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【西川善司】ストラテジーとレース,2つのゲームジャンルにおける「視界」をリアルで体験してきた話
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印刷2013/06/22 00:00

連載

【西川善司】ストラテジーとレース,2つのゲームジャンルにおける「視界」をリアルで体験してきた話

西川善司 / グラフィックス技術と大画面と赤い車を愛するジャーナリスト

画像集#025のサムネイル/【西川善司】ストラテジーとレース,2つのゲームジャンルにおける「視界」をリアルで体験してきた話

(善)後不覚

blog:http://www.z-z-z.jp/blog/


 もう6月も下旬に入り,E3 2013も終わったタイミングですが,今回は,5月に2回あった,トンボ返りスケジュールの海外出張についてお話ししたいと思います。渡航先はカナダ・トロントと,英国・シルバーストーンサーキットでした。


「シムシティ」の視界をリアル一人称で楽しむ in カナダ・トロント


 まずは5月第2週に行ったトロントからですが,こちらは,AMDの新APU説明会参加が目的でした(関連記事)。

2013年6月現在,電波塔としては東京スカイツリーが世界で一番高い建造物。CN Towerは中国の広州塔に次いで3位の位置にある
画像集#002のサムネイル/【西川善司】ストラテジーとレース,2つのゲームジャンルにおける「視界」をリアルで体験してきた話
 トロントに到着した翌日は予定のないオフ日で,AMDから「時間があるなら,トロントの観光名所である『CN Tower』に連れていってあげよう」という提案をいただいたので,お言葉に甘えて参加することにしてみました。
 CN Tower(CNタワー)は,高さ553mの電波塔で,ドバイの「Burj Khalifa」(ブルジュ・ハリファ)が建つまで,30年以上もの間,世界で最も高い人工建造物だったとのことです。

 高いところは好きなのですが,東京スカイツリーにも行ったことがなかった自分としては,CN Towerに登れるなんて願ったり叶ったりでした。

 「CN Towerに登りたい希望者は,14:00にホテルロビーへ集合」とのことだったのですが,参加したのはポーランド人とドイツ人,メキシコ人が各1人ずつと,ボクの合計4人だけです。今回のイベントには50人以上の報道関係者が世界各国から集まっているはずなのですが,たった4人。ちょっとおかしい感じはしますが,ともあれ,ボクを含む4人が車に揺られること十数分。CN Towerの“麓”に着き,見上げると首が痛くなるほど高いCN Towerが視界に入ってきました。

 素直にAMDの引率者の後をついていったのですが,なぜか彼は,展望台行きエレベータをスルーして進んでいきます。「道を間違えていないか」と思いながらもそのまま付いていくと,案内されたのは,「Edge Walk at CN Tower」というツアーの受付窓口。そして「予約してあるから,楽しんできて」とだけ言うと帰ってしまいました。

 続いてインストラクターのマッチョな女性が現れて,我々に書類を付きだしてサインしろと言います。書類に目を通すと,万が一,ケガをしたときの連絡先を記入する欄や,死亡したときは自己責任であることを承諾するサインの欄があります。CN Towerはそんな危険なところなのかと思っていたら,続いて,スカイダイバーが着るようなスーツを着ろと指示してきました。
 そう,これはCN Towerの展望台……の外に出るツアーだったのです。

 インストラクターによれば,どんな小物も携行してはダメとのことで,すべてロッカーに預けるよう指示されました。なんでも,展望台の屋根には手すりも金網ないそうで,どんな小さなものでも,万が一落としたら,すごい速度で地面に落下するため,大変危険だからとのこと。

こちらはツアー後に乗った,一般観光客用の展望台行きエレベータ。床がガラスで透けている
画像集#003のサムネイル/【西川善司】ストラテジーとレース,2つのゲームジャンルにおける「視界」をリアルで体験してきた話
 さて,メンテナンス用のエレベータに揺られて上がったところは,ガラス1枚だけのエレベーターホール。そこで命綱を2本付けられました。インストラクターのマッチョな女性は「1本切れても大丈夫なように2本付けるのよ」と当たり前のように言ってきましたが,それがなんだか逆に恐ろしげです。
 ガラスの向こうでは,強い風が吹いている感じの,ヒョーヒョー唸るような振動音が聞こえています。

 そしてインストラクターが扉を開けると,予想どおり,強い風が吹き込んできました。前にゆっくりと進んでいくにつれて,眼前にはものすごいパノラマビューが広がっていきます。
 ここは地上447mのところと同350mのところに2か所ある展望台セクションのうち,350mのところにある展望台の屋根部分だそうで,高さ的には356mあるんだそうです。

一般展望台からの視界。この展望台の屋根に上がったことになる
画像集#004のサムネイル/【西川善司】ストラテジーとレース,2つのゲームジャンルにおける「視界」をリアルで体験してきた話
 上る前はとても怖かったのですが,いざ景色を見てみると,なんだか俯瞰視点のゲームグラフィックスみたいで,あまり怖くないんですね。東京タワーのてっぺんよりも高い位置にいるため,車もノミみたいに小さいですし,スケール感が現実離れしているというか。5〜6階建てのビルのほうがリアリティのある分,「高い」っていう実感が強いかもしれません。

 ツアーは,展望台の屋根を一周するだけなのですが,その間,インストラクターが眼下に広がる観光名所の解説をゆっくりと行ってくれます。1ツアーあたりのグループ人数にもよりますが,所要時間は約1時間前後。ツアーの最中,アクティビティとして,希望者は,ここから身を乗り出したり,つり下がったりできます。
 ちなみにボクは高所に対する恐怖心が欠如しているためか,身を乗り出しがちで,「危ないから後ろに下がれ」とたびだひ注意されてしまいました。下に示したビデオはインストラクターが撮影したもので,実際,注意されている様子も収められています。


 このツアー,筆者のような高所ジャンキーのほか,ハードコアな「シムシティ」プレイヤーにもオススメかと思います。シムシティのプレイ視点が,けっこう高所からのものだということが実感を持って体験できますよ。
 ちなみに基本料金は175カナダドル。ツアー参加者には,上で編集済み版を示した「インストラクターが撮影したビデオ」がDVD-Rメディアでプレゼントされます。より詳細な情報は公式ページをどうぞ。要予約です。


「グランツーリスモ」の視界をリアル一人称で楽しむ in 英国・シルバーストーンサーキット


この日の天気は朝から雨模様だったのが,イベントが始まるなりいきなり晴れた。現地の司会進行担当は「ここ半年間の英国の天気を振り返れば,この晴れ方は異常」とジョークを飛ばしていたが,山内一典氏は晴れ男?
画像集#005のサムネイル/【西川善司】ストラテジーとレース,2つのゲームジャンルにおける「視界」をリアルで体験してきた話
画像集#006のサムネイル/【西川善司】ストラテジーとレース,2つのゲームジャンルにおける「視界」をリアルで体験してきた話
 5月第3週は英国に行きました。「グランツーリスモ6」が発表されたグランツーリスモ15周年記念イベントの取材のためです(関連記事)。

 15周年イベントのメインプログラムであったプレゼンテーションが終わったあとは,ポリフォニー・デジタルのプレジデントである山内一典氏をはじめとした関係者へのインタビューセッションが行われたのですが(関連記事1関連記事2),全世界から集まった報道関係者の数は膨大。なので,各国の報道関係者はグループ分けをされて,設定された時間割に沿ってグループ単位のインタビューセッションに参加しました。
 当然,待ち時間はそれなりに長くなるので,その待ち時間を利用して,ここシルバーストーンサーキットの体験走行が行われたのです。

 1人あたり,乗れるチャンスは2回。
 そのうち最初の1回は,プロのレーシングドライバーの助手席に座っての同乗走行でした。

 シルバーストーンサーキットは,全長約6kmほどのコースで,F1などの大型レースイベントではコース全域を利用しますが,コースの北半分を「ナショナルサーキット」として,南半分を「インターナショナルサーキット」として分けて運用することもあります。そしてこの日のイベントは前者,北側の「ナショナルサーキット」を使って行われました。

会場内ではグランツーリスモ6のデモ版をプレイすることもできた
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 さすが,世界ブランドのグランツーリスモ。この体験走行用に持ち込まれた車両達はかなりゴージャスでした。トヨタの「86」,日産の「フェアレディZ」や「GT-R」などは日本でもお馴染みですが,日本ではなかなか乗るチャンスのない高級スーパーカーやエキゾチックスポーツカーがいっぱいです。

 もう,ボクは,コースのピットロードに降りるなり,ハイテンションのまま,Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)の「SLS AMG」か,Jaguar(ジャガー)の「XKR-S」か,KTMの「X-Bow」(クロスボウ)か,Audi(アウディ)の「R8」のどれかに乗る!! と勝手に決めていました。……が,そうした人気車種に希望者が集中しないよう,イベント運営側がランダムに割り当てるシステムを実行していたのです。前述の外国車両は1台ずつなのに対し,86とフェアレディZ,GT-Rは複数台が持ち込まれていたため,確率的にはこの3車種に割り当てられてしまう可能性が高かったのでした。

画像集#009のサムネイル/【西川善司】ストラテジーとレース,2つのゲームジャンルにおける「視界」をリアルで体験してきた話
トヨタ86。英国では「GT86」という名前で販売されている
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日産フェアレディZ。英国での車名は「370Z」
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日産GT-R。英国でも人気が高い
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1950年代の名車「300SL」の現代版と言われるSLS AMG。日本では2500万円以上の価格
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XKR-S。英国伝統のスポーツカーブランドだが,現在の親会社はインドのTata Motors(タタモータース)
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オーストリアのKTMが生産している,屋根も幌もないオープンスポーツカー,X-Bow
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Audiのトップエンドスポーツカー,R8。実はLamborghini Gallardo(ランボルギーニガヤルド)の兄弟車だったりする
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Audiの「TTRS」。直列5気筒のターボエンジンを搭載し,FFベースの4WDシステムを採用するのが特徴だ
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Ford(フォード)の「Focus ST」。いわゆるホットハッチに分類されるコンパクトスポーツだ。日本だとSTグレードは未発売

 プロドライバーの運転による同乗走行では,ボクは「フェアレディZ・バージョンnismo」に割り当てられました。GTアカデミーが実際に運用しているレーシング仕様の車両だそうで,足回りとボディ補強以外はノーマル状態。タイヤもスポーツラジアルでした。

 ドライバーはベルギー出身の,GTアカデミー卒業生。さすがに走り慣れているホームコースなのでしょう。突っ込みぶりが半端ないですし,しかもプロドライバーならではのハードブレーキングがすごいです。ステアリング捌きも修正舵が少なくて,タイヤの性能を完全に把握しているような走りでした。


世界中の記者が同乗走行と自走体験を楽しんだ
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 コースを1周すると次周はもうピットインなので,わずか2分強の時間ですけれども,なかなか有意義な体験でした。
 続いて,待っているのは,自分の運転による体験走行です。次こそはレアな車に乗るぞ! とハイテンションのまま,意気込んで自分の車両割り当てを確認しに行きました。

 横を見ると,他誌の記者達がX-BowやR8,AMG SLSに乗り込んでいく姿が見え,「オレもオレも!」という感じで「次は?」と現地スタッフに聞くと,イギリス英語で「お前はアレだ」と指を突き出されました。
 その指の先にあったのは……さっきのフェアレディZ バージョンnismo

 「この車,今乗ってきたばかりだよ。他の人たちは別の車に乗れているみたいだよ」といったのですが「聞く耳もたん」といわんばかりに「いいから早く乗れ」と言われてしまう始末でした。トホホ。

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某誌の記者が子供のような笑顔を浮かべてAMG SLSに乗り込んでいく。2500万円の車。ボクも乗ってみたい……
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「KTM X-Bow,首痛ぇ,風強ぇ。まいっちゃう〜」と満面の笑みで嬉しそうに不満を述べる某競合メディア編集長。うらやますぃぃ

同乗も自走もまさかの同じ車。このときばかりは「ネタ体質」の自分の運勢を恨んだ(笑)
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 で,このフェアレディZ バージョンnismo。左ハンドル仕様で,マニュアルミッションなんです。
 かつての自分の愛車「RX-7」(GF-FD3S)はマニュアル車だったので,もちろんマニュアル車には乗れますが,このZ,左ハンドルなので右手シフトになります。
 左ハンドル・右シフトのマニュアル車を運転するのは初めての体験。しかも,現行製品である「グランツーリスモ5」にはシルバーストーンサーキットは収録されていませんから,リアルでもバーチャルでも初めて走るコースですよ。
 「初めてづくし」で,そもそも発進させられるのか。そこから不安でした。

 自走体験では助手席にプロドライバーが乗り込んできて,そんなボクの不安をよそに,開口一番「早く発進しろ」と言ってきます。
 踏み込んだクラッチペダルの「踏みしろ」の真ん中くらいが半クラッチだと思って左足を引いたのですがクラッチがつながりません。恐る恐るリリースしていくと,ものすごく手前の位置でつながりました。とてつもない「手前つながり」のようです。

今回の動画撮影には「GoPro HERO 3 Black Edition」を使用。頭に取り付けるアタッチメントバンドを使って撮影した
画像集#022のサムネイル/【西川善司】ストラテジーとレース,2つのゲームジャンルにおける「視界」をリアルで体験してきた話
 右手でシフトして左手起点でステアリングを切っていくので,なんだか,左手で字を書いているような気分で,運転に集中できません。しかも,横にいるプロドライバーが矢継ぎ早に「GAS!」(アクセルを踏め),「BRAKE!」(ブレーキを踏め)と叫ぶもんですから,もう頭の中はパニックですよ。
 いやぁ,プロのレーシングドライバーはどんな車も早く乗りこなすわけですから,大したもんですね。

 次回,同じようなチャンスがあれば,グランツーリスモ6でよく練習して,左ハンドルの車にも慣れ親しんでから臨みたいと思いました。
 というわけで,ボクのへっぽこな走りを以下に示しておきましょう。内容はともかくとして,映像の雰囲気的にはなんとなく,グランツーリスモのコクピット視点ぽいと思いませんか?


 ちなみに,他の参加者に聞いてみたところ,1回目の同乗走行と2回目の自走運転が同じクルマだった人はボクだけでした(笑)。こういう「得しない低確率」によくヒットする人生をなんとかあらためることはできませんでしょうか。
 とはいっても,なかなか普通ではできない体験をすることができたので,総合的には楽しかったです。参加者のなかには,「サーキット走行自体が初めて」という人もいたようなので,これを機会に,目覚めてしまった人もいたかもしれません。

 今後,日本国内でもこうしたイベントをいろいろとやってほしいですね。グランツーリスモ6の完成記念イベントにも期待してますよ!

こうしたアングルの写真は,もはやゲームグラフィックスだか写真だかよく分からなくなってきている気がする。ちなみにこれらは写真
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■■西川善司■■
テクニカルジャーナリスト。5月の話を展開しつつも,近況はE3明けということになるわけですが,「新世代機が出る年なので,そっちに注目が集まりがちだけど,実は,現行世代機向けタイトルにも魅力的なものが多いんですよね」と西川氏。E3 2013で触ったタイトルのなかでは,PlayStation 3用の「パペッティア」が面白かったそうです。いわく「ハサミで『斬り登る』快感がやみつきになりそう。オススメ」とのことでした。
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