テストレポート
ROG Phone 5テストレポート。スペックの強化に加えて,細かな機能改善が光るゲーマー向けスマートフォン
容量16GBのメインメモリを搭載した上位モデルと,メインメモリ容量12GBの下位モデルをラインナップしており,税込価格は順に11万4800円,9万9800円となっている。
今回は,国内発売に先行して,メインメモリ容量12GBモデルをテストする機会を得たので,ハンズオンをお届けしたい。
最大リフレッシュレート144Hz表示に対応した
約6.78インチサイズの有機パネルを採用
まずはROG Phone 5の外観からチェックしていこう。
これまでのROG Phoneシリーズでは,個性的なデザインとなっていた背面だが,ROG Phone 5では方向性を変えたようで,少しおとなしめのデザインとなっている。「ROG」のロゴマークも小さく,手にした状態を外から見ると,ゲーマー向けスマートフォンとは分からないかもしれない。一方で,デザイン的なアクセントであるドット柄付近に搭載するLEDイルミネーションを点灯させると,雰囲気が変わる印象だ。
本体サイズは,実測で78(W)×173(D)×9.8(H)mmと,比較的大きめなのだが,縦長なので片手でも端末を保持しやすい。また,歴代のROG Phoneでは,表面がつるつるとした感触であったのに対して,ROG Phone 5では少し指にひっかかるような手触りがあった。これも持ちやすさに寄与していると感じる。
ディスプレイは,約6.78インチサイズで解像度1080×2440ドット,横持ち時のアスペクト比が20.4:9という縦長の有機ELディスプレイパネルを採用している。
ディスプレイの最大リフレッシュレートは,前世代モデルであるROG Phone 3と同じ144Hzで,設定から60Hz,90Hz,120Hz,144Hzの4段階でリフレッシュレートを切り替え可能だ。表示するコンテンツに応じて自動でリフレッシュレートを変更する設定も備える。ゲームによって,対応するフレームレートが異なるので,普段は自動の設定利用するといいだろう。
タッチパネルのサンプリングレートは,ROG Phone 3の270Hzから,ROG Phone 5では300Hzへと引き上げられた。ASUSによると,144Hz表示におけるタッチ操作の入力遅延を24.3msまで削減したという。
ただ,今回の検証では,スライド操作で入力を取りこぼすことがあった。たとえば,仮想ゲームパッドのスティックでキャラを移動しながら,視点を変更して周りを見渡すときに,視点が変わらないケースを何回か経験している。ROG Phone 5のディスプレイ表面には,あらかじめディスプレイ保護フィルムが貼られていたので,もしかするとフィルムが影響を与えたのかもしれない。
左側面には,専用周辺機器を接続するための「サイドマウントポート」とSIMカードスロットを備える。
ROG Phone 3までのサイドマウントポートは,USB Type-Cポートが2つ並んだような形状であった。それに対してROG Phone 5では,USB Type-Cポートとポゴピンコネクタの組み合わせに変更となった。別売りの専用冷却クーラー「AeroActive Cooler 5」との接続にも,ポゴピンコネクタを使う形だ。
サイドマウントポート。USB Type-Cポートとポゴピンコネクタの組み合わせだ |
AeroActive Cooler 5側には,ポゴピンの細かな突起が並んでいた |
ポゴピンは耐久性が高く,突起のあるコネクタよりも故障しにくい。一方で,周辺機器を取り付けるときに,これまでのコネクタとポートの組み合わせよりも位置決めが難しく,AeroActive Cooler 5をコネクタにピタッとはめ込むには,多少の慣れが必要だった。
SIMカードのトレイは,表と裏に2枚のnanoSIMを装着できるタイプで,2枚のSIMカードによるデュアルSIMデュアルスタンバイ対応となっている。なお,microSDカードには対応しない。
右側面には,[電源/スリープ]ボタンと[音量調整]ボタンに加えて,両端に側面タッチセンサー「AirTrigger 5」を搭載する。
側面タッチセンサーは,歴代のROG Phoneシリーズでおなじみの機能で,横持ちしたときに,ゲームパッドのショルダーボタンのような感覚でゲームを操作可能だ。
AirTrigger 5では,タッチ操作やスライド操作,スワイプ操作を割り当てられる。また,センサーが反応する領域を2つに分けて,それぞれに対して異なる機能を割り当てることも可能だ。
タッチ操作の設定 |
スライド操作の設定 |
スワイプ操作の設定 |
タッチできる領域を2つに分けられる |
下側面には,USB Type-Cポートと4極3.5mmミニピンヘッドセット端子を備える。ゲーマーとして注目したいのは,ROG Phone 3では省略された3.5mmミニピン端子が,ROG Phone 5で復活したことだ。とくにBluetooth接続型イヤフォンでの遅延が気になるという人には,朗報と言えるだろう。
ハイエンド市場向けSoC「Snapdragon 888」を搭載
外観に続いて内部にも目を向けよう。
ROG Phone 5は,SoCにSnapdragon 888を採用するのは冒頭で触れたとおりだ。このほかにもROG Phone 5は,LPDDR5対応のメインメモリや高速ストレージ用インタフェース規格「UFS 3.1」対応のストレージを採用しており,ハイエンドと呼ぶにふさわしいスペックを備えている。ROG Phone 5の主なスペックは表のとおり。ROG Phone 3からの変更点を赤字で示す。
メーカー | ASUSTeK Computer |
---|---|
OS | Android 11 |
ディスプレイパネル | 約6.78インチ有機EL, |
プロセッサ | Qualcomm製「Snapdragon 888」 ・CPUコア:Kryo 680(最大2.84Hz) ・GPUコア:Adreno 660 |
メインメモリ容量 | 12GB,16GB |
ストレージ | 256GB |
アウトカメラ | 3眼式 ・標準:約6400万画素 ・広角:約1300万画素 ・マクロ:500万画素 |
インカメラ | 約2400万画素 |
対応5Gバンド | n2/n5/n7/n12/n20/n25/n38/n40/n66/ |
対応LTEバンド | Band 1/2/3/4/5/7/8/12/13/17/18/19/20/25/26/28/ |
対応3Gバンド | Band 1/2/3/4/5/6/8/19 |
無線LAN対応 | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax) |
Bluetooth対応 | Bluetooth v5.2 |
バッテリー容量 | 6000mAh(3000mAh+3000mAh) |
待受時間 | 約440時間(5G通信時) |
連続通話時間 | 約1938分(VoLTE時) |
USBポート | USB 3.1 Type-C×1,USB 2.0 Type-C×1 |
公称本体サイズ | 77(W)×173(D)×9.9(H)mm |
公称本体重量 | 約239g |
本体カラー | ストームホワイト,ファントムブラック |
高性能なプロセッサを搭載したとなると,発熱が気になるところだ。ROG Phone 5は,Snapdragon 888の採用に合わせて,内部パーツの配置を大きく変えた。これまでのROG Phoneシリーズでは,筐体の端にSoCを搭載していたのに対して,ROG Phone 5では,SoCを筐体の中央に配置してるのだ。これにより,大型のベイパーチャンバーやグラファイトシートが採用可能になり,SoCを冷却しやすい構造になったという。加えて,横持ち時に手をSoCから遠ざける効果も得られたそうだ。
また,SoCを中央に配したことで,AeroActive Cooler 5の風を効率的に当てられるようになったという。
なお,AeroActive Cooler 5には,小さなパドルのような形をした物理ボタン「クーラーボタン」を2つ搭載しており,仮想ゲームパッドのボタンを割り当てられるようになった。ゲームパッドにおける底面ボタンと似たようなイメージである。ボタンの遊びは少なめで,押してすぐに反応する印象だ。タッチパネルやセンサーではなく,物理ボタンで操作したいというゲーマーにとってはうれしい機能だろう。
省電力モードなどの動作モードが追加
ソフトウェアでの改良点も見てみよう。
ROG Phoneシリーズは,従来よりゲーム向けの動作モードである「X Mode」を用意しているのが特徴の1つだった。X Modeは,SoCの動作クロックやディスプレイのリフレッシュレート,タッチパネルのサンプリングレートなどを引き上げて,ゲームを快適にプレイできるようにする機能である。ROG Phone 5では,X Modeだけでなく,4つの動作モードが追加となった
- X Mode+:SoCの動作クロックやディスプレイのリフレッシュレートなどを最大まで引き上げる。AeroActive Cooler 5装着時のみ利用可能
- ダイナミック:性能と消費電力のバランスを取る。工場出荷状態ではダイナミックで動作する
- 省電力:SoCの動作クロックやディスプレイのリフレッシュレートを下げて電力消費を抑える
- アドバンスド:SoCの動作クロックやディスプレイのリフレッシュレートなどをユーザー自身が設定する
たとえば,普段は「ダイナミック」でROG Phone 5を使い,ゲームをプレイするときはX Mode,バッテリーが少なくなったら「省電力」といった具合で,状況に合わせて,動作モードを切り替えられるようになった。なお,アドバンスドで設定可能な項目は,20種類ほどあった。1つずつ設定するのは少し面倒なので,基本的には,ダイナミックとX Mode,および省電力のいずれかを利用するといいだろう。
ゲームプレイ中でも呼び出せる設定パネルの「Game Genie」にも,新しい機能が追加となった。
ROG Phone 5のGame Genieでは,以下のようなゲーム向け機能をまとめて設定可能なのだが,このうち赤字で表示するのが新機能である。
- アラートなし:ゲームプレイ中の通知を制限
- 着信拒否:ゲームプレイ中の着信を拒否
- 明るさを固定:ディスプレイの輝度を固定
- リアルタイム情報:CPUやGPUの使用率,システム温度,バッテリー残量,ディスプレイのフレームレートを表示
- ナビブロック:画面上部をスワイプしての設定画面呼び出しを制限
- 通常充電:内蔵バッテリーを経由せずに端末に給電する
- ショートクリップ:あらかじめ設定した秒数の短いプレイ動画を録画
- リフレッシュレート:ディスプレイのリフレッシュレートを自動,60Hz,90Hz,144Hzの4段階で切り替える。
- スカウトモード:画面の色を反転して表示する
- データのみ:音声通話を制限
- 最適化:ゲーム以外のアプリが使用中のメモリ領域を開放する
- AirTriggers:プレイ中のゲーム内におけるAirTriggers 5の動作モードを設定
- キーマッピング:ゲームパッドのボタン割り当てを行う(ゲームパッド接続時のみ表示)
- マクロ:マクロを設定する
- クイックコントロール:Game Genieで利用できる機能のショートカットを画面上に表示する
- 録画:プレイ動画を録画する
- ハプティックオーディオ:あらかじめ設定した領域をタッチすると端末が振動する
- クロスヘア:画面中央に照準を表示
- ロックタッチ:アプリの動作を継続しつつ,画面をロックする
- フローティングウインドウ:ゲームの画面内に別アプリの画面を表示する
新機能のうち,便利だと感じたのは,クイックコントロールだ。これは,Game Genieで利用できる機能のショートカットを,ゲーム画面上に表示するというものだ。これまでは,何か機能を使いたいときに,まず左端からGame Genieを呼び出して,それぞれの機能のアイコンをタッチする必要があった。それがクイックコントロールを使うと,1タッチで機能を使えるようになるわけだ。
たとえば,スクリーンショットや画面録画のショートカットを,クイックコントロールで画面に表示しておけば,「いま記録したい」と思ったときにすぐに撮影できるので,非常に重宝した。なお,ショートカットは最大4つ設置できる。
ROG Phone 5の性能をベンチマークテストで検証
AeroActive Cooler 5の効果は強力
ここからは,ROG Phone 5の性能をベンチマークテストで検証した。動作モードはダイナミックとX Mode,そしてAeroActive Cooler 5を装着してX Mode+の3種類で試している。
まず総合テストである「AnTuTu Benchmark v9.0.7-OB」の結果から,総合スコア(Overall)とCPU,GPU,MEM,UXの4項目をまとめたものがグラフ1となる。AnTuTu Benchmarkは,テストシーケンスの開始時に動作モードが必ずX Modeに切り替わってしまうため,ダイナミックでは試せなかった。そのためX ModeとX Mode+の結果のみ示す。
総合スコアは80万を超え,Snapdragon 888の高い性能が伺える。ただ,X ModeとX Mode+の間では,スコアの差はほとんどない。
続いて,定番の3Dグラフィックスベンチマークアプリである「3DMark」から,クロスプラットフォーム対応テストである「Wild Life」と,その高負荷版である「Wild Life Extreme」を実施した。それぞれの総合スコアをまとめたのが,グラフ2とグラフ3である。なお,項目名はROG Phone 5のダイナミック設定時をダイナミック,X mode有効時はそれぞれX mode,X mode+と略表記したことをお断りしておく。
Wild Lifeでスコアが5000を超えている。Wild Lifeの場合,今どきのハイエンドスマートフォンでも,Wild Lifeのスコアは4000台になる場合が多いので,ROG Phone 5のグラフィックス性能はかなり強力であると言えよう。X Mode+とダイナミックとを比べると,5%ほどの性能向上を確認できる。
一方のWild Life Extremeは,2021年5月に追加となったばかり(関連記事)なので,まだスコアが出揃っていないため,この数字を持って他の端末より高い低いは言えない。今回の結果をベースとして,今後ほかの端末と比べていきたい。
さて,Antutuと3DMarkの結果では,X ModeとX Mode+で性能に差がなかった。一見するとX Mode+を使うメリットはないように思えるのだが,高負荷時の安定性を考えると話が変わってくる。3DMarkの「Wild Life Extreme Stress Test」で,持続的な負荷をかけて調べてみた。このテストは,Wild Life Extremeを20回連続実行して,端末にかかる負荷を計測するものだ。
X Modeの場合,最初は1500程度のスコアを記録していたが,テストの回数が増えるごとに徐々にスコアを落とし,20回めは1249であった。それに対して,AeroActive Cooler 5を装着したX Mode+では,20回めのテストまで1500付近のスコアを維持していた。実際のゲームにおいて,ここまで負荷の高い状態が続くことは少ないかもしれないが,長時間に渡って安定してゲームをプレイしたいという場合は,AeroActive Cooler 5とX Mode+の利用に利点がある場合もありそうだ。
PUBG MOBILEの90fps表示には非対応
今後のアップデートに期待
実際のゲームにおける動作の検証として,「PUBG MOBILE」をプレイした。
PUBG MOBILEは,一部のハインドスマートフォンで,フレームレート90fps表示の設定が可能なのだが,いまのところROG Phone 5では利用できない。ただし,ゲームデベロッパ側で検証が済み次第,90fpsでのプレイが可能になると思われる。たとえば,「ROG Phone II」は,2020年12月のファームウェアアップデートでPUBG MOBILEの90fps表示に対応している(関連リンク)。
こういった事情もあり,今回は画質設定を「HDR」,フレーム設定を60fps表示の「極限」でプレイした。2時間ほど連続してプレイしても,60fpsを維持してプレイ可能だ。ただし,筐体の発熱が気になる。Game Genieのリアルタイム情報では,おおむね40℃前後なのだが,ときおり45℃くらいまで上がることもあった。筐体が持てないほどではないが,端末への負担は少し不安だ。やはり,AeroActive Cooler 5を用意したほうが安心かもしれない。
高い性能を備えたROG Phone 5
手に取りやすいハインドスマートフォンに
ROG Phone 5は,最新SoCの採用でさらなる性能向上を実現したスマートフォンだ。ほとんどのゲームを高画質設定でプレイすることができるのは間違いない。このところ,一般消費者向けのスマートフォンにも,ゲーマー向け機能を搭載するケースも増えているが,機能の豊富さや内容を考えると,まだまだROG Phone 5のようなゲーマー向けスマートフォンに分があるように思う。クイックコントロールのような細かい部分での機能追加や改善も光る。
これまでのROG Phoneは,10万円を大きく超える価格が購入のハードルになっていた。しかし,ROG Phone 5は下位モデルで税込9万9800円と,最近のハイエンド市場向けスマートフォンの中では,比較的安めに設定されている。ゲーム用端末として,長く使うのであれば,悪くない選択と言えるだろう。
ASUSのROG Phone 5製品情報ページ
- 関連タイトル:
Republic of Gamers
- この記事のURL:
キーワード
(C)ASUSTeK Computer Inc.