしている一面があるでしょ。TVだってそうだし,映画だってそう。エンターテイメント産業は,楽しませれば正解なわけだから,基本何でもありなのよ。楽しませることさえできるならば。その目的を果たすために,ジャンルにこだわり続ける方法もあれば,ジャンルをいったん崩しておいて,最終的にそのジャンルに回帰することで楽しませるという方法もある。
で,クリエイティブな仕事ができる人って,何かしらの“自分にこういう形で還元したいから,こういう目で見る”っていう見方ができる人かな,と私は思っているわけ。
別に,職業でなくてもいいのよ。例えば,ネタが欲しいからどう話したら面白いかを考えながら見るというのでも十分。問題は,ただ見るんじゃなくて,目的意識を持って物事を見ることができるか否か。この一点がひとまずは,“エンターテイメント作りができるかどうか”の分かれ目かなぁと,私は勝手に思っているわ。それが正しいのかどうかは知らんけど。
このゲイムを作った人のベースにあるのって,きっと映画なのよ。洋ゲイで映画的な見せ方が多いのは,映画がエンターテイメント全般に与える影響力の大きさが,日本の場合よりも多いという文化があるからでしょう。そのうえで,ゲイムでできることの長所を盛り込んでいる。そういった印象を受けたわ。映画では主人公の生き方や選択は選べないからね。
で,超能力を使ったアクション。この超能力も,善か悪かの選択によって使える能力が変わるの。善には善の超能力。悪には悪の超能力。選んだ生き方で能力が変化する,そのゲイムっぽさが面白い。
だから,私が思うこのゲイムの面白さは,グラフィックスの綺麗さではなく,選んだ生き方が綺麗なグラフィックで表現されていることにあると考えているわ。それでいて,操作していてストレスのない,いいアクションゲイムだってことも忘れちゃいけないんだけどね。ホントに面白いっすよ。
というわけで,モノを自分ならではの角度から眺められるかどうかで,体験したことの吸収の仕方や説明の仕方に変化が生まれるよ! って話をしてみたわけですが。
これって,クリエイティブな仕事がどうこうっていう小難しい話とは別にしても,物事の楽しみ方にもつながってくるんじゃないかなあと思ったりしているわ。別に何も考えずに楽しむのが悪いって言ってるわけじゃなくてね。自分に合った楽しみ方ってあるから。
娯楽の楽しみ方は,他人に迷惑をかけない限りは自由だから。いろいろ試してみて,結果,自分に合ったジャンルであったり楽しみ方であったりを見つけ出せればそれでいいのかなと。ま,若いうちはいろいろと試せっていうのは,そういうことも含まれているのかな。
そして私から言えることは,プロレスってのも一度試してみてもいいんじゃないか? っていうことでもあるわけです。自由なんで強制はしないけど。そんな感じで尻すぼみにまた来週!
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 4:「inFAMOUS Second Son」
PlayStation 3:「魔都紅色幽撃隊」
PlayStation Vita:「Winning Post 8」
PSP:「サモンナイト5」
Wii U:「The Wonderful 101」
Wii:「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」
ニンテンドー3DS:「マリオゴルフ ワールドツアー」
Xbox 360:「Minecraft:Xbox 360 Edition」
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(C)Sony Computer Entertainment America LLC. inFAMOUS Second Son is a trademark of Sony Computer Entertainment America LLC. Developed by Sucker Punch Productions LLC. The Space Needle is a registered trademark of Space Needle LLC and is used under license.
- inFAMOUS Second Son (初回封入特典ダウンロードコンテンツ「コールの遺産」同梱 同梱)
- ビデオゲーム
- 発売日:2014/05/22
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