連載
【ミートたけし】“挑戦”とは甘美な蜜の味なのか
ミートたけし / 川村 竜 / ベーシスト,作編曲家 ,ストリーマー
ミートたけしの「世界の平和が俺を守る!」ミートたけしYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@meatalk |
第14回:“挑戦”とは甘美な蜜の味なのか
無事に入稿できていれば,皆様にはこのコラムを2024年11月30日の土曜日以降に読んでいただいているはず……ということで,それを前提にお話しする。
先日(11月28日),スクウェア・エニックスの「ロマンシング サガ リ・ユニバース」(iOS / Android。以下,「ロマサガRS」)のサービス開始6周年を記念した公式生放送が配信されたのだが,ご覧いただけただろうか。
実は同作の6周年を記念し,新シナリオのテーマソングをあのイトケンこと伊藤賢治さんが書き下ろすことになり,私がその編曲依頼を受けたのだ。
6周年公式生放送ではその楽曲「繭姫」が発表され,声優の岩男潤子さんが歌う初披露ライブも行われた。
もちろん私も演奏しているので,ぜひアーカイブをご覧いただきたい。
さて,その編曲において,イトケンさんから今回のコラムタイトルにもある,一つの“挑戦”の機会をいただいた。それは,ブルガリアン・ヴォイスによるコーラスアレンジだ。
今回「繭姫」の編曲は,バンドアレンジ,ストリングスアレンジ,そしてコーラスアレンジの3パートに大きく分けて作り込むことにした。
発表&実装されましたー!
— 川村竜 (@ryukawamura) November 28, 2024
ロマサガRS6周年を記念して作られた新曲
「繭姫」の編曲を担当しました!
まさかロマサガシリーズに携わる事に
なるなんて!ありがたや!
記念配信のライブはアーカイブで!https://t.co/GzVUuRdv0d
ストリングス収録の一コマをお裾分け! https://t.co/7HIau00GjH pic.twitter.com/a25kIY2MVS
バンドアレンジはうまくいき,ストリングスアレンジも満足いくものに仕上がった。さぁ残るはブルガリアン・ヴォイスを使ったコーラスアレンジのみ。
ふむ。
ブルガリアン・ヴォイスってなんだ?
以来,YouTubeや文献などでブルガリアン・ヴォイスについて調べまくる日々が始まった。読んで字の如く,ブルガリア発祥の伝統的な女性合唱であるブルガリアン・ヴォイス。その特徴は独特のハーモニーと節回し,喉から絞り出すような喉声などがあり,モンゴルのホーミーにも通じる響きがあると言われている。
これを読んでいる皆さんにもう少し分かりやすく説明するならば,劇場版「攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL」のテーマ曲を思い出してみてほしい。非常に印象的な女性合唱がフィーチャーされているあのサウンドも,かなりブルガリアン・ヴォイスに近いものがある。
ちなみに,あの幻想的な曲を歌われているのは,西田佳づ美さん率いる民謡集団「西田和枝社中」の皆さんで,日本の古語で歌われているそれは,まさに民謡芸術の極地と言える。
つまりブルガリアン・ヴォイスもいわゆる“民族音楽”としてカテゴライズされる歌唱法と言って間違いはないだろう。
ここでふと考え込んでしまった。
今回の「ロマサガRS」における舞台設定を熟読した。
そして一つの残酷な答えを自ら出してしまった。
舞台,ブルガリアじゃなくね?
参った。これは参った。すごい答えを出しちゃった。
しかしこの連載でも何度も書いてきたように,ピンチはチャンスなのだ。そこから私は一切のブルガリアン・ヴォイス動画を観るのをやめた。正確に言うと,あの発声法や声質のエッセンスだけを取り入れ,それを自分が今まで培ってきたコーラスアレンジ,とくに西洋音楽であるゴスペルコーラスのアレンジとの融合を試みた。
いわゆるブルガリアン・ヴォイスのコーラスアレンジにおいて,特徴的な音使いや音の重ね方が存在するのは動画を見あさっていた時点で何となく理解できたが,あえてそこから離れることに重きを置くことにしたのだ。
そうしてできあがったのが,どこの国か,どこの世界かも分からないコーラスアレンジ。そこにKOCHOさんという素晴らしいブルガリアン・ヴォイス・アーティストが,造語による歌詞を重ねてくれたことで今回の私の挑戦は幕を閉じた。
最高の曲が完成した。
イトケンさんもたいへん喜んでくださった。
KOCHOさんをはじめ,コーラスの五阿弥ルナさん,SAK.さんも,本当に素晴らしい歌声を収録させてくださった。皆さん口をそろえて「こんなアレンジ歌ったことない!」とおっしゃってくださったのが,本当にうれしかった。挑戦が報われた瞬間だった。
余談だが,皆さんは私のYouTubeをご覧いただいているようで,「めちゃくちゃ怖い人なのかと思ってました」とも言われた。最大の感謝と愛を込めて無言で「ニコリ」と笑顔を返しておいた。
さておき。
やはり“挑戦”というのは本当にいいものだ。
人生において刺激こそがその彩り足りえる,と考えているのだが,挑戦にはまさにその刺激があふれている。
しかしながら今回の“挑戦”は無事成功で終わったものの,振り返ってみると失敗で終わった“挑戦”も山のようにある。
そういえば,一時期ダイエットと並行してフードデリバリーのバイトを始めようと思い立ったことがあった。配信もできて,ダイエットにもなって,お金も稼げちゃう。こーれはいい“挑戦”じゃないか! と,すぐにあの大きな配達バッグを注文した。
数日後,家にバッグが届く頃には数日前に燃えていたあの情熱は,まるで幻かのように消え去っていた。残されたバッグは,近くに住む母親がえらく気に入って持って帰った。
後日,フードデリバリーのバッグを背負って近所のスーパーで買い物をしている母を見た近所の住人は,「川村さんのところの息子さんは,母親に無理やりフードデリバリーのバイトをさせている」というウワサを立て始めた。俗物どもめ!
まぁ何が言いたいかというと,やはり失敗を恐れずに挑戦をしてもらいたい,ということなのだ。それが失敗に終わったとして,あの日,あの時,あの瞬間に燃やした心のエネルギーは,確実に我々の心と身体に蓄積されていく。タイミングもあるだろう。それは時には運とも呼ばれるだろう。
しかしその“挑戦”の向こう側にある達成感,充足感たるや。それはまさに,脳と心を激しく揺さぶるかのような甘美な蜜の味なのだ。
42歳を迎え,自ら動かねばどんどん“挑戦”の機会はその数を減らしていくことだろう。この連載だって“挑戦”だ。コーヒー事業だって,YouTubeだって,ゲーム配信だって,そのすべてが私にとって“挑戦”である。こんなたくさんの“挑戦”に囲まれて生きていられるこの人生に,今一度心からの感謝を捧げよう。
そしてそれがやはり,世界の平和のうえに成り立っていることは言うまでもないだろう。私の“挑戦”が間接的に,そして偶発的に世界の平和の一助となり,そしてまた世界の平和が私に新たなる“挑戦”を与えてくれる。そんな光り輝く円環がいつまでもいつまでも続くことを願っている。
っつーわけで皆さん,「ロマサガRS」をぜひぜひチェックしてみてくださいね!
さて,来月12月の頭には,いよいよ「マーベル・ライバルズ」(PC / PlayStation 5 / Xbox One)が発売される。正直,私は持てうる全エネルギーをこのゲームに捧げようと思っている。
「『マーベル・ライバルズ』の配信者といえば,ミートたけしっしょ!」
そう呼ばれる未来を現実のものにするため,私は頑張る! 楽しむ! おっと,これも立派な“挑戦”だと思わない? せっかくだから,みんなもガンガン“挑戦”してみてね!
■■ミートたけし / 川村 竜(ベーシスト,作編曲家 ,ストリーマー)■■ ベーシストとして国内外各所でライブやコンサートで演奏活動をしつつ,配信活動も活発に行っているミートたけしこと川村 竜さん。現在は主にYouTubeチャンネル「ミートたけし-MEAT TAKESHI-」とTwitchチャンネル「ミートたけしの『太くてニューゲーム』」で,雑談配信をしたりゲーム配信をしたりと大忙しの様子です。 |
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ロマンシング サガ リ・ユニバース
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ILLUSTRATION: TOMOMI KOBAYASHI
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