レビュー
補助電源いらずの9600 GTカード,その消費電力と性能をチェックする
Palit GF9600GT 512M DDR3 256B CRT DVI HDMI
» 世界初……といっていいかもしれない,補助電源不要なGeForce 9600 GT搭載グラフィックスカード。消費電力とパフォーマンス次第では面白い存在となるが,果たして実際のところはどうだろうか。店頭で購入してきた実機を,宮崎真一氏がチェックする。
PCI Express補助電源コネクタを用意しない9600 GTが国内で販売されたのは,筆者が記憶する限りこれが初めてだが,果たしてPalit 9600 GTには,どのような意義があるのか。実機を購入してきたので,いくつかのテストで,このあたりをチェックしてみたい。
カード長は175mmとコンパクト
消費電力低減のためかクロックは若干低め
カード裏面 |
外部出力インタフェースはHDMI,アナログRGB(D-Sub 15ピン),アナログ/デジタルRGB(DVI-I)となる |
GPUクーラーは2スロット仕様で,GPUと接触した放熱フィン,あるいはメモリチップに風を吹き付けて冷却を行う。メモリチップにヒートシンクは取り付けられていない。
このGPUクーラーのファンは,OSが起動し,グラフィックスドライバが読み込まれるまで全開で回転し続けるため,動作音はかなり耳障り。もっとも,ドライバがロードされると,アイドル時の回転数は30%にまで低下し,いたって静かなものになる。
「では,これは何なのか?」という話になるが,グラフィックスカードベンダー関係者の証言によれば,NVIDIAは9600 GTの省電力版をリリースし,同GPUを搭載するグラフィックスカードでは,補助電源が不要になるとのこと。状況証拠からすると,Palit 9600 GTが搭載するG94-350-B1版9600 GT GPUは,「それ」である可能性がある。
なお,TechPowerUp製のGPU情報表示ツールである「GPU-Z 0.3.1」で確認すると,コアクロックは600MHz,シェーダクロックは1500MHz。9600 GTのリファレンスクロックがコア650MHz,シェーダー1625MHzなので,補助電源を不要にするための措置……かどうかは断言できないものの,動作クロックは若干抑えられている。
一方,メモリチップはQimonda製GDDR3,「HYB18H512322BF-14」(1.4ns品)を搭載。チップ自体は1428MHz相当(実クロック714MHz)の動作までしか保証されていないのだが,Palit 9600 GTでは,メーカーが独自に1800MHzまで引き上げ,同クロックでの動作保証を行っている形だ。
9600 GT搭載カード2製品との違いは?
HD 4670との比較も実施
また,補助電源コネクタを要しないGPUとして,HD 4670カードから,ASUSTeK Computer製の「EAH4670/DI/512M」(以下,ASUS HD 4670)もテスト対象としている。
WinFast PX9600 GT S-FANPIPE オリジナル1スロットクーラーを採用 メーカー:Leadtek Research 問い合わせ先:アスク(販売代理店) TEL 03-5215-5650 実勢価格:1万2500円前後(2009年2月20日現在) |
EAH4670/DI/512M オリジナルクーラー搭載のHD 4670カード メーカー:ASUSTeK Computer 問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) [email protected] 実勢価格:1万円前後(2009年2月20日現在) |
このほか,テスト環境は表のとおり。テスト方法は4Gamerベンチマークレギュレーション6.0に準じるが,前述のとおり,スケジュールの都合があり,今回は「Crysis Warhead」と「デビル メイ クライ4」,「Unreal Tournament 3」を省略する。
消費電力はあまり下がっていない
一方,パフォーマンスは5%ほどの低下か
今回は,最も気になる消費電力から見ていくことにしよう。
消費電力変化のログを取得できるワットチェッカー,「Watts up? PRO」を用意し,OS起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,各タイトルごとの実行時とし,各時点における消費電力をスコアとしてまとめることにした。
ASUSTeK Computerの販売代理店であるユニティによると,ASUS 9600 GT(※EN9600GT/HTDI/512M R3)では,高負荷時の動作安定性を向上させるべく,VRM周りで重点的に設計の見直しが図られているとのこと。この最適化が,消費電力の低減につながったと見るべきだろう。換言すると,Palit 9600 GTの消費電力は,基板設計の見直しで実現できる程度しか下がっていないわけだ。Palit 9600 GTは,「真に省電力用に設計されたカード」ではないように思われる。
「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06)を30分間連続実行した時点を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU温度を測定した結果がグラフ2になる。
測定に用いたツールは,(GPU温度表示機能を持つ)前述したGPU-Z。室温は19℃で,PCケースに組み込まれていない,いわゆるバラック状態におけるスコアとなるが,Palit 9600 GTが搭載するGPUクーラーの冷却性能はまずまずといったところ。定評ある,ASUS 9600 GTの「Glaciator」クーラーと比べるといま一歩だが,高負荷で60℃なら問題ないだろう。もっとも,アイドル時の40℃というのは,静音性重視とはいえ,少々いただけない。
続いて,パフォーマンス検証に入ろう。まず3DMark06の結果がグラフ3,4で,クロックが抑えられている分,どうしてもPalit 9600 GTのスコアはリファレンスクロックモデルと比べると低くなる。とはいえ,ASUS HD 4670にはかなりの差を付けている。
続いては,シェーダプロセッサのパフォーマンスがスコアに大きく影響する「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)だが,ここではASUS HD 4670がかなり盛り返す(グラフ5,6)。「標準設定」では,Palit 9600 GTのスコアを上回るほどだ。そのPalit 9600 GTだが,ASUS 9600 GTと比べると,全体的に4〜7%くらい,スコアが落ち込んでいる。
グラフ7,8に示した「Company of Heroes」の結果は,3DMark06と似た傾向にある。ここでもPalit 9600 GTは,ASUS 9600 GTからスコアが5%程度落ちている。まあ,体感できる差ではないのだが。
最後に「Race Driver: GRID」(以下,GRID)のテスト結果だが,ASUS HD 4670が盛り返すほかは,Company of Heroesと似たような傾向となった(グラフ9,10)
むしろ魅力的なのはコストパフォーマンス
省電力版が欲しいなら“待ち”が正解か
製品ボックス。「補助電源なし」というシールが貼られていた |
Palit 9600 GTにおけるNiBiTor実行結果(※サムネイルをクリックすると,別ウインドウで全体を表示します) |
ただし,消費電力という観点では,補助電源を必要としないことのメリットがまったく見えない点が気にかかる,また,メモリチップを定格以上のクロックで動作させているのも,懸念材料といえば懸念材料だ。ちなみに,GPUコアの電圧設定も,xtremethemeのBIOS編集ツール「NiBiTor」(Version 4.8)で確認する限り,1.1Vで,LR 9600 GTなどと同じだった。
序盤で述べたとおり,NVIDIAは省電力版の9600 GT搭載カードを近々リリースする計画があると見られている。今すぐに補助電源なしで高性能なグラフィックスカードを手に入れたいのであれば,Palit 9600 GTは有力な選択肢となるが,「補助電源なし」という仕様に,低消費電力での動作を期待するなら,噂される省電力版の真偽も含め,もう少し情報が出揃うのを待つのが良策ではなかろうか。
- 関連タイトル:
GeForce 9600
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