インタビュー
あの“懐かしい未来”がブラウザゲームとして甦る。「電脳コイル 放課後探偵局」のインタビューを掲載
その先行テスト開始に先駆け,今回4Gamerでは電脳コイル 放課後探偵局のプロデューサーである石動太一氏にインタビューを実施。まだまだ謎の多い本作について,「電脳コイル」のいちファンとして気になる点をしっかりと聞いてきたのでチェックしてほしい。
「電脳コイル 放課後探偵局」公式サイト
大黒市で暮らす小学生の冒険。原作の空気感を忠実に再現
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。最初に,「電脳コイル 放課後探偵局」がどのようなゲームなのか教えてください。
「電脳コイル 放課後探偵局」プロデューサー 石動太一氏 |
ブラウザゲームなので,隙間時間に遊ぶことを意識して作っています。「電脳コイル」の舞台となっている大黒市を探索し,メタバグや電脳アイテムなどを探すというのが「電脳コイル 放課後探偵局」の基本的な内容です。探索を指示するとキャラクターが出発して,しばらくすればメタバグを入手して帰ってくる。手に入れたメタバグはメガばあのところに持って行き,メタタグを作ってもらえたりします。
4Gamer:
プレイヤーの主な目的となるのはなんでしょうか。
石動氏:
プレイヤーは,さまざまなミッションをこなしていくことで,「電脳コイル」の物語を追体験できます。原作に沿ったエピソードもあれば,完全オリジナルのエピソードを楽しめるようにもなっていて,例えば,猫目が子供達を使ってメガマスにひと泡吹かせようとするお話なども用意しています。
4Gamer:
原作の時間軸でいうと,どのあたりをモチーフにしているのですか。
石動氏:
「電脳コイル」はゲームとして切り取れるところがたくさんあったのですが,今回は原作アニメの序盤から中盤にかけてぐらいをメインにピックアップしました。
4Gamer:
主に子供達のドタバタ劇が描かれているあたりですね。
石動氏:
そうです。みんなで謎を解いていくとか,都市伝説の秘密を暴くといった部分を取り上げています。
4Gamer:
プレイヤーの立ち位置はどうなるのでしょうか。
石動氏:
原作の登場人物を操作するわけではありません。大黒市立第三小学校に通う,ひとりの小学生という設定です。性別やキャラの外見は,何種類か用意されたものの中から選ぶ形になります。
4Gamer:
どこかのチームに所属しているということではないんですか。
今後,クラブみたいなものも入れていきたいとは思っていますけど,それはまだ計画の段階です。とはいえ,都市伝説を解明するために情報交換をしてほしいと思っていますので,プレイヤー同士が仲良くなるきっかけになるようなものを導入するつもりです。
4Gamer:
原作キャラとの絡みを楽しみにしている人も多いと思いますが,接触の機会はあるのでしょうか。
石動氏:
エピソードやミッションでそういった機会はあります。ダイチから「あの転校生をやっつけたいから,追跡くんの強いやつを用意してくれないか」と頼まれたりと。
4Gamer:
原作にあった重要なエピソードに参加するといったことはできますか。
石動氏:
原作エピソードをそっくりそのまま再現はしていません。ただ,後で俯瞰して見ると,繋がりに気付けるような作り方を意識しています。
ですので,エピソードはオリジナルと言えばオリジナルですが,ベースは原作に則したものになっていますね。オープン後も順次追加していく予定ですから,プレイヤーから「この話が好きだった」みたいな意見があれば,取り入れていきたいです。
4Gamer:
原作のストーリーを追いかけるわけではないのですね。
石動氏:
ええ,ストーリーに沿って展開するタイプのゲームですと終わりがきてしまいますが,小学生としての大黒市での暮らしがずっと続いていくものを作りたかったんです。
電脳怪奇倶楽部で情報収集。噂の発信源はプレイヤー
4Gamer:
ゲームの基礎となる探索はどういった仕様になっているのでしょうか。
石動氏:
メタバグの入手方法は厳密に設定されています。一例ですが,自分の電脳ポシェットの中に“レンガ壁”が入っているだとか,その時の天気や実時間が昼か夕方かなんてことも関わってきますね。その条件に合致したものが手に入るという仕組みになっています。
4Gamer:
それはなかなか,把握するのが難しそうですね。
石動氏:
条件については,原作にも登場する"電脳怪奇倶楽部"という掲示板がゲーム内にもあって,そこに噂話として情報が流れます。雨の日に,キラバグを手に入れたプレイヤーがいたとすると,それについての噂話が流れるんです。その情報を元に,みんなで推理すれば入手方法が見えてくるというわけです。
4Gamer:
電脳怪奇倶楽部に載る情報は,すべてNPCによるものなんですか。
石動氏:
書きこむのはヤサコなどのNPCですが,その情報源はプレイヤーの行動がもとになっています。
4Gamer:
なるほど,プレイヤーのアクションと連動して更新されていくわけですね。
石動氏:
ええ。しかしあまり些細な情報では載らなくて,ある程度レアな情報である必要があります。
4Gamer:
その情報源となったプレイヤーの名前は表に出るのでしょうか。
石動氏:
出ますよ。レアなメタバグを獲得すれば,自分が噂されているという感覚を味わえるでしょう。
4Gamer:
メタバグからのメタタグの作成は,原作のとおりメガ婆がやってくれるんですか。
メガばあのところに行けば,なんでも作れるようにはなっています。ただ,メタタグを作るためには探索で手に入る合成レシピが必要で,そのレシピをもとにプレイヤーが合成をするという感じです。ちなみに,合成でしか作れないアイテムもあります。強い直進くんとか。
4Gamer:
強いアイテムは,名前に+1とか+2とかが付くイメージでしょうか。
石動氏:
Ver1.0とかVer2.0みたいなのもあれば,「かんしゃくだま」と「かんしゃくもどき」とか,名前が変わっているものもあります。説明文も「お情けに爆発」とか「涙が出るほどちょっと」とか微妙に違っています(笑)。
4Gamer:
プレイヤー同士での協力プレイはできるのでしょうか。
石動氏:
ゲーム中では,大黒市の地図を見るとほかのプレイヤーが今どこで何をしてるかが分かるようになっています。探索中に戦闘が発生するのですが,なかには強敵に遭遇して助けを求めているプレイヤーもいまして,そこに助太刀に入ることができます。
それによって,助けられたプレイヤーは本来なら倒せないような強い敵に勝つこともあります。助太刀してくれたプレイヤーの数が多ければ多いほど,その可能性がアップするんですよ。
4Gamer:
助太刀に何か制限はありますか。
石動氏:
この「助ける」というアクションは,ショートカットという能力を使っている設定になっていて,いわゆるクールタイムがあります。なので最初のうちは,そんなに何度も助けられません。
4Gamer:
ほかのプレイヤーに直接助けを求める方法はないのでしょうか。
石動氏:
Twitterのような「伝言板」というシステムがあります。そこで助けを求める書き込みをすると,自分を注目してくれている人の伝言板にもその書き込みが表示されます。戦闘を有利に運ぶためにも,とにかく仲間は増やしたほうがいいです。
4Gamer:
プレイ頻度の高い人と友達になれたら,いろいろとメリットがありそうですね。
石動氏:
役に立つと思いますよ(笑)。電脳怪奇倶楽部で何度も話題になるようなプレイヤーはとくに注目されるでしょう。
4Gamer:
ちなみに,プレイヤー間で戦闘が発生するということはあるのでしょうか。。
石動氏:
現時点ではありません。罠をしかけるといったことができると面白いかなとも思ったのですが,仕掛けたほうにどんなメリットがあるんだという話になりまして(笑)。
4Gamer:
嫌がらせにしかならないですね(笑)。
石動氏:
プレイヤーにはほかの人達と助け合ったり,都市伝説について相談したりして楽しんでほしいですね。また,ゲーム内という点にはこだわっていないので,外部サイトや掲示板などで相談してくれても全然かまわないです。とにかく,話が盛り上がればいいなと。
4Gamer:
お話をうかがっていると,各メタバグの取得条件を解明するためにはほかの人と相談することが重要そうですが,取得条件の解明は難しめになると考えていいでしょうか。
石動氏:
ええ,難しめですね。ただ,難しすぎてしまうと誰もクリアできなくなってしまうので,達成感を味わってもらうように調整します。
4Gamer:
作品の性格上,オンラインゲームは初体験という人もいると思うので,知らない人との会話に慣れていない人もいると思いますが。
石動氏:
電脳怪奇倶楽部は自動更新されるので,多少人見知りでも大丈夫だと思います。ほかの人のやりとりを見てもらうだけでもいいんじゃないかと。
探索に役立つ電脳ツールの数々。ただしペットはロストの危険性も!?
4Gamer:
原作ファンとしては,“メガビー”などを使えるのかどうかが気になります。
石動氏:
アイテムとしてメガビーや鉄壁は存在しますよ。とはいえ,実際にそれらを使うわけではなく,持っていると戦闘に勝ちやすくなるといった感じです。
4Gamer:
アイテムの所持数制限はありますか。
石動氏:
一応ありますが,驚くほど少ないということはありません。ただし,装備は3つまでとしています。武器を装備していけばサッチーやイリーガルに勝ちやすくなりますが,メタバグの入手条件には戦闘と関係ないアイテムが必要になることもあります。メガビーなしとか,メタバグを3つ持っていると何かが出るとか,すごく複雑な条件付けをしているものもあるので,ちょっと意地悪かもしれません。
4Gamer:
「これさえあれば戦闘に負けないぜ!」みたいな装備をしていればいいというわけでもないですね。
石動氏:
武器ばかりだと邪魔になるかもしれません。戦闘は助太刀でカバーしてもらうのがいいでしょう。
4Gamer:
原作に登場したペットは本作でも登場しますか。
石動氏:
もちろん出てきます。プレイヤーは複数のペットを持て,探索に連れていくペットはその都度選べるようになっています。ペットと一緒に行動していると,なつき度というプレイヤーへの愛着を示すパラメータが上がっていくんです。そうすると,一緒に探索に行ったときにレアなメタバグを見つけて来てくれたりもするんですよ。
4Gamer:
ペットはプレイヤーキャラクターのサポート役という感じなんですね。
石動氏:
はい。また,赤いものが好きとか,黒いものが好きという程度ですが,ペットにはそれぞれ好みがあります。それによって取ってくるアイテムに少し偏りが出るようになっています。なので,いろいろな種類のペットを飼っていただいて,欲しいメタバグなどに合わせて連れていく子を変えるといいと思います。
でも,ほったらかしてるとなつき度が下がってしまうので,バランス良く連れ歩いてほしいですね。
4Gamer:
ちなみに,デンスケも入手できるのでしょうか。
石動氏:
デンスケは原作では唯一無二の存在ですが,使えないというのはみなさんも寂しいと思いますので……使えるようにしました。みんなでデンスケを可愛がってほしいですね。
なお,探索中にイリーガルに襲われるイベントが発生することもあります。そういうイベントに遭遇すると,ペットが感染してどんどん弱ってしまうので,注意しなければいけません。
4Gamer:
イリーガルに感染!? まさか……ペットのロストも再現してあるのですか……?
石動氏:
はい。ただし,よほどのことがない限りはそこまでいきませんよ(笑)。わざと殺す気でかからなければ,そうそうロストしないようにはなっています。イリーガルに感染した場合は,ちゃんと治療してあげてくださいね。
4Gamer:
原作では,相当治療が難しかったですけど。
石動氏:
ゲームでは電脳虫下しを作るためにあそこまで苦労することはないので大丈夫です(笑)。
4Gamer:
ゲームの放置が原因でロストすることはあるのでしょうか。
それはありません。弱ったペットを何度も探索に連れていったりしない限りは大丈夫ですよ。
4Gamer:
ペットはゲーム開始時から入手できるんですか。
石動氏:
はい。ゲーム開始時に必ず1匹入手できます。プレイヤーは常に1匹以上のペットを持てるように考えていて,仮にロストしてもすぐに代わりのペットが手に入るようにはしています。
4Gamer:
ちなみに,課金アイテムはどのような効果があるものを想定しているかも教えてください。
石動氏:
探索にかかる時間を短縮するとか,探索の予約数の上限を増やすものを考えています。
4Gamer:
そのあたりは,ブラウザゲームでは定番ですね。
石動氏:
ガンガン探索していけばレベルが上がるのも早くなりますし,運動のパラメータが上がれば探索時間も短くなりますからね。価格をあまり高くするつもりはなく,ボタンを押したら何十円か引き落とされて探索が終わりといった感じになると思います。
4Gamer:
先ほどレベルの話が出ましたが,プレイヤーキャラクターにはどのような能力値が設定されているのかも教えてください。
石動氏:
キャラクターの能力は勉強,運動,友情の3つで表されます。運動が高くなると探索時間が短くなりますし,勉強が高いと探索時に良いものを見つけやすくなり,戦闘にも勝ちやすくなります。そして友情はフレンド登録できる人数が増えるのと,助太刀の上限数が上がりますね。
4Gamer:
その3つはどのように伸ばしていくのでしょうか。
石動氏:
ポイントを割り振ります。本作ではレベルを“探偵ランク”と表現しており,それが上がるとステータスポイントを入手できるので,それを好きなように割り振れるという形になっています。
4Gamer:
MMORPGなどでは,戦闘で経験値を稼いでレベルアップになりますが,本作でのレベルアップはどうなっていますか。
石動氏:
探索をすると,少しずつ経験値が溜まっていきます。そして,経験値がある程度たまるとレベルアップできるようになるんですよ。
4Gamer:
ということは,レベルアップするタイミングを任意で選べるわけですね。
石動氏:
はい。5レベルぐらい上げられるけど,あえてそのままにしておくということも可能ですよ。レベルが上がったタイミングでショートカットの回数やメガネに設定されているHPが回復するので,それを上手く利用してもらえればと考えました。
4Gamer:
ちなみに,戦闘に負けるとどうなるのでしょうか。
石動氏:
戦闘に負けると,メガネのHPが減っていきます。0になると壊れて,修復するまでの間はメガネの機能が使えなくなるので,その状態で探索に行っても良いものが見つからないんですよ。ただし,メガネは複数持てるので,壊れたら修復を待つか,取り替えて探索に行くという形になりますね。
4Gamer:
メガネが壊れると,原作では確か修理に“お年玉2年分”が掛かりましたよね。
石動氏:
その設定の再現はやめました(笑)。原作から持ってきたい要素は一杯あるんですけど,詰め込みすぎてしまうとゲームにならなくなるので。
4Gamer:
なるほど。では,イマーゴや暗号炉などもゲームでの再現は難しいですか。
石動氏:
イマーゴや暗号炉はどうしていいかわからないですね(笑)。……でも,そのうちやるとは思います。このゲームには現在,スキルの概念がないので再現しづらいですが,可能ならばできる限り,ゲームにも取り込みたい要素です。そのあたりは今後に期待してください。
4Gamer:
最後にゲームの登場を待っている読者へのメッセージをお願いします。
石動氏:
僕自身,「電脳コイル」という作品が大好きです。放映している頃も,「これはゲームにしたら面白いだろう」とずっと思っていて,それからだいぶ時間は経ってしまいましたが,ようやくゲームとして世の中に出せるようになりました。多くの「電脳コイル」ファンの方に,「電脳コイル 放課後探偵局」を好きになってもらえると嬉しいです。
4Gamer:
ありがとうございました。
2010年の発表から随分と時間が経った「電脳コイル 放課後探偵局」だが,プレイできる時がついに訪れる。
今回のインタビューでは謎の多かったゲームシステムについて聞くことができた。インタビュー中でも語られているが,「電脳コイル」はゲームに向いた作品であり,その世界観や登場するガジェットの設定など,ゲームに生かせる部分が多々ある。それだけにファンが納得するように仕上げるのは非常に難しく,このあたりは実際にプレイしてみなければ分からないというのが正直なところだ。
話を聞く限り,まだまだアップデートの余地は多くありそうなので,自身も原作アニメの大ファンであるという石動氏が今後どのような形で「電脳コイル 放課後探偵局」の世界を構築していくのか,注目していきたい。
「電脳コイル 放課後探偵局」公式サイト
※画面は開発中のものです
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電脳コイル 放課後探偵局
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(C)磯 光雄/徳間書店・電脳コイル製作委員会 (c) GameOn Co., Ltd. All Rights Reserved.
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