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キャラロストのあるオンラインゲーム「Wizardry Online」の発表も行われた「Wizardry 30周年記念トークイベント」。遠藤雅伸氏,伊藤賢治氏らも登場
「Wizardry Online」公式サイト
*おおっと*「Wizardry Online」キター! クローズドβテスター募集,4Gamer枠1000名で本日スタート(発表会で判明した新情報,プロモーションムービーを追加!)
イベントの冒頭では,WizardryというIPを再び世に知らしめようという意図のもとに立ち上げられたプロジェクト“Wizardry Renaissance”のメインテーマソング“memento mori”がライブ演奏された。演奏したのは,ゲームミュージックの作曲家としてお馴染みの“イトケン”こと伊藤賢治さんと,ヴァイオリン奏者の土屋玲子さんだ。
トークイベントは,ファミコン版Wizardryシリーズの移植プロデュースを手がけたゲームデザイナーの遠藤雅伸氏,チュンソフトの代表取締役社長である中村光一氏,グラスホッパー・マニファクチュアのサウンドデザイナーであり,Wizardry OnlineのSE制作にも加わっているという山岡 晃氏,PlayStation 3用ソフト「Wizardry 囚われし魂の迷宮」「Wizardry 囚われし亡霊の街」をプロデュースしたアクワイアの田村純一郎氏,そして無類のWizardry好きとして知られるフリーライターの忍者増田氏という錚々たる面子によって行われた。司会を務めたのは,Wizardry Onlineの総合プロデューサーであるゲームポットの岩原ケイシ氏だ。
トークの最初のお題となったのは,Wizardryの魅力について。遠藤氏はその魅力として“臨場感”を挙げた。グラフィックスこそチープだったが,かつてのWizardryには,一文字打ち間違えただけでも呪文が発動しなかったり,蘇生に失敗するとキャラクターがロストしたりといった緊張感の中に,説明のできない何かがあると説明した。
中村氏は,かの堀井雄二氏と一緒にファミコン版「ポートピア連続殺人事件」に取り組んでいた頃,Apple II版Wizardryをプレイしたという。初めてRPGというジャンルに触れた中村氏と堀井氏は,「こんなに面白いゲームがあるのか」「次はRPGを作ろう」と意気投合したそうだ。そのようなやりとりの結果に生まれたのが,初代「ドラゴンクエスト」である。
山岡氏は善悪の属性や職業を選び,パーティを組んでいく冒険に旅立つというWizardryのゲームの流れを「人生のようだ」と述べた。Wizardryではレベルアップ時に,思うように体力やステータスポイントを伸ばせなかったりするが,そういう部分に「でも社会ってこんなだよな」と考えさせられたそうだ。
田村氏は,かつてファミコン版で遊び,今は仕事としてWizardryに携わっている立場から,アイテム収集やマップ踏破といったWizardryの持つゲーム要素は,昔も今も変わらずに,多くのゲームファンを魅了続けているものだと説明した。
増田氏は,「生死ギリギリの戦闘」「キャラクターの成長」「アイテム探し」「かき立てられる想像力」と,四つのポイントを挙げる。その中でも,「ボスを倒して終了ではなく,むしろそこからが本番」という,Wizardryのアイテムを求めるヤリコミの部分は,とくに好きなポイントであるという。
また「プレイヤーの想像力が高いほど楽しめる,ちょっとずるいゲーム」であるとも述べ,自身でも中学生の頃と成人したあとでは,プレイしながら思い浮かべるストーリーが違っていて興味深かったと説明した。
そのようなこともあって,遠藤氏のチームがウッドヘッド氏の信頼を得ることができた。日本において,ファミコン版の「Legacy of Llylgamyn」と「Knight of Diamonds」のリリース順序を逆にしたり,ダンジョンの構造を変更したり,外伝として新シナリオを企画・開発したりといったことが可能だったのは,このときに築けた信頼関係があればこそだったのだ。
また遠藤氏は,ファミコン版で呪文を英字からカタカナ表記にする際に,スタッフ各自が違う読み方をしていてとても困ったというエピソードを披露した。ちなみにLegacy of Llylgamynに登場するL'KBRETHを,遠藤氏は“ル・クブレス”と読んでいたそうだが,ウッドヘッド氏にはこれが通じなかったそうだ。当のウッドヘッド氏は“エルケブレス”と発音していたとのこと。
一方,田村氏は,現在自身が手掛けているPS3用の現行シリーズ(「Wizardry 囚われし魂の迷宮」「Wizardry 囚われし亡霊の街」)について,キャラクターのグラフィックスやシナリオを強化することで,物語として楽しめるようにしていると説明。現在はPlayStation Networkのサービスが動いていないため,ダウンロード購入ができないが,「興味のある方は,復旧したらぜひ試してみてください」と話していた。
次のお題は「Wizardryの影響力」。遠藤氏は自身が手がけた「ドルアーガの塔」を挙げ,実は,近年放映されたアニメ版のストーリーは,遠藤氏が「Wizardryのようにパーティで進めさせたい」と考えたため,主役が1人で塔に登る話ではなく,あのような登場人物の多いストーリーになったのだと語った。
またここで中村氏は,ファミコン版「ポートピア連続殺人事件」に仕込まれている例のWizardryネタにも触れた。屋敷の地下迷路の壁に「もんすたあ さぷらいずど ゆう」というメッセージが書かれているのだが,これはWizardryで敵とエンカウントしたときに表示される文字「MONSTERS SURPRISED YOU」を意識したものだ。当時の一般プレイヤーにはほとんど理解されなかったが,そのメッセージを発見した遠藤氏は,中村氏に電話をかけ,「爆笑だよ」と感想を告げたのだそうだ。
田村氏は,アクワイアのダンジョン系タイトルはWizardryの影響を強く受けていると説明し,今後もシリーズを続けていきたいと展望を述べた。
増田氏は,Wizardryの影響を強く感じたものとして「ドラゴンクエストIII」の職業システムを挙げたほか,「日本刀を最強の武器にしているゲームは少なくないが,あれもWizardryの影響ではないか」と述べた。また,「ポケットモンスター」シリーズで全モンスターをコレクションし終えたときの充実感は,Wizardryのボルタック商店に全アイテムを揃えたときの達成感と同種のものだったと,自身のゲームプレイ経験を披露した。
なお増田氏は,Wizardryが好きだから“忍者”を名乗っているのではなく,もともと忍者が好きだったことから忍者の登場するWizardryをプレイするようになったのだそうだ。この件については,勘違いされていることが多いという。
ちなみに増田氏といえば,忍者服姿で雑誌などに登場していたことを知っている人もいると思うが,今回会場では普通の服装だった。これは「40代になって,ようやく忍者服を着て人前に出るのが恥ずかしくなった」からなのだそうだ。
「これからのWizardryに求める物」について,遠藤氏はWizardry Onlineに言及し,「リセット技がついていないとつまらない」と述べた。遠藤氏自身,乱数を使ってキャラクターを作るゲームを開発する際には,キャラクターがロストしたときにプレイヤーの心が折れてしまわないよう,ある程度リセットを許容したデザインを心がけているそうだ。そして「今時,高難度なんて僕はやる気がしない。でもリセットがあるなら高難度でもいい。有料でリセットできるなら僕は代金を払います」と,プレイヤーの立場から率直な意見を述べていた。
この遠藤氏の発言を受けて,トークはロスト談義に移った。中村氏は,AppleII版ではリセットではなく,フロッピーディスクをドライブから引き抜くことでキャラロストを防いだという,当時を知る人には懐かしいエピソードを披露した。
山岡氏は,遠藤氏とは逆で,ロストしまくりの,これ以上ないくらいハードな内容のものが見てみたいと述べ,「お客さんに優しくないようなものが,どんどん出てくると面白いですね」と話していた。
他方で中村氏は,Wizardryにはこれからも続いていってほしいと,このシリーズに対する思い入れを語った。Wizardryの新作の話を聞くと,懐かしいと思うと同時に,自身の次のゲーム開発意欲を掻き立てられるのだそうだ。
そのほか会場では,日本のRPGにおける「スライム=最弱のモンスター」というお約束は,実はWizardryの影響が大きいという話題も挙がった。よくドルアーガの塔が最初といわれるが,遠藤氏としてはWizardryを踏襲しただけなのだそうだ。
遠藤氏は「匿名でモノを作らない。自分の名前でモノを作り,人から批評されることが大事。批判に耐えることもクリエイターの資質なので,強い心を持ち,面の皮を厚くしないとダメだ」と述べた。
中村氏は,Wizardryが好きな時点で,その人にはクリエイターの素質があるのではないかと語った。
山岡氏は,クリエイターとして作りたいモノに取り組むのはもちろんだが,それだけでなく,「どうすれば喜んでもらえるか,泣いてもらえるか」というように,人に対してサービスすることを意識するといいのではないかと述べた。
田村氏は,「やりたいことが決まっていれば,入り口はどうあれルートは見つかります」と述べ,「諦めないことが大事」であるとまとめた。
増田氏は「ゲームライターは,あまり薦めません」と述べ,それでも敢えてやりたいのであれば,ゲームだけでなくほかのものに興味を持つようにするといいのではないかと提案。加えて,人とコミュニケーションを取れることが大事であると語った。
まず,Wizardry Onlineのパーティプレイには,従来のWizardryシリーズと似た,前衛/後衛の概念があるそうだ。難度の高いダンジョンであっても,編成次第でクリアできるようになるとのこと。
また本作のゲームプレイにおいては,ロストの可能性を踏まえて,いかにキャラクターを死なせないように成長させていくかが鍵となる。岩原氏は「ゲームポットからの挑戦状と捉えてほしい」とアピールしていた。
なお本作の開発を担当するのは,「パンドラサーガ」「アルカディアサーガ」などのオンラインRPGを手がけたヘッドロックだ。
※(5月22日追記)本作のビジネスモデルは“基本プレイ無料”型を考えているということだ。
発表の最後に岩原氏は「Wizardryの持つ一人称視点やワイヤーフレームといった要素は,Wizardry Onlineには含まれていません。そういったものはWizardry Renaissanceで提供しています。Wizardry Onlineは,これからWizardryが続いていくために必要な新しい挑戦です。生まれたばかりの存在ですから,プレイヤーさんのご意見をいただきながら育てていきたいと考えています」と述べ,プレゼンテーションを終えた。
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Wizardry Online
- 関連タイトル:
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