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当初の計画よりもスペックが大きく低下したX79チップセット。IntelのPCI Express 3.0対応計画も流動的に
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印刷2011/10/29 00:00

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当初の計画よりもスペックが大きく低下したX79チップセット。IntelのPCI Express 3.0対応計画も流動的に

X79チップセット(2011年9月13日の記事より)
画像集#002のサムネイル/当初の計画よりもスペックが大きく低下したX79チップセット。IntelのPCI Express 3.0対応計画も流動的に
 IntelのデスクトップPC向け次期フラグシップCPU「Sandy Bridge-E」(開発コードネーム)。2011年第4四半期中とされるその市場投入が近づいたことで,主要マザーボードベンダー各社は,Sandy Bridge-Eのプラットフォームとなる「Intel X79 Express」(以下,X79)チップセット搭載マザーボードの情報を公開し始めた。
 そこで分かってきたのは,噂されていたとおり,X79が計画当初よりもスペックダウンしていることだ。今回はその点をまとめてみたいと思う。

製品版X79のブロック図(左)と,計画当初のブロック図(右)。詳細は本文で
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SATA 6Gbps対応は2ポートに

8 DIMM構成は制限あり


 1つはっきりさせておくと,10月下旬時点でマザーボードベンダー各社が公開しているのはX79マザーボードの写真程度である。詳細なスペックの情報開示は行われていない。
 ただ,5月末のCOMPUTEX TAIPEI 2011(以下,COMPUTEX 2011)や,9月中旬のIntel Developer Forum 2011 San Francisco(以下,IDF 2011 SF)で参考出品されていたマザーボードと比較すると,製品版マザーボードには,明らかな違いがある。それは,Serial ATA(以下,SATA)周りのデザインだ。

 「Patsburg」(パッツバーグ)の開発コードネームで知られるX79は,当初,SATA 6Gbpsを10ポートサポートし,CPUとチップセット間の帯域幅を拡張するため,従来のDMI 2.0に加えて,PCI Express(以下,PCIe) 2.0 x4でも接続される計画となっていた。しかし,今回公開されているマザーボードを見る限り,チップセットレベルだとSATAのサポートは6ポートに留まり,しかもSATA 6Gbpsはそのうち2ポートしかないようである。

ECSがCOMPUTEX 2011で公開した「X79R-A」。写真ではシルク印刷が隠れてしまっていて申し訳ないが,オンボートの10ポートすべてがSATA 6Gbps対応とされていた
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 マザーボードベンダー関係者は,筆者の取材に対し,「COMPUTEX 2011の終了後,SATA 6Gbpsのサポートは6ポートになり,8月になって2ポートのみになった」と述べているが,その紆余曲折ぶりは,COMPUTEX 2011やIDF 2011 SFで公開されていたX79マザーボードと比べてみればよく分かる。
 COMPUTEX 2011の時点で,GIGA-BYTE TECHNOLOGY(以下,GIGA-BYTE)やECSなどが公開していたマザーボードからは,X79がSATA 6Gbpsを10ポート持つことがうかがえた。しかし,IDF 2011 SFの時点になるとGIGA-BYTEのX79マザーボードがチップセットレベルで対応するSATA 6Gbpsポート数は6になり,ついに製品版では2ポートに削られてしまったのだ。

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GIGA-BYTEがCOMPUTEX 2011で公開した「GA-X79A-UD3」のエンジニアリングサンプル。同社のルールでSATA 6Gbps対応を示す白いSATAコネクタ10ポートに加え,SATA 3Gbps対応の黒いコネクタも4ポート搭載されていた
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IDF 2011 SFでGIGA-BYTEが公開した「G1.Assasin 2」のエンジニアリングサンプル。合計14ポートのSATAコネクタ中,6ポートがチップセット経由のSATA 6Gbpsとなっている。黒がSATA 3Gbps,グレーはオンボードチップによる
そしてこちらがFacebookで9月下旬に公開された製品版G1.Assasin 2(左)。チップセット側からのSATA 6Gbps出力が2ポートに削減され,SATAコネクタの総数も計8ポートに変更されている。これは同時に製品版の写真が公開された「GA-X79-UD7」などでも同様だ(右)
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 別のマザーボード開発者によれば,この変更は,CPUとX79チップセット間のPCIe接続に問題があり,SATA 6Gbpsポートを多く用意できるだけの帯域幅が確保できなくなったことによるもの。同関係者いわく「Intelは『チップセットのリビジョン変更で,将来的にSATA 6Gbpsを最大6ポートサポートできるようになる』とマザーボードベンダーに通達しているが,その時期は未定」とのことだった。

Kingston TechnologyがIDF 2011 SFで公開した「X79+8 DIMM構成」の動作デモ。同社の担当者は「デモには片面実装メモリを利用している。両面実装タイプで8DIMM構成を実現するのは難しい」と説明していた
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 メモリスロットは,8 DIMMと4 DIMMの2構成が存在するが,メモリベンダー関係者は,「Sandy Bridge-Eを8 DIMM構成で動かす場合,片面実装のメモリモジュールのみを使うことを強く推奨する」と,1チャンネルあたり1 DIMMの構成が標準環境であることを示唆していた。同様にマザーボードの開発者も「メモリインタフェースが4chになったため帯域幅は大幅に増えたものの,タイミングはよりシビアになってきており,これが性能面での足枷になることもある。その意味では,4 DIMM構成でも片面実装のモジュールを使ったほうが性能は出しやすい」と述べていたりする。Sandy Bridge-Eプラットフォームが持つ最大のウリである4chのメモリインタフェースを活かすには,相応の工夫が必要になるようだ。
 ただ,「Intel X58 Expressプラットフォームでも,3chメモリインターフェースの性能を引き出すのに一定の時間を必要としたように,4chインターフェースも,BIOSアップデートなどで性能が向上してくるだろうと期待している」と,楽観的に捉えるメモリベンダー関係者も存在している。

Facebookで公開されたGIGA-BYTEのマザーボード写真。前出のGA-X79-UD7が4 DIMM,その下位モデルとなる「GA-X79-UD5」が8 DIMM,さらに下位の「GA-X79-UD3」が4 DIMMと,変則的なメモリスロット構成になっている
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 また,マザーボードの写真だけでは分からない情報として,少なくともSandy Bridge-Eの初期モデルが,計画当初のPCIe 3.0対応を見送り,PCIe 2.0サポートに留まることも,主要マザーボードベンダーのほとんどが認めている。

IDF 2011 SFで展示されていたMSI製X79マザーボードのエンジニアリングサンプル。PCIe Gen.3(PCIe 3.0)対応を謳っていた
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 Intelに近いOEM関係者は,「2012年第1四半期に市場投入される予定の,Sandy Bridge-Eベースとなる次世代Xeon『Xeon E5』では,計画どおりPCIe 3.0に対応する。最大8ポートのSATA 6Gbpsもサポートされる見通しだ」と明かしている。ただし,「LGA2011のデスクトップPC環境だと,PCIe 3.0の対応はIvy Bridge-Eまで見送られる可能性が高い」(同関係者)。
 Intelは,LGA2011プラットフォーム向けのIvy Bridge-Eを2013年半ばに市場投入する計画を持っていたが,現在では,2012年第4四半期に前倒しするとも伝えられている。なので,デスクトップPCにおけるPCIe 3.0の対応はそこでもいいという判断が働いた可能性があるというわけだ。

 現時点の計画だと,IntelはIvy Bridge-EでもX79プラットフォームを継続して利用する意向。主要マザーボードベンダーがX79マザーボードを「PCIe 3.0 Ready」と謳っているのは,Ivy Bridge-Eを睨んでのものだというのが,有力な説である。

 なお,マザーボードベンダー関係者などの話を総合して,最終的なIntel X79プラットフォームの仕様をまとめたものが下ので,これを見ると,X79が当初の計画からどれだけ後退したか一目で分かる。
 ちなみに,Intelが持っていた当初の計画だと,Sandy Bridge-Eには8コア版も計画されており,実際,Sandy Bridge-EベースのXeonには8コアモデルも用意される。ただ,NehalemベースのCore i7 Extreme Editionで6コアモデルが追加されたように,将来的に8コア版が登場する可能性は残されているようだ。

※1 シングルサイドDIMM×8枚構成をサポートしたマザーボードも用意される
※2 「チップセットのリビジョンアップで6ポートのSATA 6Gbpsに対応できる」と,Intelは主要マザーボードベンダーに通達している
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PCIe 3.0はどうなる?

GPUはSouthern IslandとGK104待ちか


 LGA2011プラットフォームにおけるPCIe 3.0対応の先送りを受け,2012年第1四半期末の市場投入が計画されている次期LGA1155 CPU「Ivy Bridge」(アイヴィブリッジ,開発コードネーム)におけるPCIe 3.0の対応についても見直しがかかる可能性が出てきたと,複数のOEM関係者が指摘している。
 あるマザーボードベンダー関係者は筆者に対し,「Ivy BridgeのPCIe 3.0対応の検証はようやくスタートした。しかし,互換性問題がいくつか生じており,Intel側も,PCIe 3.0対応に関して,ややトーンダウンしている印象を受ける」と述べていたりする。

 別の業界関係者によれば,PCIe 3.0の策定において,GPUメーカーと,Intelなどほかのメンバーとの間で,電源規格の拡張をめぐる対立があったという。同関係者によれば,GPUメーカー側は,PCIe 3.0において,275Wと350Wの電源規格を盛り込むことを主張したが,他の主要メンバーは,「電源規格は付帯条項に過ぎない」として,拡張をPCIe 4.0世代まで先送りすることを通達したとのだそうだ。
 そのためGPUメーカーは,PCIe 3.0への対応をキャンセルし,PCIe 4.0へ移行するという強攻策すら一時期検討していたとされ,「それこそが,グラフィックスカードのPCIe 3.0対応が遅れ,いきおいマザーボードでのテスト開始が遅れた大きな要因の1つ」と分析する関係者も存在するほどである。

 以下,GPU名はいずれも開発コードネームとなるが,グラフィックスカードベンダー関係者によると,AMDは2012年第1四半期中に次世代GPUファミリー「Southern Islands」(サザンアイランド)のPCIe 3.0対応版を市場投入予定とのこと。対するNVIDIAは同第2四半期に,「Kepler」(ケプラー)世代の「GK104」でPCIe 3.0移行を開始する計画だと言われている。ここ数年におけるNVIDIAの製品ロードマップからすると最初は“GK100”では? と思う人もいるだろうが,これは現在,NVIDIAの製品ロードマップに「GK100」が存在せず,デュアルGPUソリューションと思われる「GK110」がフラグシップに位置づけられているためのようだ。

 いずれにせよ,「このスケジュールも,Ivy BridgeのPCIe 3.0対応が遅れれば,大幅にずれ込む可能性がある」(同関係者)。依然として流動的な状況にあるというわけである。せめてIvy Bridgeプラットフォームは,当初の予定どおり,フルスペックで市場投入されてくれるといいのだが。
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