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「ニーア ゲシュタルト/レプリカント」のピアノアレンジCD発売記念イベント開催。制作秘話などが語られたトークショーの模様をお届け
「ピアノ・コレクションズ ニーア ゲシュタルト&レプリカント」は,「ニーア ゲシュタルト」「ニーア レプリカント」のサウンドトラックをピアノアレンジした楽曲を収録したアルバムだ。会場では,ゲームの楽曲制作および本アルバムのアレンジを手がけたモナカの岡部啓一氏と帆足圭吾氏,作曲家の谷岡久美氏が生演奏を披露したほか,同メンバーにゲーム本編のディレクターを務めたヨコオタロウ氏を交えてのトークショーも開催された。本稿では,そのトークショーの模様を中心にお伝えしよう。
イベントの司会を務めたのは,ゲーム本編でエミール役を演じた声優の門脇舞以さん。実は,このイベントが開催されることを知った当初,門脇さんはプライベートで参加するつもりだったとか。あとから司会を受けることが決定し,驚くと共に光栄に感じたという。
トークショーで岡部氏は,楽曲の制作を始めたのが2008年頃だったことを明かし,作曲のほとんどを岡部氏と帆足氏,そしてギター担当の3人で行ったと話す。そして2010年にゲーム本編が発売され,それから2年近くも経った今,こうしてイベントが催されるとは思ってもみなかったと,岡部氏は感慨深げにコメントした。
帆足氏は,自身が演奏した楽曲「エミール」について,音数が少なくメロディが綺麗に聴こえるので,ピアノにピッタリの曲であると説明。そこに岡部氏が,ピアノアレンジを行う楽曲を選ぶにあたり,“アレンジを変えても曲の良さが残る”メロディのしっかりしたものを主体に選んだと付け加える。
楽曲制作秘話をテーマにしたトークでは,ヨコオ氏と岡部氏が学生時代からの友人であり,それが縁で,岡部氏がニーアの試作段階から音楽的な演出にも深く関わっていたことが明かされた。ヨコオ氏は「負担の大きくなる音楽的な実験をほかの作曲家に依頼するわけにはいかない」ということで,知人の岡部氏に依頼したと真相を語る。実際,今回のヨコオ氏のオーダーは,通常のゲーム楽曲制作の手順とは異なり,終盤に入ってイメージが固まるまで手探りが続いていたと岡部氏は話す。
なお,ヨコオ氏から依頼を受けた当時の岡部氏は,もうゲーム音楽制作の仕事を引退するつもりだったとのことで,最終作となるニーアには全力で取り組んだという。岡部氏は,ゲーム本編発売後,サウンドトラックだけでなく何枚ものアレンジアルバムがリリースされ,こうしてイベントまで開催されるとは夢にも思っていなかったと感想を述べ,ニーアのファンと尽力したスタッフに感謝の意を示した。
ちなみに,もともとニーアの楽曲制作には携わっていなかった谷岡氏をアレンジャーとして起用した理由について,生演奏におけるダイナミックレンジの広さ,パワーと繊細さの共存があったからと,岡部氏は説明する。
また谷岡氏は,今回のアルバムでは,自身が演奏する楽曲以外の収録にも立ち会っていたそうだ。アレンジャーの一人である甲田雅人氏の楽曲収録に見学に行った時は,甲田氏本人は自身が演奏すると思っておらず,急遽,その場にいた谷岡氏が演奏することになるというハプニングもあったという。谷岡氏は,甲田氏の楽曲を演奏することに全力で集中したため,そのあとの自身の楽曲より良い出来になったのではないかと話していた。
トークの話題は,帆足氏の書く楽譜にもおよんだ。岡部氏と谷岡氏いわく,帆足氏の楽譜は「このあとキラキラ」や「いい感じで」といった文字ばかりが並んでいるとのことで,収録現場では「じゃあ次は,ここの“キラキラ”で行こうか」といった会話が飛び交っていたそうだ。ちなみにヨコオ氏は,打ち合わせなどで音楽の専門用語を話す帆足氏について「そのときだけ,頭が良さそうに見えた」と,フォローになっているのかどうか分からないコメントをしていた。
制作秘話が語られたあと,トークショーは事前に寄せられた質問に登壇者が答えるコーナーに移った。
「思い入れの強い曲はありますか? その曲にまつわるエピソードなどもお聞かせください」という質問には,岡部氏が「イニシエノウタ」を挙げていた。この楽曲は,とある演出でモーションキャプチャー作業に合わせて使用するため,早く仕上げる必要があったという。仕上がったゲーム本編では表示が小さ過ぎて演出がよく分からないことになっているとのことだが,それでも「いろんな意味で印象深い」と岡部氏は語る。
帆足氏は,ゲーム楽曲の制作はニーアがほぼ初めてだったとのことで,どの曲も印象に残っていると話す。とくに,岡部氏から「クソ曲だから全部作り直して」とリテイクを出された時は,寝込む勢いだったそうだ。
なお谷岡氏は,アレンジCDで自身が演奏した「オバアチャン」を挙げた。
「最初にバシっと決まった曲,また,なかなかオーケーが出なかった曲はなんですか?」という質問には,「基本的にはすんなり通った」と岡部氏。しかし「青イ鳥」だけは,ヨコオ氏から何度もリテイクを出されたという。その理由を,ヨコオ氏は,「パッとしない曲だな,と。喫茶店のBGMみたいだから」と説明していた。
「ピアノ・コレクションズに編曲参加されていますが,プレッシャーはありませんでしたか? どういったことに注力して編曲されましたか?」という質問に対して,谷岡氏は,まず自身でCDを買うくらい好きな楽曲の仕事を依頼されたのは本当に嬉しかったと答えた。その一方で,世界観が完全に出来上がっている曲ばかりなので,どうしようとも考えたという。谷岡氏は「原曲を崩すアレンジはしない」とのことで,具体的な作業としては,各曲を聴き返しながらゲームのシチュエーションを思い起こし,イメージを固めていったそうだ。また,アレンジした曲を聴いた岡部氏や帆足氏がどんな感想を抱くのかも,非常に気になっていたとのことである。
同じく谷岡氏に対する「曲作りの際に心がけていることなどありますか? また,曲の構想を練る時などはどんな風にしていますか?」という質問には,ヨコオ氏の意図もあってニーアでは“ゲームらしい曲作り”をせず,ある意味で好き勝手にやったと答える。また谷岡氏は,世界観や,依頼者がどういう曲を望んているかを重視していると話していた。
「ピアノにアレンジするのが難しかった曲はありますか? 逆にピアノにしたらもっと素敵になった曲はありますか?」という質問には,谷岡氏が,もともとピアノを前提にした曲ではないので難しかったと答え,とくに今回は自身の曲ではないため,曲の雰囲気を壊さないように配慮したと話す。
一方の帆足氏は,やり過ぎにならないよう,どうやって違いを出すかという部分に頭を悩ませたという。最終的にはシンプルな方向性に落ち着いたが,そこにたどり着くまでにはかなり時間がかかったそうだ。
「ピアノアレンジすることで,ご自身の印象が変わった曲はありますか?」という質問には,帆足氏も谷岡氏もどれもイメージが変わったが,とくに甲田氏のアレンジ曲について「ガラッと印象が変わった」と感想を述べる。
また谷岡氏は,収録現場で帆足氏が即興のアレンジを施しているのを見て,自身ではあまり使わない手法なので,気づかされることが多かったと話していた。
最後の質問は,ニーアのプロデューサーである齊藤陽介氏から出た「ヨコオタロウとは何者なのか?」というもの。そこでヨコオ氏は,あらためてニーアのディレクションを手がけたと自己紹介。またニーアの企画がなかなか通らず,試作期間が1年近く続いていたことを明かし,その期間中ずっと聴いていた砂の神殿の曲を聴くと,今でも憂鬱になると話す。しかし一方で,プロデューサーとして尽力してくれた齊藤氏と,ニーアを支えてくれたファンに感謝を述べた。
そしてアンコール演奏の前には,なんと,ここまで音声のみの出演だったヨコオ氏も登壇。イベント会場となった新宿アイランドホールが,ニーアのモーションキャプチャー時に使用したスタジオであることを明かすと共に,あらためてイベントが開催されたことについて,スタッフと来場者に感謝の言葉を述べた。イベントは,帆足氏による「魔王」の演奏で締められた。
■セットリスト
1. イニシエノウタ(演奏:帆足圭吾氏)
2. エミール(演奏:帆足圭吾氏)
3. 光ノ風吹ク丘(演奏:谷岡久美氏)
4. 掟ニ囚ワレシ神(演奏:谷岡久美氏)
5. オバアチャン(演奏:谷岡久美氏)
6. カイネ(演奏:帆足圭吾氏)
アンコール
1. ヨナ(演奏:岡部啓一氏)
2. 魔王(演奏:帆足圭吾氏)
「ニーア ゲシュタルト/レプリカント」公式サイト
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ニーア ゲシュタルト
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