イベント
世界の壁は高かった。「リーグ・オブ・レジェンド」世界大会,0-3でDFMが敗れたEDG戦をレポート
本稿では,BO5(3本先取)で行われたEDGとの試合をレポートする。
1日と3日の試合すべてでハイマーディンガーを,そして1回を除いてカミールをバンされてきたDFM。しかしEDGは,「使いたければ使うがいい」と言わんばかりに,どちらもバンしてこない。それに乗るように,DFMはカミール,トランドル,ハイマーディンガー,トリスターナ,スレッシュの構成で挑む。対するEDGは,シェン,グラガス,イレリア,カイサ,ノーチラスを選択した。
これまで封じられてきたCeros選手のハイマーディンガーが選ばれた瞬間,会場から歓声が上がったのが印象的だ。
得意チャンピオンを選択できたDFMの健闘に期待がかかるが……1戦目は一方的な展開となってしまう。Botレーンの2vs.2でカイサにファーストブラッドを取られたことから始まり,その2分後に再度カイサが1キル。お次はグラガスがやってきての,3人でのタワーダイブでもう1キルと,徹底的にBotレーンが潰されていく。
DFMもその差を必死に埋めようとするが,みるみるうちに広がっていき,試合開始10分の時点で3000の差だったチームゴールドは,20分で倍となっていた。キルは2:10,ドラゴンも2回取られ,タワーも1本多く破壊されている。
EDGは,そうした有利な状況を生かして堅実に攻め続ける。危なげなく集団戦で勝利を重ね,バロンも取得し,タワーやインヒビターも押し潰して,28分で圧倒的な勝利を飾った。
続く2戦目は,カミールがバンされてしまい,DFMはナー,ノクターン,ハイマーディンガー,エズリアル,アリスターという構成に。EDGはアーゴット,スカーナー,アカリ,トリスターナ,グラガスだ。
1戦目はBotレーンを崩壊させてから有利を築いたEDGだが,2戦目はMidを徹底的に叩きにくる。開始6分で,スカーナーがハイマーディンガーを捕らえ,Scout選手のアカリがファーストブラッド。さらに8分すぎ,もう一度スカーナーがガンクに現れ,ここはSteal選手のノクターンがUltで急行することで,先にスカーナーを落とすものの,アカリに追いつかれたハイマーディンガーは再度倒されてしまう。続くMid付近で起きた戦闘でも,EDGは人数差を作って優位を取り,アカリがさらに2キルを獲得。もはや誰にもとめられなくなってしまう。
さらにアカリは,Botレーン,Topレーンにも顔を出し,DFMを順に血祭にあげていく。試合開始20分,この圧倒的に不利な状況で,出現したばかりのバロンに攻撃をはじめ,起死回生を狙うが,ギリギリでアカリとスカーナーが間に合ってしまい,DFMは壊滅。バロンもEDGに奪われ,そのままネクサス破壊までもっていかれた。
ここで負けると,DFMのグループステージ進出が断たれてしまう3戦目。DFMはラカン,EDGはザヤを最初に選択し,「いきなりその2人引き裂くの?」という感じのピックからスタート。面白かったのが,EDGがCeros選手の得意なジグスをバンしたうえで,ハイマーディンガーに有利なシンドラをピックしてからだ。ここでCeros選手が選んだのは……なんとハイマーディンガーである。
3戦目は,Steal選手のノクターンがチームを引っ張った。開始4分,ノクターンがBotレーンにガンクを仕掛け,トリスターナにファーストブラッドを渡すも,リー・シンがカウンターガンクに現れる。そのまま確実に3キルを取られてしまう状況で,生き残っていたザヤから執念のキルをもぎ取り,EDGのリードを防ぐ。
さらに,自陣ジャングル内に入ってきたリー・シンを待ち伏せしてソロキルし,Botレーンへのタワーダイブも成功させ,ファーストタワーまで獲得する。このSteal選手のがんばりがなければ,3戦目も大差で負けていたことだろう。
試合は,終始EDGがリードを保ったまま進んでいくが,DFMも負けじと食らいついていく。3戦目でようやく,強豪EDGを相手に試合らしい試合を見せてくれたのだ。
しかし,やはり総合的にEDGが何枚も上手だった。ある程度拮抗しているよう見えて,じわりじわりとゴールドやレベル,オブジェクトの差がついていく。そして開始27分,EDGがバロンに触り始めたことから集団戦が始まるが,DFMの接近に気付いて反転したEDGの猛攻により,DFMは一気に壊滅。バロンバフを確保して,なすすべのなくなったDFMの本陣に乗り込んだEDGが,グループステージへの進出を決定したのだった。
残念ながら,プレイインノックアウトは,世界の壁の高さを思い知る結果となった。EDG自体,なぜプレイインステージにいるのかが不思議なほどの強豪であり,ここと当たってしまったDFMのくじ運は,最悪だったと言える。EDGさえ相手でなければ,グループステージ進出の可能性はもっと高かっただろう。仮に1勝でもできていれば,大金星と言っていいほどのチームだったのだ。これだけの相手と戦えることが貴重な機会であり,DFMにはこの経験を糧に,さらなる高みを目指してほしい。
実際,DFMは,誰もが予想していなかったプレイインノックアウトへの進出を果たした。来年のWorldsでは,日本代表はどのような活躍を見せてくれるのか,今から楽しみだ。
もちろん,今年のWorldsはまだ続いていく。どのチームが優勝の栄冠を手にするのか,そちらも楽しみにしたい。
最後に,プレイインノックアウト終了後に行われた,DFMへの合同インタビューを掲載しよう。
――お疲れ様でした。まずは本日のEDG戦の感想をお願いします。
Evi選手:
やっぱり世界の壁は高いなというのが,すごく認識させられた試合でした。
Steal選手:
いい経験になったと思います。
Ceros選手:
EDG以外の相手なら,パフォーマンスが良ければ勝てる可能性があったとと思うんですが,今回に関しては自分達がどれだけベストパフォーマンスを出しても勝てなかったいう気持ちがあり,中国の強豪チームの強さを実感しました。もちろん戦う前は,わけわからん自信を持って勝つ気で挑みましたけど。
Yutapon選手:
勝つ気がなかったのかと言われるとそんなことはないんですけど,勝てる気がしたかと言われるとしなかったなという印象です。
viviD選手:
正直すぎる(笑)。やっぱり実力差を感じましたね。努力します。
Kazuコーチ:
EDG戦でまさかのハイマーディンガーを初戦からあけてきて,僕達が一番得意としているスタイルだと思ってゲームが始まったんですけど,結果を見れば,どこのLJLのチームや世界のチームよりも僕達を研究していました。あちらのコーチのほうが格段に上ですし,レベルの違いを知れていい経験になったと思います。
――バンピックとしては,DFMのやりたいようにできていたのでしょうか。
Kazuコーチ:
そうですね。ドラフトだけを見ればやりたいようにできました。ただ,結果と相手のバンピックの早さからすると,明らかに取らされた感じがしていて,悔しいです。でも,ああするしかなかったんです。カミール・ハイマーもできたし,ノクターン・ラカンもできたし,ノクターン・ハイマーもできたし,ノクターン・シェンもできたし,俺達にこれ以上何があるんだというバンピックでしたね。
Evi選手:
全部やりましたね。
Kazuコーチ:
プレイインよりも取りたいものを取り放題だったんですけど,相手からすれば全部取らせていたと思うと,実力差を感じます。
――3戦目のバンピックですが,相手がシンドラを見せていた状況からハイマーディンガーを選んだのは驚きました。あれはどういった意図だったのでしょうか。
Ceros選手:
ハイマーディンガーをピックした理由は,1戦目,2戦目,3戦目それぞれ違うんですけど,3戦目に関しては本当はシンドラ相手ならジグスをやりたかったんです。でもバンされてしまって,その中で出すなら,きついマッチアップなのは理解したうえでやるしかないと思いました。
Kazuコーチ:
相手は集団戦が強い構成で,こちらも集団戦で対抗するために必要だったんです。カルマやガリオはノクターンと合わせることを考えると良い選択なんですけど,熟練度やCerosの自信,集団戦の強さを考えるとハイマーディンガーかなと。
――相手のピックで嫌だったものはありますか。
Evi選手:
やられた後に思ったけど,アカリかなぁ……。
Kazuコーチ:
Scout選手のライズはLPLで9勝1敗だし,Botレーンのカイサは27回使って勝率80%以上だし,Meiko選手はアリスターとラカンめちゃくちゃうまいし,どっから攻めていいかを考える中で,アカリをあけようって準備はしていたんですよね。でも,それでどうにかなるレベルのアカリではありませんでした。
Ceros選手:
Mid視点で言うと,アカリも強いんですけど,Scout選手のチャンピオンプールを考えると,それ以外も強いんです。
Evi選手:
何が出ても正直変わらないっていうのはあるよね。
Kazuコーチ:
Scout選手のバンは3つじゃ足りないですね。8つぐらいほしいです。
――これからどうすればEDGのような強豪と戦っていけると思いますか?
Kazuコーチ:
EDGだけを考えると,個の力だと思います。レーニングからすごく強いという前評判もありましたし,実際2,3レベルから全レーン隙間なく負けていたんですよね。ただ,それ以外のチームとの試合を見れば,終盤のチーム力や連携で,いくつか落としたと思っています。そこを良くすれば,必ず結果につながると思います。
Ceros選手:
C9と戦って思ったのが,あのチームは終盤で勝つ,途中で勝ってようが負けてようがチームファイトで覆すという強い意志を感じました。そういうチームと戦えたのは,経験値として大きいと思っていて,それと比べて自分達がどうすれば良かったのかはすごく考えさせられましたし,勉強になりました。
viviD選手:
気持ち的に冷静になって,レイトゲームの判断をすることが一番大事だと思いました。そこを直せば,もっと良いチームになります。
Kazuコーチ:
今回のWorldsのDFMって,得意チャンピオンで攻めていこうって感じでした。でも,C9はレイトゲームの集団戦,EDGなら最初の10分のレーニングなど,上位チームはチャンピオンより一歩先にいったチームとしての強みを徹底している気がしています。そこはDFMにはまだまだないところですね。
――Worldsに出場しての感想をお願いします。
Yutapon選手:
結果としては,良くもなく悪くもなくかなと思います。
Evi選手:
満足ではないけど,不満ではないという感じだよね。
――最後に,来年に向けた目標をお願いします。
Kazuコーチ:
今はまったく考えてないです。今シーズンは,めちゃくちゃアグレッシブにやるというチームとしての方針でやってきて,それがWorldsへの出場につながったと思っています。次はまた違う一面を考えるか,それとも同じ方針を貫いていくかは,また考えたいと思っています。
梅崎伸幸代表:
とりあえず,今はゲーミングハウスの引っ越し先を考えています。育成選手を獲得して,次世代に技術を継承していきたいと思っていて,これから人を増やしていく予定です。チーム内で練習試合とかができると大きいですし,環境を整備していきたいですね。
――ありがとうございました。
「リーグ・オブ・レジェンド」公式サイト
- 関連タイトル:
リーグ・オブ・レジェンド
- この記事のURL:
キーワード
(C)Riot Games Inc. All rights reserved. League of Legends and Riot games Inc. are trademarks or registered trademarks of Riot Games, Inc.