インタビュー
「コール オブ デューティ ゴースト」は,既存のシリーズ作品とはまったく違ったアプローチで作り上げられた。Infinity Wardのジョン・ドビー氏インタビュー
4Gamerでは本作の発売に合わせて,開発元であるInfinity Wardのシニア環境アーティスト,ジョン・ドビー(John A. Dobbie)氏へインタビューできたので,その模様をお届けしよう。
刻々と地形が変化するダイナミックマップや,エイリアンとの戦いをテーマとした「Extinction」モード,現行機と次世代機双方に向けた開発作業など,気になるトピックが語られたので,じっくり読み込んでほしい。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。海外では日本よりひと足先(11月5日)に「ゴースト」が発売されましたが,プレイヤーの反応はいかがでしょうか。
上々です。「コール オブ デューティ」のファンは世界中で私たちのことをサポートしてくれています。苦労して作ったゲームを愛してくれる,最高のファンですね。
4Gamer:
「ゴースト」は,今回発売されるPlayStation 3版やXbox 360版だけでなく,PlayStation 4版やXbox One版も予定されていますよね。現世代機版と次世代機版にはどのような違いがあるのでしょうか。グラフィックスが良くなっているというのは想像できますが。
ドビー氏:
ええ。次世代機版ではテッセレーション(ポリゴンモデルを滑らかにする処理)などによって,グラフィックスが向上していますし,キャラクターのアニメーションもスムーズになり,マップ内をより自然に移動できるようになりました。
4Gamer:
具体的に,どのような違いがあるのか教えてもらえますか。
ドビー氏:
とくにリアルになったのは,光の表現です。例えば現実世界では,暗い場所から光の下へ出たときは一時的に目が眩んだあと,徐々に周囲の様子が見えるようになっていきますよね? 次世代機版では,こういった人間の目がその場所へ慣れていく様子も再現しています。
4Gamer:
なるほど。ただ,一時的にせよ目が眩むような表現があると,それがゲームプレイ,特にマルチプレイでは大きく影響しそうですが。
ドビー氏:
もちろん,マルチプレイで有利不利が生まれるような表現にはなっていませんし,敵がまったく見えなくなるようなエリアなども存在しないように調整しています。
4Gamer:
それを聞いて安心しました。グラフィックス面以外にはどのような違いがあるのでしょうか。
ドビー氏:
オーディオエンジンも優れたものになっています。例えば,同じ銃声でも,カーペットが敷かれた部屋と,ホールのような広い場所では,銃声の聞こえ方がまったく異なりますし,銃声で相手がどこにいるかも推測できるようになっています。
音声技術は今後どんどん進化していくと思うので,開発者として期待している部分ですね。
4Gamer:
なるほど。ヘッドホンを使ってプレイしたくなりますね。
ドビー氏:
こういうと「次世代機版のほうがいいんじゃないか?」と思うかもしれませんが,敵のAIなどはまったく同じですので,ゲーム性は現行機版でも次世代機版でも変わりありません。
4Gamer:
「ゴースト」は今話題に出たコンシューマの現行機と次世代機版に加えてPC版とWii U版もあるわけですが,多機種開発における苦労はありましたか。
ドビー氏:
開発は大変でしたね。もちろん,これまでで最高の「コール オブ デューティ」を作ろうとしていましたが,それには次世代機用の新しいエンジンをいかに作り込むかがキーとなりました。
新しいエンジンで生まれたアイデアを,なんとか現行機のエンジンでも再現できるように調整したものもありましたから,現行機版も,新エンジンの恩恵を受けていると言えるかもしれません。
4Gamer:
「次世代機はPCに近いハードウェア構成なので,開発や移植はしやすくなった」という話を聞きますが,「ゴースト」の開発ではどうでしたか?
ドビー氏:
「ゴースト」の開発は,これまでと同じように,PCをベースに進めていました。実を言うと,開発スタート時には次世代コンシューマ機のスペックが分からなかったんです。開発機が来た時点で移植作業を始めるという状態でしたし,作業がそれほど楽になったという感じはしませんでしたね。
4Gamer:
「ゴースト」では世界観とキャラクターが一新されていますね。これまでとは違ったキャラクターやストーリーを作った理由は何でしょうか。
ドビー氏:
Infinity Wardはこれまで「コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア3」などのシリーズ作品をヒットさせてきましたが,「ゴースト」を作ると決まったとき,「次世代機タイトルなら一から作ってみたい」ということになったんです。それで,キャラクターや世界観,ストーリーなど,すべてを一新することにしました。
4Gamer:
本作のストーリーではどんな試みが行われているのでしょうか。
ドビー氏:
没入感を高めて,よりプレイヤーの感情に訴えかけるようなものにするため,プレイヤーキャラクターを1人に絞りました。
主人公の兄弟や,子供の頃から飼っている軍用犬の「ライリー」が出てくるのも,家族関係を取り入れた,よりエモーショナルなストーリーを作ろうと考えてのことです。とても敵わないように思える強大な敵に立ち向かうシチュエーションもありますし,今までの「コール オブ デューティ」とは全く違ったアプローチになっていると思います。
4Gamer:
個人的にライリーはちょっと気になる存在ですね。ライリーにまつわるエピソードなどがあったらお聞きしたいです。
ドビー氏:
ライリーはゲーム中で重要な役割を果たしています。プレイヤーの指示で敵を攻撃することもあれば,プレイヤーが直接ライリーを操ることもあります。今までになかった試みということで,メンバーが試行錯誤して作り上げました。
ライリーを作るために,ネイビーシールズから本物の軍用犬を呼んだんです。軍用犬の耳の裏にはタトゥーが入っているんですが,そういった細かい点も再現しました。モーションキャプチャはもちろん,行動をずっと観察して,性格のようなものをライリーのAIに落とし込むということもしています。
4Gamer:
モデルとなった軍用犬とスタッフが密接に関わった上でライリーが生まれたわけですね。
ドビー氏:
はい。今回はマルチプレイでも軍用犬を使うことができます。こちらはライリーではないんですが,常に横についてくれて敵を攻撃したり,敵が忍び寄ってきたら吠えて警告してくれたりするんです。
4Gamer:
本作では,リアルタイムに地形が変化していくダイナミックマップ「Free Fall」が話題になっていますよね。かなり困難なテーマに挑戦しているわけですが,開発の上での苦労話などがあったら教えてください。
ドビー氏:
変化前と変化後,2つ分のマップを作るような作業ですから,かなり大変でした。
ダイナミックマップは,単純にマップが変化するだけのものではありません。プレイヤーがいかにして刻々と変化する状況に対応するかという,ゲームプレイと密接に結びついたものになります。
例えば「ストライクゾーン」というマップでは,とあるキルストリークを使うと地形が崩壊して完全に変化しますし,あるマップではガソリンスタンドを撃つと倒壊したりするようなシチュエーションもあるので,これをプレイヤーが学べば,マップの変化を作戦として活用できるわけです。例えば,敵がいるときにガソリンスタンドを壊し,巻き込んで倒すといったように……。
今後もDLCで新たなマップを追加していきますが,プレイヤーからのフィードバックを取り入れていきたいですね。
4Gamer:
人類とエイリアンが戦う「Extinction」モードが新たに登場しますが,エイリアンとの戦いというシチュエーションを導入した狙いは何でしょうか。
ドビー氏:
Extinctionモードは「プレイヤーに通常のFPSとは違う体験をしてもらうにはどうすればいいだろう?」というテーマから生まれたものなんです。
いろいろと考えた末,「上下左右に激しい動きのあるようなFPS」はどうだろうということになり,上を見たり下を見たり,左右をぐるりと見回したりという,これまでのシリーズ作品にはちょっとないタイプのゲームが生まれました。
4Gamer:
単純に敵兵をエイリアンに置き換えたものではないんですね。
開発当初は球体を敵として配置していたんですが,「敵をエイリアンにすればいいんじゃないか」という意見が出て,現在の形になりました。エイリアンという設定にしたことで,動きの激しいものや飛び道具を使ってくるものなど,敵に個性が生まれましたね。
最初はボーナスコンテンツとして作っていたんですが,あまりに出来がいいため,ゲームモードとして標準搭載することにしたんです。Extinctionモードの経験値を稼いで専用のperkやスキルを手に入れるなど,エンディングを迎えた後も繰り返し遊べるモードになっていますよ。
4Gamer:
まるで「ゴースト」の中にもう1本ゲームがあるようですね。
ドビー氏:
実はExtinctionとキャンペーンモードは同じ世界での物語なんです。主人公たちが戦っているところとは別の場所でExtinctionの戦いが進んでいるんですね。
キャンペーンの冒頭では,軍事衛星「オーディン」が襲撃されたことで無秩序状態が生まれるんですが,エイリアンたちはオーディン襲撃の2週間後に出現しています。もしかするとオーディンの中に何かがいたのかもしれませんね(笑)。
4Gamer:
そのあたりのつながりも興味深いですが,今回,Dobbieさんご自身が手がけられた部分で,プレイヤーに「ここを見てほしい」というポイントはありますか。
ドビー氏:
たくさんありますが,中でもゲーム後半に出てくるジャングルのシーンはぜひ見てほしいです。新しい技術を使った光の表現などを一生懸命考えましたし,リアルなジャングルを作るために,実際に写真を撮影しに行くなどの苦労もありました。
4Gamer:
あまりFPSが得意でなく,マルチプレイをためらってしてしまうような人もいると思うのですが,そういった人へのアドバイスなどがあったらお願いします。
ドビー氏:
そんな人には「Squad」モードが凄くマッチしていると思います。自分で作成したキャラクターによって編成された部隊(スクワッド)を率いて戦うモードなんですが,オフラインでも遊ぶことができる上,相手のAIがとてもリアルな動きをしてくれるんです。ステージや各種の条件なども設定でき,マルチプレイで遊んでいるような対戦が楽しめます。
また,自分がプレイしていないときに,自分のスクワッドがフレンドの対戦相手をするといったソーシャル的な要素も導入されています。ここで稼いだ経験値を引き継いでマルチプレイをすることもできますので,まずはSquadモードをプレイするのがオススメですね。
4Gamer:
では最後に,日本の「コール オブ デューティ」ファンに向けてメッセージをお願いします。
ドビー氏:
日本に来てから至る所で「ゴースト」の看板や広告を見かけて,盛り上がっているのを感じていますし,私も気分が高まりました。
私たちがゲームに込めたものを気に入って頂けると嬉しいです。日本のプレイヤーのみなさんと,マルチプレイモードで出会えるのを楽しみにしています。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
大作FPSといえば技術的な側面ばかりがクローズアップされがちだが,「ゴースト」は技術とアイデアの両面から新たな「コール オブ デューティ」を作ろうとしているように感じられた。気になった人はぜひプレイして,開発スタッフの意欲を感じ取ってほしい。
「コール オブ デューティ ゴースト」公式サイト
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