テストレポート
静音を謳うMad Catz新作アーケードスティックの実力は? 気になる静音性をチェックするファーストインプレッション掲載
AFSVS SHは三和電子製の「静音ジョイスティックレバー&押しボタン」(関連記事)を組み込み,操作時の騒音を劇的に改善したという製品である。その静音効果がいかほどのものなのか,気になっている読者も少なくないだろう。
実際,格闘ゲームのメインストリームが家庭用にシフトしつつある昨今,アーケードスティックに静音性を求める声は,日増しに大きくなりつつある。とくに日本では都市部を中心として集合住宅住まいとなるプレイヤーが多いだけに,静音効果が高いのであれば,「周辺住民に迷惑をかけにくいアーケードスティック」として,かなりの注目を集めるのはまず間違いない。
上で紹介した「静音ジョイスティックレバー&押しボタン」が静音仕様であることは,1月に掲載したテストレポートでお伝えしているが,2012年夏の時点だとパーツの流通量が限定的で,また組み込みには改造が必要(もちろん無保証)など,一般のゲーマーが手を出すにはハードルが高い。
そういう意味で,初の「静音パーツ組み込み済み量産製品」として発表されたAFSVS SHには大いに期待できるのだが,その使い勝手と静音性はいかほどか。内部構造の写真と,実際に使ってみたムービーとを交え,ファーストインプレッション的にお伝えしてみたい。
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Team Mad Catz Arcade FightStick Versus Series SH(PS3用,型番:MCZJ-00024) メーカー:Mad Catz 問い合わせ先:[email protected] 価格:1万9800円(税込) |
Team Mad Catz Arcade FightStick Versus Series SH(Xbox 360用,型番:MCX-FS-SH-VSE) メーカー:Mad Catz 問い合わせ先:[email protected] 価格:1万9800円(税込) |
Mad Catz公式サイト
「STREET FIGHTER × 鉄拳 アーケードファイトスティック バーサスエディション」に準拠した基本仕様
まずはAFSVS SHの仕様を見ていこう。製品名に含まれる「Versus Series」という言葉から想像できるように本製品は,「STREET FIGHTER × 鉄拳 アーケードファイトスティック バーサスエディション」(以下,AFSVE)をベースとしている。そのため,ボタンレイアウトなど基本的な筐体デザインはAFSVEと共通だ。
具体的に挙げてみると,
- 主要8ボタンのレイアウトがアーケードの汎用筐体「VIEWLIX」に準拠している点
- [START][SELECT(BACK)]ボタンが筐体背面に配置されている点
- 筐体サイズが480(W)×300(D)×160(H)mmで,重量が3.3kgある点
- 2段階の連射設定やD-Pad/アナログスティックの切り替え機能を持つ点
- 本体背面部にケーブル収納スペースを用意する点
- Xbox 360版のみ本体正面にマイク入力端子を持つ点
は,AFSVEと完全に同じである。
では何が違うのかというと,それはもちろん静音パーツということになる。レバーとボタンが前出の「静音ジョイスティックレバー&押しボタン」に変更されているのだ。
また外見上の違いとしては,天板のデザインが,Mad Catzの新しいマーク――プロゲームチーム「Team Mad Catz」と同じ,4本の赤い爪痕の意匠――をあしらったシンプルなものに置き換えられていることが挙げられる。現在国内で流通しているMad Catz製アーケードスティックは,どれも特定タイトルとのタイアップモデルなので,ゲームによらないデザインは,本製品が国内初ということになるわけだ。イラストがないぶん,少々寂しいと感じる人がいるかもしれないが,これはこれで需要があるのではないだろうか。
肝心の静音性は?
さて,いよいよ肝心の静音性について見ていこう。といっても,これは下に掲載したムービーを見てもらったほうが分かりやすいと思うのだが,比較対象としたAFSVEと比べると,明らかにレバーのカチカチ音が軽減されているのが分かるだろう。ボタンのほうはやや差が出にくいが,やはり高音部分では差を感じられるはずだ。
「静音ジョイスティックレバー&押しボタン」のテストレポートで使ったムービーを下に再掲したが,それと“聞き比べ”てもらうと,AFSVS SHと,「静音ジョイスティックレバー&押しボタン」を組み込んだ「リアルアーケードPro. EX」との間に,静音性の違いはほとんどないことも分かるだろう。
要するにAFSVS SHというのは,「AFSVEに『静音ジョイスティックレバー&押しボタン』相当の三和電子製静音パーツを組み込んだ製品」以上でも以下でもない製品と考えられる。
実際,筆者がプレイした限り,操作感も先のテストレポートと変わらず。「多少の慣れが必要であるものの,実際のプレイに支障はない」という感じである。アーケードとまったく同じ操作感を求めるのでなければ,実用に十分堪えるというのが,AFSVS SHの操作性に関する結論となる。
一点残念だったのは,筐体レベルでの静音性への取り組みが見られなかったこと。せっかくの静音アーケードスティック製品なので,内部に吸音材が貼られていたりしないかと期待していたのだが,その点では肩すかしだった。ただ,ゲースとなる筐体がかなり頑丈なものなので,以前に筆者が自作したときと比べると,レバーとガイドの接触時に出る,いわゆるガコガコ音が減ったように感じられたことは,付け加えておきたい。
静音性への取り組みが本格的に始まった
筐体側からの静音へのアプローチなど,まだまだ改善の余地はあると思われるが,まずは静音性を謳った本格仕様の製品が登場したことを評価したい。静音パーツの入手や換装にハードルを感じつつも,なんとか静音性を確保したいと考えていた人なら,入手して損はない製品だ。
筆者としては,本製品が日本のコミュニティに向け開発された初のMad Catz製品であることにも,大きな価値を感じている。これまでのMad Catz製品,とりわけアーケードスティックは,アメリカのトーナメントコミュニティを背景に生まれ,改良が加えられてきた。[START][SELECT(BACK)]の背面配置などはその最たるもので,ゆえに日本のプレイヤーにとって若干違和感があるのも,仕方のないことなのだ。そのMad Catzが,日本のユーザーの声を取り込みに来たのだとすれば,今後の展開が本当に楽しみである。
また本稿では大きく取上げなかったが,1万9800円(税込)という価格も,実のところ,AFSVS SHの大きなトピックだ。なにせAFSVEの定価が2万3800円(税込)。「静音ジョイスティックレバー&押しボタン」一式がざっと7000円程度なので,AFSVS SHは非常に買い得感が高いのである。モニター販売としつつ,戦略的な価格を打ち出してくるあたりに,Mad Catzの「本気」を感じてしまうのは,きっと筆者だけではないはずだ。
Amazon.co.jpのPS3版AFSVS SH販売ページ
Amazon.co.jpのXbox 360版AFSVS SH販売ページ
※PS3版は2012年8月11日13時頃注文受付開始予定。Xbox 360版は未定Mad Catz日本語公式Webサイト
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