インタビュー
「エルダー・スクロールズ・オンライン」メールインタビュー。7年目に入ったサービスの現状や新章「グレイムーア」について聞いた
「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,TESV: Skyrim)でおなじみのスカイリム地方(その一部の西スカイリム)が登場したことによってプレイヤーが増加し,配信後しばらくはログインが困難になるほどだった「グレイムーア」も,現在は比較的安定した状態でゲームが楽しめるようになっている。
そんなESOについて,本作を手掛けるZenimax Online Studiosのクリエイティブディレクターであるリッチ・ランバート(Rich Lambert)氏に,メールインタビューを行った。海外版ではサービスが7年目に入ったESOの現状や新章となるグレイムーアの詳細について聞いたので,ESOプレイヤーのプレイヤーはもちろん,まだESOをプレイしていない「エルダー・スクロールズ」シリーズのファンの人たちにも一読してほしい。
「エルダー・スクロールズ・オンライン」公式サイト
「ESO」の新章「グレイムーア」は,スカイリムでの冒険の序章。闇の一端に触れる物語と,タムリエルの歴史を探る「古遺物」システムを紹介
2016年から日本語版のサービスが行われているMMORPG「エルダー・スクロールズ・オンライン」の最新アップデートパッケージ「グレイムーア」が,5月26日に発売となった。「The Elder Scrolls V: Skyrim」にも登場した西スカイリムが追加された本アップデートを詳しく紹介する。
「エルダー・スクロールズ・オンライン」と「Skyrim」の風景を比較。西スカイリムは1000年前,どのような姿だったのか
MMORPG「エルダー・スクロールズ・オンライン」に新章「グレイムーア」が5月27日に登場した。グレイムーアで追加される地域は,「The Elder Scrolls V: Skyrim」の舞台にもなったスカイリム地方の一部ということで,今回はESOとSkyrimのスクリーンショットを比較し,1000年前のスカイリムを紹介してみたい。
クリエイティブディレクターに聞く,サービス7年目の現状と新章「グレイムーア」について
4Gamer:
2014年4月のサービス開始から7年目(※)に入ったESOについて,現在のサービスはどのような状況なのか聞かせてください。
※日本語版サービスは2016年6月開始なので5年目である
Rich Lambert氏:
ESOは大盛況です! 2015年にコンシューマ版をリリースしたとき以来となる,プレイヤー数の増加を記録しています。また,安定して定期的なアップデートを維持でき,それによって探索を楽しむうえで非常に優れた世界を作り続けられています。
4Gamer:
良い状態でゲームのサービスを継続できていると感じる点はどこにありますか。
Rich Lambert氏:
多くの理由があると思いますが,私が考える最大の理由は,簡単にエルダー・スクロールズの世界に入り込むことができるということ,そして自由に探索ができるということだと思います。
プレイヤーの皆さんが行きたい場所に行けないようにしたり,一緒にプレイしたい人とのゲームを妨げるような勝手なレベル制限を設けたりはしません。選択したクラスによって特定の役割や,装備する防具や武器の種類に縛られることもありません。この,思いのままにプレイできる自由がある点が,私たちの成功につながっていると思います。
4Gamer:
サービス開始当初と現在で,大きく変わった点はありますか。
Rich Lambert氏:
2014年のリリースからですか? ええ,大規模な変更をたくさん行ってきました。
今回のグレイムーアで,私たちのアップデートは26弾となります! 今まで,犯罪制度(Justice System)やハウジングシステム,盗賊ギルドや闇の一党の新しいギルド,そしてバトルグラウンドといった全く新しいPvPシステムを追加しました。
しかし,最もインパクトのある変更といえば,プレイヤーの皆さんが自由に世界を探索したり,友達とプレイするのを妨げていたレベル制限をすべて解放した「ワン・タムリエル」(One Tamriel)です。これは,ESOがMMOからRPGへと変わり,さらに“真のエルダー・スクロールズのゲーム”へと変わる分岐点となりました。
「エルダー・スクロールズ・オンライン」,日本語版発売後初の大規模アップデート「ワン・タムリエル」が本日リリース
DMM.comが日本語版を展開している,MMORPG「エルダー・スクロールズ・オンライン」。本作の,日本語版発売後では初となる無料大規模アップデート「ワン・タムリエル」が,本日リリースされた。「オートレベリングシステム」によるコンテンツ難度の自動調整,1vs.1のPvPコンテンツ「決闘」などを実装するアップデートだ。
4Gamer:
逆にここは変わっていないと感じるところを教えてください。
Rich Lambert氏:
巨大なゲームなので,核心となる部分の多くは変わっていません。その核心を支える柱の1つが,ストーリーをいかにして伝え,エルダー・スクロールズの素晴らしい伝承を扱うかということです。
私たちにとって重要なのは,この世界に命を吹き込むこと。そして私たちが語る物語がタムリエルに暮らす人々と,その視点にまつわるものであることです。
4Gamer:
開発状況を伝えるレター(関連リンク)で,記録的なプレイヤー数増加には,スカイリム地方の登場だけではなく,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響があったことにも触れられていました。
プレイヤーが増加したことによるサーバーの負荷対応はもちろんですが,在宅での開発作業やトラブルへの対応は大変だったのではないかと思います。苦労した点やこういう状況に向き合ったことで,あらためて気づいたことなどあれば教えてください。
Rich Lambert氏:
ライブサービスの“常時稼働”のゲームである以上,在宅勤務に移行する前から私たちスタッフの多くは問題に対処するため,自宅からログインする必要がありました。そのため,在宅業務に関するいくつかの手順やインフラはすでに整っていました。
とはいえ,課題はたくさんありました。特定のクエストやエリアで起きた問題の共有など,私たちが当然のように行っていた作業が困難になったのです。そういったこともあり,在宅勤務のチーム全体をサポートする新しい方法を考え出す必要がありました。
社内に設置しているウォータークーラーに関する何気ない議論もぱったりと止み,ほかのスタッフと話すためにはスケジュールを組まなければならなくなりました。在宅勤務に慣れて,自宅から当面の問題に関する議論を在宅前と同様に行うには,ある程度の時間を要しました。
廊下やデスクでの,思いつきの会話に含まれる短い簡単なおしゃべりが,ゲーム開発においてどれだけ多くの問題を解決していたか,本当に驚くばかりです。
4Gamer:
新章「グレイムーア」について教えてください。TESV: Skyrimの舞台で,プレイヤーの中でも人気の高いスカイリム地方の一部が新エリアとして登場しましたが,いつグレイムーアの開発を計画し,どれくらいの期間をかけて作ってきたのでしょうか。
Rich Lambert氏:
私たちには非常に先の未来まで見据えたコンテンツ計画があり,今後数年間の方向性について良いアイデアが見えています。
とくにグレイムーアに関しては,作業に着手する1年以上前から計画しており,一部の開発チームのメンバーは「エルスウェア」(2019年6月配信の大型アップデート)のリリースの前から取り組んでいました。実質的な開発期間は1年以上ですね。ゾーンを作り上げるのには時間が掛かるのです。
4Gamer:
発表時の反響と,それを受けた感想を聞かせてください。
Rich Lambert氏:
とても好評でした! スカイリムの各地に戻って探索できるということに,プレイヤーの皆さんはとても興奮している様子でした。チームがこれまで一生懸命に取り組んできたものが,これまでと同様に評価されていることはとても嬉しかったです。
4Gamer:
リリース直後はアクセスが難しくなるほどの盛況ぶりでしたが,その後のプレイヤーの反響を聞かせてください。
Rich Lambert氏:
グレイムーアは多くのプレイヤーにプレイしていただいていますが,反応はほとんどがポジティブなものでした。スカイリムを再び探索できることはもちろん,「古遺物(アンティーク)システム」やストーリーも,プレイヤーからの評価は高いんです。
実装当初はパフォーマンス面でいくつかの問題がありましたが,すぐに解決することができました。これについては,ESOのゲームディレクターであるマット(Matt Firor氏)が数週間前に公式フォーラム(関連リンク)で発生していた問題をまとめ,解決方法の手順をコミュニティと共有しています。
4Gamer:
スカイリムの西エリア(ソリチュード)やブラックリーチをESO上に表現するうえで,苦労した点を教えてください。
Rich Lambert氏:
多くの人が知っていて愛着を持っているエリアを構築,または再構築するというのは並大抵のことではありません。最も難しいのは,プレイヤーの皆さんの期待に応えることと,ESO独自の“何か”を構築することのバランスを見極めることです。
ソリチュードとブラックリーチは,私たちがどのようにしてそれを実現しようとしたかを示す,完璧な例です。
ソリチュードは古くから栄える街であると考え,親しみの持てる場所になるよう私たちの時代(スカイリムの約1000年前)でもTESV: Skyrimのころとほとんど同じように作られました。ソリチュードに足を踏み入れると,くつろぎを感じることができるでしょう。
逆にブラックリーチに関しては,私たちは独自の道を歩みました。さまざまな要素を詰め込み,プレイヤーの皆さんをこれまでに見たことのない場所に連れ出すことができたと思います。
4Gamer:
グレイムーアのリリースに合わせて,吸血鬼のスキルラインも大きく変更されました。新しくなったスキルラインの特徴や,「まだ吸血鬼でのプレイをしたことがない」というプレイヤーにオススメしたい点があれば教えてください。
Rich Lambert氏:
吸血鬼のスキルラインは,完璧な体験を提供できるよう全体的に見直しました。これは,いくつかのパッシブアビリティだけではなく,アルティメットアビリティも含めた戦闘に関するすべての要素に対して行っています。スキルライン以外では,吸血鬼を犯罪制度(Justice System)に組み込みました。つまり,NPCの近くで露骨に吸血鬼の行動を取ると,護衛が呼び集められてしまいます。
さらに吸血鬼の吸血メカニクスが更新され,闇の一党のスキルラインで使用される「悲痛の短剣」と同じ組み合わせのアニメーションシステムを使用するようになりました。これによりチームは,吸血鬼の吸血において,凄惨で刺激的な映画さながらのシーンを作成できるようになったのです。
4Gamer:
プレイヤーから届いた声を聞いて,「ここは楽しんでもらえている」と手応えを感じたところと,逆に反省点に感じたところを教えてください。
Rich Lambert氏:
今回実装した古遺物システムは,グレイムーアの目玉コンテンツとなります。このシステムは面白いものであると信じていますが,プレイヤーの皆さんには「どんな機能なのか」「なぜ『エルダー・スクロールズ』シリーズにこのようなシステムが導入されたのか」を完全に理解できるよう伝えられなかったため,発表当初の反応は芳しくなかったのです。
今では実際にシステム全体を体験したり,もっとシステムを掘り下げたり(発掘にかけたダジャレはありません)することができるようになったので,古遺物システムを楽しんでもらえていると感じています。プレイヤーからの称賛の声も多く,その楽しさに驚いている人も少なくありません。
反対に,吸血鬼における変更,とくに戦闘スキルの変更については,覚えなければならないことがたくさんあり,変更前から吸血鬼を使用しているプレイヤーにも学び直す時間がかかってしまうところは反省点だと思います。
4Gamer:
すでに何度か話題に上がっている古遺物システムですが,これはどういった目的で開発されたものでしょうか。
Rich Lambert氏:
古遺物は,ESOをプレイする新しい方法として一から設計された,クエストや敵を倒すことに頼らず,世界を探索するための新しい方法です。そしてプレイヤーの皆さんが,エルダースクロールズの世界にある伝承に関する詳細を知り,素晴らしい報酬が得られるものです。
4Gamer:
古遺物システムでオススメの楽しみ方があれば教えてください。
Rich Lambert氏:
古遺物システムはゲーム全体にしっかりと組み込まれているので,それを探索する最良の方法は,単純にゲームをプレイするということになります。すべてのゾーンには手掛かりがあり,それらをヒントに古遺物探しの冒険を始めることができるのです。
手掛かりは商人,宝箱,盗賊の宝,モンスター討伐,釣りなど,ほかにもさまざまな方法で発見できます!
4Gamer:
グレイムーア以外の部分についても聞かせてください。
ESOではタムリエルの各地にある大量のクエストを体験できますが,それぞれしっかりとしたストーリー展開があり,なかにはプレイヤーが二者択一でやり直しのできない選択を迫られ,結末が変わるものもあります。
単純な“お使い”にはとどまらない,MMORPGでは珍しい仕様だと思うのですが,クエストを作成する際に大事にしていることを教えてください。
Rich Lambert氏:
私たちにとってクエストとは,何よりもまずタムリエルの世界とそこに住む人々を,プレイヤーの皆さんに一層深く理解してもらう手段です。
私たちはキャラクターに多くの力を注いで,信憑性や親しみやすさを感じさせると同時に,キャラクターたちがストーリーの重要な役割にあるとプレイする人たちに確信してもらえるようにしています。プレイヤーの皆さんはストーリーに参加するのであり,ただ上演を眺めるだけではないのです。
4Gamer:
モラグ・バルやメリディア大きな存在感を発揮する一方,ペライトなど未だに露出が非常に少ないように感じるキャラクターもいます。今後のアップデートで彼らにスポットライトが当たるような物語が追加される可能性はありますか。
Rich Lambert氏:
現時点で25年以上というシリーズの歴史があるだけに,掘り下げるべき伝承もすさまじい量におよびます。私たちは何年にもわたってESOに登場してきた数多くのデイドラ公を掘り下げてきましたが,将来的にはあまり知名度のないキャラクターについても,ある程度は取り上げていく予定です。
4Gamer:
PvPコンテンツについての質問です。初心者は自身が戦力になれないと感じれば,楽しめなくなって参加を控えてしまいます。一方,経験者(ベテラン)は,時間や労力に見合う報酬がなければモチベーションを失います。
開発者としては苦労する点かと思いますが,コンテンツの調整をする上で気を付けていること,大事にしていることを教えてください。
Rich Lambert氏:
PvPのバランスを取るのは難しいものです。おっしゃったとおり,新人プレイヤーが戦闘に貢献できると感じられる方法を十分に用意し,それと同時にベテランプレイヤーが自分の優れたところを示す手段を与えなければなりません。
私たちはこれを念頭に対人戦用のエリアとして「シロディール」を作成しましたが,攻城はその考え方の好例です。新人プレイヤーは攻城兵器を利用して戦闘を手助けすることで,熟練のベテランプレイヤーとともに戦力として戦場に参加できるのです。
4Gamer:
同盟戦争では影の主役とも言える攻城兵器ですが,今後バリエーションをさらに増やしたり,能力や見た目を大きく変えたりする計画はありますか。
Rich Lambert氏:
グレイムーアでは,古遺物システムと共に新しいクラスの攻城兵器を導入しました。この新しい攻城兵器は「マジカの槍」と呼ばれ,火,氷結,雷撃の3種類があります。
これはドゥエマーをテーマにしたもので,すでにゲーム内に存在するどの攻城兵器とも大きく異なります。
4Gamer:
今後のアップデートについても知りたいです。ESOではウィンターホールドやホワイトランの要塞など,まだ訪れることができない場所も多くあります。これらのエリアも,いずれ冒険できると期待してもいいでしょうか。
Rich Lambert氏:
過去6年間,私たちはゆっくりとタムリエルの地図を埋めてきました。私たちが次にどこに取り組むかは,時が来れば分かるでしょう。
4Gamer:
エルダー・スクロールズシリーズでは,最新作の「The Elder Scrolls VI」の存在がすでに発表されています。気が早いかもしれませんが,発売時にはESOでも何らかのイベントを行うといったコラボレーションは検討されていますか。
Rich Lambert氏:
それにお答えするのは時期尚早です。次のエルダー・スクロールズのゲームに着手する前に,Bethesda Game Studiosには完成させるべき全く別のゲーム(著者注:Bethesdaの25年ぶりとなる新規IP「Starfield」ではないか)があります。まずはそちらを完成させなければ,次に着手するものを紹介することもできません。
4Gamer:
最後に日本のゲームファンやエルダー・スクロールズシリーズのファンにメッセージをお願いします。
Rich Lambert氏:
私たちは皆さまの長年のサポートに感謝しています。日本でESOのサービスが開始されてから,すでに4年の月日が経過したとは信じられません。私たちはESOを大変誇りに思っており,今後の展開を楽しみにしています。私たちが開発を楽しんだのと同じくらい,皆さまにもグレイムーアと古遺物システムを楽しんでいただきたいと思います!
「エルダー・スクロールズ・オンライン」公式サイト
- 関連タイトル:
エルダー・スクロールズ・オンライン
- 関連タイトル:
エルダー・スクロールズ・オンライン
- この記事のURL:
キーワード
Published by EXNOA LLC (C)2020 ZeniMax Media Inc. The Elder Scrolls(R)Online: Greymoor developed by ZeniMax Online Studios LLC, a ZeniMax Media company. ZeniMax, The Elder Scrolls, Greymoor, ESO, ESO Plus, Bethesda, Bethesda Softworks and related logos are registered trademarks or trademarks of ZeniMax Media Inc. in the US and/or other countries. All Rights Reserved.
Published by EXNOA LLC (C)2020 ZeniMax Media Inc. The Elder Scrolls(R)Online: Greymoor developed by ZeniMax Online Studios LLC, a ZeniMax Media company. ZeniMax, The Elder Scrolls, Greymoor, ESO, ESO Plus, Bethesda, Bethesda Softworks and related logos are registered trademarks or trademarks of ZeniMax Media Inc. in the US and/or other countries. All Rights Reserved.