テストレポート
ASUS「ROG Strix Scar 17」テストレポート。RTX 3080&Ryzen 9 5900HX搭載のハイエンドノートPCの性能を検証する
今回は国内発売に先駆けて,17.3インチサイズの液晶ディスプレイを搭載した「ROG Strix Scar 17」(以下,Scar 17)の2021年モデルをテストする機会を得たので,写真を中心に紹介したい。
Scar 17の主なスペックを以下の表にまとめておこう。
CPU | Ryzen 9 5900HX(8C16T, |
---|---|
メインメモリ | DDR4-3200 32GB |
グラフィックス | GeForce RTX 3080 |
ストレージ | SSD 容量1TB(M.2/PCI |
液晶パネル | 17.3インチ液晶(※駆動方式未公開) |
無線LAN | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax) |
有線LAN | 1000BASE-T |
外部 |
HDMI |
キーボード | 100キー 英語配列 |
スピーカー | 内蔵2chステレオ+サブウーファ(2W×2,1W×2) |
マイク | 内蔵アレイマイク |
インカメラ | 非搭載 |
バッテリー容量 | 未公開 |
ACアダプター | 定格出力240W(20V 12A) |
公称本体サイズ | 約395(W)×282.1(D) |
公称本体重量 | 約2.75kg |
OS | 64bit版Windows 10 Home |
ハイエンドゲーマー向けPCらしい。外連味たっぷりの新デザイン
Scar 17の2021年モデルは新デザインの筐体を採用する。本体の実測サイズは395
撥水加工を施して汚れに強いというScar 17の天板は,ROGのシンボルマークと鏡面加工により描かれたドットパターンが目を引く。なお,シンボルマークにはLEDが埋め込まれているものの,ドットパターンは,2020年5月に国内発売となった14インチノートPC「ROG Zephyrus G14」が搭載する「AniMe Matrix Display」とは異なり,LEDを内蔵していない。
Scar 17は,天板のシンボルマーク部分だけでなく,筐体側面とキーボード部分にもLEDを搭載している。これらのLEDは,ASUS独自の設定ソフトウェアである「Armory Crate」から,LEDの発光色や発光パターンを変更可能だ。
キーボード面の右半分はスケルトン仕様で,メカ好きの心をくすぐるようなデザインとなっている。
また,外観面における特徴として紹介したいのが,ヒンジの左部分に搭載する着脱可能なカバー「Customizable Armor Cap」だ。これは何かしらの機能を備えているというわけではなく,デザイン的なアクセントである。標準装備するカバーに加えて,シルバーおよび半透明のカバーが付属する。3Dプリンタを利用してオリジナルのカバーを作成することもできるという。
なお,Armory Crateではディスプレイの表示設定を,FPSやRTSといったゲームのジャンル別や動画視聴向けなど,6種類のプリセット画質に切り替えられる。
冒頭でも触れたとおり,Scar 17は,GeForce RTX 3080とRyzen 9 5900HXというハイエンドプロセッサを搭載しているので,発熱が気になるところだ。Scar 17では,底面から空気を吸い込み,背面と左右側面から排気するゲーマー向けノートPCでは一般的な冷却機構を採用しているが,6本のヒートパイプと12V駆動の空冷ファンを組み合わせることで,冷却性能が向上しているという。また,既存モデルから引き続き,CPUとヒートシンク間の熱伝導素材にThermal Grizzly製の液体金属グリスを採用するのもポイントだ。
底面のおよそ半分程度にメッシュ状の吸気孔を設けている |
空冷ファンは12V駆動と高出力なものを採用する |
インタフェース類は,背面と左側面にまとめられている。
ゲーマー向けノートPCでは,マウスの動きを妨げないように,右側面にUSBポートなどの端子を配置しない製品もあり,Scar 17も右側面にポート類は備えていない。その代わりというわけではないが,右側面には独自デバイス「ROG Keystone II」を装着するスロットを備えている。ROG Keystone IIは,PC本体とNFC(Near Field Communication,近距離無線通信)で通信する個人認証用のデバイスだ。本体に取り付けると,暗号化された隠しストレージ領域にアクセスできるほか,ROG Keystone IIに保存したArmory Crateのプロファイルを呼び出せる。
ROG Keystone II |
ROG Keystone IIを装着したところ |
光学式キースイッチ採用のキーボード
Scar 17のキーボードは,10キーを備えた英語配列で,キーとキーとの間に隙間を設けたアイソレーションタイプとなっている。本体が17インチ級という余裕のある大きさなので,キー配列やキートップのサイズに不自然なところはない。左上に音量調整ボタンやマイクのミュートボタン,Armory Crateの起動といった機能ボタンを備える点お特徴のひとつだ。
Scar 17のキーボードにおける最大の特徴は,キースイッチに光学式スイッチを採用した点にある。ASUSによると,一般的なメカニカルキースイッチの場合,キー入力の信号が安定するまでに5msほど必要とするのだが,光学式キースイッチではそれが0.2msと短く,入力遅延を短くできるという。キーストロークは約1.7mmと,ノートPCとしては比較的深めで,しっかりとした打鍵感がある。
RTX 3080&Ryzen 9 5900HXの性能を検証
ここからは,Scar 17の性能を簡単なベンチマークテストで検証していこう。Scar 17は,Armory Crateを利用して,「Windows」「サイレント」「パフォーマンス」「Turbo」という4つのプリセット動作モードと,ユーザーがカスタマイズできる「手動」モードの計5つから動作モードを選択できる。標準設定であるパフォーマンスは,性能と静音性のバランスをとったモードで,Turboは性能重視,サイレントは消費電力と静音性を重視したモードだ。
今回は,これら3つの動作モードでベンチマークテストを実施した。テストに用いたのは,3Dグラフィックスベンチマークソフトである「3DMark」と,CPU性能を計測する3Dレンダリングベンチマークソフト「CINEBENCH R23」,「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(以下,FFXIV 漆黒のヴィランズベンチ),「Fortnite」の4種類である。いずれも4Gamerのベンチマークレギュレーション23.2に準拠した方法で計測した。
まずは3DMarkの結果から見ていこう。DirectX 11テストである「Fire Strike」の総合スコアをまとめたのがグラフ1だ。順当にTurboが最も高いスコアになっているのだが,Turboとパフォーマンスの差は約5%とそれほどない。サイレントで大きくスコアを落としているのは,ファン回転数を制限しているため,GPUとCPUの動作クロックを上げられないためだ。
グラフ2は,Fire StrikeのGPUテストである「Graphics test」のスコアを抜き出したものである。こちらもTurboとパフォーマンスの差は約5%で,総合スコアと変わらない。
一方,CPU性能を測る「Physics test」の結果を抜き出したものがグラフ3である。Turboとパフォーマンスの差は約2%とわずかだ。Turboとパフォーマンスでは,CPUよりもGPUの動作クロックを中心に調整しているものと思われる。
GPUとCPUに負荷をかけたときの性能を見る「Combined test」の結果をまとめたのがグラフ4だ。ほかのテストと傾向は変わらないが,Turboとサイレントの差は小さくなっている。
続いては,3DMarkのDirectX 12テストである「Time Spy」の結果となる。総合スコアをまとめたのがグラフ5だ。ここでも傾向や各動作モードの差は,Fire Strikeと同様だ。GPU testの結果をまとめたグラフ6と,CPU testの結果をまとめたグラフ7でも同じである。
グラフ8は,リアルタイムレイトレーシング性能を計測するテストである「Port Royal」の結果だ。ほかのテストと比べて,サイレントがより大きく落ち込んでいること以外は,それほど大きな違いがない。
次はCINEBENCHでCPU性能をチェックしよう。CINEBENCHでは,マルチスレッドでの性能を検証する「CPU」テストと,シングルスレッドの性能を見る「CPU(Single Core)」テストの2つがある。それぞれの結果をまとめたのがグラフ9だ。シングルスレッド性能はほとんど横並びとなった。一方のマルチスレッド性能は,Turboとパフォーマンスで約6.5%,Turboとサイレントで約25%の差が生じている。
続いては,実ゲームにおける性能を見ていきたい。まずはFFXIV 漆黒のヴィランズベンチだ。画質設定を「最高設定」にして,それぞれの動作モードでテストを実施した。総合スコアをまとめたのがグラフ10で,平均および最小フレームレートをまとめたのがグラフ11となる。
FFXIV 漆黒のヴィランズベンチでは,動作モードがサイレントでもCPUやGPUの動作クロックがあまり下がらないのか,横並びとなった。フレームレートを見ても,ほとんど差がないことが分かるだろう。
最後にFortniteのテスト結果をまとめたのがグラフ12となる。Turboとパフォーマンスのどちらも平均フレームレートは200fpsを超え,最小フレームレートでも180fps程度となっており,Scar 17の300Hz表示対応ディスプレイを十分に活用できるだろう。
現時点での最高スペックを詰め込んだScar 17
Scar 17は,2021年1月の時点で最高峰と言えるスペックを備えたゲーマー向けノートPCだ。薄型軽量化が進むゲーマー向けノートPCにおいて約2.75kgという重量は,重量級ではあるものの,性能に関してはほぼ文句無しと言っていい。
税込のメーカー想定売価は,32万9800円と高価だが,ノートPCでも性能に妥協したくないというゲーマーにとって,目を引く製品になるだろう。
なお,同じScarの名を冠するノートPCとして,15.6インチサイズで,解像度2560×1440ドット,垂直リフレッシュレート165Hz表示対応ディスプレイを搭載した「ROG Strix Scar 15」もラインナップしている。もう少し小さなPCがほしい,あるいは画面解像度が広いほうがよいという場合は,そちらをチェックするのもいいだろう。
ASUSのScar 17製品情報ページ
- 関連タイトル:
Republic of Gamers
- この記事のURL:
(C)ASUSTeK Computer Inc.