海外ゲーム四天王 / 第43回：「Tow Truck Simulator 2010」

　一部の特殊車両マニアの間で話題になった気がしないでもない，「Forklift Truck Simulator 2009」。本連載で紹介したところ，たちまち「これから，心置きなく荷物を積んだり下ろしたり出来ます」「屋外のフォークリフト作業については，やはりディーゼル駆動のほうに分があるという私の主張が証明され，嬉しく思います」というおたよりは，一通もこなかったが，それに味をしめて，今回もまた特殊車両ものを紹介したい今週の「海外ゲーム四天王」である。開発は，Forklift Truck Simulator 2009と同じくドイツのastragon Softwareで，テーマは“Tow Truck”つまり，レッカー車だ。

　「Tow Truck Simulator 2010」は，プレイヤーがレッカー車のドライバーとなり，路上の故障車や違法駐車車両を回収。所定の場所に持ち運ぶと報酬がもらえるというレッカー車マニア垂涎のシミュレータだ。フォークリフトもそうだが，ズーから発売中の「ファーミング シミュレーター 2009 〜大地へ挑もう！ ぼくらの農業生活〜 日本語版」の農業機械など，もはや特殊車両分野を扱うゲームの大御所というか，ほかに誰もやらないというか，それである。

　まず，プレイヤーのプロフィールを作ったら「New Career」で街へ出よう。ロード時間が意表をつく長さだが，それが終われば――どこなのか分からないが，たぶんドイツの閑静な都市の一角に出現。車を少し走らせるとミッションの内容が表示され，画面上方に行くべき方向を示す矢印が出現するので，それに従って走ればオッケー。今回の仕事は違法駐車車両の回収で，報酬は200ユーロとある。

　とりあえず出発。ブッブー。おっと，道を一本間違えたみたいだ。バックオーライ……って，車をバックさせるキーはない。どうするかというと，ギアをリバースに入れるのである。リバースに入ると視点が後方を向くので，それを見ながら慎重にバックするというダンドリ。しかし，バックでハンドルを右に切ると，車は左へ。何がなんだか分からなくなって，うっかり路側のバス停に接触したとたん，ダメージ表示が出て，レッカー車の修理費9ユーロを徴収されてしまうのだから，油断もスキもありゃしない。あれ？

　気を取り直して，さらに前進だ。道路の平穏を無視する悪いドライバーを罰するため，目的地に急げ，と思ったら，今度はオービスにひっかかってスピード違反の宣告。なあんだ，道路交通法を破っているのはこっちだったというオチだが，なんと罰金は50ユーロで，ドイツの交通法規は厳しいようだ。さらには，信号無視で罰金，ほかの車と接触してまた修理費徴収など，街には罠がいっぱいで，違反車両にたどり着く前に所持金すべて取られそうな勢いではないか。レッカー車商売はいろいろと厳しい。

回収現場に急げ。だが，急ぎすぎるとスピード違反で罰金を取られたりするので，安全運転で急げ

　とかなんとか，それなりに苦労しながらようやく違反車にたどり着くと，今度はクレーン操作がなかなか手強い。基本的には，違反車の横にレッカー車を止め，クレーンでつまみ上げるわけなのだが，なにしろクレーンの動きが複雑で，15個ぐらいのキーを適宜操って，うまいことロープを相手に車に固定しなければいけないのだ。あ，微妙にポイントがずれた。ちょっとバック。えーと，リバースに入れるにはどうするんだっけ。
　視点の変更は可能だが，マウスでぐるぐる見回すことはできず，固定された視点をキーで切り替えるというスタイルだ。というわけで，押すべきキーはやたらめったら多く，いかにもPCゲームという風情が漂う。それにしても，左右のウィンカーやライトのオン/オフ，クラクションはまだいいけど，シフトアップとシフトダウンが別のキーってのはどうなのかしら？　車はオートマなので，ドライブとニュートラルとリバースしかないのに。
　と，こういう感じでゲームは進んでいくのであり，比較的操作が簡単だったForklift Truck Simulatorに比べ，どのキーを押したら何が起きるかを把握するまでに時間がかかる。というか，筆者はまだ把握し切れていないので，いちいちメニューを開いてキーアサインを確認しているという状況だ。

先頭の車が意味なく止まっているため発生する渋滞。あの車が渋滞の先頭だったのだ

　このような複雑なインタフェースに加え，意味なく路上に停車して，ホーンを鳴らしても，ぴくりとも動かない車が起こす謎の渋滞や，荷台に積んだ車が安定しないといったバグっぽい部分もかなり見られ，正直な話，よほどのレッカー車マニア以外にはオススメしづらい雰囲気。とはいえ，なんだかもう世界を救ったり，美女を救ったり，テロリストをやっつけたり，悪いモンスターをやっつけたりするのは疲れたなあ，と感じている人はチャレンジしてみる価値があるだろう。筆者自身は，あまりゲームが進んでいないので，偉そうなことは言えないのですけどね。