レビュー
あまりにも強烈な世界観/登場人物の魅力だけでなく,アクションRPGとしてのクオリティにも注目
ニーア レプリカント
スクウェア・エニックスは4月22日,PlayStation 3用ソフト「ニーア レプリカント」を発売した。本作は2003年にPlayStation 2用ソフトとして発売された伝説の怪作,「ドラッグ オン ドラグーン」(以下,DoD)の開発を手がけたキャビアが制作するアクションRPG。死の病“黒文病”におかされた妹「ヨナ」を救うため,主人公「ニーア」は“深淵ナル叡智ノ書物”「白の書」を伴い,マモノとの死闘に身を投じていく。
なお,Xbox 360用ソフト「ニーア ゲシュタルト」は,ニーアの設定やヨナとの関係,音声言語などが異なるが,ゲーム内容は基本的に同じだ。本稿では,PS3「ニーア レプリカント」でのプレイをもとに,同作の魅力を紹介していく。
「ニーア レプリカント/ゲシュタルト」公式サイト
今なお多くのファンに愛される伝説のダークファンタジー
「DoD」を生み出したスタッフによる待望の最新作
それもそのはず。実は「DoD」と「ニーア レプリカント」の世界観には繋がりがあり,本作はファンが愛を込めて“マルチバッドエンディングゲーム”と称している「DoD」の中でも,最悪の結末と悪名高い“新宿エンド”後の世界が舞台となっているのである。
「DoD」を知らない人のために補足しておくと,新宿エンドは,ほか四つのエンディング制覇&全武器コンプリートという非常に困難な条件をクリアすることで見られる特殊なエンディングだ。数々の苦難を乗り越えた結果,画面に映し出された主人公達を見て放心状態になったプレイヤーは多いだろう。
こういう書き方をすると,完全に「DoD」の続編なのかと思われそうだが,あくまで裏設定であり,実際のところは熱心なファンならピンとくる程度にしか,世界観の繋がりは臭わせていない。もちろん「DoD」を知っているほうが色々な小ネタを楽しめるが,同作をプレイしていないプレイヤーでもまったく問題なく物語に入り込めるので,その点に関しては安心してほしい。
ストレスの無い戦闘システムと
個性豊か“すぎる”仲間たち
本作では□,△ボタンに武器攻撃が割り当てられており,防御,回避,魔法はR1/R2/L1/L2のそれぞれに,好きなように設定できる。基本的には戦う相手によって,セットする魔法を適宜変更していくのがオススメだが,防御と回避を完全に捨て,すべてのキーに魔法をセットする攻撃特化のプレイスタイルだってアリだ。ちなみに筆者は防御を捨て,回避に徹しながら常に3種類の魔法を使い分けられるように設定している。
特筆すべきは,武器攻撃から魔法への切り替えが非常にスムーズな点だ。多数の敵との激しい戦闘の中で,流れるように攻撃と魔法を連携させて戦うことができる。戦闘に関してはストレスがまったくないと言っても過言ではないだろう。
また,本作には一緒に戦ってくれる仲間も存在する。半陰陽(両性具有)の双剣使い「カイネ」と,強大な魔力を操る異形「実験兵器7号」。どちらも一癖も二癖もある尖ったキャラクターで,カイネは非常に口が悪く戦闘中に放送禁止用語を連発するし,実験兵器7号はとても仲間キャラクターとは思えない不気味なビジュアルをしている。この辺の設定は「さすが『DoD』スタッフ……」という感じだ。
仲間にはメニュー画面から簡単な命令を出すことが可能だが,基本的には自動で戦闘する。使用する技や魔法は一切指定できないので,ダメージソースとしてはあまり期待できないが,その分何度倒されても,しばらくすれば復活するようになっているので,サポート役としては優秀だ。
言葉を力に変える独特の強化システム
また,“ワード”という独特の強化システムについても説明しておこう。敵を倒すことで稀に獲得できるワードは,魔法/武器/防御/回避のそれぞれに割り当てることで,さまざまな付加効果を得ることができる。例えば武器なら,「煉獄の理と」+百獣の剣+「ハ,絶望ノ淵ニ立ツベシ」のように,武器名の前と後ろにセット可能だ。この場合は,「煉獄の理と」が持つ“特殊効果をLv5にする”という付加効果が,“武器に混乱効果を付加する”「ハ,絶望ノ淵ニ立ツベシ」と合わさることによって,“混乱効果Lv5”を持つ百獣の剣が完成するというわけである。そのほかにもステータスブースト系や,獲得経験値,アイテムドロップ率をアップするようなワードもあるので,状況に応じて,武器や魔法との相性も考えてセットしていくといい。
他ジャンルのネタを大胆に活用
欲張りな演出が物語を盛り上げる
「アクションRPG」というジャンルにとらわれない演出の数々も本作の魅力。戦闘に弾幕シューティングの要素を取り込んでいるのも興味深いし,謎解きなどでもカメラ視点などを上手く利用することでプレイヤーに予想外の驚きを与えてくれる。
キャラクターを真横から眺める2Dアクションゲームのような場面もあれば,死角の多い俯瞰視点で不気味な洋館を探索するという,ホラーアドベンチャー風の謎解きが始まってしまったりもするのだ。
かつて新宿でのラスボス戦で,何の前触れも無しに超高難度の音ゲーをプレイヤーに強いた「DoD」スタッフらしい大胆な演出だといえる。ゲームマニアを唸らせる遊び心が満載だが,本作ではそのどれもが出オチではなく,ちゃんと物語やゲーム展開を盛り上げる要素として機能しているのが素晴らしい。
そのほかにも,素材採取や魚釣り,農作物の栽培など,寄り道要素は充実している。とはいえ,ストーリー展開が本当に気になるゲームなので,それらを本格的に楽しむのは,2周目以降になるという人が多そうだ。
また,細かいところでは音楽の素晴らしさについても触れておきたい。本作のBGMのほとんどはボーカル曲になっており,その歌詞にはゲーム内の架空の言語が使われている。全体的に物悲しさを感じさせるはかなげな曲が多いが,そのどれもが何とも耳に心地良く,かつゲームの雰囲気と完璧にマッチしており,プレイヤーを「ニーア レプリカント」の世界に深く没入させてくれるのだ。
ちなみに本作はマルチエンディング方式で,周回プレイが楽しめる作りになっている。クリアすることで新たなエピソードがプレイ可能になったりもするので,ぜひともやり込みたいところだ。
……マルチエンディングと聞いて,「DoD」経験者の方々は嫌な予感がしたかもしれないが,安心してほしい。同作のような,“どこまでいっても絶望しかない”展開ではないとだけ,フォローしておこう(絶望は相変わらず常につきまとっているが)。
最後まで新鮮な気持ちで楽しめる傑作
欲をいうなら,ワードによる強化システムが面白かっただけに,ワードの効果が固定されているのが少々残念だ。コンセプトが個性的なだけに,多少のランダム要素でもあれば,さらにやり込める作品になっていたと思う。
また,原稿中で何度も触れているとおり,「DoD」よりは遥かにマイルドだが,やはりシナリオにはダークな部分も多いので,その辺は好き嫌いが分かれるところかもしれない。しかし,シリアスな物語の合間に見せるコミカルな部分や,キャラクターの関係が非常に面白いので,苦手意識を持たず,ぜひともプレイしてほしい作品だ。「心が動く」という意味においては,本作は本当に“感動”できるタイトルである。
ちなみに今後は,DLCの配信も予定されているようだ。2周目,3周目,4周目……と繰り返し楽しめる作品になっているだけに,こういった拡張要素は非常にうれしいところ。ゲーム性を拡張するものなのか,ストーリーを補完するものなのかは不明だが,本作をプレイすれば,DLCの配信が待ち遠しくなること請け合いだ。本編をすでにクリア済みの人も,周回プレイで世界観/物語を掘り下げつつ,DLCの配信を楽しみに待ってみよう。
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