レビュー
その実力はまさに「真・女神転生」。じっくり遊べるNDS用RPGを探しているならこれで決まり!
真・女神転生 STRANGE JOURNEY
悪魔と交渉する“悪魔会話”や,悪魔同士を合体させてより強力な悪魔を生み出す“悪魔合体”,そして主人公の行動によって物語の結末が変化するマルチエンディングシステムなどはもちろん健在。“これぞメガテン”という特徴はそのままに,次世代戦闘装備“デモニカスーツ”の成長や,“フォルマ”による武器/防具の作成などといった新要素が取り入れられている。さらに,登場する悪魔の数も300体以上と,シリーズ最大級だ。
本稿では,真・女神転生 STRANGE JOURNEYを実際にプレイした感想を交えつつ,ゲームの魅力をお伝えしていこう。
シリーズファンなら狂喜乱舞すること必至!
“メガテン節”大盛りのシナリオ
地球の総人口が約70億人にも膨れ上がった21世紀初頭,突如南極に,あらゆるものを分子崩壊させながら巨大化する亜空間“シュバルツバース”が出現。人類は地球と共に,消滅の危機に晒される。
拡大を続けるシュバルツバースに対策の術を持たぬ国連は,最終手段として内部に有人探索艦を送り込むことを決意。極秘裏に各国の優秀な兵士や科学者を集め,“シュバルツバース調査隊”を結成した。
そこで艦外活動や調査の保安を担う“機動班”に配属された主人公は,次世代揚陸艦“レッドスプライト号”に搭乗し,シュバルツバースへと旅立つことになる……。
まさに“引かぬ,媚びぬ,省みぬ”を体現したかのような,この設定。正直筆者も,発売前は「さすがに尖り過ぎだろ……常識的に考えて」と思っていたものである。
本作の舞台は南極で,しかもシュバルツバースという閉鎖空間である関係上,歴代シリーズのように“吉祥寺”や“池袋”といったお馴染みの街を探索することはできない。主にレッドスプライト号を拠点として治療やアイテム補給などを行い,ミッションを請けてさまざまな“セクター”の調査に赴くという流れになっており,従来シリーズと比べて,よりダンジョン探索型RPGの要素が強い。プレイ感覚としては,「世界樹の迷宮」シリーズに近いゲームデザインになっているのだ。
しかし,それでもやはりメガテンはメガテンだった。未知の存在に襲われる調査隊クルー達の恐怖や,混乱の中で揺れ動く人間模様が非常に生々しく描かれており,物語にどんどん引き込まれてしまう。イベントのほとんどは一枚絵とテキストで進行するにも関わらず,妙に荘厳なBGMとも相まって,まるで映画を見ているかのような没入感が味わえた。シリーズファンにはたまらない“メガテン節”大盛りのシナリオには,嬉しい悲鳴を上げざるを得ない。というか喜びのあまり,何度か奇声を発してしまった。
驚くべき性能を誇るデモニカスーツ
シリーズお馴染みのシステムも強化
本作に登場する調査隊クルーは,主人公含め全員が高度なコンピューターシステムを持つ戦闘服,デモニカスーツを装着している。このデモニカスーツ,デザインがカッコイイ(カッコイイんだよ!)だけでなく,機能も素晴らしい。装着者の特性に合わせて運動能力が成長するうえ,“悪魔召喚プログラム”をインストールすることによって悪魔との会話はもちろん,いつでもどこでも悪魔合体が可能になるのだ。
まずは悪魔会話について。本作では敵として多種多様な悪魔が登場するのだが,彼(彼女)らとは戦う以外にも,会話することでさまざまなコミュニケーションがとれる。意気投合することができれば,“仲魔”になって共に戦ってくれたり,アイテムをくれたりというメリットがある。
対応に失敗すると突然攻撃されたりする危険性もはらんでいるのだが,個性豊かな悪魔達との会話が楽しくて,ついつい話しかけてしまう。
次に,悪魔合体は仲魔同士を合体させることでより高位の悪魔を生み出すというシステムだ。その合体法則は非常に奥深く,種族やレベルの組み合わせでまったく違ったタイプの悪魔が誕生する。さらに,本作では仲魔からもらえる“デビルソース”を使用して継承スキルを追加することが可能となり,より合体の楽しみが増した。
また,交渉・合体で仲魔となった悪魔は“悪魔全書”に登録され,その後パーティから外れても,“マッカ”(ゲーム内通貨)を消費することで再度呼び出すことが可能となる。
従来シリーズでは特定の施設でしか行えなかった悪魔合体・悪魔全書からの呼び出しだが,前述のように本作ではいつでもどこでも,メニュー画面から実行できる。歴代の主人公達が聞いたら,血の涙を流すことだろう。便利な時代になったものである。
やり込み要素の強い新システム
悪魔のパスワード化にも注目!
しかし,デモニカスーツの高機能っぷりはこんなものじゃ終わらない。悪魔やダンジョンから入手できる“フォルマ”というエネルギー体から,“メインアプリ”と“サブアプリ”を作成することにより,さらに機能を拡張できるのである。
フォルマは武器/防具から消耗品まで,あらゆるものを作り出す際に素材として使用する。フォルマがなければ回復アイテムすら入手できないので,こまめな収集作業が必須だ。
作成できるアイテムの種類はかなり多いので,やり込み要素も強い。凝り性の人だと,1時間だけプレイするつもりがフォルマ集めに熱中して,気がつけば3〜4時間経っていたなんてことがザラにあるので気をつけよう。ちなみに筆者は電車内でプレイして4駅乗り過ごした。
なお,デビルCO-OPは敵の弱点を突いた場合,同スタンスの仲魔が自動的に追撃を行うというシステムで,戦闘パーティに同スタンスの仲魔が多いほど,その威力は高くなる。 だが,仲魔の入れ代わりが激しい本作においてスタンスを統一するのはなかなか楽な作業ではない。デビルCO-OPを使わなければクリアできないということは決してないので,スタンスを無視した混成部隊で攻めるのもまた面白い。
とは言っても,本作は“メガテンらしく”なかなか難度が高い。シリーズ経験者ならばまだしも,初心者の場合は好きな編成でプレイしようにも,色々と厳しいものがある。とくに各ボス戦では,一度は全滅する覚悟が必要だろう。
そこで,救済措置となり得るのが悪魔のパスワード召喚だ。本作ではパスワードの出力・入力によってほかのプレイヤーと悪魔のやり取りが可能なのである。「真・女神転生 STRANGE JOURNEY」の公式サイトにはパスワードを投稿できる“悪魔自慢BBS”もあり,攻略に便利なスキルを所持した悪魔を手軽に手に入れることができる。オリジナルパスワード悪魔コンテストなども開催されているので,プレイヤーは公式サイトをこまめにチェックしておくといいだろう。
「真・女神転生 STRANGE JOURNEY」公式サイト
もちろん,自分よりもレベルが高い悪魔は召喚できないし,それなりのマッカも必要となるが,どうしても行き詰ってしまった場合には利用するのも手だろう。しかし,このご時勢にパスワードとは渋い。入力や出力の手間も含め,一周回って魅力的である。
“メガテン”の名に恥じぬ完成度!
遊び応えを求めるなら本作にキマリ
独特の雰囲気や高めの難度に関しては好みが分かれそうなところだが,遊び応えは満点。難しいとはいっても理不尽な難しさではないし,前述のようにパスワードという救済措置もある。ニンテンドーDSでじっくり遊べるRPGを探しているのなら,本作を強くオススメする。ぜひともシュバルツバース調査隊の一員になってほしい。さぁ,カッコイイ金色のバケツを被り,恐ろしくも魅力的な悪魔達に会いに行こう。
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真・女神転生 STRANGE JOURNEY
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(C)ATLUS CO.,LTD. 1992,2009