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AMD,2009年下半期のPC戦略説明会を開催。未発表CPUの投入公表や,新たなバッテリー駆動時間表示法の提案も
「Ultrathin」ノートPCに注力するAMD
未発表の「RS880M」搭載ノートを世界初公開
Sobon氏によると,AMDの考えるノートPC市場は,14インチ以上の液晶パネルを搭載した「Mainstream」(メインストリーム)と,厚さ1インチ(=25.4mm)以下を実現したUltrathinの2セグメントに分けられる。「AMDとしては,Ultrathinに時間と人的リソースを割いて最適化を進めている。Netbookを対象としてはいないが,それは,エンドユーザーが機能の充実を求めているからだ」(Sobon氏)。
従来,開発コードネーム「Congo」(コンゴ)と呼ばれていた(が,コンゴの政情などの理由から,最近ではそう呼ばれなくなっている)第2世代のUltrathinノートPCで,第1世代のUltrathinノートPCが持っていた市場も含め,広い価格帯に訴求していくという。「市場のスイートスポットは550〜800ドルくらいだろう」(同氏)。
とはいえ,この第2世代のUltrathinノートPCプラットフォームが狙う市場は,それだけに留まらない。Sobon氏は,MainstreamノートPCと,超小型もしくは一体型のデスクトップPCにも展開すると予告する。
●MainstreamノートPCに展開される「Tigris」
グラフィックスブランドは「ATI Mobility Radeon HD 4200」。Tigrisは,世界初のDirectX 10.1対応プラットフォームとして,Windows 7と連動する形で訴求される見通しだ。
世界初公開とされた,Tigrisプラットフォーム採用のMSI製ノートPC(写真中央)。Windows 7が動作していた |
そのデバイスマネージャ。「AMD Turion II Ultra Dual-Core Mobile M640」とATI Mobility Radeon HD 4200の搭載を確認できる |
●小型&一体型PC向けに,未発表CPUを多数投入
その市場で投入される予定とされたプロセッサのリストが,下のスライドになる。「Athlon II X4」や「Athlon II X4 energy efficient」,「Athlon II X3 energy efficient」「Athlon II X2 energy efficient」「Athlon II X2 ultra low power」「Athlon II ultra low power」といった,未発表のCPUがズラリと並んでいる点に注目してほしい。詳細は明らかにされなかったが,2009年後半とされている以上は,順次市場投入されるものと思われる。
アプリ実行時とアイドル時
携帯電話風のバッテリー駆動時間を提唱
Sobon氏は,米国でバッテリー駆動時間表示法のスタンダードとなっている「MobileMark 2007」を挙げて,「エンドユーザーは,PCでビデオを観たり,メールソフトとFacebookを同時に使ったりと,いろいろな作業をこなしている。それに対し,MobileMark 2007は,CPUの使用率が7%程度だったり,無線LANが無効化されていたりと,実際のユースケースと乖離がある」と指摘。そのうえで,「携帯電話の『連続通話時間』と『連続待ち受け時間』のような表示はできないだろうか?」と問いかけた。両方の値があれば,エンドユーザーは,「現実的なバッテリー駆動時間が,その二つの数値の間にあること」を理解できる,というわけである。
そこで,携帯電話における連続通話時間に相当する,「いろいろな作業をこなしている」ときの妥当な負荷状況を仮想的に作れるものとして,Sobon氏はHDビデオのスクリプトと,「3DMark06」を挙げる。CPUとGPUに適度な負荷がかかっており,PCがかなりヘビーに動いているときの指針になるからというのが,氏の主張だ。
そして,MobileMark 2007実行時と,HDビデオのスクリプトおよび3DMark06実行時で,Intel製プラットフォームとバッテリー駆動時間を比べた結果を示したのが,下のスライドになる。「低負荷時のバッテリー駆動時間は,確かに競合のほうが優れている。しかし,負荷がかかっているときは,ほぼ互角。AMDは,アイドル時,スリープ状態の最適化ではなく,今後もPCを使っているときの消費電力改善を図っていく」(Sobon氏)。
日本では,「JEITAバッテリ動作時間測定法」(Version 1.0)が主流だが,この点に関して,日本AMDでPCプラットフォーム・プロダクトマーケティング部 部長である土居憲太郎氏いわく「JEITAの会員でもあるノートPCメーカーに,今のルールを捨てて,AMDの提案を採用してもらうことは,現時点では考えていない」。ただし,小売店舗での表示については,今すぐではないとしながらも,交渉していく可能性を示唆していた。
以上,ハイエンド志向のPCゲーマーからすると,肩すかしもいいところだが,オンラインゲームなど,3D描画負荷の低いゲームタイトルをターゲットに,ノートPCや小型PCの購入を考えている人,とくに,Windows 7の登場に合わせてシステムを刷新したい人には,価値のある情報が多くもたらされた印象だ。未発表CPU群も,コストパフォーマンスや,消費電力の低さを重視する自作派ゲーマーにはなかなか興味深いだけに,製品の市場投入が順調に進むことを大いに期待したいところである。