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これが,世界で勝負するためのフロントミッションの形。TPSとして新たに生まれたシリーズ最新作「フロントミッション エボルヴ」について,プロデューサーの橋本真司氏にインタビュー
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印刷2010/09/04 13:13

インタビュー

これが,世界で勝負するためのフロントミッションの形。TPSとして新たに生まれたシリーズ最新作「フロントミッション エボルヴ」について,プロデューサーの橋本真司氏にインタビュー

「フロントミッション エボルヴ」のプロデューサーを務める,スクウェア・エニックス 専務執行役員 橋本真司氏。プロデューサー/エグゼクティブプロデューサーとして,数多くのスクエニ作品に関わってきたほか,2010年からはTwitterのスクウェア・エニックスメンバーズ公式アカウントの“中の人”としても活躍している。ちなみに橋本氏は,ファミコン世代のゲーマーなら誰もが知っているであろう,あの“橋本名人”その人である
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 スクウェア・エニックスが2010年9月16に発売を予定している「フロントミッション エボルヴ」PC / PlayStation 3 / Xbox 360,以下FME)は,言わずと知れた同社の人気シミュレーションRPG,「フロントミッション」(以下,FM)のシリーズ最新作だ。
 とはいえ,FMEはシミュレーションRPGではなく,TPS(三人称視点のアクションシューティング)として制作されている。従来作のファンの中には,「なぜTPSで?」と思っている人も少なくないだろう。
 今回4Gamerでは,FMEの制作の経緯や独自性,楽しみ方などについて,同作のプロデューサーを務める橋本真司氏にインタビューする機会を得た。シリーズのファンはもちろん,アクションシューティングファンにとっても興味深い話が聞けたので,ぜひ目をとおしてほしい。


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FMEを世界に広げていく以上

TPSというジャンルにするのは必然だった


画像集#005のサムネイル/これが,世界で勝負するためのフロントミッションの形。TPSとして新たに生まれたシリーズ最新作「フロントミッション エボルヴ」について,プロデューサーの橋本真司氏にインタビュー
4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。最初に,なぜフロントミッションシリーズの新作をTPSとして制作することになったのか,その経緯を教えてください。

橋本真司氏(以下,橋本氏):
 まずフロントミッション(以下,FM)の歴史として,1995年に初代FMを作ったあと「FRONT MISSION SERIES GUN HAZARD」という,横スクロールのアクションシューティングゲームを出しているんですね。そして,1997年に「FRONT MISSION2」を出して,その後に「FRONT MISSION ALTERNATIVE」というRTS(リアルタイムストラテジー)を発売しています。
 また,残念ながらサービス終了となりましたが,直近でも「FRONT MISSION ONLINE」というアクション要素の強いオンラインゲームもありました。

4Gamer:
 全体のラインナップを見ると,決してシミュレーションRPGだけのシリーズというわけではないんですね。

橋本氏:
 はい。FMシリーズは,実は今までにもいろんなジャンルに挑戦してきているんです。ですから,今後すべてのシリーズ作品が,FMEのようにTPSになるわけではないんですよ。
 FMEはヴァンツァーというロボットが持つ,色々な可能性の一つとして存在する作品,と思っていただければいいと思います。もちろん,シミュレーションRPGとしてのFM新作も作りたかったのですが,今回はFMEの開発に専念しました。

4Gamer:
 なるほど。今回TPSというジャンルを選択したことは,やはりグローバルな展開を考えてのことでしょうか。

橋本氏:
 そうですね。PCのほか,PlayStation 3,Xbox 360というHD機向けに制作する以上は,コストもかかりますので,当然ワールドワイドで売ることが重要になります。そうなってくると,ジャンルもワールドワイドで受け入れられるものにする必要がありました。
 そういった理由から,FMEは世界的にメジャーなシューターというジャンルで作ることを決めたんです。FMEを皆さんに知ってもらうことで,FMシリーズを世界的に有名なブランドとして育てていきたいですね。

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4Gamer:
 確かにTPSならば,海外のゲーマーにも受け入れられやすいですね。
 ところでFMEは,海外のデベロッパが制作していますが,これは初期段階から決まっていたのでしょうか?

橋本氏:
 最初はとくに決まっていなかったんですけど,開発が始まった3年前の時点では,スクウェア・エニックス社内も含めて,国内でFPSやTPSを専門に手がけているチームが少なかったんです。
 そこで,今回は海外のデベロッパと組んだほうが得策だろうということになり,Double Helix Games(ダブルへリックスゲームス)と一緒にやらせてもらうことになりました。

4Gamer:
 海外には,FPSやTPSに強いデベロッパがたくさんありますが,そうした中,Double Helix Gamesに決めた特別な理由はありますか?

橋本氏:
 実は,色々なデベロッパに当たってはみたのですが,ラインの空き状況など,さまざまな事情があって,なかなか「これだ」というところが見つからなかったんです。さまざまな条件を鑑みた結果,最終的にDouble Helix Gamesに決まったという感じですね。そういう意味でいうと,かなりタイミングも関係していたと思います。

4Gamer:
 なるほど。Double Helix Gamesは,「The Golden Compass」「The Matrix: Path of Neo」「The Da Vinci Code」「Silent Hill: Homecoming」などなど,版権モノで実績のあるデベロッパですし,FMEにとっても相性がよさそうですね。
 ところでキャラクターデザインは,明らかに日本向けという雰囲気もないですし,ガチガチの洋ゲーテイストでもないですが,日本で担当しているのでしょうか。

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橋本氏:
 キャラクターに関しては,設定だけを日本で作って,それを元にシンガポールのデザイナーさんにお願いしています。まぁ,これに関しては色々なご意見があると思うんですけど,日本のファンと,ウエスタンマーケットのファンが描く“リアリティのある人物像”って,ちょっと違うと思うんですよ(関連記事)。
 シンガポールのデザイナーは,色々な国のパブリッシャーと仕事をしているので,グローバルな視点を持っているところが多いんです。なので今回は,さまざまな国のニーズに対応できる,彼らのノウハウを使わせていただいた,という形ですね。

4Gamer:
 実際にゲーム画面を見させていただき,日本人のデザインに近い印象を受けました。

橋本氏:
 そうですね。ウエスタンマーケットに合わせたからといって,「日本人の好みに全然合わないよ」って言われたら元も子もないので,アジアとウエスタンマーケットの両方から,理解を示してもらえるようなデザインにしてもらいました。

4Gamer:
 そのあたりは,さまざまな国と交流を持つシンガポールのデザイナーだからこそ実現したこと,とも言えそうですね。

橋本氏:
 はい。やはり彼らは日本のカルチャーをよく勉強していると思いますよ。デザイナーさんもFMシリーズが好きなので,“FMらしさ”というものを十分に理解しています。“戦場感”にこだわった設定画を何枚もラフで描いてくれたりしましたしね。

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4Gamer:
 今回,ゲームジャンルとしてはTPSという形ですが,TPSになじみのないプレイヤーへのアプローチなどはありますか?

橋本氏:
 アクションゲームが苦手なFMファンも少なくないと思うので,難度は海外のデベロッパが考えているよりも,1ランク易しくしています。海外のイージーモードよりもさらに易しくなっている,と考えてもらったら分かりやすいかもしれませんね。

4Gamer:
 海外ゲームのイージーモードが,FMEのノーマルモード,という感じでしょうか。

橋本氏:
 ですね。FMEのイージーモードでは,敵ヴァンツァーに攻撃を一発当てただけで,面白いように壊せますよ。もちろん,歯ごたえのあるハードモードも用意しているので,腕に自信のある人にも,十分に楽しんでいただけると思います。
 あとはヴァンツァーのカスタマイズ部分ですね。やはりFMといえばヴァンツァーが大きなウェイトを占めているので,そのあたりは抜かりなく制作しています。

4Gamer:
 TPS初心者はイージーモードで気軽にプレイできるし,上級者ならハードモードでギリギリの戦いが楽しめるわけですね。
 ところでFMというと,“戦争”を題材にした重厚なストーリーや,キャラクター同士の人間ドラマも重要な要素だと思うのですが,FMEではどうでしょうか。

橋本氏:
 先ほど「ゲームデザインはワールドワイドで受け入れられるものを」と言いましたが,ストーリーに関しては“フロントミッションらしさ”を残したかったので,シナリオはうちの鳥山(求)※を含めた国内の制作スタッフが手がけています。“FMらしさ”を追求したストーリーになっていますので,ファンの方も安心してもらっていいと思いますよ。
 また,オープニングのCGムービーはビジュアルワークスでディレクションしています。つまり,CGムービーとシナリオという,骨格の部分はメイドインジャパンということですね。

※「ファイナルファンタジー」シリーズをはじめ,数多くの作品を手がけるゲームクリエイター。近年では「ファイナルファンタジーXIII」や「The 3rd Birthday」のシナリオを担当

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プレイヤーの間口を広めるために“標準的”な操作感を再現


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4Gamer:
 開発者の方達は,これまでFMシリーズをかなりプレイされていたんですか?

橋本氏:
 やり込む,というほどプレイしていたわけではないみたいですが,FMEを制作するにあたってかなり勉強していたようですね。あと,影響という意味で言うと,アメリカでもヨーロッパでもシンガポールでも,「Call of Duty4: Modern Warfare(以下,CoD4 MW)」がかなり大きなウェイトを占めていると思います。

4Gamer:
 「CoD4 MW」は一般のプレイヤーだけでなく,ゲーム業界人からも絶賛されていますよね。橋本さんご自身も相当プレイされたとお聞きしましたが。

橋本氏:
 ほとんど毎日やっていましたね。CoD4 MWのマルチプレイって,レベル70がMAXなんですけど,それを二週やって,「Call of Duty: World at War」を一週やって,またさらにそこから「CoD4 MW2」を一週やって,最近では「Battlefield bad campany 2」をやっています。つい最近,工兵と突撃兵は武器をMAXまで上げました(笑)。

4Gamer:
 どこからどう見てもお忙しそうなのに,そこまでやりこんでいたとは……。ちなみに,ほかに橋本さんが最近ハマッたタイトルはありますか?

橋本氏:
 自社のタイトルですと,「ニーア レプリカント / ニーア ゲシュタルト」が良くできていると思いますね。私は34時間で3周プレイしたんですけど,Cエンディングまで行けなかったので挫折しました。ニーアのプロデューサーの齊藤に,Cエンディングの条件を聞いたら,「武器を30種類集めないとCエンディングルートに分岐しませんから,今からだと面倒ですね」と言われたので,諦めました(笑)。

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4Gamer:
 うわ,それは悔しいですね(笑)。
 ところでFMEはE3にも出展していましたが,そもそも現地での知名度はどの程度なんでしょうか。

橋本氏:
 残念ながら,海外ではFMの認知度があまり高くないんですよね……。ただ,FMEに関しては,海外の方がプレイしても,操作などで違和感を覚えることはないと思いますよ。

4Gamer:
 それはなぜですか?

橋本氏:
 実は開発チームには「CoD4 MWに近い操作感覚を再現してくれ」とお願いしたんですよ。実際にプレイしてもらったら分かると思うんですけど,ヴァンツァーの振り向き感度を一番鈍く設定したら,かなりCoD4 MWに近い操作感になるんです。
 やはりCoD4 MWは世界中で売れているタイトルですからね。プレイヤーの間口を広げる意味でも,CoD4 MWに近い操作感にしたのはよかったと思いますよ。まぁ,これは僕自身がCoD4 MWにかなり影響を受けたというのも大きいんですけど(笑)。

4Gamer:
 確かにCoD4 MWに近い感覚なら,普段からCoD4 MWに慣れ親しんでいる海外のゲーマーも,違和感なくプレイできると思います。

橋本氏:
 やはりFPSやTPSは操作性が大事ですから,そこは真っ先に考えました。あと,実はFMEを開発するときに,FPSにするかTPSにするかですごく悩んだんですよ。ただFMは,ヴァンツァーをカスタマイズできるのがウリなので,常に自分の機体を見られるようにしたかったんですよね。

4Gamer:
 なるほど。FPSだとゲーム中,基本的に手と武器くらいしか見えませんからね。

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橋本氏:
 CoD4 MWでもBattlefield bad campanyでも,FPSだったら割り切るしかないですよね。でもFMではカラーリングや,部品の交換などが非常に重要な要素なので,その部分を見せてあげるためにも,TPSという体裁が必要でした。

4Gamer:
 確かにFMシリーズにおいて,ヴァンツァーのカスタマイズ要素というのは絶対に外せない要素です。

橋本氏:
 そう思います。最近のレースゲームでも,車を自由にカスタマイズできるのがウリなものが多いですよね。そういうゲームってFPS視点でもプレイできますけど,せっかく自分でカスタマイズしたんだから,美麗な姿を見たいじゃないですか。
 ですから今作も,カラーやカモフラージュパターン,部隊マークといった,デザインに関する部分にはかなりこだわっています。

4Gamer:
 橋本さんご自身,そのあたりに関しては開発チームに色々と指示を出していたんですか?

橋本氏:
 はい。さきほど言った,カスタマイズ要素やストーリーのプロット部分に関しては,ちょこちょこ意見を出しています。まあそうはいっても,最終的には開発チームに委ねている部分が大きいんですけどね。

4Gamer:
 ちなみに,FMEにおけるヴァンツァーのカスタマイズ要素は,どのくらいのボリュームになりますかね。

橋本氏:
 今までのFMシリーズは,ヴァンツァーのアニメーションをデモで表現していたので融通が利いたのですが,FMEではカスタマイズがダイレクトにグラフィックスへ反映されて,しかもそれをきちんと操作できなくてはいけないんですよ。なので多少制限を付けざるを得なかった部分はあります。
 ただネット対戦でも,カスタマイズしたものはちゃんと反映するようになっているので,プレイする際は自分でカスタマイズしたヴァンツァーを,自由自在に操って楽しんでほしいです。

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