インタビュー
[インタビュー]「ウィッチャー3」「サイバーパンク2077」の開発者が設立した新スタジオRebel Wolvesは,何を目指すのか?
昨年暮れの12月26日に,NetEase GamesがこのRebel Wolvesに対して戦略的投資を行うことが発表された(関連記事)。今回4GamerではNetEase Gamesから紹介を受ける形で,トマシュケイビッチ氏に,スタジオの設立や投資を受けることになった経緯,さらにはRebel Wolvesのゲーム作りなどについて話を聞く機会を得たのでお伝えしていこう。
4Gamer:
よろしくお願いします。まずはRebel Wolvesを設立することになった経緯について教えてください。
CD Projekt REDを辞めた後に何をしたいか考えて,やはり人生をゲーム開発に捧げたいという思いに行きつきました。どこかの会社に入ったほうが早かったのですが,「今あるところで新しいものが作れるのだろうか」とも思いまして。そこに,CD Projekt REDで一緒だったプシェミスワフ・ヴイチック(Przemysław Wójcik)から誘いを受け,新しいゲームを作るための新しい会社を作ろうということになったんです。
4Gamer:
新しいものを作りたかった,というのは,何ともシンプルなお話です。
NetEase Gamesからの戦略的投資を受けるとになった経緯はどういったものだったのでしょうか。
トマシュケイビッチ氏:
Rebel Wolvesを立ち上げるにあたり,投資をしていただくお話は,多くの方とさせていただきました。その中でNetEase Gamesの戦略的投資を受けることにした理由は,彼らが単なる投資家ではなく,我々と同じゲーマーだからです。お話しも収益性云々ではなく,「これからRebel Wolvesはどんなゲームを作っていくのか」で盛り上がりました。そして彼らは,我々のやろうとしていることの可能性を信じてくれたんです。
4Gamer:
どんなゲームを作っていくのかに興味を示して投資するということはつまり,Rebel Wolvesが作るものに口出しはしないということなのでしょうか?
トマシュケイビッチ氏:
そうです。NetEase Gamesからの介入はなしで,我々に自由に作らせてくれるということですね。これこそが,我々が最高のゲームを作れる環境だと思い,戦略的投資を受けることにしました。
4Gamer:
では,NetEase Gamesは資金提供だけを行うということですか?
トマシュケイビッチ氏:
いえ,NetEase Gamesはすでに多くのデベロッパと仕事をしており,ある種のコミュニティを築き上げています。そこで得られたさまざまな知見を,我々Rebel Wolvesに共有してもらえるのです。そこも大きな魅力でした。例えば「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」や「Detroit: Become Human」を手がけた,フランスのQuantic Dreamなどは,そうしたコミュニティの一員です。
4Gamer:
クリエイター同士の,会社を越えた横のつながりがNetEase Gamesのコミュニティで補強されるわけですね。ところで,現在のRebel Wolvesには何人くらいのメンバーがいるのでしょう?
トマシュケイビッチ氏:
すでに40人ほどのメンバーがいます。これを今後,80人くらいまで増員していく予定です。開発チームの規模は,このぐらいが限度だと思うんですよね。
4Gamer:
それはなぜでしょう?
トマシュケイビッチ氏:
社内のメンバーが100人を越えてしまうと,お互いを知らない人が出てきてしまうんです。
Rebel Wolvesは,チームワークを重視する会社でありたいと思っています。チーム全員がお互いをサポートしながら,1人1人がオーナーシップを持って働き,皆の意見がゲームに反映される……そんな会社を作りたかった。それなのにあまり数を増やしてしまうと,スタッフの意見を吸い上げて開発に活かすのが難しくなってしまいます。
社名が狼(Wolves)なのは,少数の群れを作る性質が我々のスタンスとピッタリだったからだったりします。
4Gamer:
トマシュケイビッチさんは,これまで,どのぐらいの規模での開発を経験されたんですか?
トマシュケイビッチ氏:
「ウィッチャー3」では80名からスタートして本編で200名,拡張パックで400名。「サイバーパンク2077」では120名を越える大所帯でした。こうした規模になると,管理体制やコミュニケーションの手法を変えなければならなくなって,結果,開発者ではなく管理者が増えてしまうんです。
我々はCD Projekt RED時代,ファンの皆さんとの対話を大切にしてきました。Rebel Wolvesでは,同じことを社内のスタッフに対しても行っていくことを目標としています。
4Gamer:
社内のコミュニケーションを重視するうえで,心がけていることなどはありますか?
トマシュケイビッチ氏:
話を聞く姿勢を見せることです。Rebel WolvesのスタッフはSNSで意見を発信するタイプではありませんが,私が「過去に作った作品について聞かせてほしい。どんなところが好きで,どんなところが気に入らなかった?」と聞くと,本当に多くの意見を出してくれるんです。
4Gamer:
まずは,自分から歩み寄ることから始めるのが,トマシュケイビッチさんのやり方なんですね。公式サイトで,「開発者の成長をサポートできるスタジオとしていく」と宣言されていますが,そうしたスタジオ作りには何が重要だとお考えでしょうか。
トマシュケイビッチ氏:
皆がチームを重視し,働きたいと思える会社であるということです。
良いチームとは,ハッピーなチームだと考えています。心を込めてゲームを作ることができ,それがヒットして次につながる。そうした環境を作るため,スタッフにはベテランであるか否かにかかわらず,仕事に対してのオーナーシップを与えています。
また,ベテランと新人がともに仕事をするだけの十分なスペースも用意し,彼らが持つノウハウや,他ジャンルのゲームにおける開発経験を共有できるようにしています。
4Gamer:
では,そんなメンバーで開発中の新作について,お話しできる範囲で教えてください。
トマシュケイビッチ氏:
現在お話しできることは限られていますが,ダークファンタジーの世界観を持つ,シングルプレイのオープンワールドRPGになります。規模的には「ウィッチャー3」のDLC「血塗られた美酒」と同程度になる予定です。既に8時間ほどプレイ可能なものができていて,まだ限られたメンバーだけなのですが,没入感のあるものができたと実感しています。
4Gamer:
シングルプレイでストーリーを伝えるなら,小規模な作り方もできる中,あえてオープンワールドRPGを選んでいるのはなぜなのでしょうか。
トマシュケイビッチ氏:
まず,マルチプレイのゲームでは,物語を伝えることが非常に難しいと考えています。我々Rebel WolvesはRPGを愛する人間の集まりであり,同時にストーリーテラーでもあるのです。自分たちが好きなゲームを作ろうとしたら,シングルプレイRPGにになるんですよね。ですから,我々が楽しんでゲームを作っていることはプレイヤーの皆さんにも伝わるでしょうし,そうした部分が皆さんの感情を動かすことにもつながると信じています。
トマシュケイビッチ氏:
そして,我々が作るシングルプレイRPGでは,没入感を何より重視しています。紙とペンでプレイするTRPGのように,プレイヤーの行動によってゲーム世界に住む人々の運命が変わっていく。こうした濃い体験,感動を得られるのが,オープンワールドRPGの良さだと考えています。
4Gamer:
Rebel Wolvesの考えるストーリーテリングは,決められた物語をなぞるのではなく,プレイヤーの選択によって変化していくものなのですね。
話は変わりますが,「ウィッチャー」シリーズをはじめ,ポーランド産のゲームは世界的に注目されるようになりました。ポーランドのゲーム産業がここまで盛んになったことについて,いち開発者としてどのように感じていますか?
トマシュケイビッチ氏:
そもそもポーランド人はゲームが好きなんだと思います。ポーランドは冬が長く,雪か灰色の空しかないような時期が続きますから,家の中で遊べるゲームは合っているんです。厳しい歴史を持つ国なので,そうした現実からひととき逃れる意味で,ゲームや小説などのエンターテイメントが発達した,という意見もありますね。
私自身は,ATARIを手に入れてからゲームにのめり込みましたし,友人もゲームで育ってきました。この国に生まれることができてラッキーだったと思っています。
4Gamer:
最近プレイされたゲームで印象に残っているものを教えてください。
トマシュケイビッチ氏:
ありすぎて,話し出すとキリがなくなるので,タイトルだけ(笑)。「ELDEN RING」も「ゴッド オブ ウォー ラグナロク」も「コール オブ デューティ」の最新作もプレイしていて,みんな面白かったですね。あと「アサシン クリード ヴァルハラ」は良いところがたくさんあって,開発者として「おっ」となりました。
4Gamer:
RPGからマルチプレイのFPSまで,ジャンルが幅広いですね。
トマシュケイビッチ氏:
インスピレーションを得るには,いろいろなジャンルをプレイすることが大事だと思っていますから。
4Gamer:
では最後に,この新作を待っている人に向けてメッセージをお願いできますか?
トマシュケイビッチ氏:
我々Rebel Wolvesは,開発中の新作でストーリーのいろいろな伝え方を模索しています。より没入感のある体験を実現し,皆さんの感情を動かせるタイトルを目指しますので,続報をお待ちください。
4Gamer:
楽しみにしています。ありがとうございました。
Rebel Wolves公式サイト
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