インタビュー
前作を未プレイでも楽しめる!? 「戦場のヴァルキュリア2 ガリア王立士官学校」の気になるあれこれを本山プロデューサーと小澤ディレクターに聞いた
ハードの制約をゲームの面白さに落とし込むべく
さまざまなアイデアが詰め込まれた新“BLiTZ”
「2」でBLiTZのシステムは継承されていますが,ルールというか細かい部分がけっこう変わっていますよね。マップに出撃できるのは最大6人までで,エリア単位だと最大5人という感じで。
本山氏:
今回の全部で6人,1エリア5人というのは,けっこう適正なバランスかなと思っています。開発途中でいろいろ試した部分は当然あるのですが,「2」はエリア分割を採用したということで,拠点がすごく重要になってきます。ですが,人数が多いと拠点にキャラクターを置くことで守ることができちゃうんですよね。相対的に難度がぐっと下がってしまうんです。
ですが全部で6人,1エリア5人という縛りがあると,どうしても手薄な拠点が出てくるわけです。手薄なところを敵に取られないために単独で行動させなくちゃいけない,といったシチュエーションが発生しますので,結果的にちょうどいいバランスになったとは思います。
あと,PSPだとPS3ほどのスペックは当然望めません。「1」ほどの大きなマップはできないので,マップを分割をせざるを得ないというのが正直なところです。ただ我々としては,マップ分割をゲームの面白さに落とし込まなくてはなりません。
また,「1」は最終的に敵の本拠点を取ればクリアだったので,ほかの拠点を取る必要はなかったんです。慣れると時間がかかるだけでメリットが薄いという反省点がありました。ではどうしたら,ちょっとずつ共闘して進んで行く戦争の感じが出せるのかと考えていたときに,拠点を制圧すれば隣のエリアにいけるという,エリア制が非常にマッチしたんです。
4Gamer:
あとエリア分割のシステムだからこそ生まれたと思うのですが,マップ上のどこでも「強制退避」できるというのが,「2」の戦闘で戦略に深みを出しているなと感じました。
小澤氏:
戦闘に参加する人数を考えたとき,手薄になったり,この人がいるから先に出せないとか,ルールのためにゲームがつまらなくなる矛盾がどうしても生まれてしまうので,すぐに引っ込められなくちゃダメだよねと。
現実的に見れば,「なんですぐ後ろに引っ込められるんだよ」という考えもあると思いますが,そこはゲームの面白さを優先しました。まずはエリア戦ありきで,さらに人数制限による戦略性ありきのうえで,ユーザーさんが楽しんでシミュレートできるものは何かといったときに,どこでも引っ込められるという「強制退避」は自然に生まれてきました。
4Gamer:
それと,「2」ではユニットが瀕死状態で規定ターンが経過しても“入院”する形になって,戦死してしまうことがなくなりましたね。
本山氏:
はい。やはりメインストーリーに絡ませたいというのがあったので,「1」のように戦死してしまうというのは難しいというのがありましたね。ですので入院という形を取らせてもらいました。でも入院するとそのキャラクターをしばらく使えなくなるので,けっこう痛いは痛いんですよね。
4Gamer:
「2」では兵科/兵種が増えたことで,すごく戦略の幅が広がったと感じました。中でも主人公がどの兵科にもなれるというのは,前作とはまた違った楽しみ方ができますね。
本山氏:
「1」は主人公のウェルキンが戦車兵長ということで,必ずいなくちゃいけなかったんです。でも「2」では,すべてがエリア制とか自由度に紐付いて作られているというのはあると思いますが,戦車を出さなくてもいいし,アバンをいったんマップから退避させて別の拠点から出すとかいった使い方もできます。
上級兵種はツリー上に分岐していますが,クラスチェンジは一度選ぶと別の分岐は選べなくなるのですか?
本山氏:
同じ兵科の中であればどの兵種にもなれます。
小澤氏:
一度クラスチェンジしたものであれば,単位が足りていれば好きな兵種にいつでも変更できます。たとえばミッションに応じて変えるというのも手ですね。ここは機動力がいるから,一時的に狙撃兵を上級偵察兵にして機動力で引っかき回そうとか。あとは,協力モードで見せあったりもできますので「そっちはその兵種にしてるの?」とか,そんな感じで話題にもなってもらえればと。
本山氏:
たとえばアバンを楽奏猟兵とか,そういうギョッとするようなラインナップでやってほしいですね(笑)。
4Gamer:
兵種が増えたことで,一部兵種が能力的にかぶっているところがあって,“死に”兵種が出てくるのではないかとも思ってしまうのですがどうでしょう? たとえば戦車に強いユニットは対戦車兵以外に爆剣兵もいますし。
技甲兵は,爆剣兵の方向に行くと戦車に対して強いというのはあります。あと,盾を持っているので,正面からの防御はすごく高いですが,ほかの兵科に比べてAPが極端に低いので移動距離が短かったり,移動速度が遅かったりというところがあります。対戦車兵は,上級兵種で機動力の高い機動対戦車兵にもなれるので,後ろに回って弱点を狙い撃ちするとか,そういう風な使い方がしやすいというのがありますね。
小澤氏:
戦車に対しての一発という意味では,爆剣兵と初期の対戦車兵だと当然爆剣兵のほうが強いのですが,対戦車猟兵と爆剣兵だと,対戦車猟兵のほうが強いです。やはり対戦車攻撃のエキスパートは対戦車兵なんですね。また,対戦車兵は射程に近づくと戦車の迎撃にあって死ぬ可能性が高くなりますが,爆剣兵は盾を持っているのでその危険性が低くなります。
危険を冒して一発の攻撃に賭けるか,安全策を取って複数回攻撃するか,というのも一つの選択肢で,いわば解き方のカスタマイズですね。
本山氏:
まったく使えない兵種やキャラクターはいないですね。それぞれの特色を見極めて,いろいろな使い方をしていってほしいと思います。
たとえば狙撃兵は,「1」だと,出したあとは動かさずに狙撃だけして終了みたいな感じだったのですが,「2」ではマップに出して狙撃したら退避して,今度は別の拠点から出撃して狙撃する,といった使い方ができるようになりました。今回は,いろんな兵種を使い分けてプレイできるようになったんで,すごく楽しいんじゃないかなと思います。
「ヴァルキュリア」では,スキルにあたる「ポテンシャル」がキャラクターの特色付けに一役買っていると思います。「2」では,ポテンシャルの一部が“上書き”されたり,付け替えできるようになりました。その理由を聞かせてください。
小澤氏:
パーソナルポテンシャルは,各キャラクターのエピソードで最後のミッションをクリアしたときに,「心が通じ合ったことで花開く」ということで,ポテンシャルのうち一つが上書きされます。「1」同様,キャラクターにはマイナス効果のポテンシャルがあるんですが,それがプラスに変わったら,まさに乗り越えたことになるだろうということで。
「1」のスージー・エヴァンスが良い例なのですが,「使いたいんだけどこのマイナスポテンシャルはひどいだろう」と。
4Gamer:
ああ,確かにスージーのポテンシャル「博愛主義者」には,何度も苦い思いをさせられました……。
※「博愛主義者」は,自身の攻撃をスキップしてしまうというマイナスポテンシャル。「2」でいえば,コリーンの「アタック下手」に相当
小澤氏:
幸いスージーは人気も出たんですが,不遇なキャラクターも当然いたので。「この子は使い続ければ良い子になるよ」っていうのを用意したかったんですね。でも全部が全部いいポテンシャルになってしまったら,それはそれでヴァルキュリアとして面白くないだろうと。ですので最初は使いづらいけど,使っていくとすごいですよというのを表現したかったんですよね。それで今回は,上書きという要素を用意してみました。
4Gamer:
バトルポテンシャルについてはどうでしょうか?
バトルポテンシャルは,兵種ごとに覚えるのは三つで,ほかの兵種にクラスチェンジしても使えるようにした,というのが簡単な思想です。これは「1」でいう「極み」とか,ズバ抜けて強いポテンシャルを,キャラクター限定でしか使えない状況をなくしたいというのが入れた理由です。
あと,せっかく兵種が35もあるので,いろんな兵種を試してもらいたいのですが,ほかの兵種にクラスチェンジをして“いいこと”がないと,「こいつはこれでいいや」で止まりがちですよね。
べつに1兵種固定を否定するわけではありませんが,「ほかの兵種にクラスチェンジするとこんないいことがありますよ」というゲームの指針の一つとして,ポテンシャルの付け替えを提示させてもらいました。これも一つのカスタマイズですね。
4Gamer:
なるほど。多くの兵種を経験すれば選べるポテンシャルが増えて,キャラクターをより強化できるわけですね。それこそヴァルキュリア人並みのスーパーユニットができたりとか……。
小澤氏:
「この兵種にこのポテンシャルを付けるとこういった効果がある」とか,開発ではある程度計算はしているのですが,ユーザーさんはいつも斜め上を行くので(笑)。
本山氏:
また僕らの想像もしないクリア方法を編み出すのかなとか(笑)。
4Gamer:
戦車もすごくカスタマイズのバリエーションが増えましたよね。
そうですね。「1」の戦車って,破壊力と装甲はあるけどCPを二つ消費したので,結局は,対戦車以外の用途としては,歩兵の盾にするとか,煙幕を投げて援護するといった使い方に終始しちゃったのかなと感じる部分がありました。戦闘の花形であるはずの戦車の使い方が限られるのはもったいないなと。
「2」では,橋を架けてルートを作れる工作装置を装備できたり,兵を乗せて敵の陣地まで運搬できる装甲車バージョンを用意したりと,いろんな使い方ができる車両になっています。
小澤氏:
「1」では,義勇兵50人のうち誰を選ぶかでしたが,「2」ではカスタマイズがキーワードになっています。部隊が同じメンツでも兵種が違うとか,戦車の使い方が違うとか,アバンの兵種がまるで違うとか,「俺の部隊!」と言い張れるような感じです。友達と見せ合ったときに「おお,そっちの部隊はそうなっているんだ」みたいな。
部隊の名前も変えられますので,たとえば「小澤隊」だったら「小澤隊はこの世に一つしかありません」といえるものになっていると思います。そのうちの一つが戦車のカスタマイズということですね。
本山氏:
戦車のカスタマイズってものすごくバリエーションがあって,単にパーツだけではなく,ステッカーとかカラーリングとかも変えられるので,自分のこだわりの一両を作ってほしいなと思います。
使い勝手のいい軽戦車/中戦車や支援車両としての装甲車のほかにも,エリア間榴弾が撃てる重戦車もありますので,拠点に陣取って後方支援に徹するといった使い方もできます。そのあたりもカスタマイズの一環として楽しんでもらえればと思います。
4Gamer:
カスタマイズの自由度が高くなると,消費CPの高い戦車は戦闘に出さないという選択肢も出てくると思います。戦車にマップの地形効果を打ち消すパーツがあるのは,戦車を軸に進軍してほしいという意図が現れたものなのでしょうか?
小澤氏:
それもあります。ミッションごとに戦車の運用方法が決まってしまったら,せっかくのバリエーションもグッと縮まってしまうなと思ったんです。先ほど言ったように,「僕は軽戦車で行く」とか「装甲車で行く」とか,カスタマイズしてもらいたいんですよね。
ただ,「戦車はいらない」という選択肢にはなってほしくないというのは事実ですので,なんとかバリエーションの幅を狭めない範囲で,戦車を連れて行ってもらいたいなという思いの一つが,地形効果の打ち消しですね。
これは,戦車にも装甲車にも乗せられるショルダーパーツの効果になります。運搬方法はプレイする方の自由ですが,「戦車を連れて行ったほうが得ですよ」という一つの指針の顕れですね。でも「それすらいらないよ」という方は,歩兵をもう一人連れて行くというのも選択肢の一つです。強制ではない戦車の運用方法の指針を与えたいというのが,地形効果の打ち消しなんです。
本山氏:
戦車がいると安心だから,まず連れて行きますね。やっぱ盾になるというのもありますし。
小澤氏:
僕はたまに連れて行かないことがありますね。
4Gamer:
爆剣兵を使うと,「戦車いらないかも……」って思うことがありますね。
本山氏:
いやいや,やっぱり戦車は強いですよ。
小澤氏:
足の差が出たりしますね。戦車だと入れない場所があるんで,歩兵が有利な局面もあるんですけど,技甲兵系はAPが少なくて移動できる距離が短いので,やはりなんだかんだで戦車は重宝しますよ。それは使い分けですよね。
今回,自分の部隊を16パターン登録できるんです。「今回は砂漠だからこの装備の戦車でいくか」とか,そんな感じで気軽にマイ部隊をいっぱい作ってもらいたいなと思います。
4Gamer:
登録はどういった仕組みになっているんですか?
小澤氏:
出撃候補のメンバーは,キャラクター単位での登録です。兵種を変えたら,登録している全グループに反映されます。カスタマイズした戦車の装備は,個々のグループごとに別の扱いになります。
4Gamer:
兵種変更には単位が必要ですし,どちらかといえば,カスタマイズした戦車のためのものなんですね。
これも指針の一つなんですけど,せっかくクラスメイトが30人以上いて,兵種が全部で35あるので,キャラクター固定で兵種を変えてミッションを使い回すというよりは,キャラクターそれぞれの兵種をばらけさせて使い分けてもらえたらありがたいですね。
まあ,「何が何でもリコリスを使い続ける!」といったことも自由にできるようになっていますので,その都度ご自由に変えてください(笑)。
4Gamer:
あと「オーダー」の扱いはどうなっているのでしょうか? 使わなくてもクリアできるのか,それとも使わないとクリアが難しい局面があったりするのでしょうか?
本山氏:
オーダーありきとは考えてないですね。自分がピンチになったときの逆転要素として考えている部分があるので,今回もやばくならなければ使わなくてもいいとは思います。もちろん,オーダーを使って一気に攻めようというときなどは使ったほうがいいと思いますし,そのあたりはお好きにどうぞっていうのがありますね。
小澤氏:
「1」からの基本スタンスなのですが,オーダーは「どうしようもないときに使ってください」という救済措置という側面がありますが,使わなくてもいいものです。たまに使えることを知らなかったという人もいるくらいです(笑)。
オーダーは「2」でも使うと便利で,効果は絶大ですが,使うことでゲームが非常にヌルくなってしまったという意見があったことが前作の反省点なんですね。こちらとしては使わないことも選択肢の一つとして用意していたのですが,「使えるものを使ったらヌルく感じた」というのも,もっともな評価ですので。
オーダーの効果を下げてしまうと救済措置にすらならないので,効果をいたずらには下げず,使う敷居を上げたいなというのがあり,CPを見直してみました。CPをだいぶ消費するんで,覚悟して使ってくださいという感じですね。
4Gamer:
個人的には,CP不足に悩むというか,前作に比べて次ターンにCPを持ち越すような状況が減ったと感じました。それは意図的なものなのでしょうか?
小澤氏:
半分意図的,半分自然にという感じですね。
前回は初作ということで,我々も手探りの部分があったので,テストプレイ時よりも2〜3CP多めに設定したんです。これは反省しきりなんですけど,ユーザーさんは我々の予想よりも上手かったんですね。
ですので,「2」ではバランスの調整も兼ねてCPを少なめに調整しました。あと,今回はエリア移動が追加されたので,キャラクターを出したり引っ込めたりする頻度が高くなっています。前作以上にCPを使うシーンが増えているので,CPを若干多めに使うように見られているのかって気がします。
- 関連タイトル:
戦場のヴァルキュリア2 ガリア王立士官学校
- 関連タイトル:
戦場のヴァルキュリア
- この記事のURL:
キーワード
(C) SEGA
(c) SEGA