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「絶体絶命都市4 Plus」初の体験会&トークショーレポート。絶体絶命都市シリーズの開発秘話を九条一馬氏が明かした
また,会場では同作のプレイアブルバージョンに触れることができたのでインプレッションも合わせて掲載する。
「絶体絶命都市4 Plus -Summer Memories-」公式サイト
イベントの冒頭,九条氏が会場に集まった絶体絶命都市シリーズのファンに向けて,長めの挨拶を行った。それによると,最初に震災をテーマにしたゲームを作ろうと考えたのは20年前,1998年とのこと。そして,2011年に「絶体絶命都市4」を世に送り出すべく準備を進めていたものの,諸事情によってリリースが中止となった。
それがこのたび,ようやく発売日が2018年10月25日に決定したということで,その間も待ち続けていたファンに対して,九条氏は感謝の言葉を口にしていた。
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九条氏はかつてゲーム実況動画に対して思うところがあったそうだが,そのエンターテイメント性のおかげで若い人が絶体絶命都市シリーズを知るきっかけになったとし,「面白おかしく盛り上げてくれた実況者の皆さんにもお礼を言いたい」と述べた。
また,シリーズ作品のパブリッシャだったアイレムソフトウェアエンジニアリングに向けて,「絶体絶命都市」の名称や開発データをそのまま使わせてくれたことに感謝の意を示している。
さらに,九条氏は今回のイベントのために用意した「絶体絶命都市4 Plus」のプレイアブルバージョンに触れた。九条氏によると,会場で体験できる冒頭のシーンは開発期間の終盤に手を付けたとのことで,この日の朝まで変更を加えていたという。そのため,一部にボイスが入っていなかったり,調整不足だったりする部分があると説明した。
その後,「昨夜,できあがったばかり」だという「絶体絶命都市4 Plus」の最新映像が公開された。これは冒頭のシーンを主にピックアップしたもので,九条氏は「よく緊張感がないと指摘されるが,大きな災害の直後は人々が何をしていいか分からなくなる。その混乱を描こうとした」「高い場所に上がると状況を把握しやすいが,その一方で高い場所は危険も多い」といった解説を加えていた。
九条氏はシリーズ作品の開発秘話も披露している。そもそも「絶体絶命都市」を作ろうと思ったきっかけは,小松左京氏の「日本沈没」をはじめとした震災をテーマとした小説や映画,コミックは存在したが,ゲームにはなかったことだという。当初は「ゲームこそ,地震を取り上げるのに向いている」という思いだけがあり,災害に遭遇したときに役立つ内容にしようとは考えていなかったそうだ。
そんな経緯でスタートした絶体絶命都市シリーズだが,「絶体絶命都市3 -壊れゆく街と彼女の歌-」はゲーム内で防災マニュアルが閲覧できる仕様となっている。これは「絶体絶命都市」と「絶体絶命都市2 -凍てついた記憶たち-」を遊んだプレイヤーが,「このゲームで得た知識は,実際の災害時に役立つのでは」と言い始めたことが発端だったという。それを知った九条氏は「間違った知識を与えては大変」と考え,専門家の協力を仰いで防災マニュアルを制作したそうだ。
ただ,「絶体絶命都市3」はPlayStation Portable用ソフトだったため,外にも持ち歩けるが,「絶体絶命都市4 Plus」は据え置き機であるPlayStation 4向けである。肝心の災害時には,ゲーム内の防災マニュアルを閲覧できないかもしれない。
そこで「絶体絶命都市4 Plus」では,ゲームと連動したスマートフォン向けコンパニオンアプリを用意。どこでも防災マニュアルを見られるようにするとのことだ。
これまでのシリーズ作品では,建物が倒壊したり,島が沈んだりといった災害のダイナミックな面が主にクローズアップされているが,「絶体絶命都市4 Plus」では排泄や空腹といった被災者が直面する困難を再現しているという。
さらに被災者の心理面も扱っており,例えば「あそこが安全だ」という情報が入ってきても,それが必ずしも正しいとは限らないとのこと。プレイヤー自身が聞きかじったデマを広めてしまう可能性もあるそうだ。
加えて,「絶体絶命都市4 Plus」はVRモードも搭載される。これがゲーム本編とは異なり,ゲーム内のフィールドを見て回れる内容だという。九条氏曰く「VRモードでは,よりリアルな臨場感を味わえる」とのこと。
トークテーマは絶体絶命都市シリーズの特徴である「変な選択肢」にも及んだ。九条氏は「自分では変だと思っていない」「選びたくなる選択肢を作りたい。『はい』『いいえ』しかないのはイヤ」と述べたうえで,「同じ『はい』でもイヤイヤな感じもあれば,イライラした感じもある」「真摯に選択肢を作れば,ああなるのでは」と持論を語った。
そうした選択肢の中には他人を押しのけてでも助かろうとするものもあるが,「(極限の状況下では)そんなに悪いことではない」という九条氏。その例として,第1作「絶体絶命都市」での同行者を置いて脱出する選択肢を挙げた。「当時,スタッフはそれをバッドエンドと呼んでいたが,『自分が助かりたい』という気持ちで選択したのだから,そこに良い悪いはない。世間体を気にせず,そのときの気持ちに沿って選択できるのがゲームのいいところ」と話していた。
なお,「絶体絶命都市4 Plus」にはシリーズ最多となる60名以上のキャラクターが登場する。九条氏によると,比嘉夏海ら従来のキャラクターも含まれるとのこと。「キャラクターによって,メインストーリーに絡むかどうかはバラつきがある。ただ,脇役であっても一人一人に人生がある。彼らが震災の5分前,1日前,1年前に何をしていたか,それぞれに設定を作っている」と語った。ただし,こうした設定がゲーム内でまったく明かされないキャラクターも存在するそうだ。
終盤,「絶体絶命都市4 Plus」の体験版が7月に配信予定であることも明かされた。今回のイベントのために用意されたものをブラッシュアップした内容となるとのことだ。
また,既報のとおり,7月から全国の販売店舗やイベント会場にて体験会が行われることが発表されている。一部の会場には九条氏も顔を見せる予定とのこと。
締めの挨拶では,九条氏が「災害をテーマにしていることで,『不謹慎じゃないか』という意見が挙がることもある。しかし,私自身,大阪出身で,両親は先日の地震(大阪府北部地震)も経験した。1月には阪神淡路大震災の慰霊にも行きました」と述べると,「今も心の痛みが癒えない人がいる中で,あらためて『絶体絶命都市』をきちんと作ろうと考えました。本当に災害の怖さを感じられる,本当に災害の嫌な思いが感じられるものにしようと」と続けて,「絶体絶命都市4 Plus」に対する意気込みを伝えた。
トークショーが終わると,「絶体絶命都市4 Plus」初の体験会が行われた。会場に用意されていたのは,ゲームの冒頭に登場するフィールドを自由に探索できるバージョン(制限時間は10分)と前述のVRモードだ。
今回,筆者は前者のバージョンを体験することができた。舞台は大震災発生直後の街の中。バスが転倒し,ビルが倒壊しているという明らかな大惨事の光景が見られるが,その一方で人々は大きなパニックに陥ることもなく,スマホで撮影したり,就職活動中の学生達が面接のことを気にしたりしている。
一見すると,「そんなに落ち着いていられるなんてあり得ない」と考えがちだが,このとき,筆者は東日本大震災が発生した日(2011年3月11日)のことを思い起こした。あの日,取材を終えて都内の自宅に帰った筆者は,地震発生時に原稿を書いていた。その後も余震が続く中で原稿を書き上げると,その日のうちに4Gamerに記事は掲載された。
つまり,筆者も編集部のスタッフも,震災の当日はほぼ普段どおりの行動を取っていた。それが,いつもどおりでなくなったのは,その翌日からだった。このように人は自分の理解を超える事態に直面すると,意外とパニックに陥らないのかもしれない。その意味でも,「絶体絶命都市4 Plus」の光景は相当リアルに描写されていると感じた。
さて,このバージョンではプレイヤーが特定の地点に到達したときに発生する強制イベントが3つ用意されている。例えば,ある交差点に近づくと,震災に遭った生徒を心配する先生に出会う。その後,首尾よく生徒に遭遇して,先生のところに戻るとさらなる展開が待っているといった次第だ。
もちろん,イベント中に登場する選択肢は真っ当なものから,ちょっと首を傾げながらも思わず選びたくなるようなものまで用意されている。「絶体絶命都市」らしさは健在だ。
7月の配信が予定されている体験版に制限時間が設けられるかは未定だが,会場のスタッフ曰く「10分間ですべての強制イベントを見るのはかなり厳しい」。体験版が配信された暁には,さらにいろいろと試してみたいものだ。
「絶体絶命都市4 Plus -Summer Memories-」公式サイト
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