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[E3 2010]Electronic Entertainment Expo 2010,4Gamer取材班が注目タイトル/トピックをピックアップ
A.I.
数年ぶりのE3であった。以前,取材チームの一人として訪れたときには,まだ4Gamerはコンシューマゲームを扱っておらず,PCタイトルのみの取材であった。今年の取材では,驚くほど取材対象が広がったこともあり,個人的には“とんがったゲーム”が好きであるにも関わらず,カジュアルなタイトルの取材におされ,自分好みのゲームをこってり見てまわる時間が少なかったことは,正直心残りだったりする。
そんなわけで,とくに思い入れの深いジャンルであるMMORPG(MMOG)からもっとじっくり取材させてほしかった3本を挙げる。ちなみに,「APB: All Points Bulletin」と「DC Universe Online」は,思いの外カジュアルな方向にまとめられたようで,筆者の興味の範囲からはちょっとズレてしまった。
「Jumpgate Evolution」(PC)
Gazillion Entertainment
2010年発売予定
「Black Prophecy」(PC)
10TACLE PUBLISHING
2010年Q4発売予定
Jumpgate Evolution |
別にこの二つのみがそういったタイトルというわけではないし,舞台を宇宙に限る必要もないのだが,今回記事が載ったのはこのあたり。どちらもEVE Onlineのヘビー過ぎる部分を軽くして,戦闘もファストペースなものにするなどの工夫を凝らしているようだ。どんな手触りに仕上がり,どう受け入れられるのかが楽しみ。
Black Prophecy |
「Star Wars: The Old Republic」(PC)
LucasArts
2011年発売予定
一方,「EverQuest」で世に広まり,「World of Warcraft」が成熟させた,いわゆるEQ型のMMORPGの枠組み(“サンドボックス”型に対比させると“テーマパーク”型といったところ)で作られている次世代のMMORPGが「Star Wars: The Old Republic」だ。
「World of Warcraft」,というかBlizzard Entertainmentについては,“クリエイターの熱意”みたいなものにとらわれずに,ロジックを,そしてビジネスを最重視することで,ものすごい結果を出しているところが甚だしく格好良い。そしてこれまでのやり方や作品を見る限りにおいて,筆者はBiowareから,Blizzardと同様のフィロソフィーを感じるのだ。彼らはこの作品で何を見せてくれるのだろうか。
noguchi
とはいえ,以前ほどBGMが大音量で流れたり,やたらとノベルティが配られたりすることもなく,ゲームショウとして見れば大人しめ。また,業界関係者しか入れないため,入場者数もほかのゲームショウには劣る。だが,プラットフォームホルダー3社がそろってカンファレンスを行う点を考えると,プレゼンスの高さは世界一といえるだろう。とくに今年は,ニンテンドー3DSを筆頭に,Microsoft Kinect,PlayStation Moveが公開され,ハードウェアのE3だったという印象が強い。
「Microsoft Kinect」
Microsoft
2010年11月4日発売予定
実際に体験してみると,手ぶらでゲームが遊べるという事実にあらためて感動。さらに,プレイヤーが入れ替わってもキャリブレーションの必要がない点にも驚かされた。
Kinectは,“未来が感じられるデバイス”であり,“一度は体験してみたいデバイス”なのは確かだが,現状で発表されているタイトルの多くがミニゲーム集の域を出ていないのは残念なところだ。また,149ドル99セントという価格が一部通販サイトなどで出ており,いわゆるパーティーゲームを楽しむための追加投資として考えると決して安くはない。もちろん価格は正式発表ではないし,未発表の対応タイトルもあるだろが,現状では人気を後押ししてくれるだけの要素に欠けているという印象が強い。そんな不安を吹き飛ばす,今後の展開に期待がかかる。
「PlayStation Move&3D立体視対応ゲーム」
Sony Computer Entertainment
2010年10月21日発売予定
3D立体視とMoveに対応するKILLZONE 3 |
Moveで動かすことにより,立体感をより感じられるようになり,距離感がつかみやすくなるのだ。Xbox 360が立体視に対応してきたとしても,KinectよりもMoveのほうがバーチャル世界のポインティングデバイスとしては優秀といえるだろう。
さらに,Moveにはバイブレーション機能が搭載されているので,なにかオブジェクトに触れたときに「ブルッ」と反応させるといった仕掛けが用意できる。光る玉がついたスティックを両手に持ち,黒いメガネをかけている姿はあまり格好がいいとはいえないかもしれないが,いままでにない体験ができるゲームの登場を予感させられた。もっとも,E3ではサードパーティ製のMove対応ゲームがほとんど見られなかった点は,若干気がかりではある。
「ニンテンドー3DS」
任天堂
2011年発売予定
ニンテンドー3DSの展示ブース |
3D立体視の飛び出し具合を,写真や文字でお伝えするのには無理がある。伝えることを生業としている者としては敗北感を味わうが,あえて「実際に遊んでもらう以外にない」という言葉を選択する。いや,本当に凄いので,触れられる機会が来たらぜひ試してほしいのですよ。
ちなみにニンテンドーブース内には,100台以上の3DSがズラリとならんでいたのだが,すべての本体に一人,アシスタントがついていた。しかも全員女性。3DSを実際に手に取ると,その女性と50センチほどの距離で真正面から向き合うことになるという展示方法にも驚いた。
松本隆一
ああ,そういえば,以前は聞いたことに答えてくれる担当者が必ずといっていいほどいたが,最近のE3は放置プレイが目立つ。もちろん,昔の説明係の多くは広報担当者で,質問に答えられないとポケットからアンチョコをひっぱりだしていたが,ときにはプロデューサーやディレクターなどが平気で立っており,もらった名刺を見てびっくりすることもあった。経費節減など理由は各社にあるのだろうが,事前にアポイントを取るなり,列に並ぶなりしないと開発者の話を聞けなくなっているというのが最近のE3だ。
以前のように,ウィル・ライト氏が喫茶コーナーで休憩していたり,ピーター・モリニュー氏が来場者と雑談したりするのを見かけることはない。
展示がシステマティックになり,開発者とメディアの垣根が高くなってしまった印象だが,救いといえるのは,会うことさえできれば彼らは昔のままだということだ。自分達の作っているゲームを知ってほしくてたまらず,軽く誉めると,こちらが誰なのか確認すらせず,どこがウリで,どこが新しく,またどこに苦労したかを熱っぽく話してくれるのである。そういう話を聞きたくて,長い列に並んでいるというところもある。
メーカーのカンファレンスがストリーミング配信されるのも,変化といえば変化かもしれない。もちろん,昔から行われていたことだが,最近はそれをメディアではなくメーカーが直接やるようになった。つまり,メディアを飛ばしてメーカーが直接消費者に話しかけるようになったわけで,その流れはさらに加速するだろう。
日本に居ながらにして,ロサンゼルスで何が起きているのかリアルタイムに分かるようになった時代,わざわざ会場に出かける必要があるのかという点を含めて,この側面ではゲームメディアのあり方を考えざるを得ない。
ゲームの祭典は戻ってきた。会場は人でごったがえし,最新のムービーが大画面に映し出される。そして,そんな喧噪の背後では各社の,本当に死ぬか生きるかを賭けた熾烈な争いが繰り広げられている。“各社”の中に我々のようなメディアが含まれているのは言うまでもないだろう。
「Medal of Honor」(PC/PS3/Xbox 360)
Electronic Arts
2010年秋発売予定
最近ちょっとトーンダウンしたようだが,Electronic Artsの関係者達も,折にふれて「打倒CoD」を口にしており,闘志むき出しの雰囲気。対するActivision Blizzardは,とくに反応は見せていないものの,開発中の「Call of Duty: Black Ops」のPC版で,前作で中止したデディケイテッドサーバーのサポートを再開するなど,それなりに気にしている雰囲気はある。個人的には,こうしたビッグネーム同士の対決はぜひ,どしどしやってほしいと思う。なぜなら,こうした競争で最終的に利益を得るのは,我々消費者だからだ。
「Bulletstorm」(PC/PS3/Xbox 360)
Electronic Arts
2011年2月22日発売予定
「Unreal Engine 3」やGears of Warシリーズなど,押しも押されもせぬ独立系デベロッパのビッグネーム,Epic Games。このくらいの大御所ともなると,ドッシリ構えて,地球の平和や人類の未来をテーマにした壮大な作品を作るのかと思いきや,全然そんなことにならないのが欧米ゲーム業界の面白いところ。
「Bulletstorm」は,敵をいかに残酷で無慈悲に殺したかによってポイントがもらえるという,とんでもないFPS。そのための手段が多数用意されており,プレイヤーはイマジネーションを働かせて,開発者が思いつかないような攻撃コンボを組み立てるのである。
敵の股間を撃てば高ポイントだなんて,ほとんど子供レベルだが,予算と時間を惜しみなくかけ,そのアイデアをハイテンションでハイペースなゲームに仕上げてしまうところに,ある種の清々しさを感じる。
「Portal 2」(PC/PS3/Mac)
Valve
2011年発売予定
ニュースの即時性を強く求められるウェブメディアの加熱する取材競争を軽く皮肉ってみたのか,単に面白かろうと思って“Aperture Science”と書いちゃったのかよく分からないが,PlayStation 3版の登場は確かにサプライズだった。もっとも,長期的に見れば,PlayStation Networkで「Steam」が展開されるかもしれない,というほうが業界的にはビッグニュースなのかもしれない。それにしても,Portal 2,難しそうだなあ。
Nobu
さて,(少なくとも日本のプレイヤーにとって)大きなサプライズはなかったように思えるE3 2010だが,話題の中心といえば,やはり事前に発表されていたNintendo 3DSのお披露目だったのではないだろうか。残念ながら,みっちり詰め込まれた取材の都合で筆者は実物に触れられなかったのだが,裸眼で3D立体視? といぶかしんでいた人も,欲しくなったというから気になるところ。
ほかにも,Sony Computer Entertainmentの「グランツーリスモ5」「Killzone3」など,PlayStation 3の3D立体視対応作品も続々と発表された。個人的には,3D立体視が主流になるとすれば,次世代機の登場以降だと思っているのだが,こうも3D立体視が連呼されると気になってくるものだ。
それにしても,3D立体視が流行るほど,写真でお届けすることが難しくなっていくわけで,取材側としては悩みどころである。たまにauekiが(主にコンパニオン写真で)やっている,3D立体視画像とかも,万人が均しく見られるわけではなく,こういう部分への対処が近々,必要になってくるのかもしれない。
「Portal 2」(PC/PS3/Mac)
Valve
2011年発売予定
2010年3月に発売が発表されて以降は大きな話題もなく,E3 2010で何か発表があるんじゃないかとか,なさそうだとか言われたのだが……,SCEAのカンファレンスにおいて,あの機械的な声と初公開となるデモムービーが流れたときは,ちょっと興奮。デモムービーには,荒廃した前作のステージが登場し,それらが修復されていく様子など,前作プレイヤーには気になるシーンだらけ。発売は2011年とまだ先の作品だが,いまから楽しみな一作である。公開されたデモムービーは「こちら」の記事で確認してみよう。
「グランツーリスモ5」(PS3)
Sony Computer Entertainment
2010年11月発売予定
延期に次ぐ延期で,なかなか発売日が決まらずにヤキモキしていたのだが,ついに2010年11月の発売が決定。もはや「その先の世代」レベルという高いクオリティは,プレス向け説明会のレポートどおり。今からプレイしたくて仕方ないのだが,あともう少しの辛抱だ。
今回明らかになった数々のオンライン要素の一つ「マイラウンジ」は,見知らぬプレイヤーとのマッチレースが苦手という人には嬉しい機能かもしれない。レーサーではなく,ドライバーとしてフレンド達と一緒に,まったりと走るという発想は,リアルドライビングシミュレーターとして進化してきた本シリーズの出した,一つの答えのような気もする。
それにしても,E3で公開されたTrailer Movieは気になるところだらけである。だってほらムービー後半に,レッドブルだし,ベッテルだし,なにか釜で焼いてるし! 何が飛び出すのか,8月に開催されるGamescomでの発表が今から楽しみだ。
「リトルビッグプラネット2」(PS3)
Sony Computer Entertainment
2010年内発売予定
海外では2010年に発売が予定されている本作だが,メインのジャンルといえる“アクションゲーム”以外に,ストラテジー/RTS/レースなどなど,さまざまなジャンルのゲームが,簡単に(?)作れるようにパワーアップしていることに注目したい。
この追加要素を見ていて思い出すのが,1作めで多くのプレイヤークリエイターが作り出した,制作者の想像を越える(と思われる)作品の数々だ。なにせ,どんなアクションゲームのレベル(ステージ)が登場するだろうと思っていたら,用意されたオブジェクトを利用して,シューティングゲームやパズル,果てはオルゴールに計算機と,そもそもゲームですらないものまでが登場したのだから,世界には創造力が豊かな人がいるものだと感心した。もしかすると,ゲームの開発サイドもこれに刺激を受けて,ありとあらゆるタイプのゲームが作れるようにしたのかもしれない。
ちなみに筆者は,もっぱら遊ぶ側。クリエイトも楽しいのだけど,気が付いたら明け方ということもあって,ちょっと自重している。
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