連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第622回「ゲイムを通じて情報の捉え方について考えさせられた」
他人が思っていることは,推察はできても分かり切ることなんてできないのですよ。だから,どちらも自分が正しいと思っているがゆえにぶつかり合うケースが多々ある。まあ,そういうときに暫定的な基準となるのが法だと私は思っているのだけれど。
当事者にしか分からない揉めごともあって,そうすると断片的な情報のみで特定の他人を叩くのは私にとっては難しいのよね。他人を陥れてやろうとか,衝動的に他人を傷つけてやろうだとか,そういう“絶対悪”なら非難できるのだけど。そんなに単純なもんでもないからね,人間の心なんて。善と悪のジャッジも難しいところだし。
ただ,自分が常に正しくあろうと思ってはいても,結果的に自分が常に正しいわけではないことだけは,自覚しておいたほうがいいかもしれない。最近はとくに。
というのも,最近は……というか今後の人類はより多くの情報に触れるようになると思うのです。ネットワークの発達って,要するに情報網の発達なわけで。それは今後,より顕著になると私は考えているの。
古代より,紙が発明されて情報の記録が簡単にできるようになり,印刷が発明されて情報が大量に拡散できるようになり,交通の発達で情報が遠方に届くようになり,電話が発明されて人が情報を運ばなくても良くなり,フィルムが生まれたおかげで視覚的に情報を伝えることができるようになった。
さらに近現代では,電波を操るようになって情報の時間的ラグがなくなり,インターネットの発達で個人が情報を発信することが可能になった。ここ20年だけとってみても,携帯電話がガラケーからスマホに移り変わったことによって,扱う情報量は大幅に増えているわけじゃない。要は,人類の歴史は情報の歴史でもあるわけで。
ここで冒頭の話に戻るのだけれど,一人一人が扱う情報が増えるであろう今後こそ,すべてを知ることは不可能になると私は思っているのです。情報には意図というものがあるから。最終的には人間にたどり着くのですよ。人間が人間ともめる。そこにお互いの正義があって,意図がある。ここまでは理解しやすい。
情報にも意図があって,仮に「AとBがもめた」という情報があった場合,Aの視点から見た場合とBの視点から見た場合,あるいは中立とされる視点から見た場合で,情報の受け止め方は変わってくるの。
実はニュースもそうで,例えばスポーツだと有名な選手の視点で語られることが多いじゃない。「○○が優勝です!」的な。優勝だと「すげー! 優勝おめでとう!」で済むのだけど,「惜しくも準優勝です」の場合は,情報を受け取った側は「負けちゃったか,残念」っていう印象になっちゃうのね。勝って優勝した人がほかにいるっていうのに。
これはきっと,有名な選手の視点に立った伝え方のほうが,共感できる人が多いし,そもそも情報を出すからには興味を持たれたほうがいいじゃない。そういう意図での情報の出し方になっているんだと思う。良し悪しの話じゃないのよ。私が知る(推測する)情報だけでは良し悪しは判断できないしね。
ただ,ここで言いたいのは自分が受け取れる情報はあくまで断片的なものにすぎないってこと。その断片的な情報の中で,自分なりにどう捉えるかを判断しなきゃいけない。そう考えると,自分の考えを述べるのはいいとしても,他人を叩くのはなかなか勇気のいることだと私は考えちゃうのよね。
本当に公平な情報を持って判断できているのだろうか? って思いが浮かんで。まあ,単純に情報化社会であるからこそ情報の捉え方や判断の仕方って大切だよなあって話なんだけど。
このゲイム,いろんな意味ですごいのよ。まず,圧倒的な地味さ。ほぼほぼ絵というものが出てこず,基本的には文字だけで進行するゲイムなの。こう書くとテキストアドベンチャーをイメージするかもしれないけど,ゲイム感としてはそうではない。ジャンルとしてはアドベンチャーなんだけども。
ゲイムの説明をするわね。プレイヤーは警察の刑事課の係長。で,何をするかというと,事件の報告書を読んで書類を作成するという,ただそれだけ。ね,地味でしょ。
で,次にすごいと思ったのが,切り口の斬新さ。おそらくプレイするほとんどの人が,このゲイムを地味だと感じると思うんだけど,ではこれの何が面白いのかっていうと,長々と書いてきた“情報には意図がある”を地でいく感じなのよね。情報の意図をゲイムとして扱ったという。捜査で上がってきた情報を判断して,どう自分が作る書類に反映させるか。これによってストーリーが変わってしまうというゲイムなのです。
情報の捉え方で受け取り方が変わるっていう,ある種リアルな現実をゲイムとして仕上げているのがすごい。確実に言えるのは,ほかのゲイムには無い魅力があるってことじゃないかしらね。ライトゲイマーがどう感じるかは正直分からないけど,変わったゲイムをプレイしたい人には向いているゲイムね。情報に関して,考えさせられるしね。そういう意味で作り手からのメッセージがビンビン伝わってくる怪作と言えるんじゃないかしら。
実写さながらのグラフィックスのゲイムが当たり前になったこの時代に,ほぼテキストだけでこんな風変わりな,それでいて心に残るゲイムが生まれるもんなんですね。ちょっと感動しました。地味が過ぎてて全方位へのオススメはしづらいけど,気になるならば触れてほしい作品よ。
というわけで,今週は情報の捉え方に対する思いを深めてくれたゲイムがあったよってお話でした。情報に振り回され過ぎないように。総合ゲイム情報サイトの連載から,そんなメッセージをお届けいたしました。また来週。
今週のハマりゲイム
PlayStation 4:「eFootball ウイニングイレブン 2021 SEASON UPDATE」「Bloodstained: Ritual of the Night」
Nintendo Switch:「ダービースタリオン」「eBASEBALLパワフルプロ野球2020」「リーガルダンジョン」
iOS:「龍が如く ONLINE」
iOS:「ハンドレッドソウル」
iOS:「ウイニングイレブン カードコレクション」
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リーガルダンジョン
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