プレイレポート
あれは「大神」「ワンダ」「KILLZONE」へのオマージュだったの!? サントラ制作秘話やイーノックにまつわる衝撃の事実も明らかになった「エルシャダイ」インタビュー&プレイレポート
本作は,旧約聖書の“偽典”をベースとした3Dアクションゲーム。既成概念に囚われない独特の世界観が多くのゲーマーから注目を集め,発売前からインターネット上で二次創作活動が活発に行われるなど大ブームを巻き起こした,色々な意味で異色のタイトルだ。
4月27日には,印象的な音楽の数々を収録したオリジナル・サウンドトラックも発売され(関連記事),ファンの興奮が極限まで高まっている本作。本稿では,実際にPlayStation 3版をプレイした感想を交えながらゲームの概要をお伝えすると共に,ディレクター&キャラクターデザインを務めた竹安佐和記氏とプロデューサーの木村雅人氏,そしてコンポーザーの甲田雅人氏へのインタビューもお届けしよう。甲田氏にも同席していただけたということで,インタビュー内容は若干音楽寄りの話になっているが,イーノックの誕生秘話や開発裏話,そしてエルシャダイの今後の展望などについても語られているので,「こちら」に掲載済みのインタビュー第1弾とあわせて,ぜひチェックしてほしい。
「El Shaddai ASCENSION OF THE METATRON」公式サイト
【関連記事】「良いゲームとはなにか」と考え続けた結果,「El Shaddai ASCENSION OF THE METATRON」が生まれた――竹安佐和記氏,木村雅人氏インタビュー
そんなわけで,まずはプレイレポートからどうぞ。
「そんなゲームで大丈夫か?」
「大丈夫だ,問題ない」
■ストーリー■
ヒトの言葉や思想が別れるよりも遥か昔。神はグリゴリの天使たちに地上界の監視を命じた。
彼らは長い間,地上界を観察し続けるうちに,ヒトへの憧れを抱き,堕天という禁忌を犯してしまう。
天界は激怒し,地上界を一掃する洪水を計画するが,ヒトでありながら天界の書記官を任されるイーノックの嘆願により,堕天使たちの捕縛を条件に計画の執行を待つことを約束した。
今,地上界の命運を賭けたイーノックの互い旅が幕を開ける。
それは語り継がれることを許されなかった,遥か昔の物語……。
「魔界村」や「ロックマン」といった昔ながらのアクションゲームのように,堕天使ごとの個性が強く反映された各ステージをクリアしていく方式で,基本的な操作方法は説明書いらずの単純さ。スティックで移動,×ボタンでジャンプ,□または△ボタンで攻撃という3つのアクションさえ覚えれば,あとは直感的にゲームを進めていける。
しかし,“操作方法の簡単さ”を謳い文句にしているゲームは非常に多く,それ自体は特に珍しいことではない。本作において秀逸なのは,簡単操作ながらもプレイヤーを飽きさせない,独特の工夫がほどこされた各種システムにあるのだ。
流れるような連続攻撃が可能なアーチ,高い打撃力と防御力を兼ね備えたベイル,空中を舞うトリッキーな動きで敵を翻弄するガーレ……といった具合に,それぞれ特性がハッキリと分かれているのだが,実はこれらの間には,ジャンケンのように「3すくみの関係」が成り立っている。アーチはベイルに強く,ベイルはガーレに強く,ガーレはアーチに強いといった感じである。
また,武器ごとに特殊な移動スキルが設定されているというのも大きなポイントで,アーチはジャンプ後に滑空,ベイルは防御しながらの移動,ガーレは高速ダッシュが可能となっている。落下ポイントの多いステージ攻略においては,アーチの滑空能力が大いに役立つので,ジャンプアクションの苦手なプレイヤーは積極的に利用するといいだろう。
さらに,ボタンを押すリズムによって攻撃方法が多彩に派生するというシステムも,プレイしていて実に気持ちが良い。ただ攻撃ボタンを連打するだけでも華麗なコンボを繰り出せるのだが,意図的にボタンを押すタイミングを遅らせたり(ディレイ),ボタンを長押ししたりすることで,まったく違った攻撃モーションが発生するのである。
ディレイや長押しは,威力が高かったり敵をダウンさせやすかったりと,戦闘を有利に進めていくうえでは非常に重要なテクニックであり,慣れてくると次第に自分なりの必勝パターンを構築することができる。
加えて,敵の攻撃を受ける瞬間にガードすることで大きなスキを作り出せる“ジャストガード”など,格闘ゲーム的なテクニックも導入されており,戦闘に程良い緊張感と,深い戦術性を付与しているのだ。
イージーモードを遊んでいて,「俺マジ上手くね?」と調子コイていたら,ノーマルモードに切り替えた瞬間,ザコにボコボコにされて涙目になった筆者が言うのだから信憑性は高いはずだ。
また,アクションだけでなくグラフィックス面でも特筆すべきものがある。「常に動き続ける世界」というコンセプトの元に制作されたステージの数々は,思わず戦いを忘れて見入ってしまうほどの美しさ。加えて,不思議な“無国籍感”をテーマにデザインされた敵キャラクターの存在が,本作の幻想的な魅力に拍車をかけている。
ゲームデザイン上のこだわりとして,画面上にユーザーインタフェースがまったく表示されないのも特徴的だ。アクションゲームなのにHPバーすら見えないという徹底っぷりである。UI嫌いのクリエイターというと「Fable」シリーズのピーター・モリニュー氏が真っ先に浮かぶが,その点については,本作のディレクターである竹安氏も負けてはいないようだ。
イーノックがダウンすると,画面上には瞼が徐々に閉じていく演出が挿入されるのだが,ここで諦めずにボタンを連打すれば「大丈夫だ,問題ない」という印象的なメッセージと共に,その場で復活できる。基本的には何度でも同じように復活できるが,ダウンを繰り返すと,復活に必要な連打数も増していき,最終的には人間の連打速度では追いつかなくなってしまう。そうなるとゲームオーバーで,コンティニューポイントからやり直しだ。
なお,ステージ攻略でジャンプに失敗して落下した場合にも,瞬時にルシフェルが指パッチンして,時を戻してくれる。ペナルティとして鎧は破損するが,ストレスなくゲームを続けられるのである。まぁ,ジーパンのみの状態で落下するとさすがにルシフェルも呆れるのか,その時点でゲームオーバーとなるが……よっぽどミスを連発しない限り,そんなことにはならないはずだ。
どんなに厄介なステージ構成でも,繰り返し挑戦すれば必ずクリア可能という,プレイヤーをウンザリさせないゲームデザインは非常に秀逸。発売前からネタ的な方面でばかり話題になった本作だが,実際にプレイしてみると,アクションゲームとしての完成度が予想以上に高くて驚かされた。「良いゲームとは何か」という考えを突き詰めた果てに生み出されたという,練り込まれた世界観とゲームシステムからは,クリエイターの熱意がビンビンと伝わってくる。
ここまで読んでも「そんなゲームで大丈夫か?」と疑っているそこのキミ。一番いいゲームをプレイしたばかりの筆者が,ドヤ顔で断言してあげよう。「大丈夫だ,問題ない」。
……というネタで終わらせるのももったいないほどの良作なので,冒頭でもお伝えしたように,今回はゲーム&オリジナル・サウンドトラック発売記念として,本作のディレクター&キャラクターデザインを務めた竹安佐和記氏とプロデューサーの木村雅人氏,そしてコンポーザー甲田雅人氏へのインタビューもお届けする。
インタビューでは,本作の楽曲や,4月27日に発売された「エルシャダイ アセンション オブ ザ メタトロン オリジナル・サウンドトラック」(関連記事)の話題を軸にしつつ,エルシャダイの制作秘話や次回作のアイデア(!?)に関するお話も聞けたので,イーノックを操作する手をしばし止めて,ぜひご一読を。
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El Shaddai ASCENSION OF THE METATRON
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