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[GDC 2011]「Dead Space 2」のアートディレクターが語る「似たような世界に,いかにバリエーションを与えるか」という挑戦
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印刷2011/03/03 20:16

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[GDC 2011]「Dead Space 2」のアートディレクターが語る「似たような世界に,いかにバリエーションを与えるか」という挑戦

画像集#002のサムネイル/[GDC 2011]「Dead Space 2」のアートディレクターが語る「似たような世界に,いかにバリエーションを与えるか」という挑戦
 宇宙船の内部のような,“コリドー”(廊下/回廊)と呼ばれるタイプのマップは,無機質なメタル系のテクスチャーが延々と続くばかりで,ゲーマーは見飽きてくるという問題を抱えている。
 これは,「Quake」のような初期のアクションゲームから続く宿命とも言える難問なのだが,2009年発売の「Dead Space」から2011年発売の「DEAD SPACE 2」PC / PS3 / Xbox360 / )に向けて,その壁を打ち破ろうと意欲を燃やしていたのが,Electronic Arts本部内にあるコアゲームブランドVisceral Gamesに在籍するアートディレクター,イアン・ミルハム(Ian Milham)氏だ。

画像集#008のサムネイル/[GDC 2011]「Dead Space 2」のアートディレクターが語る「似たような世界に,いかにバリエーションを与えるか」という挑戦 画像集#009のサムネイル/[GDC 2011]「Dead Space 2」のアートディレクターが語る「似たような世界に,いかにバリエーションを与えるか」という挑戦

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 「Beyond Horror: Art Directing Dead Space 2」(ホラーの向こう側: Dead Space 2のアートの監督)と題されたセッションの冒頭で,ミルハム氏は「我々は,Dead Spaceの世界を新たに作り直したかった」と話す。
 Dead Spaceでは,ホラーゲームであるということを強く意識しすぎたために,「主人公がしゃべらない」「狭いところを歩く恐怖」といったものの演出にこだわり過ぎ,ゲームとして楽しめる人を選んでしまったという反省があるという。そこでDead Space 2は,「続編ながらもDead Spaceの世界観を作り直す」という目的をもって,制作がはじまったのだ。

「普通のモンスターにはみんな慣れているが,人間の顔や体が崩れた風貌だからこそ,ネクロモーフは怖い」というのが,ミルハム氏の考え方だ
画像集#003のサムネイル/[GDC 2011]「Dead Space 2」のアートディレクターが語る「似たような世界に,いかにバリエーションを与えるか」という挑戦

 ミルハム氏はまず,欧米で「スタイルブック」と呼ばれる,建築様式やファッションのデザイン,そしてマップごとに利用できるカラーパレットの指定などを細かく規定するため,映画のスナップショットなどを用いたリファレンスガイドを入念に作成することから始める。
 さらに,ゲーム内にあるモニターやポスターにも意味を持たせて,ゲームストーリーでは直接語られない“裏のストーリー”も深く掘り下げている。例えば,前作では「Peng」という謎のブランドのポスターがアチコチに貼られていたが,今回はそのポスターにさらに細かい説明を添えることで,ゲーム世界が豊かなものに感じられるように工夫しているのだ。ほかにも,チョコレートバーのマスコットキャラとして銅像化されている“Light Speed Boy”など,ゲーム内に登場する架空ブランドは10種類を超えている。

画像集#004のサムネイル/[GDC 2011]「Dead Space 2」のアートディレクターが語る「似たような世界に,いかにバリエーションを与えるか」という挑戦

 ただ,あまりにもスタイルブックに頼りすぎて,上手くいかなかった場合もあるようだ。例えば,主人公アイザック・クラークの着るスペーススーツを,α版向けに2か月をかけて新しくデザインして実装したのだが,スタイルブック上の色彩や形状のルールが厳しく,元のデザインと大きく代わり映えしなかったためか,ほかの部署の開発メンバーから,「いつになったら,新しいスーツのデザインが加わるんだい?」と聞かれたのだ。
 スタイルブックに頼りすぎていたことに反省したミルハム氏は,以前アート部門の部下が採用を熱望していたスペースマリーン風の最終版に,ゴーサインを出すことにしたのだという。

並べてみるとまったく異なる見栄えだが,ぱっと見では開発者が違いに気付かなかったという主人公のアートデザイン
画像集#005のサムネイル/[GDC 2011]「Dead Space 2」のアートディレクターが語る「似たような世界に,いかにバリエーションを与えるか」という挑戦 画像集#006のサムネイル/[GDC 2011]「Dead Space 2」のアートディレクターが語る「似たような世界に,いかにバリエーションを与えるか」という挑戦

 また,このセッションでミルハム氏は,長年の経験で培ってきたテクニックもいくつか披露している。
 例えば,ゲーム序盤に背景を暗くしたりといった調整で,手前にあるオブジェクトや,キャラクターのポリゴン数を増やしたり,テクスチャーを細かくしたりしておく。そうすると,その後はオブジェクトやキャラクターのディテールを落としても,序盤に感じた“細かさ”の記憶がプレイヤーの脳裏に焼き付いているため,無意識で想像力を働かせてくれるのだという。
 実際にDead Space 2では,ゲーム開始直後にプレイヤーを助けてくれるNPCがモンスターに変貌するとき,クローズアップで肉質から血管の様子まで,細部を表現している。これにより,その後に同系のモンスターが登場したときにディテールを落としておいても,プレイヤーは以前と同じ質感や迫力をイメージしてしまうというわけだ。
 ミルハム氏は,このようなテクニックを駆使して,Dead Spaceシリーズの良い部分を強調。マイナス面を上手くカバーできたとして,今回のセッションを締めくくった。

曲線のあるオブジェクトはリソースのコストが高いため,ゲーム序盤のうちに黒い背景を用意し,曲線オブジェクトを前面に配置しておくことで,プレイヤーの潜在意識にイメージを取り込ませようというテクニック
画像集#007のサムネイル/[GDC 2011]「Dead Space 2」のアートディレクターが語る「似たような世界に,いかにバリエーションを与えるか」という挑戦

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