レビュー
絶妙過ぎる内容でプレイを中断するタイミングが見つからない! 巧 舟氏ディレクションの新感覚ミステリー「ゴースト トリック」を遊んでみた
「逆転裁判」シリーズを手がけたことで知られる巧氏が手がける新作は,はたしてどのようなものに仕上がったのか。ストーリー的なネタバレをできる限り避けて,その魅力を紹介していこう。
「ゴースト トリック」公式サイト
「…今夜。私の目の前でダレも死なせるつもりはない」
“トリツク”“アヤツル”“死の4分前にモドル”を駆使して
運命を“更新”せよ!
その過程で,シセルは,ヒロインのリンネ刑事をはじめ,さまざまな登場人物達と関わっていく。しかしタマシイは生きている彼らからは見えないし,話しかけることもできない。そこでシセルは,自分の持つ“死者のチカラ”を駆使してゲームを進めていくことになるのだ。
シセル |
リンネ |
カノン(右)とミサイル(左) |
この動作は,タッチペンで画面上の“トリツク”をタッチしてから,シセルのタマシイをスライド(またはLボタンを押したあとに十字キーで移動)し,モノのコアにとりつくというもの。スライドし続けることで,連続してテンポ良く移動できるため,操作していてかなり気持ちいい。
ただし,もともとコアのないモノだったり,コアとコアの距離がシセルのタマシイの移動可能範囲を超えていたりする場合には移動できない。
そこで今度は,とりついたモノを“アヤツル”ことが必要となる。例えば,とりついたドアをあやつり,開くとしよう。するとドアのコアが右から左に移動し,その先にあるモノのコアとの距離が縮まって,さらなる移動が可能となるのだ。
また本タイトルのキモとなるのが,“トリツク”と“アヤツル”を駆使して,複数のモノそれぞれの動作を組み合わせていくパズル部分だ。
組み合わせはタイミングに応じて予想外の連鎖を生み,意外な道を開いていく。その過程は,テレビ番組「ピタゴラスイッチ」の「ピタゴラ装置」と呼ばれるからくり装置(ルーブ・ゴールドバーグ・マシン),PCゲームでいうなら「インクレディブル・マシーン」といえば,イメージしやすくなるかもしれない。
また,通常パートと違って,“死の4分前にモドル”を使った場合は制限時間が設けられる。モタモタしていると時間切れになってしまうが,ゲームオーバーではないので,何度でも4分前から再挑戦できる。
また,制限時間内でいろいろ試行錯誤していると,運命の流れが変わり「運命更新」と表示されることがある。その場合は,運命が更新された時点から再スタートすることも可能だ。
筆者は「ゴースト トリック」を発売日に購入したのだが,実はもうエンディングを見てしまった。これはボリュームが少ない,あるいはゲームの手応えが薄いという意味ではない。
むしろテンポよくストーリーが進み過ぎて,その内容が面白いがゆえに中断するタイミングが見つからず,寝る間も惜しんでプレイしてしまったからである。
本タイトルはミステリー小説でいえば長編にあたり,ストーリーは要所で章ごとに区切られている。しかし,それぞれの章の終わり方が実にあとを引く絶妙な内容となっており,どうしても続きを見たくなってしまうのだ。
プレイするとよく分かるのだが,巧氏の作品らしさというか,ロジックで固められた“逆説”的なストーリー展開,それを感じさせないテンポのいい文章や軽妙なセリフ回しが,ゲームにのめり込ませてくれる。
また,“新しい世界観”を提示するために初代「逆転裁判」以来,久しぶりに巧氏のタイトルに起用された杉森雅和氏の楽曲も,ミステリーらしく二転三転する展開を盛り上げていく。
本作に登場するキャラクター達は,ニンテンドーDSとは思えないほど滑らかな動きを見せてくれる。このことについては,2009年の東京ゲームショウにおけるステージイベントで話題に上ったのだが,高精細のレンダリングモデルで動きを作り,それをパターンとして取り込んだものをニンテンドーDS上で再生するという,非常に手の込んだものとなっているそうだ。
またパズルにしても,ゲームの中盤以降,モノにとりつく順序や,“トリツク”と“アヤツル”を切り替えるタイミングがどんどんシビアになっていくのだが,適切なタイミングで的確なヒントが与えられるので,試行錯誤を重ねることがそれほど苦にならない。
むしろ難解なパズルに隠されたロジックを逆に辿り,解法を見つけたときの「なるほど!」という爽快感のほうが大きいくらいだ。
軽快なテキストで綴られる本格ミステリー小説,ロジックを読み解くパズルゲーム,“舞台”を意識した画面構成。それぞれの要素は古くからあるものの,それを独自のセンスでまとめあげ,一つの新たな感覚のゲームとして昇華させた巧氏とカプコンの開発チームの注力度合いが,本タイトルからはビンビンに伝わってくるのである。
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ゴースト トリック
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