インタビュー
凝縮されたリアルがここにある――スーパーなプロデューサーが語る「スーパーストリートファイターIV」の原点とは。カプコン小野P,スーパーハイテンションインタビュー
「こちら」でも触れているとおり,4Gamerでは,本作のプロデューサー 小野義徳氏にインタビューする機会を得た。本作の新要素から,果ては現在の格闘ゲームシーンに至るまで,興味深い話が次々と飛び出す,かなり刺激的なインタビューとなっているので,その模様をさっそくお伝えしていこう。
なお時間にすれば1時間半程度のものだったのだが,サービス精神旺盛な氏が,ノリノリで語る内容は充実しており,可能な限りそれらを網羅して掲載していく。そのためかなり長くなってしまっているが,これまで語られたことのない新情報もちらほら混じっているので,格闘ゲーム好きの読者は試合中の集中力をもって,本稿に目を通していただきたい。
なお,本作に搭載されるネットワークモードについての詳細は,以下の記事に詳しい。こちらもあわせて参照してほしい。
自宅をゲームセンターに変える「スーパーストリートファイターIV」の「ネットワークモード」。その魅力をカプコン小野プロデューサーに聞いてきた
「スーパーストリートファイターIV」公式サイト
タイトルの略称表記
- 「ストリートファイターIV」=「ストIV」
- 「スーパーストリートファイターIV」=「スパIV」
- 「ストリートファイターII'(ダッシュ)」=「ストII'(ダッシュ)」
- 「スーパーストリートファイターII X」=「スパII X」
- 「ストリートファイターIII 3rd strike」=「ストIII 3rd」
- 「ストリートファイターZERO3」=「ZERO3」
- 「ストII」シリーズ
以下のタイトルの総称。「ストリートファイターII」「ストリートファイターII'(ダッシュ)」「ストリートファイターII'(ダッシュ)TURBO」「スーパーストリートファイターII」「スーパーストリートファイターII X」「ハイパーストリートファイターII」
- 「ストIII」シリーズ
以下のタイトルの総称。「ストリートファイターIII」「ストリートファイターIII 2nd IMPACT」「ストリートファイターIII 3rd strike」
- 「ストZERO」シリーズ
以下のタイトルの総称。「ストリートファイターZERO」「ストリートファイターZERO2」「ストリートファイターZERO2 ALPHA」「ストリートファイターZERO2'(ダッシュ)」「ストリートファイターZERO3」「ストリートファイターZERO3↑」「ストリートファイターZERO3↑↑」
- 「ストリートファイター」シリーズ
上記全ての総称
前作への要望から実現した,10名の新キャラクター達
●「ジュリ」――二十年後まで残ってほしい。それゆえのヒールキャラ
本日はよろしくお願いします。前回は一番のウリであるというネットワークモードについて詳しくお聞きしたので,今回はその他の新要素についてうかがっていきたいと思います。まずはやっぱり新キャラクターについて。キャッチーなところで,ひとり目は「ジュリ」からお願いしたいと思います。
小野義徳氏(以下,小野氏):
ジュリは,前作「ストリートファイターIV」のコンシューマ版を発表し終えたところからスタートしているキャラクターです。前回に含まれた要素をすべて発表した後に,海の向こうの韓国からすごい量のラブコールが届きまして。要は「韓国人キャラが入ってないじゃないか!」ってことなんですが,署名運動まで起こるほどでした。考えてみると,他社さんのタイトルだとテコンドーキャラって普通に居るんですが,歴代のカプコンタイトルでは居なかったんですよね。
4Gamer:
言われてみれば,確かに居ないですね。
小野氏:
それなら今回入れてみよう。でも普通のキャラクターにしてしまうのは勿体ない。十年後でも二十年後でも,将来ストリートファイターが「V」とか「VI」とかになったときにも残ってるキャラクターにしたかったので,設定には気を遣いました。で,悪役にしてみようと。
ヒールキャラとして,ということですか。
小野氏:
元々「ストリートファイター」シリーズって風来坊的なキャラクターが多くて,完全な悪役といったらベガと,前作のセスくらいなんです。ここに女性キャラクターが加わるのは,将来の存在価値としてもアリじゃないかと。それで,とにかく血も涙もないキャラっていう設定と,テコンドーをベースに足技を使うスピードキャラというコンセプトが生まれました。韓国の人から怒られるんじゃないかって不安もありましたが,そこは説明すれば分かってもらえるだろうと(笑)。
4Gamer:
性能的には,どうなんでしょうか。かなりのスピードキャラのように見受けられますが。
小野氏:
「ストリートファイター」シリーズの中では,スピードキャラというのは比較的初心者向きで,中級者にステップアップしやすいタイプなんです。ジュリはスピードも速いし,フェイロンの烈火拳みたいに,当たったのを見てから入力できる技を持っているので,操作していて気持ちのいい,取っつきやすいキャラクターですね。
4Gamer:
ウルトラコンボIの「風水エンジン」の効果が気になってるんですが,あれは「ストZEROシリーズ」のオリジナルコンボ※(以下,オリコン)と考えていいんのでしょうか。
小野氏:
ほぼオリコンですね。普段繋がらない技が繋がるようになるので,これも気持ちいいと思いますよ。そういう意味では「ストZERO」世代の人達にも楽しんでもらえるキャラクターですね。
4Gamer:
ジュリの技表を拝見しましたが,先ほどのオリコンに似たウルトラコンボ※(以下,ウルコン)や,当て身※系の技があったりと,初心者向けにしてはトリッキーというか,難しそうな印象を受けますが。
対象となるプレイヤーのレンジ自体は広いんですよ。今カプコンの社内でトーナメントをやると,だいたいジュリが勝ち残ります。もちろんジュリ対策の研究が進んでないのもあるんですが,だから最初のスタートダッシュではジュリは強いハズです。でも多分一か月もするとボロが出始める。
4Gamer:
つまり壁が早めに来ると?
小野氏:
来ますね。それを乗り越えるにはプレイヤーの皆さんの研究が必要になるハズです。ただそこまでは辿り着くのは,ジュリが一番早いと思います。
4Gamer:
その壁を超えるのに,当て身であるとか,ウルコンの研究が必要になってくるわけですね。
小野氏:
そういうことです。
●「ハカン」――どこまでも「ストIIらしさ」を追求した上級者向けキャラクター
ではもう一人の新規キャラクター「ハカン」についてはいかがでしょうか。ビジュアル的にもかなりインパクトがありますが。
小野氏:
ハカンはいわゆる「ストII」っぽい,泥臭さを目指したキャラクターです。前作の新キャラ,「C.ヴァイパー」や「ルーファス」,「エル・フォルテ」,それから「アベル」って,ビジュアル的には今風というか,入りやすいところがありますよね。彼らは僕らからすれば,確かに「ストリートファイターシリーズ」のキャラではあるんですが,じゃあ「ストII」に登場するキャラかというと,そうではない。
4Gamer:
発表当初は,確かに少し違和感を感じたように思います。
小野氏:
なんでそういうチョイスをしたかというと,「ストIV」で掲げた原点回帰,同窓会っていうテーマを考えたとき,過去を知らない人にとっては,まったく入る余地がなくなってしまうんじゃないか,という懸念があったからなんです。
今回が初プレイという人は,旧作のキャラクターは選びにくいかもしれませんね。
小野氏:
でも今回「スーパー」となれば,「ストIIシリーズ」の同窓会という“ハガキ”はとりあえず一回まわっているはずなので。それじゃあ「スパII X」に居てもおかしくない,泥臭いキャラで行こうと。ブランカとかダルシムとか,あの辺のラインって,やっぱり「ストIIシリーズ」の危うい面白さだと思うんですよ。今でこそ伊予くん※が使うダルシムって,めちゃくちゃカッコイイですけど,それでも相手捕まえたら「ヨガ! ヨガ!」ですよ(笑)。決して「うわっ,カッコいい!」って感じじゃないですよね。
4Gamer:
確かに(笑)
小野氏:
それで開発スタッフにまず僕が指示したのが,世界中の格闘技……に限らず,とにかく面白い映像を集めてくれということでした。それでまぁ,いろいろ動物と戦うやつとか,ダチョウと競争するやつだとか,YouTubeなんかで集めてもらった中に,このオイルレスリング――ヤール・ギュレシュがありました。それを見て「あ,これはイケるな」と。
4Gamer:
確かトルコの格闘技ですよね。
小野氏:
すごいシュールですよ(笑)。オッサンがオイルを塗ってステージに上がって,相手を転がすためにつかみ合って,ツルツルすべる。でも,その二人は本気なわけで。それで完成したのが,最初に公開したあのハカンのプロモーションムービーです。
4Gamer:
公開後のユーザーの反応はいかがでしたか? かなり話題になったように思いますが。
ムービーがあまりに強烈すぎて(笑)。キャラクターとしての性能がどうとかいう前に,「カプコンがやりやがった!」っていう反応が,今のところ一番大きいですね。ちょうど今週末の全国大会[1]の会場で,日本のプレイヤーの皆さんに初めて触っていただけます。なのでそれからが本番かな,と。期待半分と不安半分っていうのが,今の心境です。
4Gamer:
ちなみにトルコから何か言われたりとかは……。
小野氏:
実はまもなくヨーロッパへの僕のメディアツアーがありまして,トルコには直接入らないんですけど,一番近い所で多分スイスかドイツに行くんです。そこで,お隣の国の反応ってどうですかって,聞いてみようと思ってるんです。もう入国禁止レベルの雰囲気になってるかも(笑)。
4Gamer:
それはすごく楽しみです(笑)。ちなみにプレイフィールとしては,ハカンは上級者向けってことでいいんでしょうか。特殊な技が多そうですが。
上級者向けですね。今回登場する「ストIII」からの追加キャラクターと,このハカンは,中級者から上が対象になります。もし久々に格闘ゲームをやろうって人がハカンを選んだら,「ストII」で初めてザンギエフを触ったときと同じような感覚になるんじゃないでしょうか。今でこそザンギエフは動かし方のテンプレートができていて,ステップアップしやすいキャラですが,ハカンの場合はさらにオイルを振るっていう予備動作があるので,さらに難しい。
4Gamer:
通常の読み合いに,もうワンステップ加わると。
小野氏:
間合いを考えて技を出すというシリーズ本来の駆け引きに,さらにその準備が必要になります。そうしておいて,相手の隙にその準備したものを的確に使っていく必要がある。もちろん従来の戦術的な考え方も同時に要求されるので,ビジュアルだけでなく,その立ち位置も含めて,「ストII」らしさが強く出たキャラクターに仕上がってますよ。
●過去のシリーズから復活を遂げた8名のキャラクター達
4Gamer:
過去のシリーズからの追加キャラについてもお聞きます。今回かなり多いですよね。これらのキャラクターはどういう基準で選ばれたんでしょうか。
小野氏:
これは先ほどのジュリの場合と同じで,前作が発表された直後から,なんでコイツを出さないんだっていう要望が,全世界から寄せられまして。なのでキャラクターについては要望の多かった中から,ダイアグラム※的に上手くハマりそうなものを入れていこうということになりました。
それでまずコーディーとガイが決まり,それからこれは僕らとしては意外だったんですが,次にアドンという声が多かったんです。
コーディー |
ガイ |
個人的にもアドンは意外でした。
小野氏:
「ストZERO」の時のアドンってかなり強キャラで,そのイメージが鮮明だったのかもしれません。アドンにやられたっていう。そこでやっぱ声が多かったのかなあ。
4Gamer:
アドンの要望は,主にどの地域からが多かったですか?
小野氏:
アドンは全世界的に要望が多かったです。日本とアメリカでも同じぐらい。で,アドンの追加を発表したときは,今度は逆に「アドンかよ」って声もめちゃめちゃ多かった(笑)。でも「アドンかよ」って言われるぐらい印象は強く残ってるわけで,決してバーディーやソドムじゃなかったわけです。そう考えると,やっぱり選ばれるべくして選ばれたのかな,と。
4Gamer:
「ストIIIシリーズ」からのキャラクターはどうでしょうか。先ほど上級者向けという話が出ましたが。
「ストIIIシリーズ」のキャラについては,完全にアメリカからの声が強かったですね。日本からの声だともう完全に僕へのバッシングで。「お前ストIIIスタッフのクセに,無かったことにするつもりか!」と(笑)。
4Gamer:
そんな馬鹿な(笑)。しかしなんでこの3人? とは思いました。
小野氏:
ダッドリーは,やっぱり「ストIII」を象徴するキャラクターの一人ですよね。それからいぶきも,キャッチーなキャラとしてアリだろう。で,次のまことですけど,僕らはこれもアドンと同じように驚いたんです。まことって「ストIII 3rd」で登場した頃からテクニカルなキャラじゃないですか。扱うのも難しいし,戦術の組み立てかたも特殊。でも「ストIV」に入れる余地は十分にある。
4Gamer:
しかしブロッキング※は今回無いですよね。
小野氏:
もちろん「ストIII」キャラを「ストIV」に移しかえる時に,障壁となったのはブロッキングの存在です。やっぱりブロッキングに始まってブロッキングに終わるのが「ストIII」なので。では「ストIII」のキャラから,ブロッキングを抜いてみるとどうなるんだってところから,まず組み立て始めました。
ダッドリー |
いぶき |
とりあえず動かせるモデルを作ってみたと。
小野氏:
そうです。それでとりあえず通常技の使い勝手,手触り感については,「IV」に落としこめることが分かった。そこでブロッキングを復活させるのかと再考したときに,僕らの中でストップがかかったんです。それでは意味がないと。
4Gamer:
完全に「ストIII」になってしまいますね。
小野氏:
じゃあ「ストIII」のキャラを選んでくれる人ってどんな人かっていうと,例え一時期離れていたとしても,彼らは格闘ゲームの上級者のハズです。きっと僕らが思っている以上に,新しいシステム――セービング※なんかを使いこなしてくれるに違いない。じゃあ,そこに連結できる技を用意してあげれば,この「III」のキャラ達は,「III」の味を残しつつ,ちゃんと「IV」のキャラになれる。そう気づいたんです。
4Gamer:
なるほど。そういう意味でも上級者向けというわけですか。
小野氏:
だから彼らについては,入門編からステップアップして来た人が触るというよりは,「ストIII」のプレイヤーへ向けたものと考えてもらっていいと思います。「ブロッキングねーなぁ」と言いつつも,「ストIIIプレイヤーの実力なめんなよ」って競い合ってもらう。そんな風景が僕らの期待するところですね。
4Gamer:
でもそれでいうと「ストZEROシリーズ」も,「ストIIIシリーズ」に負けず劣らず,やり込んだプレイヤーは多いと思うのですが。
小野氏:
「ストZEROシリーズ」からのキャラクターは,前作のコンシューマ版でも入ってきているので,その延長上ですね。キャラクターの思い出ベースで選んでもらっていいんじゃないかと。もちろんゲームの速度感は「IV」は「ZERO」より遅いので,戦術の組み立て方なんかは変わってきますけど。
4Gamer:
研究の余地はちゃんと残されているわけですね。
小野氏:
今回ウルコンを二つ入れた理由の一つがそこにあるんですが,「ZERO」っぽい使い方ができるものが増えてます。先ほどのジュリのオリコンのくだりもそうですね。
4Gamer:
T.ホークとディージェイについてはどうですか?
小野氏:
これはもう前作で入れられなかった二人なので。T.ホークなんか当初最強説が出るぐらい強いですよ。こんな自由自在に画面中をうろうろされたら,もう逃げ場がない(笑)。危ないと思って固まってると,すぐレイジングタイフーンで連れて行かれるし。
T.ホーク |
ディージェイ |
4Gamer:
恐ろしい(笑)。しかし改めてキャラクターセレクト画面を見ると,ずいぶんキャラクターが増えましたね。
小野氏:
全部で35キャラですから(笑)
4Gamer:
多すぎってことはないですか? 一プレイヤーとしては,正直キャラを覚えて対策を練るのがしんどいレベルなんですが。
小野氏:
はい,もうバランスを取るのが大変でした(笑) 正直なところ,僕らがメインターゲットと考えているR35世代,90年初期の格闘ゲーム全盛期を体験した人達の世代って,「ストIV」の25キャラでも,もうギブアップだと思うんですよ。格闘ゲームをあまりご存じない方は,キャラが多ければ多いほど,ゲームとしてボリュームがあると思うかもしれませんが,仰るようにキャラクターが増えた分だけ,相手のキャラクターについても勉強しないといけないわけです。
覚えないとならないことが,どんどん増えていきますよね。
小野氏:
もちろん全部のキャラをやり込まなきゃならないわけではありませんが,一通りの動かし方や必殺技のコマンド,そしてその対策は知っておかないと,チェス盤の前にすら立てないという。
4Gamer:
いや,登場キャラクターが多い格闘ゲームはほかにもありますが,そういう場合って,普通は使い勝手が似通ったキャラクターが用意されているものだと思うんです。でも「ストIV」の場合,似たキャラってほとんど居ないじゃないですか。
小野氏:
全キャラ色々なところで尖がってますからね。でも僕らが作る以上は,カプコンイズムとして,どうしても似たキャラは作りたくない。ただ今回登場する10キャラについても,完全に初見っていうのはジュリとハカンの2キャラだけです。残りの8キャラは,微かな思い出かもしれないけど,どんな動きをするかはある程度想像できると思うんです。なので初級編や入門編に居る人にとっては,ここは楽しんでもらえるんじゃないかな。
4Gamer:
上級編の人については?
小野氏:
フレーム※単位の世界にいるような上級編の人には,これはもう「ごめんなさい,もう一度35キャラ全部研究しなおしてください」としかいいようがないです。既存キャラについても,だいぶフレームレベルで調整されているし,ウルコンも増えてますので。リプレイチャンネルなどのツールも用意しましたので,その辺りを研究に活用してほしいですね。
4Gamer:
いやそれはそれで,やり甲斐があってうれしい話ではあるんですが(笑)。
既存キャラクター最大の追加要素「ウルトラコンボII」,その真意とは
ではもう一つの大きな新要素,ウルトラコンボIIについてお聞きしていきます。既存キャラクターに新要素を付け加える上で,ウルコンを増やそうというのは,どういう経緯で決まったんでしょうか。
小野氏:
さっきも少し話が出た「ストIIIシリーズ」ですが,あれのスーパーアーツ※セレクトって,成功でもあったんですが,失敗もあったと思うんですよ。結果的にですが,このキャラはこれ,という鉄板のスーパーアーツが決まってしまって,選択の余地があまり無いという状況になったしまった。で,そういうのは今回,なしにしようと。
4Gamer:
ありましたね。ダッドリーならコークスクリュー一択,みたいな。
小野氏:
少なくとも許されたチェック期間の中で,ここは目一杯調整させてもらいました。調整の方針としては二つ有りまして。まず「あのキャラならこっちにしよう」とか,相手にあわせた選び方ができるようにしたかったのが一つです。もう一つは「僕のスタイルならこっちのウルコンが合ってる」という方向性です。いずれにせよ大会を開いたときに,ジュリならみんなウルコンI,ガイルはみんなウルコンIIとかになるんじゃなく,それぞれ違うチョイスができる形にしたかったんです。
4Gamer:
ウルコンの選択も含めて戦略のうち,ということですか。
小野氏:
そうです。ウルコンIIを増やすことで初めて生まれる読み合いとか,ストラテジーがあるんじゃないのかって。この人なら絶対にリュウだから,いつもはウルコンIだけど今回はウルコンIIでいこう,という風にね。
もしくは,そこまで行き着いていない人でも,ウルコンIIのほうが自分にとっては戦いやすいな,っていう選択もあり得えます。リュウの場合だと「滅・波動拳」と「滅・昇龍拳」の二つのウルトラコンボがありますが,波動の方が組み立てやすい人は波動を選ぶでしょうし,昇龍拳の方が性に合ってる人は,昇龍拳を取るという。
4Gamer:
しかしそのあたりは「ストIII」のスーパーアーツも同じだったのでは?
小野氏:
スーパーアーツでは「自分はこっちが好み」と思っても「結局使えるのはこっちだよね」,という状況がありました。そこを今回はなるべく,状況やスタイルに応じて選べるようにしましょうという事です。
4Gamer:
あぁ,なるほど。今回はどちらのウルコンも使い道があるし,相手に合わせて選ぶこともできる,と。
そうです。でもこれが一年後にどうなっているかは,やっぱり分からないですね。格闘ゲームの面白いところって,やっぱり開発者が思ってもみなかったコンボが繋がったり,戦術が生まれたりすることですから。これって微妙にバグじゃねえの? っていうのが巧く利用されたりして。そこは100万,200万人のプレイヤーが研究することによって,出てくる楽しさだから,それも否定したくない。まぁあまりにもヒドいコンボの時には修正することもありますけど。
4Gamer:
キャンセル※自体がそうですものね。修正されない以上はそれも「アリ」だと。
小野氏:
「ストIII」の時だって,僕ら開発チームとしてはこっちがガチでこっちはネタ,とかそういう色付けをしたつもりは無いんです。でもフタを開けてみれば,もうユンなら幻影陣,ケンなら疾風迅雷脚しかないって流れに。
4Gamer:
確かにほかのを選ばれると「もしかして舐められてる?」とか思っちゃいますね。では例えばリュウだったら,「滅・波動拳」と「滅・昇龍拳」はどういう使い分けになりますか?
小野氏:
リュウに関しては,実はそんなに大きな違いはないんですよ。元々リュウ自体がオールマイティなキャラクターなので。どちらかというとテクニカルなキャラクターの場合に,それが如実にあらわれます。まあリュウがテクニカルじゃないっていったらリュウ使いの人に怒られそうですけど(笑)。
4Gamer:
リュウは十分にテクニカルだと思いますが(笑)。
小野氏:
なんというか,オールマイティなキャラになればなるほど,もう自分の戦うスタイルに同化していって,キャラクター自体の色は薄くなっていくのかなと。皆さんいわれるとおり,リュウはもう完成されすぎているキャラクターなので,あれをどう攻略するかというのがストリートファイターの醍醐味の一つだと思います。
4Gamer:
それは確かに。自分は普段アベルをメインに使ってるんですが,アベルもまず,リュウに勝てるかどうかが最初の山という気がします。
小野氏:
そう。で,リュウを選ばない人って,そこがまずポリシーなり,モチベーションになっているところがある思うんですよ。中級以上の腕の人のベースというか。ウルコンの選択っていうのは,そういうテクニカルな読みあいができて,初めて生きてきます。だからリュウの場合は,どちらかというと相手に合せて使い分けるというよりは,自分のスタイルにあわせて選ぶ方向になるでしょうね。
- 関連タイトル:
スーパーストリートファイターIV
- 関連タイトル:
スーパーストリートファイターIV
- この記事のURL:
キーワード
(C) CAPCOM U.S.A., INC.2010 ALL RIGHTS RESERVED.
(C) CAPCOM U.S.A., INC.2010 ALL RIGHTS RESERVED.
- スーパーストリートファイターIV(通常版)(初回生産版: コスチュームパックのひとつをダウンロードできるプロダクトコード封入)
- ビデオゲーム
- 発売日:2010/04/28
- 価格:¥7,670円(Amazon) / 8131円(Yahoo)
- ファイティングスティックV3ビデオゲーム
- ワイヤレスファイティングスティックEXビデオゲーム