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「ジンガを得た者が勝つ」,ジンガジャパンの「ファームビレッジ」はソーシャルゲーム界の黒船となるか?
ジンガという社名は,日本ではいささか馴染みがないかもしれないが,ソーシャルゲーム界における世界最大手のデベロッパだ。Facebookを母体としたジンガのソーシャルゲームは,1タイトルごとに数千万人規模のユーザーを擁しており,事実上世界最大のネットゲームデベロッパといえる。
日本でもソーシャルゲームは携帯電話を中心に大きなブームとなっているが,そこについに乗り込んできた黒船=ジンガは,日本のソーシャルゲームに何をもたらすのだろうか。
「リアル・ソーシャルゲーム」とは
最後に氏は,ジンガジャパンは「日本をゲームでつなげる」ことを目指し,その最初の作品として携帯電話専用のソーシャルゲーム「ファームビレッジ」をリリースすると宣言。ファームビレッジは,前述したFarmVilleの日本版である(ただし,もとのFarmVilleはPC用)。今回のサービス開始に伴い,ジンガジャパンはソフトバンクおよびmixiのサポートを取りつけており,今後は協力して事業を展開していくと語った。
「ジンガを得た者が,トラフィックとユーザーを得る」
孫氏は,スマートフォンやスマートパッドの成長をふまえ,今後のモバイルインターネットは「ソーシャルなしには成立しない」と断言。そのソーシャルに華を与えるのがソーシャルゲームであり,ジンガはそのソーシャルゲームのナンバーワンなのだと述べた。ちなみに本人曰く,「ソフトバンクの新製品発表がない場所に自分が姿を現すのはかなり珍しいこと」だそうで,ジンガに対する期待の大きさがうかがえる。
またmixiは,プラットフォーマーとしてジンガや各SAP(ソーシャルアプリ・プロバイダ)とコミュニケーションを取っており,プラットフォームへの要望は随時反映中であると言う。
携帯専用ソーシャルゲーム・ファームビレッジ
「ファームビレッジ」は,ジンガジャパン初の作品であり,「友達と遊べばずっと楽しい」を標語としたリアル・ソーシャルゲームの第一弾であると考えられる。氏が,「日本の技術力と,シリコンバレーのイノベーションを融合させた」と語るこの作品は,FarmVilleをベースとしつつも,日本の携帯電話に最適化させた作品となっている。FarmVilleの特徴である「広い農園」「デコレーションで自己表現」「友人とリアルで意味あるつながり(競争ではなく助け合い)」を維持しつつ,「好きなように,いつでもどこでも遊べる」環境を携帯電話上で実現したのが「ファームビレッジ」なのだ。
ちなみに「ファームビレッジ」は,現在すでにmixiアプリとしてプレイが可能となっている。
ソーシャルゲームの巨人はどこに行くのか?
「ソーシャルゲームは既存のゲームより客層が広いとはいえ,コンセプトが違うしテーマも違う。最終的には二つ(コンシューマゲームとソーシャルゲーム)は共存していくだろう」
「ゲーム制作にはクリエイティブな部分も重要だが,数字や統計を使ってヒットする確率を高めていくことも大事」
「mixiと提携したのは,mixiが日本で最大のSNSだから」
「ファームビレッジは現状では完全に携帯専用。スマートフォンでの展開は未定。ただしジンガ・USはスマートフォンのタイトルを持っている」
「日本のゲームのイノベーションの歴史には大いに期待している。今あるゲームを普及させるだけでなく,新しいゲームを日本で作って世界に広めるようなこともしていきたい」
「mixiには類似のゲームもあるが,FarmVilleも類似のゲームが先行している状況で勝者となった。ゲーム性・ソーシャル性が強ければ勝てるだろう」
などなど。とはいえ,ジンガジャパンの次のタイトルが具体的に出なかったのは,いささか残念だったといわざるをえない。
ちなみに,筆者は取材帰りの電車の中で「ファームビレッジ」をプレイしてみたが,確かにこれはFarmVilleを携帯電話に最適化させた作品だと感じた。驚いたのは操作性だ。正直いって,現状の,お世辞にもインタフェースが良いとはいえない(ましてやある程度のリッチさを感じることも難しい)作品が頻出する携帯ソーシャルゲーム業界において,頭一つ抜けたクオリティのインタフェースをすでに完成させているという印象を受けた。
一方で,気になることがないわけでもない。確かにmixiは会員数では日本最大のSNSで,必然的に携帯で(あるいは携帯でのみ)mixiを利用しているユーザーも非常に多いと想定される。だが,ソーシャルゲームの日本での本流がGREEやモバゲーにあるというのは,ほぼ疑いのない状況である。現状ではPC用のソーシャルゲームはまったく出す気がなさそうなジンガにとって,mixiのみにサービスを提供するメリットはどれほどあるのだろうか? あるいは,mixiが,よりソーシャルゲームと親和性の高いプラットフォームに変化していくということなのだろうか?
また,ジンガ本体にしても,ソーシャルゲーム業界で極めつけに突出した企業であるのは揺るがないとはいえ,FarmVilleは,もはやFacebookのナンバーワンアプリではなくなっている(2010年11月現在。ただしゲーム分野では相変わらず1位)。ここで,さらにジンガの独特のゲーム開発史を加味すると,「新しいゲームを日本で作って世界に広めるようなこともしていきたい」という言葉にはリップサービス以上のものを感じてしまったりしなくもない。
ともあれ,ソフトバンクに加え,ここまでソーシャルゲームでは一種独特の静かなポリシーを貫いてきたmixiというパートナーを得たジンガジャパンが,今後どのようなソーシャルゲームを展開してくるのか,注目したい。
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