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イベント
初の東京ビッグサイト開催となった「ゲームマーケット2013春」レポート。過去最大規模の会場で見かけたアナログゲームを写真で紹介
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出展者も国内アナログゲームの主要メーカーから,輸入ショップや同人サークルまで合わせて,過去最大となる222以上のブースが軒を連ね,参加者数も5000名以上。今回も,できるだけ多くのブースを写真と共に紹介していくので,その熱気の一端を感じてもらえれば幸いだ。
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「ゲームマーケット2013春」公式サイト
カナイセイジ氏の新作「ロストレガシー」
ゲームマーケット2013春の大きな話題の一つといえば, 2012年に発売されたカナイ製作所の「Love Letter」のシステムを利用した「ロストレガシー」が発売されたことだろう。ワンドローの木皿儀隼一氏とカナイセイジ氏のコラボ作品である同作は,全16枚という少ないカードで遊べる「Love Letter」のシステムをベースにしながら,“宝探し”という要素を加味したゲームとなっている。
一箱に基本セット「星を渡る船」と拡張セット「空中庭園」が同梱されており,それぞれで遊べるだけでなく,これらのカードを自由に組み合わせて遊ぶこともできる。ゲームギミックに関する挑戦としても,ユニークなタイトルだ。
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■日本ボードゲーム大賞授賞式
ゲームマーケット会場において,「世界のボードゲームを広める会ゆうもあ」が主催する日本ボードゲーム大賞の授賞式が,ささやかながら行われた。
投票部門では前出の「Love Letter」が大賞を受賞したほか,その年に発売されたゲームの中で,もっともボードゲームの普及に貢献したゲームに与えられる「ゆうもあ賞」には,ドイツのアミーゴ社の「クラック」(デザイン:H・シャフィール)が選ばれている。同製品はエルフ,メビウスゲームズ,ブラザージョルダンが輸入販売を行っており,今回は各輸入者を代表してエルフ 営業部の明石康孝氏が表彰式に臨んだ。
「Love Letter」が投票部門で大賞を受賞したカナイセイジ氏。「これだけ評価していただいてありがたいです。さらに16枚でいろいろなゲームを作っていけたらと思っています」 「ゆうもあ賞」を受賞した「クラック」。「単純で短いゲーム(最短5秒)の割りに奥深いことがよかったのでしょう。親御さんには片付けが簡単というのも魅力だったかもしれません。家族で遊べる分かりやすいゲームです」と明石氏
商業化と創作同人
ビッグサイトへの移転により,さらなる拡大を遂げたゲームマーケット。ゲームサークルの中でも,上記のカナイ製作所をはじめ,商業レベルの活躍をしているクリエイターが増えてきて,それをバックアップするゲームの制作環境も整ってきた。そのため,ゲーム印刷のクオリティは格段に上がり,商業出版と見紛うレベルのものも多い。
また,規模の拡大につれてWebでの予約取り置きが増える傾向にあるが,少数限定のレアなゲームを求めて開場前に並んだ人々の数は,昨年より倍増した1500名に達した様子。「Love Letter」のカナイ製作所や,「惨劇RoopeR X」のBaka Fire Party,愛らしいイラストが人気の「どうながねこぞく」(どうながねこぞく売り場)など,開始早々に長蛇の列となったブースもある。
だがその一方で,手作り感を大事にしたいと感じるデザイナーやサークルも多く,10〜100部程度の手作りゲームを持ち込んで,お客さんとコミュニケーションしながら売ること自体を楽しんでいるサークルも少なくない。
また,高額化しやすいボードゲームの世界で,手軽に遊べるシンプルなゲームを追求した「500円ゲームズ」という企画が生まれ,多くのサークルが低価格で遊びやすいゲームに取り組んでいるのは,目を離せないムーブメントといえるだろう。
商業化とアマチュアリズムは,ゲームマーケットに残された課題の一つでもあり,商業化が進んでパブリッシャとして確立するブランドが増える一方で,アマチュア精神を忘れずにゲームマーケットを楽しむスタイルもまた,否定されるべきではない。筆者としては,この2つがこれからもよい形で共存していってほしいと願うばかりである。
![]() ワンコインで遊べるゲームを作る「500円ゲームズ」。「Love Letter」も,最初はこの企画から生まれたタイトルだ |
![]() 500円ゲームを多数並べていたテレキネシスゲームズ。中央の「カラテ」は,話題の「ニンジャスレイヤー」のカードゲームで,Twitterで許可をもらって制作したとのこと |
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人狼,人狼,人狼!
このところ人気爆発中の「人狼」系ゲームも,今回のゲームマーケットで多数見られたタイトルだ。人狼からアナログゲームに入った,いわゆる「人狼クラスタ」のサークルはいくつもあり,「うそつき人狼」の株式会社人狼や,「箱庭の人狼」の楽々亭などが,それぞれの目指す人狼を発表していた。
![]() 4Gamerでもおなじみの徳岡正肇氏は「人狼村の革命!」を出品。「人狼」の舞台となった東欧の村にも歴史の波が押し寄せ,革命,思想闘争と粛清の嵐が吹き荒れる |
![]() ホビージャパンの「レジスタンス:アヴァロン」。アーサー王物語の世界で,人狼に似たチーム制の心理戦を行う |
新作・注目作をもろもろピックアップ
![]() 老舗のゲームメーカー,ホビージャパンからは注目作が続々登場。「ル・アーブル:内陸港」(7月発売)の先行サンプルを限定販売 |
![]() 体験コーナーで,神経衰弱+アクションゲームの「ドブル」に挑戦 |
![]() カードで城を組み上げる「日本の城」。ゲームマーケットでの最速記録は,1分28秒34とのこと |
![]() 新作のデモンストレーションなどを多数行っていたアークライトゲームズブース。秘密結社を表す8つのデッキを2つずつ組み合わせ,敵の秘密基地を狙う「スマッシュアップ」は,デッキの準備が必要ないTCGのようなゲーム。「ゾンビの海賊団」といった,燃える組み合わせが作れる |
![]() 「天空都市ヴィラコチャ」や「ギルドマスター」などのゲーム翻訳を担当された健部伸明氏。「『ヴィラコチャ』は,拡張セット『有翼蛇(ケツァルコアトル)の道』を加えるとさらに面白くなる」とのこと |
![]() 新作「ロストレガシー」が注目のワンドロー。そのほかに人気ファンタジーコミック「ベルセルク」を原作とした「Battle of Berserk」も登場していた。毎回ルールを変えて繰り返し遊べる,カードを使った2人対戦型バトルゲームとのこと |
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![]() 昭和テイストあふれる学園生活で,さまざまなシチュエーションを手持ちのアイテムで解決する「キャット&チョコレート 学園編」 |
![]() 濃い内容の2人対戦ゲーム「タルギ完全日本語版」は今夏発売予定 |
![]() ゲームストア・バネスト中野店長のオススメは「METRO2033」。ご存じ同名PCゲームのボードゲーム版で,モスクワの地下鉄でミュータントと戦うサバイバルゲームとなっている |
![]() オススメその2は「Kanzume Goddess」(罐装女神)。香港のジャパニメーション好きが作ったというデッキ構築型カードゲームとのこと |
![]() すぐれたビジュアルセンスで毎回注目を集めるオインクゲームズの新作は「小早川」。15枚のカードとコインを使ったカードゲームで,ルールはシンプルながらジレンマがあるスリリングな内容 |
![]() ゲーム問屋のNew Games Orderは,チーパス・ゲームの名作「ビッグ・チーズ」を可愛い缶に詰め,ダイスやボードもセットにして発売 |
![]() 宣伝担当のミスター・ビッグ・チーズは,チーズのかぶりものでインスト中 |
![]() 冒険企画局の新作は,同社のTRPG「シノビガミ」からのスピンアウト作品「ニンコロ!」 |
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![]() TCGデザインに定評のある遊宝洞は,独自のデッキ構築型ゲーム「ヴァルキリーストライク」を発売 |
![]() 戦乙女と巨獣の対決がテーマ。華麗な戦乙女や重厚なモンスターイラストのクオリティが高い |
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![]() ゲームマーケットはアジア屈指のアナログゲームイベントであるため,韓国や台湾からの出展もある。韓国のメーカーGembloでは,主要作品「Gemblo」のミニサイズバージョンを発売 |
![]() こちらのHappy Baobabも韓国のメーカー。「スティッキー・スティックス」は,吸盤を使った楽しいアクションゲーム |
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![]() Baka Fire Partyの 「惨劇RoopeR X」。今回はほかのブースでも委託販売があり,ぐっと入手しやすくなっていた |
![]() 9種類ものキャラクターが追加され,ゲームのバリエーションがぐっと広くなった |
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![]() OKAZU Brandのひもシリーズ最新作「ひもサバンナ」。自分の研究対象となる動物をひもで囲んで得点にする |
![]() ゲームショップすごろくやの「ドミニオンボックス&ドミニオンステージ」。「ドミニオン」のカードをキレイに配置するゲーム支援ツールだ |
![]() コンポーネントが贅沢なProducts Artsの競りゲーム「AKINDO」が東京に上陸 |
![]() グランディングの新作「ダイヤモンスターズ」は読み合いが楽しくて軽いカードゲーム |
![]() 富士見書房はブシロードとの共同出展で,デッキ構築型ゲーム「シルク・ドゥ・モンスター」や「モンスター・コレクションTCG」を出品 |
![]() playdekのデジタル版「たんとくおーれ」。お好みのメイドさんを集めていくデッキ構築型ゲームなので,ブースにはもちろんメイドさんが! |
![]() 中村 誠氏の「ぐるぐるパンツァー」。戦車のおもちゃを使った対戦型バトルゲーム。「プリミティブなおもちゃが作りたい」とのこと |
![]() 有限浪漫の「Donburiko」。言語に依存しない16枚のカードゲームで,見かけによらずガチンコ勝負。これも500円ゲーム |
![]() しばくりの遊牧生活カードゲーム「草原と羊と風と」。羊と共に暮らす家族の物語というテーマが秀逸 |
![]() TANSANFABRIKはジャンケン缶バッジゲームをガチャガチャで販売。今後発売予定の「人間ゲーム」のデモプレイも |
![]() ひとあそかいの「恋愛格闘学園」。バトルと恋愛と4コマ漫画を組み合わせたゲーム |
![]() アブストラクトゲーム博物館の「ハニー・ドーナッツ」。陶製タイルの雰囲気が素晴らしい |
![]() 日本全国の特急・急行列車を萌えキャラ化した,ろーりん☆つーりすの「日本全国特急旅行ゲーム」 |
![]() まったく違う2種類の遊び方が楽しめるTRYGOODのカードゲーム「大脱走 看守とスプーンとときどきドリル」 |
![]() 首都大学東京の大学院生が都市開発研究の一環として作った「みんなでまちづくり!」 キャラクターに合った街並みをプレゼンする。都内4か所のマップつき |
![]() EJIN研究所のゾンビサバイバルゲーム「AHHBANG!!」。AHH!とかBANG!!とか叫びながらプレイするのがお約束 |
![]() 黒服黒マスクの3人が異様な雰囲気を演出しているMAMAG3 GROUPは,スロットマシン風のカードゲーム「Hidelot」を出展 |
![]() 植民地戦争+αの「樹ブロック」。重さが異なる3種類の木製ブロックを使った立体バランスゲーム |
![]() 戦略性の高いドラフト式カードバトルゲーム,Power9Gamesの「Dragon’s Stone」は第二版が発売 |
![]() ハッピーゲームズの対戦型ブラフカードゲーム「傾国」も第二版が発売 |
![]() 一心助けの「歴史下克上」。歴史をテーマにした将棋系・オセロ系のゲームを多数制作 |
![]() 本物の羊のくるぶしの骨を使った,dGamesの「アズリッタの骨占い」。皮の占い表の雰囲気も素晴らしい |
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![]() 赤竜亭の「東方超人録」は,東方キャラクターを使った正体隠蔽型の心理戦ゲーム |
![]() 台湾のゲームサークルMoaideas Game Designの「東方魔法迦」。同人誌からスタートした作品が,アナログゲームになって日本へ逆上陸 |
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新たな会場で活性化するゲームマーケット
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一方で,これだけ多様なアナログゲームが一堂に会する場というのは,非常に貴重なものだ。日本のゲームを海外に紹介しているヤポンブランドの健部伸明氏曰く,「この会場全体に150人以上のゲームデザイナーがいて,200以上の新タイトルが並んでいる。こんなことは,エッセンでもありえない」とのことで,これからも末永く続いてほしいイベントといえるだろう。
次回の「ゲームマーケット2013秋」は,11月4日に,同じくビッグサイトにて開催される。また2014年3月9日には,すでに「ゲームマーケット2014大阪」の会場が確保できているとのこと。今回のレポートで興味を持った人は,次回のゲームマーケットにぜひ出かけてみよう。
![]() 恒例企画「カバンの中身見せてください」。上に見える「Down With the King」はアバロンヒル初期の名作。青春時代のゲームに×年ぶりに再会。そんな出会いもまたゲームマーケットの風景だ |
![]() カバンの中身その2。高天原の「アルパカパカパカ」など,軽めのゲームを中心に攻めてみました,とのこと |
![]() その3。クトゥルフゲーム三昧。「かさばるけど,ゲームマーケット割引だったのでまとめ買いしました」 |
![]() こちらは筆者の購入物。大物がないのに,この量はいかがなものかと |
![]() 午後は会場が一時的に停電するトラブルも発生したが,運営側からは「当イベントは電源不要のテーブルゲームイベントですので何も問題はありません」という洒落たアナウンスが |
![]() ゲーム界の最長老,鈴木銀一郎氏も来場 |
![]() ゲームオークション。締めは,正体隠蔽系ゲームの古典的な名作「超人ロック」。落札価格は1万8000円となった |
![]() ドイツ製の愛らしい「カルカソンヌ」のお皿やキャンドルホルダー。グループSNEブースにて |
「ゲームマーケット2013春」公式サイト
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