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[COMPUTEX]S3 Graphics,「Chrome 5400E」を製品化。デジタルサイネージ向けに事業展開開始
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印刷2011/06/06 00:00

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[COMPUTEX]S3 Graphics,「Chrome 5400E」を製品化。デジタルサイネージ向けに事業展開開始

 Windows 95〜98時代,ATI Technologies(現AMD,以下 ATI)やNVIDIAがPC用グラフィックスメーカーの主役となる少し前,1995年〜1997年あたりの頃,発売前から高い注目を集めたグラフィクスチップがあった。それはS3 GraphicsのViRGEシリーズだ。
 単なる2Dフレームバッファとしての役割しか果たせなかったPC向けグラフィックスチップが主流だった時代に,テクスチャマッピングなどの3Dグラフィックス処理に対応したViRGEシリーズは,「夢の3Dグラフィックスプロセッサ」として取り沙汰された。
 DirectX APIでいうと,DirectX 3〜5時代のできごとである。

VIA Technologiesの傘下に収まっているため,S3 Graphicsのコーナーは,メイン会場の1つであるTICC内のVIA Technologiesブースにある。ちなみに同ブースのメインテーマは4コアCPU「VIA QuadCore」
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 ただ,ViRGEは前評判こそ高かったものの,実際の性能は芳しくなく,売れ行きも(最初はともかく総合的には)今一つ。そこで,起死回生を果たすべく,より高性能なSavageシリーズを投入していくのだが,その頃にはATIのRage 3DやNVIDIAのRivaシリーズ,3Dfx Interactive(現NVIDIA,以下 3Dfx)のVoodooシリーズが市場を席巻しており,S3 Graphicsは急激に勢いを失っていく。そして,2000年には台湾のプラットフォームメーカーであるVIA Technologiesの傘下に収まり,それ以降は新興市場向け低価格グラフィックスチップ&GPUの開発へと注力していくことになるのだ。

 その後,Direct X9時代になって,S3 GraphicsはChromeシリーズを発表。「DeltaChrome」「GammaChrome」と世代を重ねていき,DirectX 10時代になってからは,ジオメトリシェーダをレンダリングパイプラインに組み込んだChrome 400&500シリーズを発表している。

 Number Nine Visual Technologyや3DLabs,3Dfxといった名だたるグラフィックスチップメーカーがDirectX 9までの間に姿を消し,Matroxが業務用のニッチ市場へ方針転換したことを考えれば,DirectX 10.1時代を迎えられたS3 Graphicsは相当な底力を持っているといえる。
 そんなS3 Graphics。今は何をやっているのかというと,一般ユーザー向けグラフィックスカード製品からは撤退し,現在はBtoBのデジタルサイネージに力を注いでいるという。

ビデオウォールなどのデジタルサイネージシステムに注力しているS3 Graphics
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 デジタルサイネージとは,ビデオウォールや電光掲示板などに2Dや3Dのグラフィックスを表示する装置。JR秋葉原駅の電気街口など,最近は主要駅における広告媒体としてよく見かけるが,S3 Graphicsは,この分野にPCベースの技術や機材を用いた製品を提供しているというわけだ。
 ハードウェアとしての主力製品は,Chrome 400&500系のGPUコアを組み込み向けに転用して構成した「Chrome 5400E」となっている。

 Chrome 5400Eは,Chrome 500&400系と同等の,DirectX 10.1に対応した統合型シェーダアーキテクチャベースのレンダリングパイプラインを実装しており,搭載する統合型シェーダユニットの総数は32基となっている。3D処理性能的にはNVIDIAのGeForce 8600シリーズに近いと言われており,絶対的なパフォーマンス的に高性能とは言いがたいが,担当者によれば,多画面同時出力対応のデジタルサイネージ実現システムとしては引き合いが強いらしい。

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デジタルサイネージ向けのグラフィックスカード製品版を展示
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Chrome 5400E GPU
 同担当者いわく「Chrome 5400EとChrome 500&400のハードウェアアーキテクチャに違いはなく,異なるのはセキュリティ関係の機能だけ」。具体的には,Chrome 5400E向けに提供されるデジタルサイネージ向け制御ソフトウェアやドライバソフトウェアは,このセキュリティ機能がないと動作できなくなっているそうである。
 NVIDIAが,GeForceとQuadro,Teslaで,同一のGPUコアを採用しつつ,ソフトウェア動作を制限し,事実上の用途制限や仕様格差を生じさせて多方面で事業展開しているのを知っている読者は多いと思うが,アレと同じだ。

 COMPUTEX TAIPEI 2010でChrome 5400Eを搭載した試作カードが公開されていたのをお伝えしているが,今年のS3 Graphicsブースでは,その製品版が公開されていた。


同時出力画面数の異なる3モデルをラインナップ


COMPUTEX TAIPEI 2010の会場で展示されていたChrome 5400E搭載カードの試作品
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 昨年は試作品が1枚展示されていただけだったが,製品版は全3種類のラインナップ構成となる。昨年の試作品だと,4レーンのコネクタで表裏を使った8レーン接続仕様だったのが,製品版ではすべてGen.2のPCI Express x16接続になっている点,そして,「VIA eH1」「VIA uH4」「VIA uH8」(以下,VIA表記を省略)といった具合に,親会社であるVIA Technologiesの製品名になっている点が見どころ。

すべてVIAブランドで展開されるChrome 5400E搭載カード3種
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 最下位モデルとなるのはChrome 5400Eを1基搭載したeH1。動作クロックは非公開だが,DDR3メモリを合計512MB搭載し,DVIとHDMIを組み合わせた最大2画面同時出力に対応する。
 ミドルクラスのuH4は,eH1と同様の1 GPU+DDR3 512MBモデルだが,1カードで4画面出力に対応する。4画面出力用の接続端子はHDMIだ。

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2画面出力対応のeH1。S3 Graphicsのロゴを除けば,どこにでもあるLow Profile対応のエントリー市場向けグラフィックスカードといった風情
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最大4画面出力対応のuH4。HDMI端子×4を備える。搭載するGPUの名称が「Chrome E5400EW」になっているが,その理由は後ほど

 最上位モデルのuH8は,Chrome 5400Eを2基搭載し,8画面同時出力に対応する製品だ。1GPUあたりのコンフィギュレーションは下位モデルと同じため,グラフィックスメモリ容量は512MB×2。ブラケット上にはVHDCIコネクタが2つ実装されており,実際にはこの各VHDCIコネクタをDVI×4やHDMI×4に変換して利用することになる。

最大8画面出力対応のuH8。展示されているカードは昨年と同じ4レーン幅のコネクタだが,量産品では16レーン幅になるらしい
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ブースのデモシステムではuH4とuH8を搭載した12画面同時出力に対応したPCシステムで動作しているとのこと。今回の展示では3画面分を接続せず,9画面のデモとした
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1つのコンテンツを複数のグラフィックスカードで多画面表示するような動作モードにも対応
 いずれの製品も,HDMI端子からは1920×1080ドット画面が出力可能で,DVI変換時には1920×1200ドットまでに対応するとのこと。4画面出力対応のuH4と8画面出力対応のuH8は,多画面出力タイミング同期用のGenLock機構に対応する。
 グラフィックスAPIとしてはDirectX 10.1のほかOpenGL 3.1もサポートし,MPEG-2,WMV9,VC-1,H.264のデコードに対応したハードウェアビデオデコーダを内蔵。担当者は「本格的な3Dグラフィックスを多画面出力でき,さらにBlu-rayクラスのハイビジョン映像を多画面出力できるデジタルサイネージシステムは当社製品だけ」と胸を張る。
 今後は,このeH1とuH4,uH8相当のGPUを搭載したデジタルサイネージ向けボードコンピュータなどといった製品展開も予定しているとのことだった。

 「価格はBtoBなので明かせない」(担当者)とのことだが,eH1だけは個人向けの販売もやっているそうで,北米市場におけるメーカー想定売価は160ドルとのこと。ただし,上位のuH4とuH8だと付属するデジタルサイネージ用の制御ソフトが,eH1には付属しないという。ちなみに,製品写真でuH4とuH8が搭載するGPUがChrome E5400E「W」となっているのは,Wがこの制御ソフト付属を意味するためだそうだ。

 また,担当者は「現在,VIAのチップセットに統合されているグラフィックス機能はDirectX 9世代のChromeコアがメインだが,これを今回のChrome 500・400・5400E相当のDirectX 10.1世代に置き換えていくことも計画中」と付け加えていた。

S3 Graphicsの公式Webサイト(英語)

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