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[TGS 2008#022]「どこでもいっしょ」の南治一徳氏らが語る,キャラクター展開とオンラインサービスとCGM
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印刷2008/10/10 02:37

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[TGS 2008#022]「どこでもいっしょ」の南治一徳氏らが語る,キャラクター展開とオンラインサービスとCGM

 東京ゲームショウに合わせて開かれる「TGSフォーラム」は,ゲームビジネスにまつわるさまざまな講演を行う,業界人向けのイベント。10月9日に行われた「キャラクターセッション」では,「どこでもいっしょ」の開発で知られるビサイドの南治一徳氏や「ニコニコ動画」の運営に携わるドワンゴの伴龍一郎氏,そして「初音ミク」のクリプトン・フューチャー・メディアの佐々木渉氏が登壇。「コンシューマとのコミュニケーションで切り開く新しいゲームワールドの可能性と将来像」と題して,UCCやCGMなど,オンラインサービスについてのそれぞれの取り組みなどが披露された。


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 最初に講演を行ったのは,「どこでもいっしょ」の人気キャラクター「トロ」の生みの親である南治一徳氏,通称「トロチチ」氏である。
 南治氏は,現在自身が手掛けているPLAYSTATION 3(以下,PS3)用タイトル「まいにちいっしょ」の紹介をしながら,開発の経緯やコンセプト,そして本作でCGMに取り組んでいることなどを報告。「まいにちいっしょ」といえば,毎日更新される「トロ・ステーション」をはじめ,「にゃばたー」を軸にしたアイテム課金方式のビジネスモデルや,YouTubeに動画をアップロードする機能などなど,コンシューマゲームらしからぬチャレンジに果敢に取り組んでいるタイトルである。

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 「まいにちいっしょ」の企画コンセプトは,やはりPS3の戦略に則したものになっているようで,PS3を毎日触ってもらいたい,PS3をネットに繋げてほしいなどといったところが発端という話であった。オンラインゲーム業界をはじめ,いわゆるネットサービス界隈の業界では,よく「ユーザーの日々の生活(時間)にどう入り込んでいくか?」みたいな話が交わされがちなのだが,本作も,PS3をいかに身近なプラットフォームにするかというあたりを考え,ライトな人でも気軽に楽しめるコンテンツという戦略的な位置づけであったのだろう。

 南治氏は,「よくUCCだとかCGMだとかって言われているけど,何もコンテンツがないところにプレイヤーさんは来てくれませんし,プレイヤーさんがいないとCGMも生まれようがないですよね。鶏が先か卵か先かじゃないですけど」と語りながら,「だからトロ・ステーションでは,まずは自分達でコンテンツを提供する方針にしました」と,トロ・ステーションが生まれた経緯を説明。ただ毎日更新されるトロ・ステーションの効果もあってか,ユーザー数は順調に伸びているのだという。
 氏は,「ユーザーが増えてきたところで,CGMへの取り組みもはじめてみました」としながら,庭の公開機能やYouTubeとの連携機能,そして今度実装されるというファッションショー機能などを紹介。いずれもサーバーなどは用意しない仕組みとなっており,PS3の基本ライブラリだけで作られたものという話であった。

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 一通りの話を終えたあと,「まいにちいっしょ」のプレイヤー数などの具体的な数値も少しだけ披露された。南治氏が語るには,現在までにPlayStation Networkの総アカウント130万人の30%にも上る,35万人のプレイヤーにダウンロードされ,有料アイテム数は現時点で約860個。売り上げたアイテムの数に至っては,90万個以上にもなるのだという。開発費などを考慮すると,黒字とまではいかないような雰囲気だったが,コンシューマゲーム機でもそうしたビジネス(アイテム課金)が可能であるという,一定の証明をしたという事実は評価すべき点だろう。ただ南治氏は,「無料のサービスとしてはまだまだだと思う」といいながら,今後より一層盛り上げのための施策に取り組む構えだとして,講演を締めくくった。

 ちなみに売れたアイテムの例として,南治氏は「竹」が思いの外よく売れたという話をしていたのが印象的。なんでも,累計で1万5000以上も売り上げたのだとか。聞くところによると,別に何か意味があるわけでもない,普通の竹のオブジェとの話だったが,「一本だけ買っても物足りないのか,まとめて買って竹林を作ってみたりしてるプレイヤーさんもいるようです」という話だったので,まぁアバターにおける服や装飾品とまったく同じ感覚なのだろう。まぁでも竹がバカ売れというのも,なんだか妙な話ではある。アイテム課金サービスのノウハウという意味では,示唆的な話の一つだといえよう。

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 続いて登壇したのは,ニコニコ動画と美少女ゲームをテーマにした仮想世界サービス「ai sp@ce」の運営/開発に携わる,ドワンゴの伴龍一郎氏。氏は,集まったゲーム関係者達にニコニコ動画の概要を説明しながら,ネット上でムーブメントが起きる構造や,ユーザーがニコニコ動画を快適に閲覧するためのインタフェースについて解説した。
 氏の話のなかでも,とくに興味深かったのは,ニコニコ動画の平均滞在時間(一回のアクセス?)が35分程度であるという点だ。氏曰く,動画一本あたりの平均収録時間は5〜6分とのことで,そこから計算すると,一人あたり6個くらいの動画を見てくれているのではないか? という話であった。動画サイトは,一般的なWebサイトの滞在時間と比較すると,桁違いに接触時間が長いとはよく言われる話だが,ニコニコ動画は,他の動画サイトのそれよりもさらに長いような印象。具体的な数値が出ることはほとんどないので,なかなか比較はしづらいのだが,確かに動画の「〜シリーズ」とかを通して見てしまうことなどは,筆者の利用経験からしてもよくあるパターンではある。

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 また伴氏は,著作権フリーの素材を管理/提供するサービス「ニコニ・コモンズ」などにも話を広げ,いわゆる二次創作の親子関係を可視化することの面白さや可能性を紹介。今回は詳しいレポートを割愛させて頂くが,氏が言わんとするのは,二次創作を容認することで,ムーブメントの多角的な広がりが可能になるという点であった。
 また自身も深く関わっているという「ai sp@ce」についても触れ,「美少女ゲーム市場は,30万人程度のニッチな市場だと認識している」として,ニコニコ動画などよりも一段階濃いレイヤーの取り組みであると説明。「ai sp@ceからニコニコ動画への波及,そしてニコニコ動画からさらに外へ波及していくという段階構造を考えている」と,ai sp@ceの戦略的な位置づけを解説していた。

 会員が910万人を数えながらも,有料会員は横ばいの20万人。つい先日,有料会員が減少に転じたとの報道もあったニコニコ動画。サービスの成長曲線が,初期の上昇曲線から踊り場に至って停滞するというのは,まぁどんな産業/サービスにもある「誰もが通る道」なわけだが,今後,ai sp@ceを含めた施策の数々で乗り切っていけるのかどうか。その動向が気になるところだろう。

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 伴氏の講演が終わったあと,最後に登壇したのはクリプトン・フューチャー・メディアの佐々木渉氏。佐々木氏は,今年の7月に行われた「OGCシンポジウム」でも初音ミクに関する講演を行っているのだが,今回の講演内容は,基本的にはその内容を踏襲したもの。
 ただ資料のいくつかはアップデートされており,初音ミクの売上本数が7月から2000本増の4万2000本。「鏡音リン・レン」は,4000本増の2万4000本という数値になっていた。バカ売れとまでは言えない数値ではあるが,ソフトウェアの性質(クリエイター志向の人のみが対象?)からすると,いまだに相当数売れていることが見て取れる。

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 佐々木氏は講演の中で,「ねんどろいど初音ミク」や「ピアプロ」など,初音ミクの「広がり」を促進するための活動を紹介。現在は,初音ミクを多角的に展開する方針のようで,漫画,アニメ,ゲームなど親和性の高いジャンルとのコラボレーションに加え,痛車や食料品とのコラボレーションなど,佐々木氏曰く,「初音ミクが展開しうるフィールドの拡張を目指したい」のだという。
 DTM(デスクトップミュージック)の流れを組む音声合成ソフトとしてスタートした初音ミクではあるが,ここまで来ると,もはや普通のライセンスビジネスの様相だ。「2ちゃんねる」の「ギコネコ」もそうだったが,キャラクタービジネスの起点は,もはやゲームや漫画やアニメ(テレビ)などだけに留まらないということなのだろう。ニコニコ動画がなんだかんだで「新しいメディア」と騒がれるゆえんも,そうしたムーブメントを生み出す熱量にこそあるのも確かだ。

 ともあれ,今回はゲーム業界人向けの講演ということで,「初音ミク Project DIVA」など紹介しつつ,「今後は,さまざまな企業様と提携しつつキャラクター展開をしたい。ただ初音ミクは,次のステップこそが重要だと考えています」として,講演を終了。最後に登壇者を交えたパネルディスカッションなどを開きつつ,イベントは終了した。

 2時間にも及ぶ長い講演となったキャラクターセッションであったが,いわゆるゲーム業界からはやや外れた話がメインだった。ゲーム機におけるオンライン機能が標準化されていくなかで,今Web業界が直面している課題,問題にゲーム業界がどう向き合っていくのか。ダウンロード販売への取り組みなどを含めて,ここ数年が一つの転換になるのは間違いない。

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  • 関連タイトル:

    週刊トロ・ステーション

  • 関連タイトル:

    どこでもいっしょ レッツ学校! PSP the Best

  • 関連タイトル:

    初音ミク -Project DIVA-

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