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ゼルダの伝説 風のタクト HD公式サイトへ
  • 任天堂
  • 発売日:2013/09/26
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任天堂の青沼英二氏に聞く,「ゼルダの伝説 風のタクト HD」と「ゼルダの伝説」シリーズ――「僕がこだわるのは,“ユニークな体験ができるゲーム”ということだけ」
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印刷2013/09/28 00:00

インタビュー

任天堂の青沼英二氏に聞く,「ゼルダの伝説 風のタクト HD」と「ゼルダの伝説」シリーズ――「僕がこだわるのは,“ユニークな体験ができるゲーム”ということだけ」

「ゼルダの伝説 神々のトライフォース2」,

そしてWii Uでの次回作にも期待してほしい


4Gamer:
 風のタクトHDは,ニンテンドー3DS用「時のオカリナ 3D」に続いてのリメイクとなりましたが,今後もそういったリメイクの予定はありますか?

画像集#021のサムネイル/任天堂の青沼英二氏に聞く,「ゼルダの伝説 風のタクト HD」と「ゼルダの伝説」シリーズ――「僕がこだわるのは,“ユニークな体験ができるゲーム”ということだけ」
青沼氏:
 冒頭でもお話ししましたが,今回の風のタクト HDは,次のタイトルを設計するための礎にするべく検証を行った結果,リメイクをすることになったという流れですので,今後もそういう展開があるかどうかは分かりません。
 時のオカリナ3Dも,裸眼立体視での世界の広がりを取り込むことで,よりゲーム性が増すと感じられたものが,時のオカリナだったんです。なので,ただ甦らせて売っていくということではなく,そこに生まれ変わらせる意味があるときに考える……という姿勢なんですね。
 だから,今後もリメイクがあるとすれば,何年後のことかは分かりませんが,次のハードのタイミングでしょうか。新たなハードの機能を見たときに,既存のゼルダシリーズで何かまた面白いことができるならば,もしかしたらリメイクをすることになるかもしれません。

4Gamer:
 最も求められているのは新作でしょうしね。

青沼氏:
 そうなんですよ! 今まさに「神々のトライフォース2」の開発まっただ中で,今月をどう乗り切るかの瀬戸際なんです。

4Gamer:
 そちらの進捗はいかがでしょうか?

青沼氏:
 海外版は11月末の発売ですからね。これが大変で,夏休みもとれませんでしたし(笑)。でもそれだけいいものになってきていると思います。

4Gamer:
 E3で体験できた部分だけでも,かなり面白かったです(関連記事)。

青沼氏:
 プレイヤーの皆さんから,“神ゲー”の続編をそんな簡単に作れると思うなよ,みたいに激励されていたりしますが,続編とうたいながらも,続編にはおさまらない内容になっていますので,ぜひご期待ください。

ゼルダの伝説 神々のトライフォース2
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4Gamer:
 シリーズ内での続編というのは初めてだと思うんですが,なぜそのタイトルになったんでしょう?

青沼氏:
 最初は違うタイトルにしようと思っていたんですが,中の世界は「神々のトライフォース」とまったく同じものなんですね。それを3D化して,時代も住んでいる人達も違っているという設定にしたので,神々のトライフォース2とつけないと,逆に違和感があると思ったんですよ。
 神々のトライフォース2にさらにサブタイトルをつける案も出たんですが,さすがにそれはないなって(笑)。

4Gamer:
 サブタイトルにサブタイトルですか(笑)。

青沼氏:
 それだともう,「ゼルダの伝説」というタイトルも邪魔なくらいになっちゃいますから。いろんな議論があったうえで,今の名前に落ち着きました。

4Gamer:
 こちらも楽しみですね。

青沼氏:
 風のタクト HDを遊んででいただいたあと,こちらも楽しんでいただければと思います。

4Gamer:
 ちなみに,Wii Uでの新作はいかがですか?

青沼氏:
 もちろん進めていますよ!
 風のタクト HDで試したことを反映させたり,逆にそっちから風のタクト HDに応用したものもありますしね。今回はリメイクなのでWii U GamePadでできることは限られていましたが,新作ではもっとさまざまな使い方ができるようになります。

4Gamer:
 ということは,風のタクト HDをプレイすると,次回作につながる何かが見つかるかも……?

青沼氏:
 そう思います。たとえばWii U GamePadのスクリーンにマップを表示しながらの移動はすごく快適だったので,これを海じゃない場所でやることもできるでしょう。今回遊んで面白かったという部分は,確実に次の新作には反映していくと思っていただいて,間違いはありません。


ゼルダの伝説に飽きてなどいない

むしろ変えていくことに燃えている


4Gamer:
 ちなみに青沼さんは,これまでのゼルダの伝説シリーズでは,どの作品がお気に入りなんですか?

画像集#026のサムネイル/任天堂の青沼英二氏に聞く,「ゼルダの伝説 風のタクト HD」と「ゼルダの伝説」シリーズ――「僕がこだわるのは,“ユニークな体験ができるゲーム”ということだけ」
青沼氏:
 よく聞かれる質問なんですが,僕としては,“今作っているもの”が一番のお気に入りですね。作り始めると毎日朝起きてから夜寝るまで,ずっとそのことばかりを考えています。なので,今は神々のトライフォース2です。
 この時期って,まだまだいろんなところがダメなんですよ。それが綺麗に整っていくところを見るのは,プロデューサーになってからはとくに楽しくて,そこにもちろん宮本も入ってきてダメ出しされたりして。
 僕もスタッフに近いところで作っているので,いろいろと気付かずに進めていることも多いんですよ(笑)。

4Gamer:
 それだけ密に開発に関わってらっしゃるということですね。

青沼氏:
 ええ。神々のトライフォース2の,壁に入ってそれを3Dでサイドビューで見せる設計などは,ディレクターと一緒に最初に決めたものです。トップビューとサイドビューでのステレオ的な見せ方は,地形をパズルのように解くのにすごく適していて,そこに宮本からずっと言われていた,“神々のトライフォースを立体的にする遊び”というものが,バチッと一致したわけです。
 DSのときも,タッチペンの操作だけでゼルダの伝説がいったいどこまで作れるのかという不安はありましたが,あれをやったことで新しいゲームも見えてきましたし,ディレクターのように現場で直接ゲームの内容を考えていくのとは違う,“遊びの核”となるものを決めることにおいて,プロデューサーとしては充実した仕事ができていますね。とくに携帯機は,ある程度はうまくまとめられている実感があります。

4Gamer:
 据え置き機は……?

青沼氏:
 大変ですね!(笑)
 携帯機のゲームを作るとき以上に,もっとモヤモヤしているところがあって,日々苦悩しています。

4Gamer:
 風のタクトは据え置き機でしたが,そのときはいかがでした?

青沼氏:
 あのときは時のオカリナを出したあとで,そこからの変化球を狙っていたんですよ。まだ若かったので,野心的な部分がはたらいて,海を舞台にするという設計と,トゥーンの世界が割とピタッと決まったんです。だから風のタクトと今やっているものは,自分の立場を考えるといい仕事ができたんじゃない……かな? なんて(笑)。

4Gamer:
 HD版での手応えはいかがでしたか? 

青沼氏:
 HD版はね……作ろうって言い出したのが全てかな?(笑)
 風のタクトって,「ネコ目が苦手という人もいたよね」「あれをリメイクしても……」という向かい風も強くて,僕もそこに対して答えは出せなかったんですが,やっぱり作りたいという気持ちが先行していたし,次の新作にも必ずプラスになるので,やって損することは絶対ないから作ろうというところから始めたんです。そしてフタを開けてみるとたくさん反響をいただいたので,時代が変わっていることを実感しました。

4Gamer:
 なんだか興味深いお話です。
 ところで,青沼さんにお目にかかるにあたって,必ずお聞きしようと思っていたことがあるんです。

青沼氏:
 何でしょう?

4Gamer:
 少し前,海外メディアのインタビューで「青沼さんが,ゼルダを作ることに飽きている」と答えたという話が,ネット上で話題になっていたんですよ。

青沼氏:
 えっ,そうなんですか!?

画像集#027のサムネイル/任天堂の青沼英二氏に聞く,「ゼルダの伝説 風のタクト HD」と「ゼルダの伝説」シリーズ――「僕がこだわるのは,“ユニークな体験ができるゲーム”ということだけ」

4Gamer:
 ご存じじゃなかったんですね。
 要は,「私が飽きたと感じるなら,ほかの人もそう思っているはず。だから新しい変革をしようとしている」というお話が誤解されて,「青沼さんが,ゼルダを作ることに飽きている」と伝わっているみたいなんですけれど。

青沼氏:
 なるほど(笑)。僕が飽きたと言っているのは,ゼルダを作ることではなくて,今までのゼルダで当たり前のようにやってきた構成要素のことなんですよ。
 というのも最近,これまで伝統的にやってきたことに対して,なぜ伝統的でなくてはならないのか? という疑問を持つようになったんですね。そこを変えていかないと新しいものは作れないという考え方で,神々のトライフォース2ではそのあたりでも若干アプローチしていますし,次の新しいゼルダでも,どんどん変えていくつもりでいます。
 でもこれを突き詰めて行くと,ゼルダの伝説って一体何なの? という話になるんですよね。

4Gamer:
 そうなりますよね。

青沼氏:
 これについては宮本ともたまに話をするんですが,例えば「ゼルダ姫がいなければならないのか」という話をすると,もちろんいないとダメなんだろうけど,それがメインではありません。
 そういう風に考えていくと残るのは,やはり「ユニークな体験ができるゲーム」ということだけなんですよ。「こんな体験は初めてだ」と感じてもらえるものを,どれだけ入れられるのかが,ゼルダの伝説シリーズの核になっているんです。

画像集#028のサムネイル/任天堂の青沼英二氏に聞く,「ゼルダの伝説 風のタクト HD」と「ゼルダの伝説」シリーズ――「僕がこだわるのは,“ユニークな体験ができるゲーム”ということだけ」

4Gamer:
 なるほど。

青沼氏:
 “伝統的”というものは,得てして前作のコピーだったりする感覚もあるので,それにのっとっていると,ユニークさはどんどん欠けていきます。だからそういう当たり前の部分を,もっともっとユニークにしていこうと考えている最中なんです。
 だから,決して飽きているわけではないですよ(笑)。むしろ,もっともっと変えていくことに燃えていて,「えっ,これがゼルダなの!?」と思われるんだけど,遊んでみると「あ,ゼルダだったね」と感じてもらえるのが理想ですよね。リンクやゼルダ姫が出ているかどうか,そんなことにもこだわらないという。ゼルダはお姫様ではなくてもいい,みたいな。

4Gamer:
 そのあたりは風のタクト以降のゼルダ姫の設定などにも見えてはいますね。

青沼氏:
 いろいろやりましたよね。
 ゲームをプレイしたときに,何を感じるかというところにもっともっと新しい感覚を入れていきたいんです。物語もそうですが,ただそこに再現されているだけでは面白くなくて,感じる物語でなければ意味がないと思うんです。
 キャラクターをポンと出したときに,遊んでいる人がそこに何かを感じるフックがあって,先に進むとそれが分かってくるような,自分の感覚とゲームの中で起きていることがうまくマッチするようなことは常に狙っていきたいですからね。

4Gamer:
 実際にシリーズを続けてプレイしている人は,それを実感していると思いますよ。毎回,展開にも設計にもビックリさせられますから。

青沼氏:
 ありがとうございます。
 要するに僕は“職人”でありたいんですよ。

4Gamer:
 職人,ですか?

画像集#029のサムネイル/任天堂の青沼英二氏に聞く,「ゼルダの伝説 風のタクト HD」と「ゼルダの伝説」シリーズ――「僕がこだわるのは,“ユニークな体験ができるゲーム”ということだけ」
青沼氏:
 さまざまな分野で古くから活躍している職人さん達が,伝統的なことばかりをやっているかというと,そんなことはなくて,現代に通用させるよういろんなところを変えていますよね。大昔から今に至るまで生き続けている分野があるのは,そこで職人さん達が時代に応じて創意工夫してきたからなんですよ。同じことだけをやり続けていたら,廃れてしまいますから。
 ゼルダもそういうものでありたいんですよね。僕も,人間国宝を目指します(笑)。

4Gamer:
 おおっ!

青沼氏:
 それはまあ冗談ですけど,そういうことができるのもゼルダだと思うんですよね。逆に言うと何も決めていなくて,マスターソードとかトライフォースとか,一部の言葉は決めていますけど,それ以外の決めごとはなくて,毎回どこまで新しい遊びが作れるのかに取り組んでいるだけですからね。
 そこに何を反映してもいいんです。ガノンドロフと光弾の打ち合いとかをしますけど,あれってテニスゲームですからね(笑)。 あんなことを大真面目に敵とやっていてもOKなのが,ゼルダなんです。なんでも受け入れられる懐の広さが,ゼルダの伝説という作品にはある気がするので,そこを自分達で狭めるのではなく,もっと広げていきたいです。

4Gamer:
 だからこそリンクやゼルダ姫の設定が作品ごとに違っていたり,世界も全然違うものだったりするんですね。トワイライトプリンセスやスカイウォードソードで,それまで左利きで通してきたリンクがあっさり右利きになっていて,ああ,そこはゲームの遊びやすさを優先するんだなということがよく分かりましたし。

青沼氏:
 周りの人達から見ると,細かいところにも何かこだわりがあるように思われるんですけど,実は僕らはあまりこだわっていないんです。このタイトルだからこそ,こうでなければいけないというところは磨きたいと思っていますけど,シリーズだからこうしなければいけないという縛りは全くないんですよね。
 だからファンの方達の心理は面白いなと思います。そういうところにすごく意味を感じていたりされるので。

4Gamer:
 次のリンクは左利きに戻るのか!? とかですよね。

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青沼氏:
 あと,年表のどこに入るのか? とかね。でも意外に現場は柔軟に考えています。これだけシリーズを作っているので,変に縛ってしまうと自分達の首を絞めることにもなりますから。

4Gamer:
 どのジャンルでもファンのほうがきっちりした整合性を求めがちかもしれません。

青沼氏:
 そこまで愛着を持ってくれているファンの皆さんがいるのは非常にありがたく思っています。そういう人達にとって,「自分が求めていたゼルダとは違う」というものであっても,魅力的に見えて遊びたくなるような,そういうゼルダを作りたいですね。

4Gamer:
 今までのいろいろなゼルダを遊んできたことを思い返してみると,なるほどと感じるところはあります。全然違った作品でも,遊んでみると「ああゼルダだな」と思わされる瞬間が必ずありますからね。

青沼氏:
 そう言ってもらえるのが一番嬉しいです。

4Gamer:
 それを踏まえて,風のタクト HDや神々のトライフォース2,そして次回作を期待すればいいのかなと思いますね。青沼さんがしっかり関わってくれているそうなので,安心できます。

青沼氏:
 僕は一つも手を抜いてないですよ!

4Gamer:
 いや,新作も用意しつつとなると,リメイクは若手に任せて……みたいな形でも決して不思議じゃないと思っていたんです。

青沼氏:
 うちには宮本がいますので,僕はいつまでたって若手のプロデューサーですから,いつも全力投球です(笑)。

画像集#031のサムネイル/任天堂の青沼英二氏に聞く,「ゼルダの伝説 風のタクト HD」と「ゼルダの伝説」シリーズ――「僕がこだわるのは,“ユニークな体験ができるゲーム”ということだけ」

4Gamer:
 そうなんですね(笑)。
 ともあれ,青沼さんゼルダに飽きていないことを確認できて安心しました。

青沼氏:
 はい,まったく飽きておりませんので,そこはご安心ください。

4Gamer:
 今日はありがとうございました。


 ネガティブな風の噂を軽く笑い飛ばし,これからも誰もが驚くようなゼルダシリーズを作っていくと約束してくれた青沼氏。風のタクト以降のゼルダシリーズをプレイしていれば,氏がインタビュー中に話していた“職人の魂”がそれぞれの作品に込められていたことはきっと感じられたはず。
 リメイクという形で甦った風のタクトと,来年早々に発売予定の神々のトライフォース2,そしてWii Uで制作中の最新作で,我々を一体どんなふうに驚かせてくれるのか,本当に楽しみだ。

画像集#036のサムネイル/任天堂の青沼英二氏に聞く,「ゼルダの伝説 風のタクト HD」と「ゼルダの伝説」シリーズ――「僕がこだわるのは,“ユニークな体験ができるゲーム”ということだけ」
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